アリス『ソードアート・オンライン アリシゼーション』/画像提供:Momo
国内市場が大きいために短期間で発展する中国の勢いに目が行きがちですが、海外のオタクイベントで活躍する頻度の高さは台湾も負けていません。その中でも台湾・台北在住のMomoさんは、日本ではなかなか見られないタイプのコスプレイヤー。可愛らしいキャラクターを得意としており、「わぉ!めっちゃ、キュート」なコスプレ姿を見せてくれます。
白雪姫リボン『モンスターストライク』/撮影:乃木章
仕事と趣味合わせて国内外で活躍しており、1月末に台湾で開催されたアジア最大級のゲーム展示会「台北ゲームショウ2019」において、日本一と呼び声の高いコスプレイヤー・えなこさんと『モンスターストライク』ステージで競演しました。
今回、現地にてインタビューの機会を得られたので、台湾のコスプレ事情について訊きました。『モンスターストライク』ステージを始め、厳選写真と合わせてお届けします。
台湾はゲーム人気が高い
――「台北ゲームショウ2019」お疲れ様でした。会場の雰囲気や来場者の印象はいかがですか?
Momo
年々参加者が増え、企業ブースもより凝って、ステージセットも豪華になってきているなと感じました。個人的には台湾の観客はシャイな方が多い気がしますが、熱量の高さを感じることができるので、コスプレイヤーとしてこのような場に立たせてもらえて、とても幸せだと思います。
――「台北ゲームショウ2019」で公式レイヤーとして出演するのは初めてですか?
Momo
いいえ。これまでも何度かあります。国内のゲーム会社からのオファーが多いですけど、時には韓国などアジアのゲーム会社からオファーを頂くこともあります。
新条アカネ『SSSS.GRIDMAN』/画像提供:Momo
――「台北ゲームショウ2019」来場者の熱量の高さもすごかったですが、台湾ではゲームを遊ぶ人が年々増えているそうですね。
Momo
やっぱりゲームを好きな人は多いです。近年はスマートフォン向けアプリが増えましたから、仕事の出退勤や学校の登下校時に気軽に遊ぶ人が多くなったと思います。私もよく遊んでいます。
――どんなゲームを遊んでいますか?
Momo
大好きなのは『モンスターハンター』です!一番ハマっていた時期はコスプレをせずに毎日遊んでいて、新しい写真をSNSにアップできませんでした(笑)。私は日本のゲームが好きで、自分には合っているなと感じています。台湾ゲームは中国と同じで「武侠」が下地になった作品が多いのに対し、日本ゲームはジャンルが豊富ですから。
――「台北ゲームショウ2019」でも『Fate/Grand Order』ブースがすごい盛り上がりでした。やはり国内で人気ですか?
Momo
とても人気です。私も大好きで、台湾版だけでなく、先のストーリーが気になるから日本版も同時に遊んでいます。日本語はまだまだ読めないんですけどね(笑)。ただ、あまり夢中にならないように気をつけています。
アビゲイル・ウィリアムズ(英霊旅装)『Fate/Grand Order』/画像提供:Momo
“台湾版コミケ”などオタクイベントは台北市を中心に開催
――台湾でコスプレをする人は増えていますか?
Momo
年齢はどんどん下がっている気がします。早くからコスプレを始める人は間違いなく増えましたね。コスプレの衣装やウィッグを買えるネットショップが増えて、誰でも気軽に始めやすくなったと思います。ちょっと前までは、衣装や造形など自分で一から制作することのほうが多かったですから。
――中国では大学などにアニメサークルがあって、コスプレをしたい人が入るそうです。台湾にもありますか?
Momo
あります。私がコスプレをしたきっかけも学校のサークルでした。他の人がイベントで撮影したコスプレイヤーの写真を見たら、大好きな漫画『ONE PIECE』に出てくるチョッパーのコスプレをしている人があまりに可愛かったんです。私もやりたくなって、そこからコスプレの道に入りました。
――台湾では一年間通して、どんなコスプレイヤー参加型のイベントがあるのですか?
Momo
大規模な同人誌即売会では、基本的には男性向けの「FF(FANCY FRONTIER開拓動漫祭)」、女性向けの「C.W.T(台灣同人誌販售會)」があります。台湾は台北、台中、高雄を中心に大きなオタクイベントが開催されますが、最も台北に集中していますね。
血小板『はたらく細胞』/画像提供:Momo
――ご自身はどのようなイベントに参加していますか?
Momo
私は台北に住んでいるので、お仕事も含めて台北開催のゲームイベントや同人誌即売会が多いです。とくに「FF」は欠かさず参加するように努めています。台湾では夏と冬の年2回開催される最大級の同人誌即売会で、高雄など南部に住んでいる人も含めて国内のコスプレイヤーが多く参加しますから。あとはFFほど大きくなくても台北で開催されているイベントには、時間があれば参加しています。
――海外のアニメイベントなどへの参加も多いですよね。
Momo
はい。海外で開催されるイベントに招待してもらっています。これまで、シンガポール、フィリピン、ベトナム、マレーシア、オーストラリアなどの国々に行きました。アジアが多いですね。日本にも昨年12月のコミックマーケット(C95)にサークル出展しました。
アジアの他の国々もコスプレ熱は高いのを感じますが、国内はもちろん日本や中国ほど多くのコスプレイヤーは参加していない印象を受けます。
――“中国版コミケ”「上海コミカップ」に参加したことはありますか?
Momo
はい!毎回ではないですけど、あります。中国では上海と広州のイベントに行ったことがあります。上海コミカップは会場がとても大きかったです!
ジャベリン『アズールレーン』/画像提供:Momo
――中国はカメラマンの競争が激しくレベルが高いと聞きましたがどうでした?
Momo
私も以前から中国カメラマンが撮った写真を見ていましたけど、本当に上手ですよね。中国のイベントでは、有名カメラマンがあらかじめスタンドとか機材を一箇所にセッティングして、コスプレイヤーをそこに呼ぶんですよ。さらに衣装担当やヘアメイクなどたくさんのアシスタントがいて、万全の体制で撮影に臨むんです。
台湾でも日本のように並んで順番に撮影することはなく、基本的には囲み撮影です。もちろん、カメラマンがコスプレイヤーに1対1で撮影していいかを訊いて、OKの場合は撮影することができます。
――そうは言っても、台湾カメラマンもレベルが高いですよね。
Momo
私もそう思います。カメラを買ってコスプレ撮影する人は年々増えていますし、長く撮影している人は、どの角度で撮るとキレイに見えるかなど、コスプレの様式美を理解していますから。
台湾のSNSとコスプレのお仕事
――台湾だとアニメとゲームキャラ、どちらのコスプレをする人が多いのでしょうか?
Momo
どちらも多いですし、新作のキャラクターを追いかけてコスプレをするのが好きですね。日本のアニメも今はネット配信が発展しているので、日本とほぼ同時期に新作を観ることができます。
私の場合は、予告PVを観てストーリーが面白いと思ったもの、自分の好みのイラストタッチで観る作品を決めています。とても可愛いキャラクターがいたら、放送前から研究して先にコスプレすることもあります。私はとくにロリ系キャラが大好きなんです(笑)。
――台湾の主流SNSはFacebookですが、コスプレイヤーにとっても変わりませんか?
Momo
はい、メインはFacebookです。ただ、少し使い方が難しいところがあります(笑)。商業的な使い方ですと、自分のページを多くの人の目に留めてもらうため、絶えずお金を払ってFacebook内の広告に載せる必要があります。でもFacebookは世界中で使われているから、海外イベントなどのお声がけを頂きやすいと思います。
個人的には、Twitter(2017年3月から始めている)のほうが最近は気軽に楽しくできて面白いです。
レン『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』/画像提供:Momo
――台湾でのコスプレのお仕事にはどのようなものがありますか?
Momo
「台北ゲームショウ」のように、ブースの撮影会やステージ出演などが主流ですね。今まではショーガール中心でしたが、コスプレイヤーは年々増えています。
あとは新作ゲームキャラのコスプレ撮影をして、大勢の人に遊んでもらうようにFacebookで発信したり、ゲームを遊んでいる様子を動画配信したりすることもあります。
――中国では空前のロリータファッションブームで、ロリータ服のモデルをするコスプレイヤーも多いそうです。台湾ではどうですか?
Momo
台湾はそこまでブームではないですね。でも私はロリータ服をたくさん持っています(笑)。日本のブランドもあれば、中国のブランドも…自分がお姫様になったような気分になれるので…口に出すと少し恥ずかしいですけど、やっぱり好きなんです。
ロリータ/画像提供:Momo
次のページ:コスプレを通して得たものとは?
Momoさんがコスプレを通して得たもの
――長くコスプレを続けてきて何を得られましたか?
Momo
コスプレを通じて良き友人たちを得られたことが何よりも大きいです。学んだことはヘアセットやファッションなどの身だしなみですかね。細かい点まで気を配れるようになりました。
あとは…写真のレタッチが上手になったことでしょうか(笑)。始めた当初はレタッチしなくても、撮ってもらった写真を「素敵!これ以上はない!」と思っていたんですけど、レタッチを覚えた今見返してみると、「う~ん」と唸ってしまいます(笑)。
――それでは苦労したことはありますか?
Momo
私は今日までコスプレを続けて、比較的順調だったと思います。家族の理解も得られて応援してもらえますし、お母さんが衣装制作や造形が本当に上手で、いつも一緒に作ってくれました。
あ!学生の時に、写真集のために1日に3着の撮影を朝から晩まで10時間以上続けて撮ったことですかね。ものすごく疲れたのを覚えています。今と違って、何日も撮影のために時間が取れなかったから1回でまとめて撮り終える必要があったんです。
雛鶴あい『りゅうおうのおしごと!』/画像提供:Momo
えなこさんら日本のコスプレイヤーへの印象、台湾と日本のコスプレの違い
――「台北ゲームショウ2019」では、えなこさんと競演しましたね。
Momo
2018年12月のコミケ(C95)にサークル出展した時にお見かけしましたけど、一緒にお仕事するのは初めてです。間近で見た本人はとても可愛かったです!せっかく会えたのは嬉しいですけど、日本語が全然話せないので、話しかけてあちらを驚かせるのも申し訳なくて会話の機会があまり得られないのが残念です…もっと日本語勉強します。他の日本コスプレイヤーの方も、とても可愛くてレベルが高い印象を受けました。
――台湾と日本のコスプレイヤーで違うと感じる部分はありますか?
Momo
台湾だと踊りや劇など舞台で見せるコスプレショー(基本無料)がありますね。撮影オンリーのコスプレイヤーと比べると人口は少ないですけど、その分熱量やパフォーマンスのレベルは高いです。以前、『ラブライブ!』が台湾でものすごい人気だった時は、コスプレをしてステージで踊りたがる人は多かったです。
あくまで個人の主観ですけど、舞台に立ったほうが知名度を高めたり、SNSのフォロワーを増やしたりしやすいと思います。
チャイナドレス/画像提供:Momo
――「台北ゲームショウ2019」で驚いたのが、来場者が気軽にコスプレイヤーと2ショット撮影ができるフレンドリーな空気感でした。
Momo
日本では2ショット撮影はしないんですか?
――イベントで公式が主催する撮影会は、基本的にコスプレイヤーのみの撮影です。また、なかなか会話する機会がありません。日本では全体的に演者と来場者の距離感を保つやり方を推奨しています。
Momo
そうなんですね。台湾だと「記念に一緒に撮ってもらって良いですか?」と呼びかける人は多いですし、求められれば余程のことが無い限り快諾します。そこは確かに日本と台湾における距離感の違いがあるかもしれないですね。
――中国ゲーム企業の勢いもあって、日本で活躍する中国コスプレイヤーは増えています。ご自身は日本での活動に興味はありますか?
Momo
もちろんです。今はコミケ参加だけですけど、お仕事も含めて日本のイベントにたくさん参加する機会を得られたら嬉しいです。以前に撮影会をしないかとお声かけ頂いたことがありますが、その時はタイミングが合わなかったので…。台湾はコスプレイヤーの撮影会が少ないから、貴重な機会だと思うんです。
――最後に今後の目標を教えてください。
Momo
アジアのオタクイベントにはたくさん行かせてもらったので、欧米のほうにもっと行きたいです。あちらではどんな雰囲気で、どんなコスプレイヤーがいるのか見てみたいです。例えば、ドイツ在住のカメラマンと知り合った際に、ぜひドイツの大きなイベントに来て欲しいと言われたので興味があります。
私の場合はコスプレが趣味でしたけど、海外に呼んでもらえることが増えて、旅行も趣味になっちゃいました(笑)。でもやっぱり、日本はアニメの聖地なので一番好きです。行く機会が増えたら嬉しいです。
Momoさんは2月16日・17日に開催される「台湾FF 33」に参加予定。近年は日本からも企業サークル、コスプレイヤーの参加が増えており、日本での認知度が高まっています。今後、日本と台湾のオタクイベントを通した交流はさらに広がりそうです。
白雪姫リボン『モンスターストライク』/撮影:乃木章
【MomoのSNS】
「台北ゲームショウ2019」撮影:乃木章