【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#280


 高橋一生さん


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 NHK朝ドラ「わろてんか」(2017年度後期)の漫才指導で参加した際、高橋さんのやさしさに驚きました。


 楽屋のロビーでお茶を飲んでいると、高橋さんの方から近づいてきて、正面に座り、「本多先生は落語はお書きになるんですか?」「3本だけですが」「落語お好きですか?」「好きですね。

いま(立川)志らく師匠に指導していただいてます」「もう高座には上がられたんですか?」「先日“芝浜”を披露させていただきました」「凄い! 凄い!」と2人で大盛り上がり。


 落語の魅力について高橋さんは「座布団一枚の上で演じるひとり芝居ですね」と熱弁され、「オススメの噺があれば教えてください」と言うので、桂米朝師匠の噺を2席、メモに書いて渡すと深々と頭を下げてスタジオに戻りました。後日「(落語を)聞かれました?」と伺うと「表現力が凄いですね、画が浮かんできますもんね。やっぱり噺家さんて凄いですね」と感心しきり。忙しいのに、ちょっとした立ち話で聞いたことをすぐ実行に移す誠実さに驚きました。


 座っているときは長い脚が折りたたまれ、コンパクトになっていますが、全体を俯瞰で見ているかのよう。物静かですが、大勢いる中でも、放たれるオーラとでもいうのでしょうか、どこにいらっしゃるかが、すぐにわかる存在感を放つ方でした。


 ご自分の出番ではないシーンの稽古を見ていて、演出家の邪魔にならないよう、出しゃばり過ぎないように若い役者さんにアドバイスされたり、ご自分のシーンでも「こうしたらどうですかね?」とあくまで演出家を立てた上で変更されたり、威圧ではなく“サラッとしたひと言”でその場の空気を変える姿が印象的でした。


 本番収録の際、私がスタジオで立って見ていると、耳元で「どうぞ」と声が。横を見ると、高橋さんが丸イスをおいて下さっていました。びっくりして「ありがとうございます」と手を合わせてお礼をすると、クールなイケメンが、ニッコリ可愛らしい笑顔に変わりました。高橋さんと一緒に本番を見ながら「(広瀬アリスさんたちの漫才が)うまくなりましたね。

ありがとうございます」と言っていただくことが何度かあり、恐縮しきりでした。


 最終回で「ミニ新喜劇」の台本と演出を担当させていただきましたが、終了後にまた高橋さんから「ありがとうございました」と深々とおじぎをされてニコッと笑顔をいただきました。


 CMでは理想の上司的な役どころも多い高橋さんですが、さりげない心遣いや気配りをサラリとこなせる、本当にさわやかな方でした。


(本多正識/漫才作家)


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