南青山の根津美術館にて、素朴なやきものの美に触れる企画展「焼き締め陶-土を感じる-」が、9月13日(土)から10月19日(日)まで開催される。
中国・東南アジアの南蛮物から始まり、信楽・備前・伊賀の国内産地まで、日本人が長く愛してきた焼き締め陶。
土と火が生み出す、釉薬のない“かたちとけしき”の美
「焼き締め陶」とは、釉薬を掛けずに高温で焼き締めることで、土そのものの表情を引き出したやきもののこと。
施釉陶磁にはない形のシャープさや、火や灰の動きが生む窯変による躍動感が魅力とされてきた。中世以降は主に茶の湯の世界で美的価値を見出され、日本各地で独自の表現が育まれた。
南蛮横縄水指 ベトナム 16~17世紀 根津美術館蔵
信楽茶碗 銘 水のこ 信楽 日本・桃山~江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
今回の展示では、ベトナム製の南蛮横縄水指や、信楽の名碗「水のこ」、伊賀焼の耳付花入など、時代や産地を超えて伝えられてきた品々が紹介される。
「あえて」焼き締めを選んだ作陶にも注目
江戸時代の京都では、釉薬を使いこなす陶工・野々村仁清が、あえて焼き締めの写しを制作する動きもあった。
展示される「信楽写芋頭水指」は、信楽の風合いを模し、長石の白粒を意図的に混ぜ込んで仕上げられた一作。当時すでに、素朴な土の表情が“美”として好まれていたことがうかがえる。
茶室で出会う、現代作家の“焼き締め”
会期中、根津美術館の茶室では、週替わりで3名の現代陶芸家による焼き締め作品が展示される。
10月の週末ごとに、それぞれ異なる表現を持つ作家が登場し、茶室という静かな空間に新たな景色を添える。
中世から現代にいたるまで、焼き締め陶がどのように生まれ、受け継がれ、賞玩されてきたのか。その“現在”に、静かな茶室の空間で出会う貴重な機会となるだろう。
焼き締め陶-土を感じる-
会期:9月13日(土)~10月19日(日)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(※9/15・10/13は開館、翌火曜休館)
会場:根津美術館(東京都港区南青山6-5-1)
入館料:1,300円(オンライン予約)、1,400円(当日)
公式サイト:https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/next.html
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000155529.html
(山之内渉)