【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】
本連載では、国内外問わず通用するマーケティング施策を取り上げ、インバウンド対策にも役立つヒントをお届けします。
ユーザーインサイトとは、顧客自身も意識していない、来店や購買における「隠れた本音」を指します。
表面的なニーズは競合他社も容易に把握できますが、ユーザーインサイトは、ユーザー自身すら言語化できない深層心理に根ざすため、発見が非常に困難であり、それゆえに大きな差別化要因となるからです。
この記事では、ユーザーインサイトの基本的な概要から、その重要性、具体的なメリット、そして実践的な分析方法や手順、活用できるツールまで、詳細に解説します。
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- ユーザーインサイトとは
- なぜ、ユーザーは自身の本音を説明できないのか?
- ユーザーインサイトを得るメリット
- 1. 改善点が分かり、顧客のニーズを満たせる
- 2. 他社と差別化できる
- 3. 顧客ロイヤリティの向上とLTV(顧客生涯価値)の最大化
- ユーザーインサイトを得るには
- 1. ユーザーのデータを統合する
- 2. カスタマージャーニー全体のデータを分析する
- 3. サービスに反映し、ユーザーに提供する
- ユーザーインサイトを明らかにするための分析方法
- 1. アンケート・インタビュー
- 2. Q&AサイトやSNSの活用
- 3. 口コミ
- 4. アクセス解析ツールの活用
- 5. ヒートマップによる視覚的分析
- 6. ユーザビリティテストの実施
- ユーザーインサイトを的確に捉えるためのポイント
- 1. 明確な仮説を立ててからデータを収集する
- 2. 定量データと定性データを組み合わせて分析する
- 3. 適切なツールと専門知識を活用する
- さまざまな方法でユーザーインサイトを把握する
目次
ユーザーインサイトとは
ユーザーインサイトとは「ユーザーの隠れた本音」であり、顧客自身も意識的ではない、または言語化できない欲求や動機を指します。
顧客が店舗を訪れる、特定の商品を購入する、サービスを利用するといった行動の背景には、必ず何らかの理由や欲求が存在します。その中でも、顧客自身が認識できていない、深層心理に根ざしたものが「ユーザーインサイト」と呼ばれます。
なぜ、ユーザーは自身の本音を説明できないのか?
私たちは日常生活の中で、意識的な判断だけでなく、無意識的な感情や習慣、過去の経験に基づいて多くの行動をしています。たとえば、特定の商品を「なんとなく」選んでしまう、特定のウェブサイトを「無意識のうちに」閲覧してしまう、といったケースが挙げられます。
ユーザーインサイトは、まさにこの「なんとなく」や「無意識のうちに」の奥にある真の動機を指します。深層心理に基づいた意思決定は、行動のきっかけを自身で明確に説明することが困難なため、アンケートやインタビューで直接尋ねても、本音を捉えきれないことがほとんどです。
そのため、このユーザー自身も気づいていない部分を事業者側が汲み取ることは非常に困難であり、多角的なデータ分析と専門的な視点が求められるのです。
ユーザーインサイトを得るメリット
ユーザーインサイトは、サービス改善や顧客ニーズの把握をはじめ、さまざまな施策に活用できます。マーケティング施策の策定や取り組みにおいて、多くのメリットをもったデータといえるでしょう。
以下では、ユーザーインサイトを得るメリットを紹介します。
1. 改善点が分かり、顧客のニーズを満たせる
ユーザーインサイトは、顧客の潜在的な不満や希望を明らかにします。商品やサービスを改善するうえで、顧客の不満やニーズに関するデータは必須です。
また、顧客のニーズに応える商品やサービスを生み出せれば、自然と売上にもつながります。表面的なニーズだけでなく潜在的なニーズを把握するには、ユーザーインサイトを得る方法が効果的です。
2. 他社と差別化できる
顕在的なニーズに焦点をあてて商品やサービスを考えると、競合他社と差別化を図るのが難しくなります。顕在的なニーズは、多くの企業が注目するためです。
一方、潜在的なニーズはユーザーすらも気付いておらず、本格的にマーケティングに取り組んでいる企業のみしか注目できません。そのため、競合他社が注力していない分野でユーザーのニーズにアプローチできることがあります。独自のアプローチにより、競合他社との差別化を図りやすくなるでしょう。
3. 顧客ロイヤリティの向上とLTV(顧客生涯価値)の最大化
ユーザーインサイトに基づいた商品やサービスの改善は、顧客の期待を大きく上回る体験を提供します。
顧客は「自分のことを深く理解してくれている」と感じ、企業への信頼感や愛着(ロイヤリティ)が向上します。これにより、単なる一度の購買で終わらず、継続的な利用やリピート購買につながり、結果として顧客生涯価値(LTV)の最大化に貢献します。
LTVの向上は、企業の長期的な収益安定と成長の重要な鍵となります。
関連記事:LTVとは?顧客からの利益を予測して効果的なマーケティングを。計算方法や利益向上のための施策を解説
ユーザーインサイトを得るには
ユーザーインサイトを得るうえでは、適切な方法と手順があります。ユーザーのデータに対して適切にアプローチすることで、潜在的なニーズを抽出できるでしょう。
以下では、ユーザーインサイトを得る方法と手順を紹介します。
1. ユーザーのデータを統合する
まずは、ユーザー行動の全体像をとらえる必要があります。集客、訴求、購入のように、フェーズが分かれているデータや他部署が保持しているユーザーデータを統合して1つにまとめます。はじめは小規模のデータ収集から段階的に始めていくとよいでしょう。
また、外部データを活用するのも一つの手です。社内のデータだけだと調査対象が偏ったり、サンプル数が少なかったりするため、より質の高いユーザーインサイトを得るための方法を模索することが大切です。
2. カスタマージャーニー全体のデータを分析する
ユーザーデータを統合できたら、カスタマージャーニー全体のデータを分析します。カスタマージャーニーとは、顧客が商品を認知してから購入までの一連の動きを示したものです。
カスタマージャーニーの中で、成果に貢献しているメディアや顧客とのタッチポイント、またそれらで関わる顧客の特徴や、どのようなクリエイティブによるアプローチが効果的なのかが何かを明らかにします。これを的確に把握すると、顧客視点で自社の商品やサービスを見直すことができます。
関連記事:カスタマージャーニーとは?概要や作り方、メリットを紹介
3. サービスに反映し、ユーザーに提供する
マーケティングは、データからユーザーインサイトを得て終わりではありません。ユーザーインサイトをもとに、商品やサービスの改善を図ることが肝要です。改善の際には、顧客ニーズを的確にくみとって、商品やサービスに反映させる必要があります。
ユーザーインサイトの分析をサービスに反映した後、その反応も見てPDCAを回します。
ユーザーインサイトを明らかにするための分析方法
ユーザーインサイトを明らかにするには、顧客の声を集め、それを分析します。ここでは、ユーザーインサイトを得るための手法を紹介します。
1. アンケート・インタビュー
アンケートやインタビューは、顧客の意見をダイレクトに得られる、ユーザーインサイトを知るための代表的な手法です。
Webアンケートは手軽に実施できる反面、質問の量や内容が限られることがあります。一方、対面でのインタビューは時間や工数がかかるものの、顧客の表情や声のトーン、沈黙といった非言語情報からも多くのインサイトを得られる利点があります。
この手法では、直接的な意見だけでなく、回答の背景にある感情や、言葉の選び方、具体的なエピソードから、深層心理や潜在ニーズを推測する手がかりを得られます。
質問の仕方を工夫し、オープンエンドな質問を増やすことで、ユーザー自身も気づいていない本音を引き出しやすくなります。
2. Q&AサイトやSNSの活用
Yahoo!知恵袋のようなQ&Aサイト、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを活用するのも一つの手です。
Q&Aサイトは、顧客が抱える具体的な悩みを理解する上で非常に役立ちます。商品やサービスに関連するキーワードで検索することで、ユーザーが「何に困っているのか」「何を求めているのか」といったダイレクトな悩みを調べられます。
一方、SNSは特定のメーカーや商品に対する感想や評価を知るのに最適です。企業が主導するアンケートやインタビューでは正直に意見を伝えづらいユーザーもいますが、SNSでは匿名性があるため、より率直な感想や本音が飛び交っています。
これらのプラットフォームから、表に出にくい不満や、具体的な課題、他社製品との比較検討における本音など、リアルな声から潜在ニーズの兆候を捉えることができます。
3. 口コミ
口コミを集めることもユーザーインサイトを知ることに役立ちます。
口コミは、実際にサービスや商品を利用した顧客の生の声として、Googleマップやグルメサイトなどの口コミサイトに投稿されます。Googleビジネスプロフィールを利用すれば、オーナー登録することで無料で自店の口コミを管理・分析できます。
これらの口コミに書かれている内容を分析することは、ユーザーインサイトを探る上で非常に有効です。
特に、良い評価の裏にある「なぜ満足したのか」という具体的な理由や、悪い評価から読み取れる「何が期待外れだったのか」「どのような改善を求めているのか」といった、顧客の期待値と現状のギャップを把握できます。
関連記事:Googleビジネスプロフィールとは?インバウンド客を集客する方法やメリット、注意点など
4. アクセス解析ツールの活用
Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを使用することで、ユーザーのサイト内での行動を数値化し、可視化できます。これにより、ページビュー数、滞在時間、直帰率、コンバージョン率などの指標を把握し、ユーザーの興味や関心を分析できます。
アクセス解析ツールからは、ユーザーがサイトのどのコンテンツに興味を持ち、どこで離脱しているのか、どの経路でコンバージョンに至ったのかといった行動の「事実」が定量的に把握できます。
ただし、これらのツールだけではユーザーの行動の背景や動機を完全に理解することは難しいため、他の定性的な手法と組み合わせて使用することが推奨されます。
5. ヒートマップによる視覚的分析
ヒートマップは、ユーザーがウェブページ上でどの部分を注視し、どこをクリックしているかを視覚的に示すツールです。色の濃淡でユーザーの関心の度合いを表現するため、直感的にユーザーの行動を把握できます。
ヒートマップを活用することで、ユーザーがページのどのコンテンツに最も興味を持っているか、どの部分が読まれていないか、どこでクリックされているか、あるいは期待に反してクリックされていないかといった、ユーザーの「視線の動き」や「無意識の行動」からインサイトを得られます。
ページのレイアウトやコンテンツ配置の最適化に役立ち、ユーザーの使いやすさを向上させるための具体的なヒントが得られます。
6. ユーザビリティテストの実施
ユーザビリティテストは、ユーザーが実際に製品やサービスを使用する際の体験を観察し、問題点や改善点を特定する方法です。
このテストを通じて、ユーザーがどのように製品を使っているか、どの操作でつまずいているのかなど、具体的な利用シーンや課題を明らかにすることができます。さらに、その行動の背景や理由についても、観察を通して詳細に分析することが可能です。
こうしたテストから得られる情報は、製品の使いやすさを高めたり、ユーザー満足度を向上させたりするための貴重なヒントとなります。
特に、ユーザーが実際に製品やサービスを利用する中で無意識に行っている行動や、言語化できない「使いにくさ」や「迷い」、そしてその行動の裏にある深層心理や潜在ニーズを読み解くことができます。
ただし、ユーザー自身がなぜそのように行動したのかを明確に説明できないケースもあるため、行動観察と併せてインタビューの経験や質問技術といった専門的なスキルが求められます。
ユーザーインサイトを的確に捉えるためのポイント
さいごに、ユーザーインサイトを効果的に行うためのポイントを3つ紹介します。
1. 明確な仮説を立ててからデータを収集する
ユーザーインサイトの解析を始める前に、具体的な仮説を設定することが重要です。仮説を立てることで、データ収集の方向性が明確になり、無駄な分析を避けることができます。
たとえば、「若年層のユーザーはスマートフォンからのアクセスが多いのではないか」という仮説を立てた場合、その仮説を検証するためのデータを収集・分析することができます。
このように、仮説に基づいてデータを収集することで、効率的な解析が可能になります。
2. 定量データと定性データを組み合わせて分析する
ユーザーインサイトを深く理解するためには、数値で表される定量データと、ユーザーの声や行動の背景を捉える定性データの両方を活用することが効果的です。
たとえば、アクセス解析ツールで得られるページビューや滞在時間などの定量データに加えて、ユーザーインタビューやアンケートで得られる意見や感想などの定性データを組み合わせることで、ユーザーの行動の理由や感情をより深く理解することができます。
3. 適切なツールと専門知識を活用する
ユーザーインサイトの解析には、適切なツールと専門的な知識が必要です。前章で紹介したような、アクセス解析ツールやヒートマップツールを使用することで、ユーザーの行動を分析できます。
また、テキストマイニングツールを活用すれば、ユーザーのコメントやレビューから共通のキーワードや感情を抽出することが可能です。
データ分析の専門知識を持つ人材をチームに加えることで、解析の精度と効率を高めることができるでしょう。
さまざまな方法でユーザーインサイトを把握する
ユーザーインサイトは、顧客自身も気づいていない潜在的な本音です。表面的なデータだけでは捉えきれない、この隠れた本音を解き明かすことが、今日の競争市場で優位に立つ鍵となります。
本記事で紹介したアンケートやSNS分析、アクセス解析、ヒートマップ、ユーザビリティテストなど、多様な手法を組み合わせることが不可欠です。
ユーザーインサイトを的確に捉え、商品やサービスの改善に活かせれば、顧客は「自分のことを理解してくれている」と感じ、企業への信頼と愛着が高まります。
これにより、単なる売上向上に留まらず、企業の持続的な成長を支える強固な顧客関係を築けるでしょう。
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