産後、お風呂で髪の毛を洗った後、排水口を埋めつくす黒い物体…。そう、産後の抜け毛は、思わず「ギャー!」と叫びたくなるほどのホラーレベル。
なかには、髪の毛だけでなく、眉毛まで薄くなるツワモノもいるとか。手で触っただけなのにスルリと抜け落ちる毛、日々薄くなる頭頂部を見るたび、“このままだとハゲになる!”と、顔面蒼白になるママは実は少数ではありません。

抜け毛の量は男の子を産んだママの方に軍配が上がるというまことしやかな噂も耳にします。そもそも、なぜ、出産後のタイミングでゴソッと毛が抜けるのでしょうか? 原因と対策法について、東京都保健医療公社豊島病院産婦人科部長の大鷹美子先生に伺いました。

なぜ、産後に毛が抜けるの?

髪の毛には、毛穴から毛が生えて伸びる「成長期」、成長が止まって抜ける「退行期」、次の毛が生える準備をするために毛根を休ませる「休止期」という3つの生え変わりサイクルがあります。

女性は妊娠すると、赤ちゃんのベッドになる子宮の発達を促すために、女性ホルモンのひとつ“エストロゲン”が胎盤に大量に分泌されます。エストロゲンには、コラーゲンの生成量を増やし髪の毛の成長期を持続させる働きもあり、妊娠中は退行期が抑制されるのです。

ところが出産と同時に、エストロゲンの量は急激に減少。本来、妊娠中に抜ける予定だった髪の毛が突然休止期に入るため、一気に抜け毛がはじまります。触っただけでも簡単に髪の毛が抜けるようになるのは、妊娠・産後によるホルモンバランスの影響が原因なのです。

そのまま薄毛になっちゃう!?

産後の抜け毛期間は、産後3カ月から9カ月の間。ホルモンバランスが正常に戻れば、抜け毛も徐々に回復します。
自然に治るものなので、気にしないのが一番。子どもが1歳になる頃には新しい毛が生えてきます。

妊娠前から、抜け毛が多いなど問題がない健康な髪の毛であれば、頭皮を清潔にするといった通常のケアをしていれば十分。特別なケアは必要ありません。むしろ、この抜け毛の時期に、余計な刺激を与えるとかえって毛が抜けてしまうことも。ブラッシングの回数も控えて、やさしく頭皮をマッサージする程度にとどめておくとよいでしょう。

男の子を産んだママのほうが、抜け毛の量が多いって本当?

産後の抜け毛の本数について、出産した子どもが男児か女児かの違いによって有意差があるというデータはないと思います。産後の抜け毛に子どもの性差は影響しないはずです。

抜け毛の量を減らすために産前からできることは?

妊娠前に何か特別なことをしたからといって、全く抜け毛がおこらないようにすることはできません。日頃から、頭皮にも栄養が届くように、栄養バランスのよい食事、睡眠をしっかりとるといった一般的な健康管理を心がけましょう。

慣れない赤ちゃんへのお世話でストレスを溜め込みやすい時期ですが、いずれは回復する一過性のものと考え、ゆったりした気持ちで過ごすことが大切ですね。ゴッソリ抜けた毛を見ると精神的なダメージも大きいので、髪の毛を短くカットするのも手かもしれません。
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