【今週グサッときた名言珍言】


「初めて比喩表現を自分で理解できた」
又吉直樹NHK「偏愛ミュージックサロン」3月28日放送)


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 芥川賞作家でもあるピース・又吉直樹(45)が、日本語の面白さに気づいたのは、小学3年生の頃だった。それは本からではなく、音楽から。

ザ・ブルーハーツに出合ったのだ。ドラマの主題歌だった「トレイン・トレイン」から入り、「リンダリンダ」を聴いて「ドブネズミみたいに美しくなりたい」というフレーズに疑問を持った。最初は意味がわからなかったが、「写真には写らない美しさがあるから」と続く歌詞で「これは見た目だけじゃなくて、真剣に生きてるっていうことなんだ」と気づいたときのことを回想した一言が今週の言葉だ。


 幼い頃から、ザ・ドリフターズのコントや間寛平らの笑いを見て育った又吉は、小学校高学年の頃にダウンタウンを見て衝撃を受けた。程なくして太宰治の文学と出合い、再び衝撃を受けた時に気がついた。「ダウンタウンさんと太宰は似ている!」と(小学館「女性セブン」2015年4月9.16日合併号)。


 太宰が小説でやっているようなことをダウンタウンは毎週コントの中でやっていた。特に「言葉にできひんみたいなものを、バッと取り出して表現できてしまうところ」(文芸春秋「文春オンライン」17年9月2日)に共通点を感じた。そして「哀愁と笑いが表裏一体」である部分や、「自意識の暴発」「人間の愚かさを含めた笑い」(同前)なども似ていると思った。


 又吉が小説家でもミュージシャンでもなく、最初に芸人を目指したのは「何やってもええって思ってるから」(朝日新聞出版「AERA」15年6月1日号)。


「職業っていうカテゴリーとか、誰かになりたいとかはない。どっちが自由度が高くて、どっちがよりおもろいかってだけ」(同前)


 冒頭の番組で、又吉は「文豪」と呼ばれるかつての文学者たちは決して尊敬される「先生」だけではなく、「もっとパンクというか、不良性があって。

破壊的で、でも優しくて」という人たちがたくさんいたはずだと言う。又吉自身も芥川賞を取ったことで「センセイ」イジりをされることが少なくない。


「その時に、昔、自分が嫌やなと思ってた権威的な大人にされたらどうしようっていう危機感とか恐怖感ってあったんですけど、やっぱり小説とか文学っていうものは、僕はロックと一緒で、どうしようもなさとか、情けなさとか、愚かさっていうものを描くジャンルのひとつだと思ってる」(NHK「偏愛ミュージックサロン」3月28日)と語る。


 どうしようもなさや情けなさ、愚かさを描くのはもちろん、お笑いも一緒。だから、又吉はどこまでも芸人なのだ。


(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)


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