愛らしさとセクシーさを兼ね備えたフレッシュな女優やモデルあらわす「イットガール」。ファッション雑誌をはじめメディアで度々目にするワードですが、今回はそん言葉のもととなった1905年生まれの女優、クララ・ボウを、約90年前のオシャレで陽気な生活とともにご紹介します。



1905年7月29日、クララ・ボウはニューヨーク市ブルックリンで生まれます。BBCの記事によると、精神疾患を患う母と、暴力的な父親のもと、スラム的な貧しい環境で生まれ育った美少女は、半ば“そこから抜け出すために”女優を志したとのことです。



ティーンファッション雑誌の美人コンテストで優勝したことをきっかけにショービジネスの世界に入り、1922年に映画デビュー。そのキュートなお色気でコメディを中心に人気を集めました。



彼女が活躍したサイレント映画全盛期は、セダ・バラをはじめとする、男性を破滅させる悪女“ヴァンプ“が流行していました。しかし、クララは暗く妖しいヴァンプとは対照的なタイプ。



童顔でキュート、それでいて健康的なお色気の、ベティ・ブープのようなかわいこちゃんです。



1927年にコメディ映画『あれ (It)』でプリプリした色っぽくてかわいいデパートガールを演じて、映画は大ヒットし、以来"It Girl"と呼ばれ、その言葉は90年後の今でも使われ続けています。



愛嬌たっぷりで親しみやすい下町の色っぽいお姉ちゃん。そんなキャラクターを流行らせた彼女は、まさに「ププッピドゥ」という雰囲気。後の世のマリリン・モンローにも似たスイートな女の子。girl-next-door typeと言われる、隣の家にいそうなかわいこちゃんです。



それでいて、糸のように細い眉とボブヘアは当時の最先端流行のモダンなもの。ファッションアイコンとしても人気が高く、一世を風靡します。



しかし彼女は、ジャズ・ミュージックが花開き、新しい女性フラッパーが闊歩する「狂騒の20年代」のセックスシンボル。第一次大戦が終結し、陽気なジャズとともにバブル経済のような華やかな時代が訪れます。車社会の到来しオシャレでレトロな車をモダンな服装の美女が運転し、ミュージシャンの奏でるジャズに若者達は踊り狂います。



そんな時代のスターにふさわしく、アルコール・ドラッグ・ギャンブル・セックスなどのスキャンダルが囁かれる存在でした。



もし20年代にロックンロールが存在すれば、セックス・ドラッグ・ロックンロールがよく似合う“ロックな女”と呼ばれたかもしれませんが、残念ながらそれはまだ先の話……。



いつの時代もスキャンダルは人気に陰りを落とします。ましてや、いくらフラッパーが新しい女として街角を闊歩しても、一般人にとってはまだまだ「女性は淑女たれ」という保守的な文化が根強い時代。



さらに、1930年代に入ると音の入ったトーキー映画が登場し、声の魅力やセリフを話す演技力も重要になってきます。見た目に反して声が低かった彼女はその波にうまく乗ることができず、引退します。



その後、西部劇俳優だったレックス・ベルと結婚し、2人の息子をもうけます。しかし、精神疾患を煩い娘に辛く当たる母ももとから逃れるためにスターになったクララですが、遺伝に加えてアルコールやドラッグの影響もあってか、母と同じように精神疾患を煩い、ネバタの牧場で隠居生活に入り、1965年、心筋梗塞で死去しました。

日本でも一昔前、ほしのあきがグラビア雑誌の表紙を飾り“ロリエロ隊長”と言われ人気を博しました。かわいらしくてプリプリと色っぽいクララはまさにそのタイプで、童顔で胸の大きな女の子が好まれる日本でも受けも良さそうです。

参考
※ BBC - Clara Bow
※CityLights編集部 - Clara Bow Photo Book -伝説の女優クララ・ボウ-Kindle 版

(星野小春)



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