小松菜奈と松田龍平がW主演を務め、ユネスコ世界文化遺産に登録された佐渡島の金山跡地を背景に描く幻想的なラブロマンスが、2024年公開の映画「わたくしどもは。」だ。
「生まれ変わったら今度こそ一緒になろう」と約束を交わし、心中を図った1組の男女。
■神秘的な存在感と"静"の演技で魅せる小松菜奈と松田龍平

(C)2023 テツヤトミナフィルム
小松が演じるミドリは、ミステリアスな雰囲気の漂う女性。記憶のない状態で目を覚まし、流れのままにキイのもとで暮らし始めるのだが、一連のミドリの物静かな声のトーンと瞳には、吸い込まれてしまいそうな魅力がある。そして、そんな静の演技の中にもミドリの感情がしっかりと映し出されている。キイと出会い、清掃員として働くことになった時や、アオと初めて出会った時にはわずかに戸惑いの表情を見せたり、物語が進み、アオに近付く女性が現れた時には、嫉妬や動揺している様子をかすかに垣間見せたりと、ミドリの心情の揺れを表現する小松の繊細な演技が印象的だ。

(C)2023 テツヤトミナフィルム
一方のアオを演じる松田も、小松とはまた違った静の演技で観る者を惹きつける。松田の持ち味でもある"間"を感じるセリフ回しや"余白"のある芝居が、本作の幻想的な世界観にぴったりとハマっていて、役ではなく、本当にそこに住んでいるかのように感じられるほどナチュラルに溶け込んでいる。アオは感情があまりはっきりと表に出るタイプではなく、抑えた演技で表現されている。
そして、そんな小松と松田の"静×静"の演技が、ミドリとアオの間に流れる"2人だけの強い繋がり"のようなものを醸し出している。2人の関係は"燃え上がるような恋"といった類の目に見えて情熱的なものではなく、"叙情的なやり取りの中で静かに積み重なり織りなされるもの"ように感じられる。そんな2人だけの関係性が神秘的で美しい。
監督は、英国ロンドン・フィルム・スクールで映画を学び、短編「終点、お化け煙突まえ。」、長編初監督作「ブルー・ウインド・ブローズ」も国内外で評価された富名哲也。本作も心中を匂わせる描写から始まるが、死者と生者が交わる世界観は富名作品の1つの特徴ともいえる。
記憶も名前もない人たちや、ミドリとアオが再会した世界は、何を表しているのか。神秘的な存在感を放つ小松と松田の演技にも注目しながら、幻想的な世界観に込められたその意味を感じてほしい。
文=HOMINIS編集部
放送情報【スカパー!】
わたくしどもは。
放送日時:2025年7月15日(火)15:10~、8月29日(金)8:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます