日本独自の文化「ジャズ喫茶」。その魅力は今も根強く愛されている。

北アイルランド出身の写真家フィリップ・アーニールが3年以上をかけ撮り下ろした写真集『Tokyo Jazz Joints 消えゆく文化遺産 ジャズ喫茶を巡る』が、日本語版として刊行される。

静寂に流れるジャズの音像と、深煎りのコーヒーの香りが漂う空間を写真を通して味わいたい。

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ジャズ喫茶という文化の記録

ただ音楽を聴くだけの場所ではなく、真摯にジャズと向き合うための空間として育まれてきたジャズ喫茶。学生や音楽愛好家にとって知識を深め、耳を鍛える学び舎のような存在でもあった。やがて時代の移ろいとともに数を減らしてきたが、静謐な空気と豊かな音響に包まれる体験は他に代えがたい。

フィリップ・アーニールは、日本に長年暮らすなかでこの文化に魅了され、消えゆく場を記録する使命感を抱いてカメラを構えた。レコードの一枚一枚、マスターの選曲に込められた思想を捉えようとシャッターを切った。そんな写真集だ。

ジャズの音と共にコーヒーや酒を嗜む日本のジャズ喫茶カルチャーの写真集。世界で大反響の日本語版が刊行

全国を巡る旅と写真集の誕生

2015年、東京・蒲田の「直立猿人」から始まった撮影は、やがて東京を超え、岩手「BASIE」や京都「YAMATOYA」など名だたる店へと広がっていった。3年以上にわたり各地を訪ね歩き、扉を開けた瞬間に漂うコーヒーの香りや、壁に飾られたジャケットの色彩、そしてスピーカーから放たれる圧倒的な音の粒立ちを写真に封じ込めている。

ジャズの音と共にコーヒーや酒を嗜む日本のジャズ喫茶カルチャーの写真集。世界で大反響の日本語版が刊行

その記録は2023年にドイツで写真集として刊行され、国際的なメディアから高い評価を獲得。ハードカバー版は写真集としての存在感を放ち、今回刊行される日本語版はB5横判でより手に取りやすい造本に改められ、さらに、アーニール自身による書き下ろしテキストも加わった。読者は彼の旅の視点を通じ、場所と人と音楽が織りなす物語を追体験できる。

ジャズの音と共にコーヒーや酒を嗜む日本のジャズ喫茶カルチャーの写真集。世界で大反響の日本語版が刊行

消えゆく文化を未来へ

本書には現存する名店のみならず、すでに閉店した幻の店も収録されている。

椅子の擦れや壁の色褪せたポスター、磨き込まれたカウンターに宿る時間の堆積は、単なる風景ではなく文化遺産としての重みを伝える。ページをめくるたびに、そこに漂う空気や音の残響が蘇り、かつての客たちが体験した濃密な時間が想像される。

ジャズの音と共にコーヒーや酒を嗜む日本のジャズ喫茶カルチャーの写真集。世界で大反響の日本語版が刊行

ジャズ喫茶は今や数少ない存在となったが、記録された映像は未来へ手渡すべき記憶となる。『Tokyo Jazz Joints』は、ジャズ喫茶を愛した人々の記憶を写し取り、消えゆく文化の灯を未来へとつなぐ一冊だ。

Tokyo Jazz Joints 消えゆく文化遺産 ジャズ喫茶を巡る
発売:2025年8月下旬
判型:B5変
総頁:176頁
製本:並製
定価:4,180円
商品ページ:Amazon

「東京ジャズジョイント」公式サイト:www.tokyojazzjoints.com

PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000058.000008640.html

(Fumiya Maki)

© Philip Arneill

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