先頃、サンドイッチチェーン「サブウェイ」のフランチャイズ店を経営する会社が破産申請をした。首都圏を中心に約20店舗を運営していたが、閉店することとなった。

また、全国の「サブウェイ」が次々に閉店へと追い込まれ、ここ4年半で約200店舗が消えている。これは、何を意味するのか。

4年半で200店舗閉店のサブウェイ…「注文が面倒」なだけじゃない失速の原因とは?
出典:サブウェイ公式HP

経営不振。端的に言うとそうなるのだが、一体何が原因なのか。

その答えは、サブウェイを一度でも利用したことのある人なら、容易に想像がつく。経営・マーケティングの専門家の意見もまったく同じである。

「注文が面倒」。

■特に男性が敬遠する、注文の煩雑さ

メニューの中から選べば良い、というわけではない。最近の例で言えば、まずは、サンドイッチのメインとなる具材を15、6種類の中から選び、次にパンを5種類から選ぶ。さらに、トッピング8種類、野菜8種類、ドレッシング・ソース9種類などを順に選んでいく。客はその都度悩まなければならないし、店員と会話しなければならない。注文だけで時間が掛かるのだ。

調理にも手間が掛かるので、さらに待つことになる。

この注文方法が非常に面倒だと言う客は多く、特に男性は敬遠してしまう。ファストフードでありながら、すばやく買うことができないのはデメリットである。これが、サブウェイの大きな弱点であり、経営不振の主たる要因である。

サブウェイは、このことを理解はしているのだろう。『迷ったら、「おまかせで!」とご注文ください。』と表示されているが、積極的な改善策とは言えない。フルオーダーメイドへのこだわりなのかもしれないが、その結果が大量閉店である。

店からのお奨めメニューを導入すれば、客は迷わなくて済むので、利用しやすくなる。フルオーダーを望む客には、従来通りの対応をすれば良いが、簡単に注文したい客への気遣いも忘れてはならない。

「おまかせ」では、もし客が気に入らなかった場合、店員のせいにしてしまうので、次の利用がなくなる。だが、メニューの中から自分で選択した場合は、決めた自分の責任であることを自覚しているので、次の利用時には別のものを選ぶ。

お奨めメニューを作る。ただそれだけのことが、なぜ、できないのか。

どんな飲食店でも、アラカルトよりセットメニューの方が注文しやすいし、実際に注文が多い。客は、店の味を試すのであって、自分の選択技量を試しているのではない。ただ、店がお奨めする美味しいものを食べたいだけである。サブウェイは、お洒落なサンドイッチの店であり、誰もが美味しいことを知っている。

■「注文が面倒」以外の致命傷がある?

だが、注文方法の煩雑さだけでここまで業績が落ち込むだろうか。

サブウェイの印象を客に聞いてみればわかる。「野菜たっぷりのサンドイッチ」という以外に、これといったイメージがない。つまり、サブウェイには強力な個性やアピール力がないということである。

飲食店に関しては、いまやSNSに流れる情報が繁盛を左右すると言ってもいい。それほど影響力のあるSNSにサブウェイはほとんど登場しないのである。

ネットで検索すればわかるが、先頃のFC店破産のニュースがトップで表示されるくらいで、後は店舗情報が並んでいる。同様に他の飲食店を検索すれば、話題の新商品やキャンペーン情報が上位に表示されるのだが……。

すなわち、サブウェイは人びとの話題になることが少ないのである。いまの時代では、致命傷とも言える。ネットニュースのサイトにも登場せず、個人SNSでも取り上げられていない。これは、サブウェイの商品に問題があるからである。人びとが面白がる、驚くような商品を出していないのである。新商品も出してはいるが、インパクトがない。ネットに情報を流す人たちが、飛びつかないのである。

また、サブウェイ自体もPRに積極性がない。Facebook、Twitter、YouTubeで情報を流してはいるが、それが個人商店レベルの大人しいアピールとなっている。他のチェーン店などは、情報サイトへの売り込みや取材協力によって、積極的なPRを行っている。

良し悪しは別として、第三者を装って良い印象を与える「ステルスマーケティング」を展開したり、社会的に影響力のある「インフルエンサー」に宣伝を依頼する場合もある。それほど、SNSの影響力は絶大なのである。サブウェイは、それを理解していないのか、敢えてやらないのか。もし、敢えてやらないとしたら、明らかな戦略ミスである。確固たる信念を持ってやっていないとも感じられない。

このままでは、閉店ラッシュはまだまだ続く。メニューの見直しをした上で、PR戦略を180度転換する必要がある。

【著者プロフィール】

コンサルタント 佐藤きよあき

1961年兵庫県生まれ。広告デザイン会社にコピーライターとして勤務の後、プランナー・コピーライターとしてフリーランスに。モノづくりへの興味から、仕事を継続したまま、木のおもちゃ制作を開始。ネット販売に着手。その後、「販売の現場」を知るために、5年間スーパーマーケットに勤務。

これにより、「モノづくりメーカー」「販売現場」「広告・販促」のすべてを知る。この経験を生かし、中小企業・個人商店向けメールマガジンを発行。関連する情報販売、コンサルティングを開始する。現在、繁盛戦略コンサルタントおよび中小企業経営研究会のビジネス・カウンセラーとして活動。著書に『0円からできる売れるお店の作り方』(彩図社)がある。

Marketing Eye:http://ignitionp-marketing.seesaa.net/

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