東京での活動を経て晩年を千葉で過ごした洋画家・髙島野十郎。その没後50年を記念し、過去最大規模となる回顧展が千葉県立美術館で開催される。
初公開を含む約150点の作品と資料を通じ、静謐な光景から仏教思想に根差した創作の原点、そして人間としての素顔までを掘り下げる、稀有な機会だ。卓越した美術を体感してみてはいかがだろうか。
圧巻のスケール、初公開作を含む150点
7月18日(金)から9月28日(日)までの会期で開催される本展は、髙島野十郎展として過去最大規模を誇る。展示されるのは代表作である『蝋燭』や『月』、さらに青年期や滞欧期の風景画や人物画など、従来は大きく紹介されてこなかった作品群だ。
とくに初公開となる作品は、画家の創作過程や心境の変化を感じさせる貴重な資料となる。また、青木繁や坂本繁二郎ら、時代と空気を共有した画家たちの作品もあわせて展示され、野十郎が生きた美術界の流れを俯瞰できる構成となっている。

《からすうり》昭和10(1935)年、福岡県立美術館蔵
日記や書簡、メモといった一次資料も、野十郎の人柄や交流の広がりを浮かび上がらせる。その人間的な魅力を知ることで、作品に込められた感情の温度や、画面に漂う静けさの奥にある息づかいを感じ取ることができるだろう。
仏教的思想と写実への探求
野十郎の作品には、仏教的な思想が深く息づく。日常的な風景や静物にも、無常や静寂といった精神性が感じられる。彼は美術団体に属さず、流行や評価から距離を置き、自らの理想像に忠実な制作を続けた。
日本の自然や四季に応用。写実的でありながら詩情を漂わせる画風を確立した。月明かりの夜景や蝋燭の灯火は、対象を描くと同時に、光そのものを象徴的な存在として表現している。

《空》 昭和23(1948)年以降、個人蔵
千葉会場だけの特別展示
千葉県立美術館での開催は、野十郎が晩年を過ごし、終焉を迎えた土地での回顧展という点で特別だ。会場では、同館所蔵の約2,900点から椿貞雄の作品約20点を特別展示。椿は同時期に草土社で活躍し、千葉ゆかりの画家である。二人の作品を並べることで、それぞれの美意識の違いと共通性を見比べられる。

関連イベントも充実しており、館長や学芸員によるギャラリートーク、満月の夜の夏まつり、記念講演会など、多角的に画家の世界を楽しめる。特に千葉での鑑賞は、画家が愛した自然や空気の中で作品に触れられる貴重な体験だ。全国巡回の初会場として、この地で観る価値は格別といえるだろう。
没後50年 髙島野十郎展
会期:7月18日(金)~9月28日(日)
開館時間:午前9時~午後4時30分*(入場は午後4時まで)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
会場:千葉県立美術館 第1・2・3・8展示室
所在地:千葉県千葉市中央区中央港1-10-1
入場料:一般1,000円
公式サイト:https://takashimayajuro50.jp/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000122505.html
(Fumiya Maki)
*金・土曜日及び祝前日は午後7時30分まで