金沢と富山を舞台に、工芸とアートの垣根を越えた表現を紹介するイベント「GO FOR KOGEI 2025」が9月13日(土)から10⽉19⽇(日)まで開催される。同イベントでは、柳宗悦が提唱した「工芸的なるもの」を起点に、18組の作家や職人が多彩な作品を発表。
相良育弥 ワークショップ⾵景「紡ぎのいずみ vol.2」(池上曽根史跡公園、2024年)Photo: Lily Camera
柳宗悦の思想を現代に問い直すイベント
同イベントのテーマは、「工芸的なるもの」。これは民藝運動の中心人物であった柳宗悦が、日常の行為や職人技の中に工芸性を見出した思想に由来する。柳は車内アナウンスや理髪師の所作を「工芸的」と評したが、それは社会全体が共有する美意識に価値を見いだしたからだ。
現代社会はモダニズムの浸透とともに、そうした共有の基盤を失いつつある。果たして柳の提唱は今に通じるのか。本展はこの問いを起点に、作品そのものだけでなく、制作過程や他者との関わり、社会的文脈までを射程に入れたキュレーションを展開する。そこには工芸とアートの新しい可能性が浮かび上がる。

GO FOR KOGEI 2025の展示風景より 相良育弥+中川周士《木桶と茅葺き屋根の茶室》2025 稲藁、杉
街とともに体験する全18組の作品
出展者はアリ・バユアジ氏、桑田卓郎氏、サエボーグ氏、相良育弥氏、中川周士氏、やまなみ工房など18組。陶芸や木工からインスタレーションまで、多様な手法が交差する。
展示は富山・岩瀬エリアと金沢・東山エリアに広がる。北前船の寄港地で栄えた岩瀬には酒蔵や町家が並び、歴史的建築に溶け込むように作品が置かれる。東山では茶屋街や町家を舞台に、工芸と暮らしの関係を示す展示を展開。まち歩きをしながら作品に出会うことで、地域の歴史と現代の創造が重なり合う。

GO FOR KOGEI 2025の展示風景より アリ・バユアジ展示風景
くらしと食を結ぶシームレスな体験
同イベントの一番の特徴は、「体験」にある。作品鑑賞に加え、酒蔵での利き酒や、作家が手がけた器や空間で地元食材を味わう企画など、暮らしや食文化と結びついたプログラムが展開される。単に「観る」だけでなく、「使う」「味わう」「触れる」といった体験が、工芸が日常に息づいていることを実感させる。
さらに、同じ素材が時に生活道具となり、時に美術作品となる多面性にも注目できる。これらを通じて来場者は工芸とアートの境界を軽やかに越境し、新しい価値観を発見できるだろう。

GO FOR KOGEI 2025 イベント風景「うつわと楽しむ蕎麦屋の新しいスタイル」
「GO FOR KOGEI 2025」は、工芸を「古い伝統」としてではなく、社会と響き合う現代的な実践として提示する特別なイベント。街を歩き、作品を体験し、食を味わう。そこに浮かび上がる、日常と非日常が交差する新たな「工芸の風景」に注目してほしい。
GO FOR KOGEI 2025
会期:9⽉13⽇(土)~10⽉19⽇(日)
休場日:水曜
時間:10:00~16:30(最終⼊場16:00)
会場:富⼭県富⼭市(岩瀬エリア)、⽯川県⾦沢市(東⼭エリア)
料金:当日券 一般2,500円
公式サイト:https://art-ap.passes.jp/user/e/gfk2025/
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000080771.html
(kyoko.)
※価格はすべて税込