「陰陽術願勾玉」──陰陽師が正装をする際、身につけるという強力な呪具だ。

【ムー的呪具の世界】安倍晴明も使用した、最古にして最強の呪具「陰陽術願勾玉」

写真をご覧になればおわかりのように、中央に翡翠、その左右に水晶や瑪瑙、黒曜石などの天然石でつくられた勾玉が、神の使いとされる鹿の革紐でつながれている。

この呪具を身につけることで、陰陽師の周囲には悪しきものがいっさい近寄れなくなるというのである。まさに最強といっていい守りの術だ。

陰陽術願勾玉の力の源になっているのは、なんといっても勾玉という独特の形状だ。

平安時代の陰陽師・安倍晴明の末裔で、本誌でもおなじみの第27代水の陰陽師・安倍成道師はこう語る。

「勾玉は、私たち陰陽師が登場するはるか昔から存在していた聖なる形です。独特な形は魂を象ったものともいわれています。勾玉の『玉』は、まさしく魂の『タマ』なのです。

また、陰陽道のルーツともいえる、陰陽五行における太極の図は、勾玉がふたつ組み合わさった形です。これもまた、勾玉の力の秘密のひとつといえるのではないでしょうか」

【ムー的呪具の世界】安倍晴明も使用した、最古にして最強の呪具「陰陽術願勾玉」

ご存じのように勾玉は、皇室の至宝、三種の神器のひとつとされる呪具だ。日本神話においては、天照大神の天の岩戸隠れの際に玉祖命によってつくられ、八咫鏡とともに榊の木に掛けられた、まさしく聖なる形そのものなのである。

実際、勾玉の歴史は縄文時代の遺跡からも発見されるほど古い。また一説にその形は、母親の胎内にいる胎児の姿、つまり命のエネルギーそのものを表しているともいわれている。

いずれにしても、古代より呪術のシンボルとして、大切に守られてきたのが勾玉なのだ。

ちなみに成道師によれば、陰陽師は勾玉を晴明の師匠である賀茂氏の時代、つまり陰陽道が日本で始まったころから使ってきているのだという。

【ムー的呪具の世界】安倍晴明も使用した、最古にして最強の呪具「陰陽術願勾玉」

写真でもおわかりのように、成道師の胸にも陰陽術願勾玉は下げられている。


天然石に込められる術の力

その勾玉本来の呪力に、陰陽師の力が加えられることで、術はますます進化した。とくに今回、陰陽術願勾玉には成道師の手により、勾玉本来の力に陰陽道の願望実現の術が乗せられ、より強力な呪具へとパワーアップしている。

このとき、重要な役割を果たすのが、勾玉の材料となる天然石だ。成道師はいう。

「天然石は、地球そのものから生みだされた分身です。したがって、龍脈・地脈という大地を流れるエネルギーを乗せやすいという性質があります。そのため、陰陽師の術の力も入れやすいのです」

陰陽師が結界を張るとき、要となる場所に天然石を置くことが多いのはそのためだ。あるいは、磐座と呼ばれる巨石に神が宿るとされるのも、同じ原理によるものだろう。

だが、同じ天然石であっても、石の種類によって術の効果はそれぞれ異なってくる。

「石によって、効果の違いは明らかにあります。

ただ、もっとも術が乗せやすいのは、なんといっても翡翠です。ですから陰陽師は昔から、翡翠を特別な石として扱ってきました」

翡翠は、呪具・結界石としても最強・最適な天然石だというのである。そこでこの陰陽術願勾玉において、翡翠は中心に置かれ、術の要とされる。

とはいえ、翡翠以外にも水晶や瑪瑙、黒曜石など、陰陽師の術に適した石は数種類ある。いずれも術との相性がいいので、陰陽師は、現場の状況や使う術に応じて、常にこれらの石を使い分けてきた。

今回も、こうした天然石の勾玉が、翡翠の周りを「固める」のである。

【ムー的呪具の世界】安倍晴明も使用した、最古にして最強の呪具「陰陽術願勾玉」


御度で調整された秘術

陰陽術願勾玉を渡すとき、成道師は相手の御度(おど/オーラのようなもの)を読み、願いを察知する。その願いが実現するように、中心には要となる翡翠を、その左右には術がもっとも効果的に力を発揮できる天然石を自ら選び、神獣である鹿革の紐で結ばれる。鹿の革は、それぞれの石の力をつなぐバイパスになるわけだ。

このとき、成道師自らの手によって、ひとつひとつ勾玉の霊力が調整される。

こうしてできあがった陰陽術願勾玉を手にすることで、依頼者は開運や願望実現への近道を自然と辿ることができるようになるわけだ。

「依頼者の御度の願いをかなえるためには、私自身が最適な自然石を選ぶ必要があります。こうすることで運気を上げる効果もありますし、あるいは災いに対する魔除けにもなります」

そう、陰陽術願勾玉のもうひとつの力が、この魔除けだ。

最初に書いたように、陰陽術願勾玉にはその場に結界を張り、持ち主や対象を邪なものから守るという力もある。

たとえば陰陽師の数少ない弱点として、術の最中に自分の身を守ることがおろそかになる、ということがあるのだが、陰陽術願勾玉を身につけることで、その心配はなくなるというのだ。

これを一般に応用するなら、たとえば冠婚葬祭など、たくさんの人が集まる場所が効果的だろう。

人が集まれば、そこには必ずよからぬものも寄ってくる。そういうときに陰陽術願勾玉を懐に忍ばせておいたり、鞄に入れておいたりすることで、悪しきものから身を守ることができるのである。


陰陽師の肉体を結界石と成す秘術

これは余談だが、陰陽師が複数いれば、こんなこともできると、成道師はいう。

「『陰陽術願勾玉』には、陰陽師自身を結界石と化すという、特別な使い方もあります。

これは、陰陽術願勾玉を首から下げた陰陽師が5人、五芒星の形を成して立つというもので、そこには瞬時にして、陰陽師を要とした、五芒星と五角形の強力な結界が形成されることになるのです」

この結界が通常の結界と大きく異なるのは、陰陽師たちの歩みに合わせて、どこへでも自由に移動することができるということだ。まさに移動式の簡易結界となるのである。

このとき、中央に守るべき人や物を配置し、五芒星ごと移動していけば、邪なものはそこに近づくことができなくなる。たとえ移動中であっても、常に強力な結界で守られる。

いずれにせよ、守りと攻め、両方を兼ね備えた陰陽術願勾玉──まさに最強の結界アイテムといえるだろう。

【ムー的呪具の世界】安倍晴明も使用した、最古にして最強の呪具「陰陽術願勾玉」

(「ムー」2018年9月号より抜粋)

文=中村友紀

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