日本でも、太陽光、蓄電池、エコキュート、V2Hと、家庭で選べる設備は増えた。選択肢が広がるほど、補助制度や機器の組み合わせは複雑になり、消費者が自分に必要なものを見極めるのは難しくなる。そこで技術と暮らしの間に立ち、難しい情報を会話へ翻訳する営業職の役割が大きくなる。AIが説明資料を作れる時代でも、相手の迷いを読み、質問に合わせて答えを組み直す仕事は残る。
株式会社九州エネルギー事業会を率いる鎗水晴輝氏は、まさに営業を通じて自らの進路を切り開いてきた。新卒で求人広告会社を選んだのも、広告への憧れからではない。「将来、社長になる」という目標から逆算し、成長する会社と経営者を知るためだった。若さを理由に軽く見られることもあったが、相手の反応に合わせて言葉を変え、数字で結果が返ってくる仕事に面白さを見いだしていった。
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ただ、その進路は一直線に営業へ続いていたわけではない。求人広告の後には農業へ挑み、そこで初めて自分の適性を見直した。人と向き合い、反応を受けながら結果をつくる営業の方が、自分は力を発揮できる。
農業を経てエネルギー関連会社で経験を積み、やがて独立。エコキュートや太陽光などを扱う現在の会社を立ち上げた。資格がなくても営業は始められるが、断られた後に立ち直る力、相手が言葉にしていない不安を読む力、質問に応じて答えを組み直す力が欠かせない。鎗水氏が「誰でも始められるが、誰にでもできる仕事ではない」と話すのは、その難しさを知っているからだ。
厳しさを伝えながらも、鎗水氏は営業が生まれつきの才能だけで決まるとは考えていない。訪問後に会話を振り返り、先輩へ相談し、次の提案を変える。実践と修正を繰り返せば、話す力も聞く力も伸ばせる。営業で身につくのは、商品を売る技術だけではなく、人との関係をつくる力だという。
営業を学べば人の選択肢が増える。その実感は、独立後に社員を迎えたことでさらに深まった。創業当初の大きな動機は、自分が収入を得て成功することだったという。
経営の意味が変わったことで、採用面接も時に人生相談へ変わるようになった。今の仕事を続けるべきか、何を営業すればよいのか、将来は独立したいのか。鎗水氏は入社を急がせず、本人がどのような人生を望むのかを聞く。「お金があれば必ず幸せになるわけではないが、避けられる不幸は増える」という考えが、その対話の土台にある。
だから面接では、前職への不満だけを聞いて採用を決めることはしない。どのような場面で力を発揮したか、人と話すことを避けていないか、結果が出ない時に学び直せるかを確かめる。営業は成果が明確に出る分、本人の課題も見えやすい。入社後の研修と同じくらい、仕事を選ぶ前の対話を重視している。
その遠回りの先で営業に出会い、自分の人生が変わった。だからこそ、鎗水氏は次の若者にも同じ入口を用意したいと考える。
その入口で身につけてほしいのも、会社の営業手法だけではない。相手の話を聞き、自分の仮説を修正し、結果が出なければ学び直す。その姿勢が、別の商品や別の仕事へ進んだ時にも本人を支える。
取材を通じて、鎗水氏の強みは成功だけでなく、遠回りした経験まで人材育成へ還元している点にあると感じた。営業を通じて若者の選択肢を増やす経営が、これからどのようなキャリアを生み出すのか。今後の広がりに注目したい。
【取材/執筆:Y.U】








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