観光庁は5月27日、令和7年(2025年)版の観光白書を公表しました。

訪日ラボでは全5回にわたり、インバウンド担当者が読んでおきたい箇所をピックアップして解説します。

第3回目の今回は、政府が2024年度に行った施策について見ていきます。

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▼この連載の記事
  • 最新の世界の観光動向は?【令和7年版観光白書 徹底解説(1)】
  • 最新の日本の観光動向は?【令和7年版観光白書 徹底解説(2)】
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    【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】

    会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。

    ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。

    2024年度に政府が行ったインバウンド施策【令和7年版観光白...の画像はこちら >>

      目次

    • 「消費額拡大」や「地方誘客」がインバウンド施策の重点テーマ
    • 2024年(令和6年)度に政府が行ったインバウンド関連施策
    • 旅行者の安全確保
      • 防災情報の提供
      • 訪日外国人旅行者の災害被害軽減
    • インバウンドの回復に向けた集中的取組
    • 消費拡大に効果の高いコンテンツの整備
      • アドベンチャーツーリズムの推進
      • アート・文化芸術コンテンツの整備
      • 地域の食材を活用したコンテンツの整備
    • 地方誘客に効果の高いコンテンツの整備
      • 国立公園の魅力向上とブランド化
      • 国際競争力の高いスノーリゾートの形成
      • 歴史的資源を活用した観光まちづくりの推進
      • 文化観光の推進
      • スポーツツーリズムの推進
    • 訪日旅行での高付加価値旅行者の誘致促進
    • 戦略的な訪日プロモーションの実施
      • 我が国の観光の魅力の戦略的な発信
      • 大規模イベントを活用した情報発信
      • クールジャパンの海外展開
      • 日本文化に関する情報の総合発信
      • 日本食・日本食材の海外への情報発信

    「消費額拡大」や「地方誘客」がインバウンド施策の重点テーマ

    政府は、観光立国推進基本計画に掲げる3つの戦略に基づき、施策を推進しています。

  • 持続可能な観光地域づくり
  • 地方を中心としたインバウンド誘客
  • 国内交流拡大
  • このうち「地方を中心としたインバウンド誘客」では、消費額拡大や地方誘客促進を重視し、コンテンツの整備や高付加価値旅行者の誘致、MICEの推進、アウトバウンドの促進などが重点テーマとして挙げられています。

    2024年度に政府が行ったインバウンド施策【令和7年版観光白書 徹底解説(3)】
    ▲令和6年度に講じた施策・令和7年度に講じようとする施策:令和7年版観光白書より
    ▲令和6年度に講じた施策・令和7年度に講じようとする施策:令和7年版観光白書より

    2024年(令和6年)度に政府が行ったインバウンド関連施策

    ここからは、2024年度に政府が行ったインバウンドに関連する施策を紹介します。

    旅行者の安全確保

    防災情報の提供

    大規模地震などの自然災害が発生した場合や、そのおそれがある際に、緊急地震速報、大雨・噴火・津波・洪水などの警報、熱中症情報などを多言語で提供するアプリ「Safety tips」およびWebサイト・SNSを通じて、訪日外国人旅行者向けに多言語での情報発信を行いました。

    さらに、24時間365日体制で多言語対応が可能なJNTOコールセンターにおいて、各種問い合わせへの対応を実施しました。

    関連記事:南海トラフ地震に警戒感強まる…今こそ考えたい、災害時のインバウンド対応

    訪日外国人旅行者の災害被害軽減

    行政機関・インフラ事業者が提供している防災情報が一元的に入手できる「防災ポータル/DisasterPreventionPortal」について、引き続き新たな防災情報を追加しました。

    新幹線における非常時の訪日外国人向けの情報提供については、駅内の掲示や構内放送、車内放送、Webサイトなどで、多言語(英語・中国語・韓国語)で実施しました。

    空港についても、関係者やアクセス事業者と連携し、多言語やSNSなどによる情報提供を含む、災害時の対応を行いました。また、全国の95空港において、各種訓練を2024年8月までに実施。訓練や点検の実施状況を確認し、関係機関で共有しました。

    インバウンドの回復に向けた集中的取組

    観光庁は、インバウンド消費の拡大と質の向上を図るため、「特別な体験の提供等によるインバウンド消費の拡大・質向上推進事業」を通じて、地方公共団体や民間企業による特別な観光コンテンツ造成を支援し、令和6年度には計357件を採択しました。

    また、米国をはじめとする3つの海外市場において訪日観光促進イベントを開催し、日本各地の魅力の情報発信を強化しました。

    さらに、「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」(令和5年5月閣議決定)に基づき、経済産業省、文部科学省などの関係省庁と連携しながら、ビジネス、教育・研究、文化芸術・スポーツなど多分野において、インバウンドの拡大に向けた取り組みを実行しています。

    関連記事:政府「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」決定

    消費拡大に効果の高いコンテンツの整備

    アドベンチャーツーリズムの推進

    アドベンチャーツーリズム推進のため、魅力あるコンテンツの磨き上げやガイドの確保・育成を支援しました。さらに、Adventure Travel Trade Association(ATTA)と連携し、日本全国のアドベンチャートラベルの魅力発信や販路拡大に取り組みました。

    また、国内関係者との連携強化により、受け入れ・販売体制の充実と新たなコンテンツ発掘を促進しています。

    関連記事:アドベンチャーツーリズムとは?概要から成功事例まで徹底解説

    アート・文化芸術コンテンツの整備

    大阪・関西万博に向けて、「日本博2.0」のもと全国各地で文化資源を活用した観光コンテンツの創出や発信を推進し、日本文化の魅力を国内外に発信しました。

    また、日本の文化芸術の国際的な発信拠点となることを目指し、「アートウィーク東京」を継続開催し、アートバーゼル(世界最大級のアートフェア)と連携。高付加価値旅行者の誘客拡大にも取り組みました。

    関連記事:マレーシアの人気ドラマ、舞台は「佐賀」 ロケ誘致で地域を盛り上げるフィルムコミッションの挑戦

    地域の食材を活用したコンテンツの整備

    地域の食文化の魅力発信を強化するため、特色ある食文化の継承・振興に取り組む地方公共団体について、文化財登録に向けた調査研究や、「食文化ストーリー」の発信などを行う9件のモデル事業を採択。

    また、ガストロノミーツーリズムによるインバウンドの地方誘客を目的に、食の専門家による伴走支援を6地域で実施しました。

    また、2024年12月にユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」について、国内外でシンポジウムを開催するなど、魅力発信・認知度向上を目的とした機運醸成に取り組みました。

    関連記事:ガストロノミーツーリズムとは?魅力と効果、事例を紹介

    地方誘客に効果の高いコンテンツの整備

    国立公園の魅力向上とブランド化

    「国立公園満喫プロジェクト」のもと、民間事業者などと連携し、国内外の利用者誘致と自然保護の両立を図る取り組みを推進しました。

    また、訪日外国人の満足度を向上させるため、環境省において、観光庁と連携し、国立公園・国定公園・国民公園・世界自然遺産および長距離自然歩道を対象に、多言語解説を整備しました。

    関連記事:環境省、国立公園における自然体験アクティビティのガイドライン公開

    国際競争力の高いスノーリゾートの形成

    「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」を通じて、全国17地域において、DMOなど地域関係者が策定した形成計画に基づき、スキー場のインフラ整備やアフタースキー・グリーンシーズンの観光コンテンツの開発・受入環境整備などの取り組みを支援しました。

    JNTOは、日本のパウダースノーに関心の高い米国・オーストラリアおよび、スキー人口が急増している中国において、プロモーションを実施しました。

    関連記事:中国で「氷雪経済」が発展 日本のスノーコンテンツの現在地と今後の可能性は?

    歴史的資源を活用した観光まちづくりの推進

    歴史的資源を活用した観光まちづくりを推進するため、地域の計画策定や体制構築を支援し、高付加価値化を進めました。

    さらに、官民連携推進チームが支援メニューや成功事例集を更新し、ワンストップ窓口で地域からの相談や要望に対応。新規相談地域の発掘や、既存地域の継続支援も実施しました。

    文化観光の推進

    博物館・美術館など文化施設の充実に向け、文化資源の磨き上げや多言語対応、Wi-Fi・キャッシュレス導入、国内外への宣伝などを支援。観光資源としても有効な文化財については、デジタル技術を活用した多言語解説を整備し、訪日外国人の満足度向上を図りました。

    また国立博物館では、オンラインチケット販売の拡充や多言語対応などの環境整備を進めるとともに、他施設への成果共有に取り組みました。

    スポーツツーリズムの推進

    スポーツによる地域づくりの担い手となる「地域スポーツコミッション」の経営安定や人材の育成・確保に向け、新たな事業展開などを支援するとともに、研修やマッチングの実証を行いました。

    さらに、高付加価値コンテンツ創出に向け、スポーツツーリズムのモデル事業を展開、効果検証を行いました。また、武道を中心としたスポーツツーリズムの認知拡大を通じて、訪日意欲の喚起や地方誘客促進に取り組みました。

    関連記事:スポーツツーリズムとは?地域活性化への効果も紹介

    訪日旅行での高付加価値旅行者の誘致促進

    観光による地方創生や訪日外国人の消費拡大を図るため、観光庁は消費単価の高い高付加価値旅行者の誘致を推進しています。

    2024年9月には3地域を追加選定し、全国で14のモデル観光地を設定。各地域のマスタープランに基づき、魅力的な観光コンテンツの創出や、宿泊施設・移動手段の検証、ガイド体制の整備など、受入環境の強化に取り組みました。

    また、JNTOと連携し、海外でのセールス活動や情報発信を強化することで、訪日意欲の喚起と地方誘客を促進しました。

    関連記事:高付加価値旅行とは?今こそ知りたい「インバウンド売上UP」戦略、徹底解説

    戦略的な訪日プロモーションの実施

    我が国の観光の魅力の戦略的な発信

    JNTOは、訪日マーケティング戦略に基づき、各市場のターゲットに向けた多言語のSNS発信などを展開しました。トルコやブラジルなどJNTO事務所がない国では、在外公館などの現地関係機関と連携してプロモーションを実施しました。

    また、欧米豪を中心とする「日本を旅行先と認識していない」層に向けては、オンライン広告を配信し、日本の認知度向上を図りました。北欧地域では、ストックホルム事務所を2024年3月に新規開設し、現地旅行会社とのネットワーク構築や新規パートナー開拓、情報発信に取り組みました。

    大規模イベントを活用した情報発信

    大阪・関西万博を契機とした全国各地への誘客促進を目的に、観光コンテンツの充実や地方周遊型モデルコースの造成を支援しました。

    万博協会においては、JNTOと連携した海外旅行博や商談会を実施。観光ポータルサイト「Expo 2025 Official ExperientialTravel Guides」には、約440件の観光商品を掲載し、多言語による情報発信を強化しました。

    関連記事:「万博が終わっても選ばれる地域に」日本の魅力を世界へ届ける、主催協会の取り組みとその狙いとは

    クールジャパンの海外展開

    JETROでは、異業種連携による地域資源を活用した地域産品の輸出およびインバウンド促進支援の一環として、地域産品の海外展開を通じた産地の魅力発信を行いました。

    また、地域産品の海外における認知度向上を図るため、海外バイヤーなどを招へいし、現地でその魅力に直接触れてもらう機会を設けました。

    関連記事:クールジャパン戦略とは?これまでの取り組みや、コロナ禍による変化を読み解く

    日本文化に関する情報の総合発信

    スポーツ庁・文化庁・観光庁は、スポーツや文化芸術といった地域の魅力を観光と結びつけて発信することにより、訪日外国人の増加や国内観光の活性化を図るため、「スポーツ文化ツーリズム」を推進しています。

    その具体的な取り組みの一環として、優れた事例を評価・普及することを目的に、「スポーツ文化ツーリズムアワード」を実施しました。

    関連記事:スポーツや文化の力で、日本の魅力を国内外へ 「第8回スポーツ⽂化ツーリズムシンポジウム」を取材

    日本食・日本食材の海外への情報発信

    訪日旅行経験者を対象に、日本食・食文化への関心の向上および、帰国後の日本産食品の消費拡大を目的としたプロモーションを実施しました。

    また、訪日外国人が帰国後も引き続き日本産食品を購入できるよう、海外において日本産食材を積極的に使用する飲食店や小売店を「日本産食材サポーター店」として認定する取り組みを推進しました。

    関連記事:インバウンド消費含む日本酒の輸出市場は1,000億円規模へ:2024年度日本酒輸出総額記者発表会

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    ▼この連載の記事
  • 最新の世界の観光動向は?【令和7年版観光白書 徹底解説(1)】
  • 最新の日本の観光動向は?【令和7年版観光白書 徹底解説(2)】
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    <参照>
    観光庁:「令和6年度観光の状況」及び「令和6年度観光施策」(観光白書)について

    【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

    2024年度に政府が行ったインバウンド施策【令和7年版観光白書 徹底解説(3)】

    インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

    本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。



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    【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

    2024年度に政府が行ったインバウンド施策【令和7年版観光白書 徹底解説(3)】

    2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

    「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

    初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

    参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

    <こんな方におすすめ>

    • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
    • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
    • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
    • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
    • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
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    【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか

    2024年度に政府が行ったインバウンド施策【令和7年版観光白書 徹底解説(3)】

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