【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#285
浜村淳さん
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91歳を越えてなお現役でラジオパーソナリティーをされている浜村さん。思い出すのは1974年のラジオの深夜放送……京都弁をベースにしながら、流れるような語り口調に高校生の私は魅了されました。
映画の解説での「走った! 走った! 走った!」「逃げた! 逃げた! 逃げた!」と同じフレーズを重ねて臨場感と緊張感を演出して、リスナーを映画の世界に引き込んでしまう話術は特筆もので、浜村さんの話を聞いているだけでその映画を「見た気持ち」にさせられてしまうのでした。
浜村さんといえば「さてみなさん……」という問いかけのフレーズが有名です。でもあのフレーズ、実は大平サブローさんが浜村さんのものまねをされる時に、イメージを増幅させてつくった“フェイク”でした。ところがこのフレーズが有名になると本家が逆輸入。サブローさんに「さてみなさん、使こてもかまへん?」と言う柔軟さもありました。
浜村さんに初めてご挨拶したのは「上方漫才まつり」でオール阪神・巨人さんの台本を担当した1985年の春。私の名前に「正識を“まさのり”と読ませますか、ええ名前やね。もう覚えたわ。厳しい世界やけど息の長い作家になってくださいね」と励ましていただきました。以来、数え切れないほどご一緒させていただき、呼び方も「本多さん→本多くん→本多はん→ぽんちゃん」と変わっていきました。
私が漫才作家として20年を超えた頃「そないなるか? あのガリガリやった子が。
「若いときには、どういうしゃべりをしたら人の気持ちを自分の方に向かせられるかと思て、寄席で落語をよう聞いたんよ。ヒントを求めてたんやね。その結果、こんなしゃべりになってしもたんやけど」と成り立ちを語ってくれました。
京都弁をベースに立て板に水のようにしゃべりながら、聞かせどころにくると、ひと呼吸おいてリスナーの耳をくぎ付けにする「間」と「緩急」を自在にあやつる「浜村節」。話芸はその状況を聞き手にイメージさせないと芸とは言えないと言われますが、まさに浜村節はその境地を極めたものだと思います。
昨年10月に大腸がんの手術をされ、奇跡の復帰。今は検査入院をされているようですが、きっとまた何事もなかったようにマイクの前に帰ってこられることでしょう。
(本多正識/漫才作家)

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