既視と未視のあわいを描き出すアーティスト・上田暁子氏の個展「Fishing as a Mole Does – Until Stone Becomes Water –『もぐらのように釣りをする – 石が水になるまで –』」が、開催される。即興性と重層性をもつ彼女の作品は、目に見えない時間や記憶の痕跡を浮かび上がらせる。

視覚だけに頼らず、感じることの価値を再認識する同展は、日々の感覚に磨きをかけたい大人に響くだろう。

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上田暁子《もぐらのように釣りをする》2025

静と動が交差する上田暁子の世界

7月26日(土)から9月13日(土)まで、品川・天王洲にあるギャラリー「KOTARO NUKAGA」にて、上田暁子氏の個展が開催される。

2009年のシェル美術賞展で受賞、以降もVOCA展や海外留学などで高い評価を得てきた彼女は、現在ベルギーや上海でも個展を開催するなど、国際的に活動する注目のアーティストだ。

東京 天王洲|知っている・知らないを行き来する絵画。アーティスト・上田暁子の個展開催
Akiko Ueda

Akiko Ueda

本展で上田氏は、滞在先のベルギーで制作された近年の代表作を中心に構成し、視覚だけに頼らず感覚の深層を掘り進めるような絵画表現を展開する。従来の「見えるものを描く」アプローチではなく、絵画を変容する現象そのものと捉える姿勢が特徴的だ。

タイトルの“もぐらのように釣りをする”とは、視覚ではなく直感や感触を頼りに制作を進める上田の手法を象徴する言葉である。「石が水になるまで」という副題は、時間や物質の概念を拡張する彼女の哲学的探求心を感じさせる。

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上田暁子《もぐらのように釣りをする》2025

上田暁子《もぐらのように釣りをする》2025

即興性の美学。「EN ROUTE」が描く共鳴と痕跡

オープニングでは、上田氏とパーカッショニスト山㟁直人氏によるパフォーマンス「EN ROUTE」が披露される。2013年にパリで始まったこの即興的なセッションは、音楽と絵画がリアルタイムで交わる場であり、上田氏の制作理念を象徴する活動のひとつだ。

観客を迎え入れながら一枚のキャンバスに幾層にも加筆を重ねるこのパフォーマンスは、毎回異なるゲストを迎えて開催され、今回で11回目を迎える。

静止画でありながら流動するような印象を与える彼女の作品は、過去と現在、個と他者が交錯する記憶の層を体現するようだ。音と絵が一体となるこの試みは、五感を研ぎ澄ませたい観客にとって、極めて知的で刺激的な体験となるだろう。

都会の喧騒を離れて、感性を解き放つひととき

本展が開催されるKOTARO NUKAGAは、天王洲アイルのTERRADA Art Complex内にあり、現代アートを落ち着いた空間で堪能できるロケーションとして知られている。ギャラリー内では照明を抑えた演出が施され、作品がまるで浮かび上がるような静謐な雰囲気が広がる。

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視覚を超えた感覚を刺激し、今ここにある「時間の層」に没入するようなひととき。喧騒を忘れ、己の内面に向き合う機会として、この展覧会は特別な意味を持つだろう。

会期:7月26日(土)~9月13日(土)
開廊時間:11:30~18:00(火~土)
休廊日:日月祝 ※8月10日(日)~8月18日(月)夏季休廊
オープニングイベント:7月26日(土)17:00~17:30
会場: KOTARO NUKAGA
所在地:東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA Art Complex II 1F
公式サイト:https://kotaronukaga.com/exhibition/fishing-as-a-mole-does-until-stone-becomes-water/

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000061.000071871.html

(Fumiya Maki)

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