【その他の写真:「つばさ橋」建設の様子。
北田郁夫さんは、2011年1月にカンボジアに着任。まだ橋が影も形もなかった最初から、この地で大勢のスタッフたちと寝食を共にして建設に取り組んだ。つばさ橋は、1575メートルのアプローチ橋とメコン河を渡る主橋640メートルから構成されており全長が2,215メートルある。
アプローチ道路を含めると全長で5.4キロメートルの長さとなる。主橋は、斜めに張ったケーブルが美しい斜張橋で、橋を支える主塔の間の距離が330メートルある。北田さんによると、コンクリート製の斜張橋としては、カンボジア最大であるだけでなく、日本最長の橋よりも長いのだという。
北田さんらにとって最大の危険は2012年7月に発生した不発弾の爆発だった。主橋を支える河川内の杭を築造するために、土砂を吸い上げて排出する作業時に発生した。河床から10メートルほどの深さで対戦車砲が排泥管の中で爆発した。地中深くで、負傷者は出なかったが、工事を中断せざるをえなかった。橋の建設地付近には、1970年代後半にカンボジアを支配したポル・ポト派の弾薬庫があったという。
今、完成間もない橋を見て、北田さんは、「この橋は、バンコクからプノンペン、ベトナムのホーチミン市をつなぐ南部経済回廊の一部を形成します。カンボジア一国だけでなく、アセアン地域の発展に貢献できる仕事に携われたことがうれしい」「橋の完成を心待ちにしているという声を聞くと、人々の暮らしを良くするための仕事をしているのだと再認識しました。まさに市民のための技術者、シビルエンジニヤー(土木技術者)の原点に返る気がしました」つばさ橋の開通は、4月のクメール正月前に予定されている。
2月19日に東京で開かれた「メコン地域における官民協力・連携促進フォーラム」第5回会合に出席した、ソー・ケン副首相は、「近年、カンボジアは順調な経済成長を遂げていますが、今後は輸出依存から脱却し、産業の多様化と生産性の向上が必要であると考えます。日本のご支援により建設された「つばさ橋」、「きずな橋」、「日本カンボジア友好橋」は、大きな力です。さらなる経済成長のため、インフラへの継続的な投資と連結性強化が重要です。
【編集:TY】