米移民当局は2025年9月5日、韓国の現代自動車が南部ジョージア州で建設中のEV用バッテリー工場で、不法滞在や不法就労の疑いで475人を拘束した。米メディアCNNによると、今回の摘発は移民税関捜査局(ICE)による過去最大級の一斉摘発の一つだという。
拘束されたうち、300人以上が韓国籍だったと韓国の趙顕(チョ・ヒョン)外相は6日に明らかにしている。

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 今回の拘束事件は、米国と韓国の関係に新たな緊張をもたらしている。その背景には、いくつかの複雑な要因が絡み合っており、米韓関係の悪化につながる可能性を秘めているのだ。

1. 経済協力と国内政策のギャップ
近年、韓国は米国のインフレ削減法(IRA)に対応するため、現代自動車やLGエナジーソリューションなどの大手企業が米国への巨額投資を約束してきた。これは、米国のサプライチェーン強化とクリーンエネルギー転換を支援するもので、両国の経済的結びつきを強める象徴とされてきた。
しかし、今回の拘束事件は、こうした経済協力の「機運」と米国内の厳しい移民・労働政策の「現実」との間にギャップがあることを露呈した。トランプ前大統領の「不法移民」発言は、米国第一主義の姿勢を改めて明確にするものであり、韓国側の期待とは異なる米国の国内政治の力学が働いていることを示唆している。

2. 米大統領選挙と移民政策の厳格化
2024年の米大統領選挙を控え、移民問題は主要な争点の一つとなっている。特に、トランプ氏をはじめとする共和党候補者は、国境管理の強化と不法移民対策を強く主張している。今回の摘発は、こうした政治的な文脈の中で行われた可能性があり、選挙を意識した厳しい移民政策の一環として捉えられている。
このため、韓国人労働者が拘束された事態は、単なる法執行の問題ではなく、米国内の政治的思惑に巻き込まれたと韓国側は受け止めており、両国間の相互不信につながる可能性がある。

3. 相互投資の信頼性への影響
韓国は、半導体やEVバッテリーといった戦略的に重要な分野で米国への投資を拡大することで、経済安全保障における米国のパートナーとしての地位を確固たるものにしようとしている。
しかし、今回の事件は、こうした投資環境の不安定さを浮き彫りにした。拘束された人々が、ビザの期限切れや短期ビザでの就労といった、両国間で認識のずれがあった可能性のあるケースだったことも、問題の根を深くしている。
韓国の李在明大統領が「不当に侵害されてはならない」と述べたことは、米国の法執行が韓国企業の活動を阻害しているとの懸念を示唆しており、将来的な対米投資計画にも影響を与えかねない状況だ。
【編集:af】
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