NHK連続テレビ小説「風、薫る」。女性の職業が確立されていなかった明治時代に西洋式の看護学を学び、トレインドナースとなった実在の人物がモデルだ。


 見上愛(25)と上坂樹里(20)がダブル主演となり、生まれも育ちも対照的なりん(見上)と直美(上坂)ふたり分の人生を描かなくてはいけないためとにかく展開がスピーディー。第4話にしてりんの父がコロリで亡くなるが、あっという間の退場に視聴者の感情も追いつかないほど。朝ドラ受けでおなじみ「あさイチ」の鈴木菜穂子アナも、同じく初週でヒロインの父が亡くなった「あんぱん」の時は涙をこらえる様子を見せていたが、今回は「早いですね」といたって冷静。この違いはなんなのか。


■スピーディな展開、小林虎之介“早期登場”の戦略か?


 それはヒロインの幼少期が描かれていないからではないか。これまでにも幼少期を描かなかった作品は数多くあった。が、どんな幼少期を過ごしてきたかを知ることでヒロインに感情移入が深まるというのも確かだ。


 今回、ふたりのヒロインを描かくために幼少期を省いたと考えられるが、実はそれ以外にも理由があったのでは、と思う節がある。りんの幼なじみ・虎太郎役の小林虎之介(28)をいち早く登場させて、視聴者を惹きつけようという魂胆なのでは、と。実際、一部SNSではヒロインたち以上に、小林の話題で盛り上がっていた。


 りんと虎太郎。互いにほのかな恋心を抱きながらも、“元家老の長女と元足軽の長男”という身分違い、という設定。

魚つりでのバックハグや、怪我をした虎太郎の手をりんが手当て、そこからの「俺の姫様だから」とそっと手を重ねるシーンなど、ファンサービスともとれるきゅんきゅんシーンがいくつも見られた。それがNHKの戦略かどうかはさておき、小林虎之介がNHKに肩入れされているのは間違いないだろう。



「BLドラマ出身」が新たな供給源に

 小林虎之介は2023年の日曜劇場「下克上球児」(TBS系)熱血漢のキャッチャーに扮して存在感を示した。大きく飛躍したのは、中沢元紀とW主演を務めた24年の「ひだまりが聴こえる」(テレビ東京系)だろう。いわゆるBLドラマで、難聴の友人に寄り添う優しさと明るさ、真っ直ぐな情熱を併せ持つ大学生を演じ、多くの支持を集めた。


 その後、NHKドラマでは24年「宙わたる教室」での定時制高校に通う不良青年役を演じ、視聴者を魅了。26年「テミスの不確かな法廷」の第1話ゲストとして登場し、ドラマの初回に華を添えた。そして今回の連ドラ初出演。まさにNHKに愛された男といえる。


 朝ドラとBLは親和性が高いのか、中沢元紀(26)も「あんぱん」に起用されていたし、「チェリまほ」の赤楚衛二(32)も「舞い上がれ!」に出演していた。かつては戦隊ヒーロー出身が多かったが、BL出身俳優が新たな供給源となりつつある。


 理由は明快。

BLファンは熱量が高く、作品が終ってがもその支持は途切れない。俳優個人の“推し”として持続し、視聴や拡散というかたちで支える。その力を朝ドラに取り込もうという戦略だ。


 初回視聴率ワースト2位タイなどと、低空飛行となった「風、薫る」。“NHKに愛された男”は朝ドラを救えるのか。小林虎之介が風向きを左右するキーマンであることは間違いない。


(桧山珠美/コラムニスト)


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