当初、「病死」という報道のみでしたが、共演者やスタッフのコメントから「背中の痛み」「異常な汗」「ヘビースモーカー」という気になるキーワードが見受けられ、その後、死因は「大動脈破裂」による胸腔内出血であることが明らかにされました。
「大動脈破裂」ってどんな状態?
動脈硬化により胸部や腹部の大動脈の一部がふくれてこぶのようになったものを大動脈瘤といいます。大動脈破裂は、大動脈瘤が大きくなり破裂した状態のことです。大動脈瘤が破裂すると大量出血するため、致死率はかなり高いようです。
大動脈瘤は、胸部大動脈あるいは腹部大動脈の径が拡大し、こぶ状になってきたものです。多くの大動脈瘤は、徐々に径の拡大が進行するために、初めはほとんど症状がありません。とくに、胸部大動脈は胸のなかにあるため胸部大動脈瘤の自覚症状は乏しく、胸部X線写真で異常な影を指摘されて、初めて気づくことがまれではありません。
大動脈瘤が怖いのは、破裂することがあるためです。大動脈瘤が破裂すると大量に出血するため、破裂した動脈を人工血管に取り替えないかぎり助かりません。破裂した場合の致死率は、かなり高いと考えられます。破裂する前に動脈瘤の部分を人工血管に取り替えて、健康な生活を維持したいものです。破裂のしやすさは、大動脈瘤の径の大きさによります。つまり、直径が大きければ大きいほど、破裂しやすいというわけです。
大動脈瘤の症状や原因・診断と治療方法 ―gooヘルスケア
動脈瘤をつくる「動脈硬化」の原因は?
動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなる粥腫(じゅくしゅ)(アテローム)ができ、次第に肥厚することで動脈の内腔が狭くなります。粥腫が破れると血栓がつくられ、動脈は完全にふさがります。
粥腫のもとになる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は、動物性脂肪に多く含まれています。一方、善玉コレステロール(HDLコレステロール)は、動脈硬化を抑える作用があります。中性脂肪も動脈硬化を促すといわれています。中性脂肪値は、糖分やアルコールの摂取などで上昇します。
動脈硬化を起こしたり、進めたりする原因を“危険因子”と呼びます。脂質異常症(高脂血症)、高血圧、糖尿病、喫煙、高尿酸血症(こうにょうさんけっしょう)、肥満、運動不足、ストレス、遺伝素因などがあげられます。
また、これらの危険因子は相互に関係しており、因子が増えれば雪ダルマ式に動脈硬化の危険性が高まります。治療にも予防にも、これらの危険因子を減らすことが大変重要です。
動脈硬化の症状や原因・診断と治療方法 ―gooヘルスケア
一見心臓とは無関係に見える症状で発症する場合も?
阿藤快さんの死亡前にみられた「背中の痛み」や「異常な汗」といった症状からも動脈瘤の存在を疑うことができます。
心筋梗塞も狭心症も、胸の痛みではなく、左の肩や腕、みぞおちなどが痛んだり、奥歯がうずく、のどが詰まる、吐き気がするなど、一見心臓とは無関係に見える症状で発症することもあり、これらを見逃さないようにすることが大切です。
また、高齢者や糖尿病患者は痛みを感じにくくなっていることもあり、息苦しい程度にしか感じないこともあるので注意が必要です。
若年化する動脈硬化、心筋梗塞を予防する ―gooヘルスケア
突然死を予防するためには?
阿藤快さんのように動脈瘤による「突然死」を予防するにはどうしたらよいのでしょうか?
●食事は肉より魚を多く
若い人は肉料理を好む人が多く、魚料理は少なくなりがちですが、魚介類を多くとる人は心筋梗塞などの虚血性心疾患を起こすリスクが低いことがわかっています。特に青背の魚(いわし、さんま、さば、ぶりなど)に多く含まれる不飽和脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化を予防する働きがあります。
一方、肉類や卵、リノール酸(植物油)などに多く含まれる不飽和脂肪酸アラキドン酸は、とり過ぎると動脈硬化やアレルギー性疾患などを引き起こすといわれます。健康な人の血液中の脂肪酸濃度を比較した研究では、アラキドン酸に対するEPAの割合が若年者ではきわめて低く、若年者の食生活が魚より肉に偏りがちであることが明らかでした。
肉・植物油は控えめに、魚を多めにして、動脈硬化・心筋梗塞を防ぎましょう。
●運動不足を解消、普段の生活でできるだけ体を動かそう
若い人に「運動不足」が増えていることも、動脈硬化・心筋梗塞の若年化の原因と考えられます。運動不足は肥満をもたらし、肥満は動脈硬化の進行を早めます。
ウオーキングなどの有酸素運動を中心に、軽い筋力トレーニングを行いましょう。有酸素運動を続けると中性脂肪が減って善玉コレステロールが増え、心肺機能を高めることもできます。筋トレで筋肉量を維持し、筋肉での消費エネルギーを促すことも大切です。
ウオーキングや筋トレに限らず、家事などでまめに体を使ったり、駅や職場でなるべく階段を使うなど、普段の生活のなかで体をよく動かすようにしましょう。
●家族のためにも禁煙を
たばこはHDLコレステロールを減らしてLDLコレステロールの酸化を促し、血管壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。家族に受動喫煙させないためにも禁煙しましょう。
●ストレスを回避、または解消しよう
過剰なストレスは血管を収縮させて血圧を上げ、LDLコレステロールの酸化を促し、動脈硬化を悪化させます。また、ストレスによって冠動脈がけいれんを起こし、心筋梗塞を起こすことがあります。
若年化する動脈硬化、心筋梗塞を予防する ―gooヘルスケア
食生活の乱れと運動不足、喫煙が関係しているとみられています。突然死を防ぐためにも改めて生活習慣を見直しましょう。