日本には緑茶、イギリスには紅茶、中国には中国茶といったように、世界にはさまざまな伝統茶があります。今は緑茶も紅茶も中国茶も、世界中で飲むことができるグローバルな世の中。
でも、その国ならではの伝統の味やお茶の歴史というものが存在します。皆さんは、日常どんなお茶を飲んでいますか?今回は、韓国のお茶のことをご紹介します。

韓国のお茶ってどんなお茶?

韓国ではお茶というと、ナツメや柚子、梅の実やカリン、クコの実やショウガなど、木の実の根、皮などの果実、米などの穀類などを蜂蜜などに漬け込み、そのエキスを薄めて飲んだり、草木を乾燥させてお湯を加えて飲んだりする「伝統茶や韓方茶」の方が緑茶よりも身近です。

韓方茶は薬効にすぐれ、体に良いお茶として韓国では日常的によく飲まれています。伝統茶と呼ばれてもいますので、伝統茶は韓方茶の一種と理解するのがわかりやすいでしょう。ソウルには伝統茶カフェもたくさんあり、伝統菓子と一緒にお茶を楽しめると観光客にも人気があります。

もちろん韓国には緑茶もありますが、日本のように日常的に飲む習慣はほとんどありません。というのも、韓国では、朝鮮時代に仏教が弾圧されたことで緑茶などの茶葉によるお茶を飲む習慣が廃れてしまったからです。

茶葉を使わず、韓方薬や果実、野草、穀物などを使ったお茶が飲まれるようになったのは、過去の歴史的経緯があってのことなのですが、緑茶を見直す動きも出てきており、ここ10年ほどで緑茶もかなり飲まれるようになってきています。

バラエティ豊かな伝統茶

伝統茶カフェで飲める伝統茶ですが、その種類はとても豊富です。梅実(メシル)茶、柚子茶、五味子(オミジャ)茶、ナツメ茶、雙和(サンファ)茶、シッケ、水正果(スジョンガ)、梨茶、高麗人参茶、霊芝茶など、気軽に飲めるお茶だけでも10数種類あります。

中でも、朝鮮五味子という木の実から作られる「五味子茶」は、酸味、辛味、塩味、苦味、甘みの5つの味をもつお茶で、体調によって感じる味が違います。
天然のビタミンCがたっぷり入っているため美肌効果もバツグン。肺や腎臓を保護し、膀胱の活動を活発にし、疲労回復にも効果があるとか。韓国では、疲れたときに飲む人が多いです。

夏になると、この五味子茶を冷たくして、そこにスイカや梨を浮かべた「五味子花菜(オミジャファチェ)」が登場します。これがまたとても綺麗で美味しいので、オススメです。

また、免疫力をアップさせるお茶として注目されているのがナツメ茶です。ナツメには神経を落ち着かせる成分やビタミンCが豊富に含まれていることから、風邪予防などに飲むことが多いお茶です。

五味子花菜、ナツメ茶、柚子茶。もち米や米粉で作られた伝統菓子「韓菓」

韓方茶は韓国版ハーブティー

伝統茶が喫茶の一つとして広く飲まれる一方で、韓方薬を飲みやすく、誰にでも気軽に試せるようにと作られたのが韓方茶です。わかりやすく言うと「韓国版ハーブティー」ですね。伝統茶カフェで飲む伝統茶よりも、韓方茶の方が、より薬効性を強調していると思います。

じつは最近、韓方(ハンバン)が身近な韓国でも、若い世代の間では韓方に対する関心が薄れつつあります。
薬草を煎じて飲む韓方薬は、中高年世代が飲む薬というイメージが強く、値段も高いため、若い世代にはハードルが高い存在というわけです。

それに比べ、韓方茶は韓方薬よりも飲みやすいですし、何よりお値段もお手頃。若い世代にとって、ティールームやカフェでコーヒーと同じように飲める気軽さはやはり魅力です。

外国人である私たちにとっても、お茶から韓方(ハンバン)に触れるのは、わりと入りやすいのではないでしょうか?韓国旅行の際には、ぜひ伝統茶や韓方茶を飲んでみてください。

伝統家屋を移築した伝統茶カフェ「伝統茶院」

(文・写真ともに木谷朋子)
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