(小栗旬 イラストby龍女)
このコラムは2022年7月29日の続編で、一連の『鎌倉殿の13人』のコラムの続編である。
2月24日に収録された彩の国シェイクスピア・シリーズの最後を飾る舞台
『ジョン王』が丁度3ヶ月後の5月24日に放映された。
6月6日までWOWOWオンデマンドに見逃し配信されている。

(『ジョン王』のポスターから引用。左からジョン王役の吉田鋼太郎、フィリップ・ザ・バスタード役の小栗旬 イラストby龍女)
事実誤認をしていたので訂正しよう。
2022年7月29日付の当コラムから引用する。
彼が演じる予定であったジョン王(1166~1216)は、別名失地王と呼ばれ、イングランドの歴史上、最も評判が悪い。
彼が今大河ドラマで演じている北条義時(1163~1224)と同時代人だ。
ジョン王を演じるのは、吉田鋼太郎の方だった。
小栗旬が演じたのは役名としてはフィリップ・ザ・バスタード
歴史的にはフィリップ・オブ・コニャック(1180年頃~1230年頃)である。
ジョン王の兄リチャード1世(1157~1199)の非嫡出子で、ジョン王の甥に当たるが最初から王位継承権はない。
中世における欧州の王族の継承権において、正妻の子かどうかは日本以上に比重が高かった。
この舞台は、演出家蜷川幸雄(1935~2016)と故郷の埼玉県が始めた『彩の国』シェイクスピア・シリーズの第36弾として、2020年に上演される予定だった。
コロナ禍で中止になり、2022年の年末にようやく上演された待望の舞台である。
時系列的に、『鎌倉殿の13人』の後の上演作品になってしまった。
これで小栗旬の30代の大仕事は終わった。
その3ヶ月後に、小栗旬はフジテレビの5月28日の21時に放送された
まつもtoなかいに出演し、現在の心境を語っている。
一言に集約すると、「燃え尽き症候群」であると。
筆者は部外者であるが、大仕事を終えた後の人間はどうしたら良いのか?
具体的なデータを提供するのが、ライターとして自身の役割だと考える。
次の頁では、大河ドラマで主役を務めた俳優たちはその後どうしたのか、2011年以降から過去にイラスト化した人物のみ抜粋して振り返る。
結論から言ってしまえば、長期休養をとろうである。
2011年の大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』の主役
上野樹里(1986年5月25日生れ)の復帰作は

(イラストby龍女)
映画『陽だまりの彼女』(2013年10月12日)で、約1年10ヶ月後である。
2012年の『平清盛』の主役
松山ケンイチ(1985年3月5日生れ)の復帰作は

(『平清盛』の松山ケンイチ イラストby龍女)
映画『清須会議』(2013年11月9日)の番宣活動で、およそ10ヶ月後である。
2013年の『八重の桜』の主役
綾瀬はるか(1985年3月24日生れ)の復帰作は

(綾瀬はるか イラストby龍女)
『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』(2014年5月31日)の番宣で、5ヶ月後である。
2016年の『真田丸』の主役
堺雅人(1973年10月14日生れ)の復帰作は

(『真田丸』の堺雅人 イラストby龍女)
『NHKスペシャル「熊本城再建 “サムライの英知”を未来へ」』(2017年4月16日)で、比較的拘束時間の少ないナレーションの仕事である。
2018年の『西郷どん』の主役
鈴木亮平(1983年3月29日生れ)の復帰作は

(『西郷どん』の鈴木亮平 イラストby龍女)
映画『ひとよ』(2019年11月8日)の番宣で約10ヶ月前後である。
2020年~2021年の2月までの『麒麟がくる』の主役
長谷川博己(1977年3月7日生れ)の復帰作は

(『はい、泳げません』の長谷川博己 イラストby龍女)
映画『はい、泳げません』(2022年6月10日公開)で、約1年4ヶ月後である。
こうして並べてみたが、いかがだろう?。
個人差はあるが共通している事がある。
せっかく大河の主役を張り日本中で有名な俳優の仲間入りをした特権を行使すべきだろう。
仕事は選ぶ余裕を与えられたのだ。
一方で社会的な地位が高くなってしまったことで、リスクが多くなった。
俳優本人のメンタルヘルスと仕事を続けていくための体調管理として、休むことは大事な仕事の一環と言える。
小栗旬が40代を迎えた。
誰しもこの年代は体力は落ちていくのは自然な成り行きである。
現在46歳のしがないライターの一人の筆者にとっても、心からの願いである。
忙しい売れっ子俳優たちはとにかく我々を楽しませる良い仕事をして欲しい。
だから、自分を大切にして欲しい。
いまはあの大事件について、筆者なりの現時点での見解を動物としての人間の観点からどうしても触れる段階に入った。
次の頁の最後には、小栗旬特有の問題も提起しておこう。
第41回(2022年度)の向田邦子賞は、三谷幸喜の『鎌倉殿の13人』に決まった。

(三谷幸喜 イラストby龍女)
5月23日に授賞式が行われ、出演者が29名が祝福に訪れた。
小栗旬を始めほぼメインキャストが揃った豪華な会になった。
一人だけ欠席を余儀なくされたことはあまり大きい声を上げられない辛い出来事でもあった。
その人物とは、北条義時の義兄の源頼朝(大泉洋)を平家討伐へ導いた怪僧・文覚を演じた
四代目市川猿之助(1975年11月26日生れ)である。
既にご存じの方も多いと思うが、5月18日に自宅で両親を道連れに無理心中を図り一人だけ生き残ってしまった。
復帰の予定は未定で、恐らく裁判にかけられてしばらくは俳優活動は困難だろう。
週刊誌で弟子や役者仲間にセクハラ・パワハラの疑いがあるという記事を公表され、すぐに発生した事件であった。
この前の年に、従兄弟に当たる香川照之(市川中車)が銀座のホステスをパワハラした証拠の写真が公表され、香川照之名義の俳優活動は未だにストップしている。
俳優以外にも、昆虫をモチーフにしたアパレルブランドの企業も興して軌道に乗り始めたかにみえた矢先の出来事であった。
猿之助率いる澤瀉屋(おもだかや)は歌舞伎人気を一般層から取り組む努力をしてきた。
しかし、コロナ禍の観客減少の後遺症が今になって現れたような形になっている。
市川猿之助と香川照之は優秀であったが故に、
「中年の危機(ミドル・クライシス)」を甘く見積もってしまい、自分の体力が引き受けられる仕事以上の責任を抱え込んでしまった。
過労のために飲酒の席で大きなミスを犯し、大事な仕事を失った。
俳優の仕事は、アスリート並に過酷な面があり、十分な休養もとらずにそのストレスの解消を飲酒に頼ると、肉体を擦り減らす危険性がある。
酒に含まれるアルコールは揮発性の物質であり、水分補給になるどころか脱水症状を起こして筋肉をつるリスクが増大する。
十分な筋肉への水分補給を甘く見ると、疲労の回復を損ない、精神的な余裕もなくなり、前向きな発想を失わせていく。
(過度の飲酒の影響の話であって、全否定するモノではない。
筆者の母方の曾祖母は毎日湯呑み一杯で103歳まで長生きし、従兄は一日500mlの発泡酒を6本飲んで50歳で糖尿病で死んだという極端な例を観たからだ)
歌舞伎俳優の飲酒トラブルは本人の責任ばかりとは言えず、松竹の歌舞伎興行の予定表が梨園の貴公子達に過大な労働環境を課してる構造上の問題もあると、筆者は考える。
売れっ子歌舞伎役者は忙しすぎる問題を松竹は真剣に考えて対策する時代に入ったのだ。
主役が出来る役者の数を増やして、事件防止の一定のルール作りをした方が良いのではないか?
小栗旬は、80年代生れの日本人俳優のリーダー的存在である。
ついには、所属事務所のトライストーン・エンタテイメントの次期社長という大仕事が待っている。
自分で管理できる地位を獲得できそうである。
だから大河ドラマの主役をした後は、今後の俳優活動に支障が来さないためにも、現時点では俳優の仕事は一旦棚にしまう必要がある。
慣れない社長業を覚える時間を最優先に仕事を続けて欲しい。
それが一人の人間が抱えきれる責任を果たす堅実な行動だから。
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