今回のコラムの主役は芸人、歌手、俳優、司会者の藤井隆(1972年3月10日生れ)である。

取り上げるのは、9月21日にオリジナルアルバムとしては5枚目になる『Music Restaurant Royal Host』が発売されるからだ。

音楽活動に関しては詳しく後述するので、それ以外の活動について簡単に触れていこう。

1992年で吉本新喜劇でデビューした。
1997年に「HOT!HOT!」ダンスでブレイクした。
バラエティ番組を中心に売れっ子になった。

俳優としても、2002年の朝ドラ『まんてん』でヒロインの宮地真緒の相手役。
2016年には大河ドラマ『真田丸』では忍びの佐助役、大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』では主人公の津崎(星野源)の同僚日野秀司役などの活躍をした。
同じ年の3月末から『星野源のオールナイトニッポン』が始まった関係か、藤井隆は度々ゲストとして出演している。

今年司会者として大きな話題となったのは、『新婚さんいらっしゃい!』でこれまで51年2か月務めた6代目 桂文枝(1943年7月16日生れ)が勇退し、2代目司会者として就任したことだろう。
アシスタントも、山瀬まみ(1969年10月2日生れ)から、同じホリプロの後輩にあたる井上咲楽(1999年10月2日生れ)に交代した。
文枝が椅子からこけるリアクションも『新婚さんいらっしゃい!』の名物だった。
藤井隆は吉本新喜劇出身もあって、椅子からこけても痛々しく見えないので、流石である。

過去には松本隆、松田聖子がプロデュース!ファミレスのロイヤル...の画像はこちら >>

(『新婚さんいらっしゃい!』のポーズをする2代目司会者の藤井隆 イラストby龍女)

さて、藤井隆の音楽活動とも最も関わりがありそうなバラエティ番組Matthew's Best Hit TVシリーズ(2001年4月~2006年9月、テレビ朝日)で扮したキャラクター、マシュー南について、筆者なりの考察をしてみた。

それとニュー・アルバムから連想した、筆者がどうしても共演して欲しい大物ミュージシャンについても少し触れていく。
筆者も大好きで観ていた番組が
Matthew's Best Hit TVシリーズ(2001年4月~2006年9月)である。
内容的には音楽を中心としたバラエティ番組だが、厳密さはなくゆるかった。
司会者の藤井隆はイギリス人と日本人のハーフのマシュー・弦也・南と言う設定で登場する。
2005年5月に乙葉(1981年1月28日生れ)と結婚を発表したときは、マシューが藤井隆にインタビューする場面が放送されている。

藤井隆は自身よりもキャラに扮した方がイキイキする性格のタレントだ。
キャラになると、ハイテンションなスイッチが入るのが特徴である。

『Best Hit Generation』という、ゲストとテーマ毎に思い出の映画や音楽について当時の映像を見ながら語ったコーナーがあった。
この中で特に藤井隆の音楽的好みが反映されたのが、マシュー推薦の作品を挙げた「マシューズ・アイ」で、80年代のセレクションが多かった。
彼が好きな音楽特にアイドル系に造詣が深いせいか、放映当時全盛だったハロー・プロジェクトのアイドルを始めとして、ゲストが多彩であった。
筆者がよく覚えているのは、小泉今日子(1966年2月4日生れ)にはげづらを被らせて、モデル歩きをするなど腹を抱えて笑った。
ついにはマシュー南はハリウッド映画にも進出している。

ソフィア・コッポラ監督の映画『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)で、主人公の俳優役のビル・マーレが出演する番組のMCとして登場していた。

番組の終了後はマシュー南としてはしばらく他の番組にも出ていなかった。
今年、Amazon Audibleで
『Matthew’s Matthew マシュー南の部屋の中のマシュー』で復活した。

過去には松本隆、松田聖子がプロデュース!ファミレスのロイヤルホストとコラボしたアルバムを9月21日に発売した藤井隆に次にコラボして欲しいのはあの超大物ミュージシャンだ!そのわけは

(復活したマシュー南 イラストby龍女)

藤井隆本人としても、NHKのラジオ深夜便土曜日の月の第2・3週にある深夜便ビギナーズのパーソナリティを務めているなど、ますます音楽と親和性の高いメディアでの仕事が増えている。

マシュー南が誕生したのは、80年代のポップス、特にアイドル歌手が取り上げていたジャンルとして洋楽のカバーからの影響があったからだと考えられる。
そのカバーの元ネタにはイギリス発のアイドル的人気なミュージシャン(バナナラマ、ワム!、デュラン・デュラン、デッド・オア・ライヴ等)も多かったので、それに対する憧れを体現したキャラクターがマシュー南になって結実したのだろう。
今ではシンガーソングライターは主流になってしまったが、藤井隆は作詞作曲家歌手と分かれる音楽に深い愛着があった。
その象徴がアイドル歌手であり、また女優が歌う歌にも興味を広げている。

藤井隆本人の音楽活動もその傾向に沿った道のりになったので、次に詳しく観ていこう。
藤井隆の音楽活動を詳しく観ていこう。

2000年3月8日には浅倉大介プロデュースで『ナンダカンダ』で歌手デビューした。
CDがもっと売れた時代にデビューした。

売り上げだけなら、結果的に最大ヒット曲となった。
この曲で現時点でソロ歌手としての唯一の紅白歌合戦出場を果たしている。
(歌手としての出場は翌年のRe:Japanとしてウルフルズと合同で『明日があるさ』はある)
2022年に放送されたアマゾン・プライムオリジナル配信番組『ザ・マスクド・シンガー』のシーズン2では、タコプリこと加藤諒がパフォーマンスした曲だ。
加藤諒本人も藤井隆同様にダンスを得意とするので、このカバーはよく合っていた。

作詞・松本隆、作曲・筒美京平の『絶望グッドバイ』(2001年12日12日)など大ヒット(オリコン最高27位)まではいかないもののクオリティの高い楽曲を次々と出す。
藤井隆本人のリクエストもあって、松本隆プロデュースで1枚目のアルバム『ロミオ道行』(2002年2月14日)が発売された。

2枚目のアルバム『オールバイマイセルフ』(本間昭光プロデュース。2004年7月28日)に続いて、テレ東の深夜バラエティ番組に連動したコンセプトアルバム『上海大腕』(2006年4月26日)『上海大腕II』(2007年5月23日)が出た。
中でも注目すべきは吉本新喜劇の先輩にあたる島田珠代(1970年5月10日生れ)とのユニットT&T名義で作詞作曲をしたことだろう。
島田珠代の新喜劇での有名なフレーズの一つ
「男なんて、シャボン玉~」
は、1980年の山下久美子のデビューシングル『バスルームから愛をこめて』の歌詞から引用しているので、彼女も相当な音楽好きなのだろう。
ちなみに、筆者は後で知った世代である。

2008年のリーマンショックや他の要因もあってしばらく発売期間が空いた。


TBSラジオの番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(2007年4月~2018年3月)内のコーナー『サタデーナイト・ラボ』の特集として
国産シティ・ポップス最良の遺伝子を持つ男、歌手・藤井隆スペシャルインタビュー(2013年6月15日)
では藤井隆の歌手としての側面がクローズアップされた。
この放送は久々に音楽活動を再開して6月5日に発売されたシングル
She is my new town/I just want to hold youの宣伝を兼ねていた。
この曲は松田聖子(1962年3月10日生れ)が作詞作曲プロデュースした。
松田聖子はアイドルの王道として語られることも多かったが、シティ・ポップスの発信者の一人としても語り直すことも出来る存在だろう。
それは松田聖子の特に前半のヒット曲群で深く関わったのが松本隆とその音楽仲間達であった事が大きいだろう。

2014年には吉本ミュージックエンターテインメント内の音楽レーベルの「SLENDERIE RECORD」を設立した。
第1弾はレイザーラモンRG、椿鬼奴と組んだユニット「Like a Record round! round! round!」だ。
1995年にKOJI1200(テイ・トウワがプロデュースした今田耕司の歌手プロジェクト)により発売されたシングル「ナウ・ロマンティック」をtofubeatsがアレンジしたカバー曲で発売した。
元々の曲は、70年代後半から80年代前半に流行ったイギリス発祥の「ニューロマンティック」風のダンス音楽を95年にあえて再現したモノであった。

藤井隆名義では3枚目となる『Coffee Bar Cowboy』(2015年6月17日)を出した。
更にすぐにベストアルバム『ザ・ベスト・オブ藤井隆 AUDIO VISUAL』(2015年10月21日)が出た。
2枚のリミックスアルバムを経て、4枚目の『light showers』(2017年9月13日)は多数のミュージシャン(堂本孝平、西寺郷太、EPO、YOUなど)が参加して、冨田謙がプロデュースした。

一方SLENDERIE RECORDの主宰として、数々のプロデュース作品にも手を広げている。
鈴木京香(1968年5月31日生れ)が芸能生活30周年を記念したミニアルバム『dress-ing』(2019年2月27日)も手がけていたのには驚いた。

プロデュース作品群を経て、5年ぶりの藤井隆名義として出たのが、『Music Restaurant Royal Host』である。
これについて、初見の印象と共に紹介していこう。
福岡発祥のファミリーレストランのロイヤルホストとコラボしたのが、今回の藤井隆のアルバムである。

コンセプトとして、ロイヤルホストのグランドメニューを意識して構成したそうだ。
筆者は初回限定版で、ロイヤルホストのグランドメニューそっくりのスペシャルパッケージを購入した。
ロイヤルホストの料理の写真が並んでいるページをめくると歌詞が載っている。

なんで、数あるファミリーレストランチェーンの中でロイヤルホストを選んだのか?
と勝手に想像すると、やはり他のファミリーレストランにはない特別なブランド力がある点ではないか?と思えてくる。

中でもロイヤルのオニオングラタンスープは特別なメニューである。
1954年に来日したマリリン・モンロー(1926~1962)がロイヤルホストの前身となった「ロイヤル中洲店」で出されたオニオングラタンスープを気に入ったと言う逸話が伝わっている。
今も人気メニューとして残っている。

マリリン・モンローは歌手としてもヒット曲を持つ人気俳優だったから、「歌う俳優」と言う側面を持つ藤井隆自身にもすんなり受け入れられるイメージを持ったチェーン店なのであろう。

吉田豪のインタビュー(音楽ナタリー9月21日付)によると、藤井隆はロイヤルホストを運営する企業ロイヤルグループの飲食店(他に「天丼てんや」や「シズラー」)が好きだから決まったそうだ。
また、ロイヤルホストのグランドメニューの料理のメニュー構成の幅広さがこのアルバムで出したい幅広い音楽のジャンルと一致したからだと答えている。

全10曲の内、2曲目の『We Should be Dancing』は鈴木杏樹がKAKKO名義で出したStock Aitken & Watermanプロデュースの90年のデビュー曲をカバーして、本人とデュエットした作品。

3曲目の『アイリーン』は安部恭弘(1956年1月13日生れ)が1984年に発表した曲のカバー。アルバム『SLIT』内でしか発表されていない。
藤井隆は数年前にたまたまSpotifyで聞いて気に入ったのだそうだ。

5曲目の『おやすみ東京』は作詞家として「音葉」名義で鈴木京香が参加している。

4曲目『ヘッドフォン・ガール 翼が無くても』と9曲目『東西南北』には、元キリンジの堀込泰行が作詞作曲(9曲目の作詞は藤井隆と共同名義)で参加している。

8曲目『14時まえにアレー』と10曲目『Chocolate』は作詞に四季の会(関根勤・清水ミチコ・藤井隆・YOU)のメンバーで仲良しのYOUが参加している。
YOU(1964年8月29日生れ)はフェアチャイルドと言うバンドでヴォーカルを務めていた過去があるのでミュージシャンとして知っている人もいるだろう。
YOUの現在やっている音楽活動の一つが藤井隆の楽曲の作詞というのは、知らなかったので今回取り上げて良かった。

過去には松本隆、松田聖子がプロデュース!ファミレスのロイヤルホストとコラボしたアルバムを9月21日に発売した藤井隆に次にコラボして欲しいのはあの超大物ミュージシャンだ!そのわけは

(吉本興業の宣材写真から引用 イラストby龍女)

さて、タイトルにあるように筆者が藤井隆にコラボして欲しいのは
ずばり松任谷由実(1954年1月19日生れ)である。
自動的にプロデューサーは夫の松任谷正隆と言うことになる。
本人は否定していたが、ユーミンに関して80年代の後半にこんな都市伝説があった。
深夜のファミレスで客の会話を聞いて歌詞にしている
である。
よくよく考えてみれば、彼女の優雅な生活様式を想像したら、今ならあり得ない話である。
ファミレスには行ったことはあるらしいが、歌詞を書くときは鶴の恩返しのように自宅の書斎?に隠れて書くそうである。
しかし、この噂を逆手にとって、実際にファミレスを題材にユーミンが曲を書いたらどうなるか?
一種の実験として、適切なコラボ相手は藤井隆がふさわしいのではないかと思えてきた。

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