そんな市場に颯爽と切り込んだ「プレイステーション」は、1994年12月3日に発売した直後から高い注目を集めます。同日に『リッジレーサー』や『A列車で行こう4 EVOLUTION』、『クライムクラッカーズ』などが登場し、12月16日には『KING'S FIELD』もリリース。1995年には『鉄拳』、『エースコンバット』、『ときめきメモリアル~forever with you~』、『幻想水滸伝』など、今も語り継がれる作品が続々と現れました。
その後も勢いは衰えることなく様々な名作が誕生し、ユーザーの記憶に残る名機として活躍。そんなプレイステーションが、装いも新たに「プレイステーション クラシック」となり、2018年12月3日に発売されました。
「プレイステーション クラシック」に収録されているタイトルは、いずれも時代を駆け抜けたものばかり。プレイステーションソフト全体から20本を厳選するのは至難の技ですが、当時を代表するタイトルがしっかりと選ばれたラインナップになっています。。
■「プレイステーション クラシック」収録タイトル
・『アークザラッド』
・『アークザラッドII』
・『ARMORED CORE』
・『R4 RIDGE RACER TYPE 4』
・『I.Q Intelligent Qube』
・『GRADIUS外伝』
・『XI [sai]』
・『サガ フロンティア』
・『Gダライアス』
・『JumpingFlash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻』
・『スーパーパズルファイターIIX』
・『鉄拳3』
・『闘神伝』
・『バイオハザード ディレクターズカット』
・『パラサイト・イヴ』
・『ファイナルファンタジーVII インターナショナル』
・『ミスタードリラー』
・『女神異聞録ペルソナ』
・『METAL GEAR SOLID』
・『ワイルドアームズ』
しかし、数多くの作品が登場したため、万人が納得できる20本を厳選するのはまず不可能。ユーザーの数だけ、この20本の内訳は異なるに違いありません。むしろ、最大公約数的な視点では決して選ばれないだろうタイトルにこそ、強い思い入れを寄せるユーザーも多いのでは。かくいう筆者も、そんなゲームファンのひとりです。
意見としては少数かもしれない。けれど、自分にとっては光り輝くタイトルがある。それはきっと、誰もが思うことでしょう。筆者が石油王だったら「俺が選んだプレイステーション クラシック」を作るのに! しかし現実は容赦ないので、せめて「俺クラシック」(略称)の収録作を紹介する形で、ささやかながらも各作品にスポットライトを当てさせていただきました。皆さんに共感してもらえるか、はたまたポカーンとさせてしまうか。独断で選んだ20本、とくとご覧あれ!
ちなみに、読者が希望する「プレイステーション クラシック」収録タイトルについて、昨年9月にアンケートを実施しました。どの作品に注読者の目が集まったのか、そちらも合わせてチェックしてみてください。
■読者が選んだ「プレイステーション クラシック」に収録して欲しいタイトルはこれ! PS時代の代表作や名作がズラリ、入手困難なRPGも【読者アンケート】
https://www.inside-games.jp/article/2018/09/26/117671.html
◆まずはアクションRPGから!
何と言っても『デュープリズム』! 見た目の可愛らしさで取っつきやすく、また物語の中でキャラクターが実にイキイキしており、操作しているだけでも楽しかったことを覚えています。ミント様のキックは、いつでも切れ味満点。主人公ごとに異なる物語を味わえたのも好印象でした。
筆者の「死にゲー」初体験とも言えるのが、『キングスフィールドII』でした。スタート直後に何気なく後ろに進むと溺れ、敵に見つかるとあっさりと死に、最初の回復ポイントを泣きながらようやく確保し、初めて見かけた人らしい相手に喜んで近づいたら惨殺。
一般的なアクションRPGとは異なりますが(ジャンルはロールプレイング・アドベンチャー)、タイミングを見極める緊張感溢れる戦闘や、武器・防具の重要性が忘れられない『ベイグランドストーリー』も、個人的に思い入れが強い作品です。「もっとも優れた麻薬だからな、“愛”という名の信仰は」という台詞は、今も記憶に残るほど。
◆RPGは、本数が多すぎて選びきれない! なんとか6本に絞ってみた
「どAHOー!」と叫んでいた新着画像を雑誌で見た時に「コレはいい!」と瞬間的に惚れてしまった『マール王国の人形姫』。ミュージカルなノリも無性に楽しく、またキャラクターの魅力も相まって、期待を裏切らない出来映えの製品版に改めて惚れ直しました。もちろん、続編の『リトルプリンセス』も遊びましたし、『+1』版も購入しました。
“衝撃度”で言えば、これを上回るプレステ作品はなかなかない『リンダキューブアゲイン』。元はPCエンジンのSUPER CD-ROMソフトでしたが、この作品を知った時には既に入手が困難だったので、プレステ版の発売はまさに渡りに船。「今時メシをうまそうに食う女(=ヒロイン)」との旅は、想像を上回る刺激に満ちたひとときでした。ショッキングなシーンもあるので、これから遊ぶ方はご注意を。
オリジナル版はスーパーファミコンソフトですが、プレステ版ではガーディアンの付け替えが出来たり、ダッシュ移動やどこでも中断セーブが可能になったりなど、遊びやすさが向上した『真・女神転生 IF…』も押さえていきたいところ。
こちらも原点はファミコンですが、プレステ版の印象も色濃い『ドラゴンクエストIV』。ファミコン版で既にクリア済みでしたが、エンディングのその後について語られていると聞いては、遊ばないわけにはいきません。「こういう可能性もあるんだな」と考えることができたのは、収穫だったと思います。
セガサターン版からパワーアップした『わくぷよダンジョン決定版』も、個人的に嬉しいタイトルのひとつ。『ぷよぷよ』もいいゲームですが、いかんせんパズルが苦手なのと、『魔導物語』シリーズが好きだったので、『わくぷよダンジョン決定版』の方向性は願ったり叶ったりでした。アルルなどのキャラクターでローグライクRPGが楽しめる、貴重な一作です。
ここまで移植作などが続いてしまったので、RPG枠の最後はプレステだからこそという作品をピックアップ。北欧神話をモチーフとした重厚な世界観や、神々と人の間で揺れ動く物語展開など、没入感の高さで魅了された『ヴァルキリープロファイル』を外すことはできません。詩帆の「与えることに疲れ、与えられることを望む私は、さもしい女でしょうか」など、印象深い台詞も多数。個人的に、もう一度遊びたいソフトでもあります。
◆シミュレーションRPGやアクション、シューティングからも!
一時期、伝記モノにハマっていた影響もあり、『東京魔人学園剣風帖』にはかなり熱を上げました。
シミュレーションRPGならば、『サモンナイト』も押さえておきたいところ。原点となる無印もよし、一気に広がりを見せる『サモンナイト2』もよしです。無印は、異世界モノと見て楽しむもアリですし、集中して遊べばクリアまでそう長くはないので、育てるユニットを変えて何度も楽しむといった遊び方も。『サモンナイト2』は、仲間になるメンバーも多種多彩で、物語もボリュームアップ。腰を据えてじっくり楽しませていただきました。
発売後の評判や口コミで徐々に知名度を上げ、一時期はプレミア価格となって入手困難だったこともある『高機動幻想ガンパレード・マーチ』。重厚な設定や緊迫した状況を巧みに織り込みながら、少年少女のジュブナイル成分もたっぷりと味わわせてくれる名作です。力及ばず散っていく学友、空席が増えていく部署。そして絶望的な戦いへ。ベストエンドもいいものですが、Bエンドに向かう過酷な空気もたまりません。
シューティングも悩むジャンルですが、プレステならではという点も含めて、『アインハンダー』を推します。洗練されたビジュアルも魅力的ですが、絶望的な状況に陥った終盤を経て、たった一機で立ち向かう最終ステージ。この展開を初めて目の当たりにした時、一気に血が滾って興奮しきりでした。あの興奮は記憶と結びつき、今も思い出として刻まれています。
アクションも激戦ですが、今も忘れられない名作『風のクロノア』を。操作そのものはシンプルなのに、動かしているだけでも楽しく、多彩なボス戦は驚きと興奮の連続。コントローラーを握る手に、ついつい力が入ってしまいます。そして、プレイヤーの心に突き刺さるエンディング…あの切なさは、プレイした人だけの特権でしょう。
◆プレステは恋愛も教えてくれた!? 続編を待ち続ける推理ADVの名作も
反射神経を要するゲームも楽しいのですが、魅力的なキャラクターや先が気になる物語をじっくり向き合うADVもいいものです。一口にADVと言っても方向性は様々ですが、美少女たちとの甘酸っぱいひとときを味わえる恋愛系から攻めたいと思います。
このジャンル、まずは『To Heart』から。元々は成年向けのPCゲームでしたが、プレイステーション版の制作に当たってシナリオに大きく手が入り、原作版をプレイしたユーザーにとっても非常に刺激的な作品でした。
続いては、平安から現代まで千年に渡る輪廻転生の流浪を紡ぐ『久遠の絆』。作中の時間経過も膨大ですが、実際のプレイ時間もかなりボリューミーでした。しかし、複数の時代と物語を描くため、プレイ中の緩急もバッチリ。中だるみや失速など見せることなく、儚くとも揺るぎない人々のドラマが胸に刻まれました。
少年少女の淡いひとときを味わいたいなら、『どきどきポヤッチオ』が鉄板。彼らの夏休みにスローライフは似合わない! モンスターなんかいないけど、冒険はいつでも刺激的。でも、毎日のパン配達は忘れるな。お姉さんに怒られるぞ! お手伝いとボーイ・ミーツ・ガールが彩る輝かしい日々は、今も忘れがたし。
推理系ADVからは、『クロス探偵物語』をピックアップ。軽い一面こそあれ、地に足のついた主人公が向き合う事件の数々は、いずれも歯ごたえのあるものばかり。時には意外な展開に発展する物語も。派手さこそありませんが、推理系ADVの正統派としての揺るぎなさは今も色褪せません。
余談になりますが、『クロス探偵物語』は続編が予定されており、予告映像も作られました。残念ながら製品化とはなりませんでしたが、「クラシックミニ スーパーファミコン」に『スターフォックス2』が収録されたように、『クロス探偵物語2』も収録して欲しい! 「プレステ クラシック2」が出るならば、その機会に是非お願いしたいところです。
そしてトリを飾るのは、噂という形で日常に潜み、踏み込みすぎれば飲み込まれる「闇」を感じられるADVの傑作『夕闇通り探検隊』です。サプライズ系のホラーではなく、想像力をかきたてる恐ろしさは、筆舌に尽くしがたい圧力を感じることもしばしば。それでいて、主人公3人が生きる現実はどこまでもリアルで、そのふたつの世界が重なる一瞬を鮮烈に描き出しています。3人の微妙な関係性も、本作の物語に深みを与えてくれ、ジュブナイル系ADVとしても忘れがたい一作です。
筆者にとっても「俺クラシック」、いかがでしたでしょうか。「プレステ クラシック」収録タイトルと比べると知名度では一歩譲るものの、面白さの点では決して引けは取らないと感じているものばかりです。ですが、「あれが入ってないとか、分かってない!」と思った読者も多いのでは。その熱い想いはぜひ、SNSなどでお披露目してください。皆様の「俺クラシック」、楽しみにしています!
「俺クラシック」は以上です! ・・・が、物足りないと思った方は、この先へどうぞ・・・。
<Font Size="5">──さあ、ここからはガチの時間だ!</Font>
「俺クラシック」などと仰々しい肩書のわりに、手堅いタイトルばかりだったと感じたそこのあなた。ご安心ください、本番はこれからです。
ここまでのタイトルも個人的に大好きなものばかりですが、カジュアルとコアの境目をゲームライター的な視点で考えたチョイスでもありました。しかしここからは、ゲームライターの肩書も下ろし、読者の認識度合いも意に介さず、「真・俺クラシック」の20本をお披露目します!
知らないタイトルばかり? ならばこの機会に知ってほしい。本当に面白いの? もちろんです、ただし相性の有無はあり! そんな個性的なタイトルばかりが並んでいます。もちろん、ただマイナーな作品をピックアップしたわけではありません。実際に遊び、心に残ったものだけを厳選。読者がついて来るかどうかも度外視で、ただひたすらに「真・俺クラシック」を語るひととき、どうかお付き合いくださいませ!
◆カードバトル、ガンシュー、対戦格闘にアクションなど、多彩なジャンルからチョイス!
■『エンドセクター』
デッキ構築型の対戦カードバトルでは、この『エンドセクター』が一押しです。初っ端から読者置いてけぼりな気配をひしひしと感じますが、「真・俺クラシック」なのでご容赦を!
昨今、オンラインを介した対戦型カードゲームなどが盛り上がりを見せていますが、当時もこのジャンルからは様々な作品が登場しました。その中から選んだ『エンドセクター』は、現実とファンタジーそれぞれで物語が進行し、ボーイミーツガールや刺激的な世界での冒険などが同時に楽しめる贅沢な作りになっています。
本作のカードバトルは、リアルタイムで進行します。そのため、ユニットが出せる状態になっても敢えて待ち、既存ユニットで敵の攻撃を受けた直後に新ユニットが場に出るようにタイミングを見切る…といった戦略も可能。時間の経過と戦略をどのように組み合わせるか、そこを見極める駆け引きもたまりません。
また、物語はノベル形式で展開しますが、そのテキストのセンスも実に良質。どこかゲームブックを思わせるような文体は想像力を刺激し、先に進みたくなる訴求力に溢れています。物語とゲーム性が両立しており、今でも忘れがたい一作です。
■『幻世虚構・精霊機導弾』
前述の「俺クラシック」では『高機動幻想ガンパレード・マーチ』をピックアップしましたが、こちらでは『幻世虚構・精霊機導弾』を推させていただきます。『ガンパレード・マーチ』好きならばご存知の方も多いと思いますが、両作品は設定的に繋がりがあり、浅からぬ関係性を持っています。
とはいえ、世界そのものは異なるため、いずれも作品単体だけで楽しめます。しかも、ジャンルも大きく異なっており、こちらはなんとガンシューティング。決められたルートを自動的に進みながら、並み居る敵に立ち向かいます。
このレールウェイの動きが、時に大胆なアクションを見せ、そのダイナミックさに惚れました。特に、大型ボス「アウドムラ」の周囲を旋回しながら上昇していくシーンでは、「巨大な敵に立ち向かう高揚感」に刺激され、興奮度MAXで戦った覚えがあります。
戦闘の成果次第を、武装の強化に費やすかスコアの加算に回すか、任意で選べる点もユニークでした。強化すれば戦闘は楽になりますが、必然的にスコアは低めに。かといってスコアに回すと、腕前次第ではクリアもままなりません。スコアとクリアの関係性も、プレイヤーを悩ませる嬉しい要素のひとつです。
■『ベルデセルバ戦記 ~翼の勲章~』
プレイステーションが3D描写を大きく進化させ、その影響としてフライト系STGも盛り上がりを見せました。このジャンルは『エースコンバット』シリーズなどが知られていますが、筆者の「真・俺クラシック」には、『ベルデセルバ戦記 ~翼の勲章~』が入ります。
本作の自機はジェット戦闘機ではなく、いわゆる飛空船。音速を超えるようなハイスピードな戦闘こそ味わえませんが、独特の浮遊感を楽しめる唯一無二の作品です。攻撃手段も、ミサイルのような近代兵器はなく、重力に引かれて落ちていく弾の軌道を前提とする位置取りなど、世界観とゲーム性のマッチングも素晴らしいばかり。
高速ではないからこそ、思い描くように自機を動かせる感覚。現実世界でも味わえない、飛空船の操縦。そして、星の命運を左右する物語の一端を担う壮大さ。その全てを受け止める大空は、どこまでも遠く、そして高く広がっています。
ちなみにプレイする時は、ゲームを立ち上げると自動的に流れる主題歌(しかも新居昭乃さん!)をまず聞くのが定番でした。歌声までもが素晴らしい…!
■『ロビット・モン・ジャ』
オリジナルの「プレステ クラシック」には『JumpingFlash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻』が収録されていますが、こちらで推すのはシリーズ3作目に当たる『ロビット・モン・ジャ』。『JumpingFlash!』の名前がないため、知名度はやや劣るかもしれませんが、シリーズの魅力をしっかりと受け継いでおり、アクションの楽しさは言うまでもありません。
宇宙市役所に勤めている主人公は、住人から寄せられる声に応えるべく奔走します。どんな大事件が舞い込むかと気合を入れて挑んでみると、「飛ばされた洗濯物を回収して欲しい」など、生活に密着した悩みが多数。依頼内容だけでなく、住人の性格や世界観などがいい意味でユルいため、気張らず手軽に楽しめる作りになっています。トラブルを起こさずにはいられない大統領令嬢や、スケールが大きいイタズラを頻発する5歳児など、いずれも愛らしい面々です。
その中でも、様々な問題(腹痛など)に阻まれ、自身の任務を役所に丸投げする「秘密特捜隊DOT」の一貫したフヌケ具合など、突き抜けていて目が離せません。悪の組織ながらも、悪に染まりきれない「イタチ団」の存在と相まって、やんちゃな息子たちを微笑ましく見守るような気持ちになることも。
『JumpingFlash!』シリーズのアクション性と、愛すべきキャラクターたちが融合した「ユル楽しさ」は、時折あの世界に帰りたくなるほど魅力的です。
■『サイキックフォース』・『サイキックフォース2』
プレステ時代の対戦格闘ゲームならば、『サイキックフォース』が飛び抜けて好きでした。超能力バトルを嫌いなわけがない! しかも、本作の戦いの舞台は空中。360度自由に動けるフィールドを縦横無尽に駆け巡り、それぞれの超能力を駆使して戦います。
キャラクター比で見てフィールドが広く、遠距離攻撃が可能な超能力も多いため、未プレイの方から「シューティングじゃないの?」と誤解されることも。しかし、遠距離攻撃が可能といっても、その弾速や性能は様々ですし、技の発動に伴う硬直もあります。安易に連打してもあっさり回避されてしまいますし、むしろ硬直を狙われて手痛い反撃を受けることに。レンジが広いだけで、ゲーム性自体はしっかりと対戦格闘のバランスに則って作られています。
見た目の斬新さ、言い換えるならば異質さで敬遠された面も皆無ではありませんが、踏み込んでみればその奥深さ、楽しさは盤石。ちゃんと練り込まれたゲーム性を土台に、超能力という演出が彩る『サイキックフォース』は、今でも惚れ込んでいる作品のひとつです。
ちなみに、続編となる『サイキックフォース2012』がアーケードやドリームキャスト、PCなどに展開しましたが、その『2012』の内容を取り入れつつ、他にはない要素を加えた『サイキックフォース2』がプレステ向けに登場。『2012』との最大の違いは、相手の超能力を使用できる「PSY-EXPAND」の存在です。
この要素を分かりやすく例えると、「昇竜拳を使うザンギエフ」や「波動拳を放つブランカ」といったキャラで対戦できるようになります。キャラごとの攻め方・守り方が一変するのはもちろんのこと、その組み合わせは膨大。全ての超能力が使えるわけではありませんが、遊びの幅が大きく広がること間違いなし。
対戦格闘である本質と、これまでにはなかった大胆すぎる新要素を併せ持つのは、シリーズ作の中でも『サイキックフォース2』だけなので、原点である初代と共に「真・俺クラシック」入り。どちらも捨てがたい!
■『ラクガキショータイム』
多人数対戦が可能な乱闘アクションゲームと言えば、『大乱闘スマッシュブラザーズ』が桁外れの知名度を誇っています。しかし当時の筆者にとっては、この『ラクガキショータイム』こそが乱闘ゲームの代表作でした。
タイトルにある通り、続々と登場する敵やプレイアブルキャラはいずれも、まるでラクガキのようなビジュアル。それでいて“雑”な印象は全くなく、ラクガキながらも多彩なアクションがプレイヤーを魅了します。
最初期に操作できるキャラは、ユキヲ、ササミ、ピータン、ツボハチの4人。しかしゲームを進めることで、最大で17名が使用可能に。ちなみに本作が発売された1999年は、『スマブラ』シリーズ1作目が登場した年でもあります。この『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』で操作できるのは、最大12ファイター。数の上では、『ラクガキショータイム』に軍配が上がるのです!
ただ、長所だけ挙げて比べるのは姑息なので、『ラクガキショータイム』の残念な点も記しておきます。17名ものキャラクターが使用可能で最大4人までの対戦が楽しめるのは大きな魅力ですが、全キャラのバランスが取れているとは言い難く、勝負だけを追い求めると決まったキャラばかり使う対戦になることも。“ハチャメチャ度合い”を楽しめるかどうかが、評価の分かれるところです。
ホーミング移動やスマイリーボールなど、他の対戦アクションにない要素も数多いため、未だに唯一無二の楽しさがある『ラクガキショータイム』。ゲームアーカイブス版があるため、今でも遊びやすいタイトルです──が、マルチタップに対応していないため、多人数プレイはオリジナル版でしか楽しめません。この点が、本作の一番残念なポイントかもしれません。
「真・俺クラシック」はまだまだ続く! RPG系からは9作品をピックアップ
◆RPGはやっぱり絞りきれない! マルチ展開が売りの作品からアクションRPGまで
■『ジルオール』
マルチシナリオ・マルチエンディングを謳うRPGは、これまでも数多く登場しました。ですが、その切り口で筆者が選ぶベスト1は、今も『ジルオール』です。マルチストーリーと言いつつも主軸は同じで細部だけが変化する、といったゲームも少なくない中で、本作は主人公の選択次第で歴史に残るような大きな変革も発生。歩んだ道のりによって物語は大きく変わり、最後に戦うラスボスも当然結末ごとに変わります。
仲間になるメンツも個性豊かで、謎めく猫屋敷の主人「オルファウス」、魔王バロルを打ち倒した英雄「ネメア」、腕利きの冒険者「ゼネテス」など。もちろんただ仲間になるだけでなく、物語に深く関わる活躍を見せたり、意外な正体を持つ人物も。光の王女「ティアナ」と親しい関係になることも可能と、主人公の立ち位置もプレイヤー次第です。
筆者が特に思い出深く覚えているのは、ネメアと共にバロルに立ち向かった戦士「レーグ」とのイベント。彼はリベルダム闘技場の王者として君臨しており、相まみえる機会はなかなかありません。その後、大陸が動乱に巻き込まれ、闘技場も廃墟と化してしまいます。しかしそこには、レーグの姿が。観客もいない荒廃した闘技場で、真の王者を決めるために剣を交わすレーグと主人公──何ですかこの痺れるシチュエーションは! こんなの惚れないわけがない。
ミクロな人間関係から、歴史のようなマクロまで、大きな流れを変革できる『ジルオール』。RPGが好きならぜひプレイして欲しい名作なので、「プレステ クラシック」に入っていて欲しかった…そしてあわよくば続編を…。
■『エクサフォーム』
正直なところ、お気に入りすぎて『ジルオール』を「真・俺クラシック」に加えてしまいましたが、関連作がPS3に登場したりと、知名度的にはかなり高め作品でした。気持ちが先走ってしまい、申し訳ないばかり。ですが、こちらの『エスカフォーム』は、個人的には口惜しく、企画的には堂々と、「真・俺クラシック」入りを果たす一作です。
同じジャンルながらも、「俺クラシック」に加えた『サモンナイト』シリーズとはかなり方向性が異なっている『エクサフォーム』。ビビットでポップさも備えている『サモンナイト』に対し、こちらは鈍色な世界と重みのある雰囲気に支配されています。
しかし正直に言うならば、UIは洗練されているとは言えず、設定面が興味深いものの物語自体は食い足りず、ボリューム・展開の双方でもう一味欲しいところ。本作の全てを手放しで褒められる、とはいきません。ですが、そんな難点を覆すほど、ユニークな特徴を備えたバトルシステムに可能性を感じました。
本作のバトルは、一般的なシミュレーションRPGをベースとしており、行動力を消費して移動や攻撃を行うターン制。キャラクターを動かし、遠距離や近距離向けの攻撃手段を使いこなして敵にダメージを与え、勝利を目指します。
この行動力は、文字通り行動するたびに一定値を消費しますが、残った分は一時的なシールドに変換することが可能。シールドがゼロだと、ダメージを受けた際にHPがダイレクトに減りますが、シールドがあればまずそちらが減っていき、シールドが尽きるまでHPに影響はありません。
何回も攻撃して「行動」しすぎると、防御がおろそかになりHPがガンガン減ります。しかし、シールドに回すと行動数が減り、敵に有利な動きを許してしまう場合も。逆を言えば、敵から攻撃を受けない状況に持ち込めば、行動力が許す限り敵に大ダメージを与えられるのです。また、シールドで上手く敵の攻撃を凌げばHPを温存でき、安全に戦い続けることも可能。戦況に応じて行動力を使い分け、その戦法がハマった時は手応え満点! 今のシミュレーションRPGに受け継がれていいと思えるほど、『エクサフォーム』には秀逸なゲームシステムが搭載されていました。
間違いなく思い出の1本に数えたい作品ですが、前述の通り難点もあるため、もし叶うならばどこかの会社にリメイクしてもらい、そのリメイク版を皆様に遊んで欲しいところ。埋もれるには惜しいが、今のままではオススメしにくい。そんな作品だからこそ、「真・俺クラシック」に加えたいと思います。
■『ネオリュード』・『ネオリュード2』・『ネオリュード ~刻まれた紋章~』
3作品がリリースされたこの『ネオリュード』シリーズのジャンルは、ちょっと変わった「リーディングRPG」。ダンジョンがゲーム性のメインとなりますが、RPGにしては珍しく、戦闘を主軸には置いていません。戦闘はあくまで“敵を倒す手段”に過ぎず、主人公たちの成長は“探索”が鍵を握ります。
ダンジョンには様々なオブジェクトがあり、その多くをチェックすることが可能。そのポイントを3人の主人公たちが調査することで経験値が入り、成長へと繋がります。しかも、主人公たちはそれぞれ異なる長所を持っているため、得手不得手が存在。調査が上手くいくほどもらえる経験値が多くなるので、「どのポイントを誰に任せるのか」が重要です。
プレイヤーの見極めが戦力の増大に繋がるため、やり甲斐にも直結。しかも、キャラクターごとに調査の反応が異なり、個性が垣間見えるものや、世界観が伺えるようなものも。ADVのような、しかし実にRPGらしいユニークさが光る名シリーズです。1作目から徐々に世界が広がる感覚が味わえたり、ゲーム性の向上なども実感できるので、遊ぶならば3作通してのプレイがお勧め。ひと味違うRPGを求めている方は、是非!
■『ベアルファレス』
『ベアルファレス』のみ、ソフトが見つからず・・・申し訳ありません・・・!
ここからは、アクションRPGをピックアップ。とはいえ、その1本目としてピックアップする『ベアルファレス』は、バトルの要となる「トラップ」が重要と、一般的なアクションRPGではありません。主人公と仲間たちは、それぞれ使えるトラップを持っており、通常の攻撃手段以外にもトラップを駆使して戦局を有利に展開していきます。
またトラップは、攻撃のみならず、ダンジョンの攻略にも必要な要素。ちょっとネタバレとなりますが、ラスボスの動きを捉えるのはかなり難しく、筆者はトラップを使いまくって(+運にも頼って)なんとかクリア。トラップの使いどころが醍醐味のひとつなので、振り返ってみると、手に汗握るラスボス戦も実に『ベアルファレス』らしい戦いだったと思います。
ちなみにこのトラップは手軽に使えるので、他のゲームにありがちな「手間がかかる」といった印象は一切ありません。武器を使うのと同じくらいの気軽さで使用できるので、活用方法をあれこれ模索するハードルが低く、トラップバトルを存分に楽しめるのも好印象です。
そして本作のもうひとつの特徴は、数多くの仲間たちと迎えられる多彩なエンディング。仲間になるキャラ全員とエンディングを迎えることが出来るので、恋愛SLG的な楽しさも味わえます。お気に入りのキャラとどんなエンディングを迎えられるのか、この点もプレイ意欲をかき立てます。
しかし、他のキャラとのエンディングを見るためには、ゲームをやり直す必要があります。いわゆる「強くてニューゲーム」といった周回要素向けのシステムはないのが少々残念なところ。しっかり噛みしめるとどんどん旨味が出てくるのに、パッと見の地味さで損をしていると強く感じます。…いや、そんなタイトルばっかりですけどね、「真・俺クラシック」収録作品は!
■『ブレイズ&ブレイド ~エターナルクエスト~』・『ブレイズ&ブレイド バスターズ』
『ラクガキショータイム』が多人数乱闘アクションの代表作(※筆者にとって)ならば、多人数同時プレイ可能なアクションRPGの代表作は、揺るぎなく『ブレイズ&ブレイド』シリーズです。
昨今ではMMOなど、オンラインを介した同時プレイのアクションRPGは数多くあります。しかし当時は数が少なく、「みんなでアクションRPGを遊びたい!」という欲求に応えてくれる作品は貴重でした。そんな環境に登場した本シリーズは、「これが遊びたかった!」という気持ちを大いに満たしてくれたのです。
ファイターやシーフ、ウィザードなど複数の職業が用意されているのはもちろん、口調や能力値などのカスタマイズが可能。自分のキャラをあれこれ想像しながら作っていくのは楽しい工程ですし、友達がどんなキャラを作るのかも興味深いところ。この時点ですでにワイワイ楽しめます。
職業ごとに出来ることも異なっており、冒険ではそれぞれ光る場面があります。また、個人的には魔法の詠唱がアツいゲームでした。魔法は、「ボタンの長押し」でも発動しますが、それとは別にコマンド入力による「マニュアル詠唱」があります。手順としては複雑になりますが、詠唱時間を省くことができるので、コマンドさえ入力すれば即時発動。複雑なコマンド自体も、“実際に呪文を唱えているような感じ”がして、没入感を高めてくれました。
ゲームバランスやアイテム保管枠の少なさなど、荒い点も多々ありますが、時代に先駆けたセンスやシステムなどが非常に刺激的でした。みんなで一緒に延々とダンジョンに潜り、アイテム発掘に勤しむ。その楽しさを最初に教えてくれたのが、このシリーズだったのかもしれません。
■『バロック』
災害によって世界が一変し、過酷な環境を舞台とする作品はいくつもあります。ですが、“歪み”が蔓延する陰鬱で退廃的な世界が広がる『バロック』は、非常に独特で唯一性の強い印象を与える一作でした。その印象はゲームプレイを通しても裏切られることはなく、洗練されていない面こそあれども、物語・ゲーム性の両面に置いて個性に溢れていました。
歪みを正すために主人公を導く「上級天使」、構造が変化し続ける「神経塔」、神経塔で出会う人間が変異した「異形」、“おわぁ”と鳴く謎めく存在「天使虫」、口調がくせになる「カンオケ男」、この世界の命運を握る「創造維持神」…想像力をかきたてる設定の数々が、世界の真実に近づくたびに明らかとなり、そこから過去の出来事やこれから成すべきことが判明していく物語は、記憶に残る色濃さと力強さを秘めています。フラグ立てなどで分かりにくい面もあるのは惜しいところですが、繰り返して遊ぶことで登場キャラに愛着が湧いてくるのも否定できません。
ゲーム性は、リアルタイムに進行するローグライクRPG。高度なテクニックなどは求められませんが、探索で得られるアイテムをいかに活用するか、そのタイミングで使用するかなど、攻略を積み上げる判断力は重要。また、ターン制と違って敵は待ってくれないので、焦らずに対処する冷静さもポイントです…が、予期せぬ敵の攻撃でパニックに陥りながら何とかしていくのも案外楽しかったりします。
ちなみに、オリジナル版はセガサターンソフトですが、プレステ版ではアイテム管理が格段にやりやすくなり、やりこみ要素も増えているので、遊ぶならばこちらの方がオススメ。PS2版やWii版もありますが、主観から第三者視点になったり一部グラフィックが変更されたりと、プレイ感もかなり変わっています。「PS2クラシック」や「Wiiクラシック」が発売される際には加えて欲しいものですが、その時にはどんなタイトルが加わるのか。そちらも気になるところです。
ラストは恋愛・SLG系から! そして、あの幻の作品も遊んでみたい・・・
◆恋愛やシミュレーション系からはこちらの3本!
■『ネクストキング ~恋の千年王国~』
ゲームクリエイターとして知られている桝田省治氏は、プレステ時代にも様々な作品に携わっており、前述の『リンダキューブアゲイン』などの代表作を持っています。しかし、当時の作品から「真・俺クラシック」にピックアップするならば、筆者としては『ネクストキング ~恋の千年王国~』をイチオシします。
本作に登場する12人のヒロインは、一緒に冒険へ出かけるパートナーでもあり、次の王を決める投票権を持つ有権者でもあります。王の候補は、4人の王子。プレイヤーはその一人となり、ヒロインたちの好感度を上げながら、王座の獲得を目指します。
好きな子とのエンディングを目指すのはもちろんですが、王に選ばれるためには票の確保も重要。そのため本作では、数多くのヒロインと関係を深める“浮気プレイ”が許されています。いや、王位に就くには必須とも言えるので、むしろ推奨と言ってもいいのかも。「王になるためだから仕方ない」という大義名分のもと、ライバルを蹴落としながら、数多くのヒロインから愛を勝ち取る──それこそが本作の醍醐味なのです。
対戦プレイも盛り上がりますが、ヒロインたちとより親密になれるストーリーモードでは、1年間に渡る“恋の戦い”が待ち受けており、上手く立ち回れば最大11股も可能(フラグの関係で、12人同時が不可能なのがちょっと残念)。個性的なヒロインの内面に踏み込みながら、ボードゲーム形式で展開するスゴロクバトルを制し、恋も王位も手に入れる欲張りなプレイが楽しめる『ネクストキング ~恋の千年王国~』。二兎を追うくらいの気概がなければ、一兎すら手に入らないのでしょう。愛を、惜しみなく奪い合いましょう!
■『キャプテン・ラヴ』
恋愛要素のあるADVと言えば、魅力的なヒロインが複数おり、彼女たちとのコミュニケーションを通じてどのキャラに絞るかを決め、結ばれるエンディングを目指す──というスタイルが多いもの。しかし本作は、ゲームデザインの時点で、多数の恋愛ゲームとは一線を画す特徴を備えています。
本作におけるメインヒロインは、永堀愛美ただひとり。しかも、ゲーム序盤で彼女との関係は大きく進展します。そして愛美とのエンディングを迎えるためには、次々に現れる魅力的なサブヒロインを振りまくらなければならないのです。
恋愛系ADVにしては珍しく、話数形式でゲームが進行。そして、各話にひとりずつサブヒロインが登場します。サブヒロインの彼女たちは、いずれの主人公に惹かれますし、そんな彼女たちがプレイヤーの目に可愛く映らないわけがありません。もちろんサブヒロインを選ぶこともできますが、それは同時に愛美との関係が終わる道でもあり、ゲーム自体もその時点で終了。先の話に進むには、サブヒロインの誘惑に勝ち続けなければなりません。
“多くのヒロインの中から一人を選ぶ”と言えば他の恋愛ゲームと変わりませんが、深い関係になる直前まで親密になりながらも、そこで押しとどまる勇気を持たなければいけないゲームは、かなり稀有。しかもその決断は、ゲーム中に何度も押し寄せて来るのです。
また本作の特徴として、“愛の共産化”を目指す「ラブラブ党」の存在も重要なポイント。愛とは全ての人々に向けて平等に与えられるべきと考えている彼らの主張は、かなり極端でもありますが、心情的にまったく理解できないわけでもありません。
主張が異なる彼らと主人公のやりとりには、真実の愛について考えさせられる場面もあり、存在の奇抜に反して心に突き刺さる言葉を投げかけることもしばしば。ちなみに彼らとの戦いは、「論撃バトルシステム」という、いわば口喧嘩で決着をつけます。愛を語るのに、暴力は不必要! その姿勢もまた、奇妙ながらも説得力があります。
多彩に交錯する“愛”と向き合い、その真実を模索していく『キャプテン・ラヴ』。一途を貫くもよし、途中で新たな愛に走るも良し。一般的な恋愛ゲームと比べるといい意味で“ゲーム的”であり、印象的な問いかけも多く、記憶に残るパワフルさを持った作品でした。
■『ヒロインドリーム』
『ときメモ』の台頭をきっかけに、家庭用ゲーム機にも美少女を題材としたゲームが大きなブームとなりました。それはプレステにおいても例外ではなく、魅力溢れる作品が次々と登場。その中で筆者の心に一番強く残った作品が、この『ヒロインドリーム』です。
美少女をメインに据えた作品には大きく2通りあり、恋愛関係を主軸に置くものと、育成系SLGに分かれます。スタイルは少々特殊でしたが、上記の『キャプテン・ラヴ』は前者に当てはまりますし、後者は当時ならば『プリンセスメーカー』や『卒業 ~Graduation~』など、今ならば『アイドルマスター』シリーズなども該当するでしょう。
本作は、典型的な育成系SLGとなっており、主人公とヒロインの関係性も「芸能系の高等学校でアイドルを目指す彼女と、そのディレクター」という間柄。目立った恋愛要素はなく、エンディングも彼女の進路を描くものとなっています。ここまでは大きく目立つ要素がありませんが、実際にプレイしてみると、長所と短所が一体化した個性がたちまち浮き彫りに。
まず、直接育成できる対象は、舞木静ただひとり。パッケージには彼女を含めた5人の女の子が並んでいるものの、他の4人はライバルという立場です。また、主人公は「ディレクター」の立場で静と接触することはなく、レッスンなどの指示を与えるだけ。そして登場人物は全てボイスありですが、なんとセリフのテキスト表示は一切なし。実際に「聞く」以外に、発言内容を知る方法はありません。
このように書き連ねると「なんてゲームだ!」と感じる方も少なくないでしょう。これらの要素を欠点と捉えることもできます。しかし、ただ不便であったり足かせなわけではなく、このスタイルだからこそ引き出せる魅力があるのもまた事実なのです。
まず育成対象を絞ることで、静自身の内面、ライバルとの関係性などを明確に描くことに成功。ライバルといってもギスギスとした関係ではないので、そのやりとりに和むこともありますし、友人だからこその衝突もまた青春の味。物語の中核を静に絞ることで、一度のプレイだけでも5人全員の魅力を存分に感じられます。
プレイヤーはディレクターという立場なので、厳しいレッスンを課すことも。まだ若い静はそれを不満に思うこともありますが、まだ知り合って間もない目上の者に、その心情を吐露できるかと言えば難しいところ。そんな微妙な心境を汲み取ってか、主人公は「謎の占い師」という立場で静や他の4人と接点を持ちます。その結果、ディレクターという立場ではきっと知ることができなかった“彼女たちが持つ素の感情や本質”などに触れることができ、より強い関心や興味をプレイヤーに抱かせてくれます。
登場人物のセリフはボイスのみ。そのため、発言の内容をしっかり把握するにはスキップが許されません。昨今のADV事情を考えると、まずあり得ない仕様と言えるでしょう。どんどん先に進みたい人や、プレイ時間が限られているユーザーにとっては、不便さが目立つシステムに他なりません。
しかし、音声とテキストが一セットだと、「メッセージウィンドウ内に表示できる分量でセリフが一度区切られる」という制約がつきまといます。テキストのオート進行が出来るゲームでも、ただ自動で進むだけで、セリフ自体が区切られている事実に変わりはありません。
ですが本作は、メッセージウィンドウから解き放たれたことで、長さに縛られないセリフが可能に。また、区切りがないので音声をひとつずつ録音する必要もなく、キャラ同士が会話するシーンなどを一括で表現することができます。会話と会話の「間」が、テキスト送り待ちの時間ではなく、プロの声優陣による「表現」になるので、その臨場感は抜群! 相手のセリフにかぶせて話す場面や、複数人が同時に喋る賑やかなシーンも、声優陣の「間」がダイレクトなので感情の流れも実に自然です。
改めて記しますが、これらの特徴は欠点と見ることもできます。全面的に素晴らしく、普遍的であるとは言えません。ですが、手抜きやいい加減な仕様ではなく、取捨選択の末として導入した挑戦であることも間違いないでしょう。長所と短所を併せ持ち、それを魅力へと繋げる意欲的な姿勢こそが、本作を輝かせています。完璧ではなく、個性を選んだ『ヒロインドリーム』。忘れることができない作品のひとつです。
◆幻の一作だからこそ、収録という形で遊びたかった…!
ここまでの「真・俺クラシック」はいずれも、筆者が実際に購入して遊んだものばかり。ですが、この『serial experiments lain』だけは例外で、遊ぶことが出来なかったタイトルからのチョイスです。
本作は、雑誌連載やアニメなどのメディアミックス展開の一環としてリリース。現実とインターネットの交錯を、岩倉玲音という少女を通じて描いたこのシリーズは、時代に先駆けた題材や踏み込んだ描写などで話題となり、それぞれの作品が注目を集めました。
ゲームという形で登場した『serial experiments lain』は、断片的な音声ファイルや映像ファイルをもとに、玲音の過去や心理に迫るというもの。一見して分かりやすいゲームではなく、取り扱う題材もかなりハードなので、当時から人を選ぶ作品でした。しかしその一方で、アニメ版とも非常に密接しており、このシリーズ全てを理解するためには欠かせない存在でもあります。
発売以前から惹かれていたものの、当時の筆者は懐に余裕がなかったため、「いずれ買おう」と先送りに。ですがその判断は完全に裏目となり、気がつけば定価の数倍もするプレミア価格に突入。発売から20年が経っても市場価値が下がることはなく、今に至っております。中古相場は変動しやすいので一概には言えませんが、ざっと定価の5倍から10倍ほどのプレミアがついているので、おいそれと手が出せない状態。
そんな幻の作品だからこそ、「プレステ クラシック」に収録して欲しかった! しかし知名度・内容的に難しいだろうとも感じているので、せめて「真・俺クラシック」にチョイスさせていただきます。『スターフォックス2』が日の目を見たように、どうか『serial experiments lain』にもチャンスを! せめてゲームアーカイブス化とか! 非常に難しいとは思いますが、どうか…。
ゲーム記事という視点を踏まえた「俺クラシック」と、空振りもしくはホームラン(概ね前者と予想)の二択しかない「真・俺クラシック」、いかがだったでしょうか。後半は、読者も振り切る勢いで駆け抜けてみましたが、それでも「俺はもっと先に行くぜ!」と更に個性的なタイトルが頭に浮かんだ方も多いことでしょう。
「プレステ クラシック」の発売から約1ヶ月が経ち、市場的には落ち着きを見せていますが、改めてSNSなどで盛り上がれば、第2弾・第3弾が動き出すかもしれません。ゲームファンそれぞれが抱いている「俺クラシック」を実現させるべく、イチオシ作品などをTwitterなどで呟いてみてはいかがでしょうか。最新ゲームも遊びたいけど、昔のゲームも遊びたい! そんなワガママが叶う2019年になりますように。
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