今回取り上げるのは、いよいよ最終回を迎える大河ドラマ
『鎌倉殿の13人』で、主人公北条義時(小栗旬)の親友で鎌倉の有力御家人
三浦義村を演じている。
史実では、三浦義村の生年は不明だが、1239年に没している。
義時の1224年よりも先の時代まで生きた。
ドラマ上では義時暗殺の黒幕ではないか?とSNS上で考察されている。
山本耕史の役は、第二の副主人公(第一は北条政子役の小池栄子)と言い換えることができるかもしれない。
山本耕史自身も俳優としてみた場合、最強の武器を持った存在だ。
いつもは時系列順に俳優としての経歴を抜粋して紹介するが、今回はあえて出演メディアごとに取り上げる。
ある意味山本耕史最強説を考察していく。
舞台(音楽も含む)
TV
映画
時代劇
の4つに分けて記述する。
(山本耕史 イラストby龍女)
何故なら、山本耕史は最初から普通の俳優では無い。
乳児モデルから芸能界入りした異色の存在で仕事の幅が広い。
全部を把握できないので、筆者なりに分る範囲で、抜粋して紹介していきたい。
皆さんは
「ゴロウちゃん」
と言うと、誰をイメージするだろうか?
筆者の世代は、SMAPの稲垣吾郎(1973年12月8日 生れ)だ。
母の世代は新御三家の野口五郎(1956年2月23日)である。
山本耕史は『新選組!』(2004年)の共演後に、主役の近藤勇を演じた同学年のSMAPメンバーの香取慎吾(1977年1月31日 生れ)と親友になった。
団塊ジュニア世代を代表するスーパーアイドルと同世代とは、きわめて強運と言えるかもしれない。
山本耕史は、子役時代に2世代前のスーパーアイドルの野口五郎と共演している。
それがあの大ヒットミュージカル『レ・ミゼラブル』の日本版の初演の1987年であった。
少年兵ガブローシュが11歳の山本耕史で、後半の副主人公?と言えるマリウスが野口五郎だった。
筆者は日本版の『レ・ミゼラブル』は観劇しているが、1989年の3年目の舞台だったので、山本耕史はガブローシュ役を卒業した後であった。

(『レ・ミゼラブル』日本版初演のガブローシュ イラストby龍女)
イラストの元になった写真のコメント欄の記述には、小学生時代の山本耕史はすぐ上の世代のジャニーズアイドルの少年隊に憧れていたことが窺える。
理由がCMで東山紀之(1966年9月30日生れ)に直接会ったからとは、彼ならではだ。
しかし、公にはなっていないが恐らく野口五郎にも大きな影響を受けたのではないかと思う。
マリウスは、フランスの七月革命の若きリーダー役でいつか演じたいと思うようになった。
2003年には念願のマリウス役を演じている。
アマゾンプライム配信番組の『ザ・マスクド・シンガー』シーズン2に山本がHEROとして出た時に、元BOΦWYの布袋寅泰モデルのギターを持って『マリオネット』を歌っていた。
布袋寅泰より前の時代にヴォーカル・ギターで評価された人物は実は野口五郎だ。
専門誌『ギター・マガジン』2022年5月号の表紙は70年代後半に野口五郎が海外で撮られた写真である。
『真夏の夜の夢』(1979年発表。松任谷由実の1993年の同名異曲がある)の『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ)でパフォーマンスした時に間奏部分でギターを弾いている様子が一番検索しやすい動画である。
筆者が初めて買ったアルバムはBOΦWYの『PSYCHOPATH』だ。
山本耕史と同い年である。
どれだけBOΦWYがスーパーバンドだったか、肌で分る。
現場で音楽に触れていた山本耕史が布袋寅泰に憧れるのは当然の流れだ。
そして俳優としても覚醒した作品が
『RENT』(日本版初演は1998年9月)である。

(『RENT』マーク イラストby龍女)
10代の頃から、周囲からは一目置かれる俳優だったが、本人に自覚が生れたのはこの作品だったそうだ。
作者のジョナサン・ラーソン(1960~1996)がブロードウェイで開幕する前に急逝したために伝説化したミュージカルでもある。
このミュージカルは、プッチーニの名作オペラ『ラ・ボエーム』を90年代初頭のNYに置き換えて、貧乏だが自分の表現を作ろうとする若きアーティスト達の群像劇だ。
RENTとは家賃のことで、NYは世界有数の家賃の高さで知られる。
二人以上が家賃を折半して、シェアして住むのが一般的らしい。
特にこれからの若者が生きた90年代初頭にはエイズという病が蔓延して、医療費も保険がないために高額になる。
家賃を滞納してギリギリの生活に追い込まれる。
山本耕史は舞台となった時代はまだ少年だった。
20代を迎えて自分が社会人としてどの仕事を選ぶか?
大きな指針になったそうだ。
これを機にNYに行き英語を覚え元々あった音楽的才能も加わった。
遂にTVでも当たり役を得る。
それはある日本のオリジナルミュージカルの出演がきっかけだ。
三谷幸喜演出・脚本の『オケピ!』(初演は2000年6月)である。
三谷幸喜は稽古中、山本耕史の女性との接し方を観て、大河ドラマのあの役に抜擢すること思いつくがそれはまた別の話である。
山本耕史の分岐点となった『RENT』の作者ジョナサン・ラーソンがその前に書いていた自伝的ミュージカル『tick,tick…BOOM! 』(初演は2003年6月)では主役のジョナサンを演じた。
3回目の舞台になった2012年の9月の再演では、演出・振り付け・翻訳も担当するなど、舞台俳優としてスキルアップした。
もう一つ人生の分岐点になった舞台がある。
エミリー・ブロンテ唯一の長編小説を舞台化した『嵐が丘』(2015年5月)だ。
ここで連ドラ『アタシんちの男子』(2009年)と三谷幸喜のSPドラマ『我が家の歴史』(2010年)以来3度目の共演となったのが、堀北真希(1988年10月6日生れ)である。
この舞台の役は、山本がヒースクリフで、堀北がキャサリン・アーンショウだ。
イギリス・ヨークシャーの荒涼とした大地を舞台に二つの名家である
リントン家とアーンショウ家をめぐる3代にわたる物語である。
物語の発端は、アーンショウ家に都会から身寄りのない少年ヒースクリフがやってくるところから始まる。
ヒースクリフと、アーンショウ家の令嬢キャサリンは密かに愛し合う様になるが、結局キャサリンはリントン家のエドガーと結婚して、ヒースクリフが復讐するところから波乱の物語は展開する。
この有名なメロドラマは、後世に多大な影響を与えているが、時事ネタとしては先日亡くなった吉田喜重監督が舞台を日本に置き換えて1988年に松田優作と田中裕子で映画化しているくらいで記述は止めておこう。
この共演をきっかけに、山本耕史はそれまで数々の女優と浮名を流していたが、堀北真希と結婚するに至った。
『鎌倉殿の13人』で三浦義村が源実朝(柿澤勇人)に帝王学として女の口説き方を教えているシーンがあった。
「女はフラれてからが勝負です」
と言う台詞は、この時の堀北への怒濤のアプローチ(40通のラブレター)を踏まえた三谷幸喜ならではの当て書きである。
山本耕史は、舞台俳優としてのキャリアを中心として活動している。
日本の俳優の歴史を考えると、これは正統派の俳優の行程をたどっているとも言えよう。
しかし、舞台だけで俳優は食べてはいけないのも事実である。
自分の名前で舞台へ観客を呼ぶためには、他のジャンル特にTVドラマに出ることは不可欠になってくる。
TV局のプロデューサーは舞台を観て無名の舞台俳優から主役脇役問わずスターを発掘するのは仕事といっても過言ではない。
そこで、次はTVドラマでの山本耕史の活躍を観ていこう。

(『一つ屋根の下』柏木文也 イラストby龍女)
山本耕史の名前が認知されるようになったは、月9の大ヒット作の一つ
野島伸司脚本の『一つ屋根の下』(1993年)である。
車椅子を使用する末っ子柏木文也を演じた。
非常に繊細な少年を演じていたので、ひ弱なイメージしかなかった。
どのドラマか映画かわすれてしまったが数年後に水着ではしゃいでいるシーンでガタイが良かったのでそのギャップでドキッとしてしまった。

(『ハイ、それまでヨ』のジャケット写真の植木等 イラストby龍女)

(ドラマ『植木等とのぼせもん』の植木等を演じる山本耕史 イラストby龍女)
山本耕史はクールな役柄のイメージが先行していた。
まさか、植木等(1926~2007)を演じるとは思わなかった。
これは植木等の運転手で唯一の弟子だった喜劇人小松政夫(1942~2020)の自伝を元にしたNHKドラマ『植木等とのぼせもん』(2017年)でのことだ。
これまで植木等を演じた俳優で筆者がぴったりだと思っていたのは
「僕のような透明感のある俳優は…」が口癖の陣内孝則(2006年のフジテレビの単発ドラマ『ザ・ヒットパレード』)である。
ただ、植木等は僧侶の息子で、根は真面目な人だ。
「日本一の無責任男」を演じてきた裏側の真面目な2枚目の素顔を描きたくて
山本耕史が起用されたのかもしれない。
ちなみに若き日の小松政夫は志尊淳(1995年3月5日生れ)が演じている。
小松政夫は、時代劇の小物の同心役や『とんねるずのみなさんのおかげです』で一時期出ていたので、志尊淳ではイケメン過ぎるだろうと思った。
植木等と小松政夫の古巣のナベプロ所属の若手俳優集団D-BOYSのメンバーなので、大先輩を演じた事になる。
植木等はコミックバンドから、国民的グループになった
クレイジーキャッツ(1955~1993、2006)のボーカル・ギター担当だった。
同じ楽器を扱える人物と言えば、確かに山本耕史がぴったりである。
ちなみに、クレイジーキャッツでトロンボーンを担当して、「ガチョーン」を流行らせた谷啓(1932~2010)は、同じくトロンボーン奏者で俳優の浜野謙太(1981年8月5日生れ)が演じた。
浜野謙太はインストバンドのSAKEROCK(2000~2015)で高校の先輩の星野源(1981年1月28日生れ)と組んでいた。
星野源はクレイジーキャッツのファンを公言していたので、元バンド仲間がクレイジーキャッツのメンバーを演じた事に関して、さぞや羨ましがったことであろう。
多分、星野源はオファーされていたら、ボーカル・ギター担当なので、植木等をやりたかったはずだ。

(『きのう何食べた?』小日向大策 イラストby龍女)
スポーツトレーナーの資格まで取ったので、『鎌倉殿の13人』では同じく筋肉担当の八田知家役の市原隼人とは筋トレ情報を共有しているらしい。
そこで、近年はすっかり筋肉キャラが定着した。
そういう役に関しては映画でも後述する。
ドラマにおける筋肉系の役柄は、『きのう何食べた?』(2019年4月~6月、正月SPドラマは2020年1月1日)の小日向大策が目立っている。
イラストの元ネタを探しているときに、タンクトップ写真が並んでいて思わず笑ってしまった。
女性週刊誌にスーパーにタンクトップ姿で買い物をする姿をキャッチされている。
『きのう何食べた?』は 『西洋骨董洋菓子店』(2001年に月9でドラマ化)や男女逆転の設定の『大奥』(全編が2023年にNHKでドラマ化)の作者
よしながふみの漫画が原作である。
山本耕史が演じる小日向大策は、主人公のゲイカップル(筧史郎は西島秀俊、矢吹賢二は内野聖陽)の仲間で、テニスが得意だ。
恋人はジルベールこと井上航(わたる。演じるのは磯村勇斗)である。
実は山本耕史のメディア出演の中で、去年までは唯一映画だけは代表作がなかった。
今年遂に代表作が爆誕したので、次のページはそこから始めよう。

(メフィラス星人 イラストby龍女)
今年に入って、山本耕史はいよいよ映画でも当たり役ができた。
「郷に入りては郷に従え」私の好きな言葉です
でお馴染み、『シン・ウルトラマン』に登場するメフィラス星人である。
イラストは「外星人0号メフィラス星人」と書かれた名刺を渡す前の姿を再現した。
山本耕史はトランプマジックを得意としているが、その時の仕草に似たスタイリッシュさがある。
メフィラス星人とは、元になったTVシリーズのウルトラマン(1966年)では、第33話に登場する宇宙人だ。
メフィラスの命名の由来は、西欧の伝説ファウストに出てくる悪魔
メフィストフェレスから来ている。
「悪質宇宙人」という別名で呼ばれていたが、『シン・ウルトラマン』の世界観では「外星人0号」として登場するキャラクターである。
本来の姿を映画本編の後半に出してくるが、内星人である地球人の姿を山本耕史が演じている形になっている。
メフィストフェレスは悪魔の取引と言われる、何かを手に入れるためには何かを犠牲にしなければならないという二者択一の選択に追い込む存在である。
同じくメフィラス星人は、外星人が持ち込んだ巨大になって変身する技術ベーターカプセルを日本政府に軍事技術として提供する。
その際に悪魔の取引を持ちこむ。
間接的に人類を支配しようとする頭脳明晰な外星人なのである。
映画公開後、このメフィラス星人が発する台詞のパターン
「(ここにことわざを入れる)」私の好きな言葉です。
「(同じくことわざか慣用表現)」私の苦手な言葉です。
が、メフィラス構文として流行した。

(『KAPPEI カッペイ』で馬跳流正義 イラストby龍女)
『KAPPEI』(2022年3月)は、『デトロイト・メタル・シティ』の若松公徳のギャグ漫画が原作だ。
予告編を観ただけでも、おバカ映画の雰囲気満載で、筋肉馬鹿の俳優たちが全力で演技している。
主役は劇場版(2004、2006,2010)とTVドラマ(2005年7月~9月)『海猿』で、筋肉キャラの主演俳優のイメージを確立した伊藤英明(1975年8月3日生れ)である。
原作の発想は、「ノストラダムスの大予言を信じて、体を鍛えていた北斗の拳のケンシロウのようなキャラクターに、終末が訪れなくて、暇になり普通に恋愛したらきっと面白い行動に出るに違いない」と言うモチーフになっている。
山本耕史演じる正義とは、伊藤英明演じる勝平と同じ師範(古田新太)の元で、無戒殺風拳を学んだ兄弟弟子と言う設定だ。
無戒殺風拳の道場が解散して、シャバに出ると何故かヤンキーになった男である。
終末の戦士守役の大貫勇輔(1988年8月31日生れ)は、原作漫画の発想の元になった『北斗の拳』のミュージカル版でケンシロウを演じた。
ドラマ『ルパンの娘』(2019年7月~9月、2020年10月~12月)のミュージカル調のナルシストな演技がきっかけで、バラエティ番組でブレイク中である。
さて山本耕史と言えば、主役級ではNHKでの代表的なドラマ出演は、時代劇に作品が集中している。
最後に『鎌倉殿の13人』に出演する前の山本耕史のNHKの時代劇出演作品を幾つか抜粋していこう。
多分、広く知られた山本耕史の当たり役と言えば、大河ドラマ『新選組!』(2004)の土方歳三(1835~1869)であろう。

(『新選組!』土方歳三 イラストby龍女)
しかし、筆者個人としては山本耕史の当たり役は別にあると考えている。
何故なら『新選組!』の脚本家の三谷幸喜は、かつて司馬遼太郎原作の『新選組血風録』(1965~66)や『燃えよ剣』(1970)のTVドラマ化で土方を演じ続けた
栗塚旭(1937年5月9日生れ)
を歳三の実兄・為次郎役に配するほど、リスペクトしている。
栗塚旭という基準があって、21世紀になって改めて新しい土方歳三の解釈として登場したのが山本耕史だ。

(『陽炎の辻』坂崎磐音 イラストby龍女)
むしろ山本耕史のために用意された当たり役に等しい役柄は
佐伯泰英原作のNHK木曜時代劇『陽炎の辻』(2007年~2010、2017年)の主人公居眠り磐音こと坂崎磐音だ。
主人公の磐音は、本来なら豊後関前藩の中老を継ぐはずだった坂崎家の御曹司だ。
家中の勢力争いに巻き込まれて親友を斬らなければならなかった。
江戸で浪人生活を送ることになる。
用心棒と、もう一つウナギをさばくアルバイトをしている。
まるで就職氷河期世代の我々の様な浪人だ。
この役柄は、筆者と同世代の山本耕史にぴったりの「21世紀の眠狂四郎」であった。
2019年に改めて松坂桃李主演で映画化されたときにイマイチ興行成績が伸びなかった理由は2017年に山本耕史主演で完結したので、記憶が新しかったのが大きかったと考えられる。
それ位、山本耕史と坂崎磐音は合っていた。

(『平清盛』藤原頼長 イラストby龍女)
さて、松坂桃李で映画化された『陽炎の辻』の脚本家は藤本有紀だった。
その藤本脚本で視聴率はともかくカルト的な人気を未だに誇る大河ドラマが
『平清盛』(2012)である。
この中で山本耕史は悪左府(強い左大臣)と呼ばれた藤原頼長(1120~1156)を演じている。
筆者は、幼少期に観たインパクトが多大だったため
しばらくは日本一の貴族役が似合う俳優は成田三樹夫(1935~1990)だと信じてきた。
中でも『新・平家物語』で成田三樹夫が演じた同じ役を演じるのはどれだけのことだろうか?
成田三樹夫を覚えている世代の視聴者が少なくなってきて良かった。
退廃した平安末期の貴族を体現している日本一の大学生(だいがくしょう)ぶりであった。
雰囲気がまるで、男色家の民俗学者の折口信夫(1887~1953)にも似ていた。
成田三樹夫の貴族像は、高貴なたたずまいが文化を背負っている姿は見え隠れしていた。
しかし、成田三樹夫自身が山形出身のためか、外側から観た京都人にみえる。
元々シャープな口跡の持ち主なので、藤原頼長の性格にも一致していた。
山本耕史は、京都出身ではないが、東京の新宿育ちのため都会人のスムーズさは自然と身についている。
穏やかな口調ながら苛烈な性格の頼長を矛盾無く演じた手法は見事であった。

(『真田丸』石田三成 イラストby龍女)
大河ドラマでの石田三成は、実は小栗旬の当たり役である。
子役時代に『秀吉』(1996年)では幼名の佐吉を、『天地人』(2009年)では成長した三成を演じている。
しかし、三谷幸喜の2回目の大河ドラマ『真田丸』で石田三成を演じているのは山本耕史である。
石田三成は有能な官僚だが、人徳はない。
そこをどう見せるかが俳優の解釈の違いになる。
しかし、これは役を振った脚本家の石田三成の見せ方を解き明かした方が分かり易い。

(『天地人』の石田三成を演じる小栗旬 イラストby龍女)
『天地人』の脚本家小松江里子の解釈する石田三成は、あくまでも主人公
直江兼続(妻夫木聡)の親友という役割を背負っている。
イケメン化した石田三成で、キャラが濃くてあえて登場させなかった前田慶次郎の役割も含む立ち位置だった。
『真田丸』の石田三成は、主人公真田信繁(堺雅人)とは対照的な性格の秀吉の側近として登場している。
石田三成は賢さで秀吉に取り入れられた男なので、主人公信繁の性格の良さとは対照的な人に嫌われてしまう厳しさが強調されている気がした。
しかしどちらも主人公の親友のような関係になるので、主役の俳優と世代が近い人物が採用されたのだろう。
NHKは、大河ドラマ以外にも連続時代劇を今でも作り続ける貴重な放送局である。
その中でも主演作がもっと多いのが山本耕史ではないだろうか?
かつて『眠狂四郎』が当たり役だった市川雷蔵が映画で演じた悲劇の剣士丹下典膳を演じた
『薄桜記』(2012年2月~9月)。
吉川英治の伝奇小説で何度も映画化された作品が1977年の田村正和主演以来40年ぶりに連続ドラマ化された(単発ドラマでは1990年の杉良太郎以来)
『鳴門秘帖』(2018年4月~6月)の法月弦之丞。
沢田研二と萩原健一(1950~2019)が在籍した幻のスーパーバンドPYG(1971~1972)の名曲『花・太陽・雨』をエンディングにしたのが話題になった冲方丁原作の新作
『剣樹抄~光圀公と俺~』(2021年11月~12月)では徳川光圀。
ほぼ1年前に北大路欣也を取り上げたコラムで、東映の大先輩の役を引き継いだ事を指摘した。
東映は最も時代劇を得意とするが、もちろん別の老舗映画会社にも時代劇の名作の遺産が沢山ある。
その主役をTVドラマの時代劇で数多く引き受けているのが、山本耕史というのは興味深い事実だ。
ちなみに北大路欣也の俳優人生の分岐点となった木村拓哉主演の『華麗なる一族』では、山本耕史は次男の万俵銀平を演じている。
さて、『鎌倉殿の13人』最終回で、山本耕史演じる三浦義村はどんな暗躍をみせるのか?

(『鎌倉殿の13人』三浦義村 イラストby龍女)
ドラマの最後の瞬間まで目が離せない。
山本耕史が大河ドラマに出演した4作品を通していて観ると(子役時代の『信長King Of Zipang』は2話のみ出演なので除く)、こざかしい役柄で策士を演じる傾向がある。
山本耕史が子役時代から周囲の様子を探って小賢しく立ち回ってきた様子を想像してしまう。
今回親友でありながら、最後に袂を分かってしまうであろう従兄弟同士を演じる義時役の小栗旬と山本耕史のどっちが強いのか、考えてみた。
大河ドラマとは、それぞれ得意分野が違う俳優が共演して演技を競い合う、まるで異種格闘技戦のような面白さがある。
そこでいくと、小栗旬はストレートプレイの主演俳優として最強。
山本耕史はミュージカル・時代劇と2階級制覇した俳優として、最強のような気がする。
これはいくら主役が小栗旬でもかなわないと思ってしまうのは私だけではないはずだ。
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