【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】

本連載では、国内外問わず通用するマーケティング施策を取り上げ、インバウンド対策にも役立つヒントをお届けします。

ジオグラフィック属性とは、消費者を地理的な特徴で分類する考え方を指します。

マーケティングにおいては、在住地域やその地域特有の気候、文化、人口密度、都市化の進み具合など、地理に関わるさまざまな要素を意味します。

ジオグラフィック属性は、特に地域に根ざしたビジネスを展開したい場合に重要なポイントです。顧客ニーズが多様化する今、飲食店や小売店なども地域ごとの特性に合わせたマーケティングが欠かせなくなっています。

地理的データをうまく活用すれば、ターゲット層に合わせた新商品の開発や、より効果的な広告・販促活動に役立てることができます。

この記事では、ジオグラフィック属性の基本的な概要に加え、他のセグメント(区分)との関連性、さらにデータの活用方法や具体的な事例、データの収集方法についても詳しくご紹介します。

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    目次

  • ジオグラフィック属性とは
  • セグメンテーションとの関連性
    • グメンテーションとは
    • なぜジオグラフィック属性が重要なのか
    • セグメンテーションの主な分類
  • ジオグラフィック属性の活用方法
    • 地理的条件から顧客動向を推測・分析できる
    • 行動履歴の分析で効果的な販促を実現できる
    • ダイレクトマーケティングに活かせる
  • ジオグラフィックデータの活用事例
    • 食品・飲料業界の地域限定商品
    • 外食チェーンの海外展開
    • 教育サービスの地域別アプローチ
    • ジオグラフィックデータを収集する方法
    • 日本政府提供のe-statから集める
    • ウェブAPIからデータを取得する
  • ジオグラフィック属性の活用で統合的なマーケティングが可能

ジオグラフィック属性とは

ジオグラフィック属性とは、消費者を地理的な特徴で分類する考え方を指します。

マーケティングにおいては、顧客がどこに住んでいるのか(在住地域)だけでなく、その地域特有の気候、文化、人口密度、都市化の進み具合、さらには交通網や自然環境など、地理に関わる様々な要素を意味します。

この属性は、「地理学的属性」とも呼ばれます。同じ商品やサービスでも、地域や気候などの条件によって顧客のニーズや購買行動は大きく異なります。

そのため、ジオグラフィック属性をマーケティングに活用することは、地域の特性に応じた商品・サービスを提供し、売れ残りの削減や効果的な販売促進に繋がる不可欠な戦略と言えるでしょう。

特に、地域に根ざしたビジネスを展開する場合、ジオグラフィック属性は極めて重要なポイントです。

顧客ニーズが多様化する現代において、飲食店や小売店なども地域ごとの特性に合わせたマーケティングが欠かせません。地理的データをうまく活用することで、ターゲット層に合わせた新商品の開発や、より効果的な広告・販促活動が可能になります。


セグメンテーションとの関連性

ジオグラフィック属性は、マーケティングの切り口となり、市場を細分化する指標となるセグメンテーションの1つです。

グメンテーションとは

セグメンテーションとは、「区分する」という意味で、複数のデータを、共通する特徴ごとにグループに分けることを指します。

マーケティングにおいては、不特定多数の顧客をいくつかのグループに分類し、それぞれのニーズに応じて細かく市場を分けて考える手法を指します。

この作業は、マーケティング戦略を立てる際に重要なステップであり、自社がどのニーズに焦点を当てていくかを明確にするために行われます。

また、マーケティングの基本プロセスである「STP分析」の一部とされており、マーケティング活動の最初の段階として位置づけられています。

なぜジオグラフィック属性が重要なのか

今日の多様な市場において、ジオグラフィック属性はマーケティング戦略の基盤となります。

単に顧客の居住地を知るだけでなく、その地域の文化や習慣、経済状況、さらには気候まで考慮することで、顧客の潜在的なニーズをより深く理解し、的確なアプローチが可能になるからです。

これにより、企業は無駄なコストを削減し、限られたリソースを最大限に活用して、高い費用対効果を実現できます。

セグメンテーションの主な分類

セグメンテーションには、ジオグラフィック属性のほかに次の3つがあります。

  • デモグラフィック属性…人口統計的属性。顧客の年齢・性別・職業・年収など
  • サイコグラフィック属性…心理的属性。顧客を性格・価値観、ライフスタイルなど
  • ビヘイビアル属性…行動的属性。購入頻度、購入時間や経路など顧客の消費行動
  • ジオグラフィック属性は、セグメンテーションの中でも顧客をマクロ的に分類するデータといえます。

    他の属性と掛け合わせて活用することで、より市場が細分化できます。そのため、ターゲット顧客への効果的なサービス開発や販売アプローチが可能になります。

    関連記事:デモグラフィックとは?マーケティングに不可欠な顧客理解の第一歩を徹底解説

    ジオグラフィック属性の活用方法

    ジオグラフィックデータはターゲット層の設定に有益であり、データを分析することでマーケティング戦略に活かせます。

    地理的条件から顧客動向を推測・分析できる

    ジオグラフィックデータを活用すると、「誰が、どこで購入したのか」「どのような行動をとったのか」といった情報を把握できます。

    また、商品やサービスの流通状況や購入実績を詳しく分析できるため、販売促進施策が効果的かどうかを判断する材料にもなります。

    このようなデータをもとに、自社商品の導入タイミングや、販売後の顧客の動きを予測することが可能になります。

    行動履歴の分析で効果的な販促を実現できる

    地理的な特性に基づいてターゲット層の行動パターンが把握できれば、商品やサービスを展開するエリアを絞り込み、いつ・どこで・どのように販売するかを具体的に検討しやすくなります。

    たとえば、「A地域では〇〇商品の購入頻度が高い」「B地域では雨の日に〇〇がよく売れる」といったデータを集めることで、マーケティング施策を見直したり、より効果的なアプローチに強化したりすることが可能になります。

    さらに、人口密度や年齢、職業などの属性ごとに市場を細かくセグメントすることで、それぞれの地域や世代に合った商品ラインナップを整えることができ、無駄な在庫を防ぎながら、効率よく販売を促進できるでしょう。

    ダイレクトマーケティングに活かせる

    ジオグラフィックデータは、サイコグラフィックデータと掛け合わせることでダイレクトマーケティングに活かせます。

    たとえば、家賃の高い都心のオフィス街に住んでいるビジネスマンは、お金をかけてでも出勤に便利な近場の家に住みたい人という心理面も浮かんできます。多少お金をかけてでも、面倒なことは避けたいと思っている人には、ネットで完結して便利なサービス(例:ウーバーイーツや代行サービス)が刺さりやすいでしょう。

    このように、サービスを使いそうなターゲットがどこにいるのか狙いを定めて販促することで、効率良い効果が期待できます。

    ジオグラフィックデータの活用事例

    ジオグラフィックデータを活用したマーケティングは、顧客獲得と効率的な収益化に繋がります。

    ここでは、具体的な業種や業界の活用事例を3つ紹介します。


    食品・飲料業界の地域限定商品

    地域ごとの味の好みや食文化の違いに着目し、商品を展開する事例です。

    例えば、特定の地域では薄味を好む傾向があるため、その地域向けには薄味のつゆを、別の地域では濃い味を好むため、そちら向けには濃い味のつゆを提供するといった戦略です。

    また、地域のお祭りや特産品と連携した限定商品を開発することもあります。これにより、各地域の顧客ニーズにきめ細かく対応し、売上向上に繋げられます。

    外食チェーンの海外展開

    グローバルに展開する外食チェーンでは、進出先の国や地域によってメニューや味付けを大幅にアレンジすることがあります。

    例えば、アジア諸国では辛味を強くしたスープを提供したり、欧米では現地の食文化に合わせたチキンカレーうどんやとんこつうどんといった独自のメニューを開発したりします。

    さらに、同じ国の中でも、地域特性(例:健康志向の高い地域、伝統的な味を好む地域など)を考慮し、それぞれに合わせた商品ラインナップを整えることで、現地顧客からの支持を得ています。

    教育サービスの地域別アプローチ

    都市部に予備校が集中している状況を踏まえ、遠隔地や地方の学生をターゲットにしたオンライン教育サービスがこれに当たります。

    地理的な制約から質の高い教育機会にアクセスしにくい学生に対し、オンラインで予備校レベルの指導を提供します。広告戦略も、バス停や最寄りの駅など、ターゲットとなる学生が目にしやすい場所に設置するなど、地域性を考慮したアプローチを行います。

    また、現役大学生による個別コーチングを提供することで、都市部の予備校に通えない地方学生の学習意欲や成績向上を支援します。

    ジオグラフィックデータを収集する方法

    本章では、ジオグラフィックデータの収集方法として公的統計データと民間データの2つを紹介します。

    日本政府提供のe-statから集める

    e-statは公的な統計情報のデータカタログです。国勢調査、産業動向調査、家計調査などの統計データを無償で活用できます。

    年齢・性別・家族構成などのデモグラフィックデータのみならず「どれぐらいの人がどのように働いているか」「どの世帯がどのような家計で生活しているか」「商業の状況はどうか」などの情報を収集できます。

    「地域分析レポート作成機能」では、統計資料を活用する人のニーズに合わせた地域分析が可能です。

    地図上で店舗の周辺を円で囲み、そこをクリックすると商圏内の基本的な統計データを作成できます。

    ウェブAPIからデータを取得する

    APIは「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」の略で、人間を介さずにコンピューター同士にデータをやり取りさせるシステムです。

    例えば、楽天のウェブAPIを自社BI(ビジネスインテリジェンス)ツールと連携させて、楽天の商品ランキングデータを自動で収集・分析することが可能です。

    APIは無償版と有償版が公開されています。無償版は機能が絞られているため、企業や店舗のマーケティング戦略に合わせて機能の拡充を図るのも一案です。

    ジオグラフィック属性の活用で統合的なマーケティングが可能

    ジオグラフィックデータは、飲食店舗や小売店など地域に根差した事業展開をする場合に欠かせない要素です。

    地理的データの重要性とほかのセグメントとの関連性を認識しつつ、最適なデータを収集しましょう。ターゲットの設定が明確になれば、統合的なマーケティング活動につながります。

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