ロボットやアンドロイドに女性の要素を盛り込んだ、いわゆる「ロボ娘」「メカ少女」といった存在は、アニメや漫画、そしてもちろんゲームでも、昔から活躍を続けてきました。

ゲームの中では、戦闘で活躍するRPGから恋愛要素のADVまで、様々なジャンルに登場。
また、無垢な存在からの成長・進化を辿るモチーフとしても優れているため、育成ゲームのヒロインになることも。本日、2019年5月20日の20周年を迎えたプレイステーションソフト『マリオネットカンパニー』も、アンドロイドを育てていく育成ゲームのひとつです。

育成ゲームといえば、少女を様々な未来に導く『プリンセスメーカー』シリーズや、学生を指導する教師の立場となる『卒業』シリーズなどが、本ジャンルの人気を後押ししました。また、『ときめきメモリアル』では、魅力的な女の子たちに振り向いてもらうため、主人公である自分自身を磨きます。

複数のヒロインを同時に育てたり、自分自身を育成したりと、育成要素には様々な形がありますが、『マリオネットカンパニー』で育てるアンドロイド(作中では“マリオネット”と呼ばれます)は一人だけ。攻略可能なヒロイン自体は複数いますが、前田千亜季さん演じるマリオネットと最も長い時間を過ごすことになります。

一人のキャラクターと向き合う時間を軸とする『マリオネットカンパニー』は、彼女の成長に着目した作品と言い換えることもできます。そして、広さではなく深さを選んだ本作は、多くのユーザーに忘れがたいタイトルとして記憶に残りました。今回は、そんな思い出深い作品に向けたユーザーの想いを交えつつ、『マリオネットカンパニー』も歩んだ「ロボ娘」「メカ少女」の大きな流れを軽く振り返ってみたいと思います。

◆ロボットと少女の組み合わせは、男子の夢!? いつの時代も注目を集めるコンテンツに
ロボットやアンドロイドに女性要素を盛り込む形は、昔から多くの作品で取り扱われてきました。例えば「マジンガーZ」では、「アフロダイA」などの巨大な女性型ロボットが登場。「サイボーグ009」のサイボーグ戦士「003」(フランソワーズ・アルヌール)も、印象深いキャラクターのひとりです。
また、「Dr.スランプ」の「則巻アラレ」も、人間を軽く超える身体能力で、多くの読者を驚かせた愛すべきアンドロイドです。

『マリオネットカンパニー』が発売された当時のゲームタイトルでは、同じくプレイステーション向けに登場した『ToHeart』が、約2ヶ月前に発売されています(原点となるPC版は1997年発売)。『ToHeart』には、「HMX-12“マルチ”」と呼ばれるアンドロイド(作中では“メイドロボット”)が登場し、ロボットと人間の恋愛を描いたシナリオが好評を博しました。

少女型ロボットが登場するゲームとしては、『ワンダープロジェクトJ2 コルロの森のジョゼット』も外せないところです。こちらは1996年に発売されたニンテンドウ64ソフトで、コミュニケーションを通じてアンドロイド(作中では“ギジン”)を育成していきます。リアクションや感情表現などが豊かで、その成長ぶりについつい思い入れが増してしまうほどです。

画像はiモード版のものです
また、少女とメカの組み合わせとしては、明貴美加氏による「MS少女」の存在も大きいでしょう。「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツと少女を組み合わせた「MS少女」は、これまでの一般作品には見られなかった大胆なアプローチで注目を集め、後のコンテンツにも大きな影響を与えました。ちなみに、明貴氏が関わったゲーム作品「銀河お嬢様伝説ユナ」も、少女とメカを組み合わせた要素がたっぷりと盛り込まれています。

こういった少女とメカの結びつきは、昨今は「擬人化」のような発展を遂げているケースもあります。艦船を少女化させた『艦隊これくしょん -艦これ-』や『アズールレーン』といったヒット作をはじめ、数多くの擬人化ゲームが登場しています。

『マリオネットカンパニー』発売以前から、少女型アンドロイドなどが活躍しており、同時代には『ToHeart』といった作品もありました。
また近年は、擬人化といった手法に発展していたり、(こちらはサイボーグですが)少女とメカが融合した「ガリィ」の活躍を描いた漫画を原作とした実写映画「アリータ: バトル・エンジェル」が2019年に放映されるなど、いつの時代も厚い支持を集めるモチーフであることが窺えます。

『マリオネットカンパニー』の魅力や特徴、そして読者の熱い想いを紹介!

◆彼女の「成長」と主人公の「熟練」─2つの育成が織りなす『マリオネットカンパニー』
ドリームキャスト版『マリオネットカンパニー』パッケージ
少女型アンドロイドが登場するゲームは、頻繁に見かける・・・とまではいきませんが、決して稀有な存在でもなく、普遍的なモチーフのひとつとしてゲーム業界にも浸透しています。こちらは少女型に限った話ではありませんが、人間とアンドロイドの関係に深く踏み込んだ『Detroit: Become Human』が2018年に発売され、話題となりました。

その一方で、「ロボット」といった要素を記号的に組み込み、見た目以外普通の女の子と変わらないようなキャラクターが登場するゲームもありました。これは好みの問題なので優劣ではありませんが、ロボットやアンドロイドならではの物語やゲーム性を求める声が挙がるのも、また必然と言えるでしょう。

『マリオネットカンパニー』は、そんな「ロボ娘」好きに応える、非常にメカニカルな育成ゲームとして関心を集めます。ヒロインであるマリオネットは、「心(ハート))を持っている反面、初期状態ではそれを認識できない状態にあります。そんな彼女の成長を促す方法は、“プレイヤー(主人公)との交流”と、“パーツの換装”が欠かせません。

ドリームキャスト版『マリオネットカンパニー』パッケージ背面
マリオネットは、一見すると可愛い女の子に過ぎませんが、その内側は機械の集合体。これは設定上だけのものではなく、パーツを組み換える際には、頭部や胴体、腕部などの内部構造を、グラフィック上でもちゃんと表現しています。“人間に近い、しかし人間ではないもの”を真っ正面からしっかりと描写しており、その姿勢がこだわり派ユーザーからの支持も集めました。

主人公とマリオネットの関係は、「KIZUNA値」を上げることで深まっていきます。
この「KIZUNA値」の上昇に合わせ、彼女の情緒が発展していき、人間らしい変化を見せていくことも。この成長を目の当たりにする瞬間がとても感慨深く、そして愛着が一層増すのです。

しかし、「KIZUNA値」の上限はパーツに左右されるので、よりよいパーツが必要です。そのためには、主人公自身の工学レベルを上げなければならず、“マリオネットの情緒的な成長”と“主人公の上達”という、全く異なる2つの育成要素が本作の軸となります。この段階構造も、『マリオネットカンパニー』らしさを演出するユニークな特徴のひとつと言えるでしょう。

パーツは、その材料となる「エレメント」を組み合わせて作ります。「設計図」を購入することで正しい組み合わせが分かりますが、設計図抜きでも作成は可能。正解に辿り着く手段がひとつではないので、あれこれ模索してみるのも一興です。また、後に発売されたドリームキャスト版の説明書には、組み合わせリストが掲載されていたりします。

ドリームキャスト版『マリオネットカンパニー』説明書
マリオネットの育成に励み、彼女の成長が喜びとなる『マリオネットカンパニー』。本作自体が魅力に溢れているのは大前提ですが、ハードが大きく進化したプレイステーションの登場は、ゲームファンに“新たな未来”の到来を実感させました。この当時の空気感と、“マリオネットを育てる”という近未来感の組み合わせが、『マリオネットカンパニー』という印象深い良作を生み出す土壌になったのかもしれません。


ちなみに、『マリオネットカンパニー』の世界観は、マリオネットが存在するものの、昭和40年代をベースとしています。作品の中では“近未来”と“懐古”が組み合わさっており、ここも味わい深いクロスオーバーと言えそうです。

◆『マリオネットカンパニー』に寄せる読者の熱い想い! 今から遊びたい方は、ゲームアーカイブスがお勧め
『マリオネットカンパニー』は、残念ながら一大ブームを巻き起こすようなビッグタイトルではありません。ロボと少女の組み合わせは、もちろん人気のあるコンテンツですが、元々は比較的ニッチな需要なため、“広く浅く”よりも“深く狭い”という傾向にあります。

だからこそ、踏み出すとどっぷりとハマってしまう魅力に溢れているタイトルでもあります。今回、『マリオネットカンパニー』関連についてアンケートを募ったところ、読んでいるだけで当時の情景が思い浮かぶような熱いコメントをいただきました。その想いを、こちらでひとつずつ紹介させていただきます。

“初めてのギャルゲー”として本作を選んだ方は、彼女の育成にかなり手こずった模様。育成と成長を見守る『マリオネットカンパニー』は、主人公の工学レベル上げやお金稼ぎを含む「育成」にかける時間の方が大きく、「成長」に辿り着くまで決して容易ではありません。

しかし、「ロボ娘が好きでしたので、特に問題なく遊んでいました」と、その愛で見事乗り切った模様。また、「店員等のマリオネットも好きでした」のコメントに、幅広い“ロボ娘”愛を感じます。

■読者コメント
中学生の頃、小遣いを貯めて購入しました。
初めてのギャルゲーで攻略には何度もつまづき、思うような結果にはなれなかったのですが、当時よりロボ娘が好きでしたので、特に問題なく遊んでいました。メインヒロインであるマリオネットも好きですが、店員等のマリオネットも好きでした。

続編となる『マリオネットカンパニー2』についての想いを届けてくれた方も。こちらが発売されたのは、2000年5月18日。ダウンロード販売などはなく、実店舗に足を運んで買いに行くのが主流の時代でした。しかもコメントしてくださった方は、特典をゲットするため、帰宅ルートを大幅に変更して向かったとのこと。特典は、関連グッズを手に入れる貴重な機会なので、足を運んででもゲットしたい──その気持ち、よく分かります。

■読者コメント
マリカンのファンクラブとか土鍋とかあった気がする。「マリカン2」のゲーマーズ特典?が欲しくて発売日に会社(川越)から自宅と正反対の方向へ大回りして帰って池袋のゲーマーズ(当時はビルの上階に在った)まで走ったのが懐かしい思い出です。
ドリームキャスト版『マリオネットカンパニー』説明書
さらに、「メカ娘」に目覚めたきっかけが『マリオネットカンパニー』だった、熱いコメントも到着しました。思い出深いだけでなく、今も現役で楽しんでおり、愛の深さが伝わってきます。

こちらのコメントにもある通り、『マリオネットカンパニー』シリーズを生み出したマイクロキャビンは、現時点では遊技機用ソフトウェア開発を主としています。
そのため、新作や新たな発展の可能性は高いとは言えませんが、懐かしい名作ソフトのリメイク化などは決して珍しい話ではありません。近年だけでも、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』が復活し、名作の続編『EVE rebirth terror』もリリースされました。どうか、『マリオネットカンパニー』にも、新たな光明を!

■読者コメント
メカ娘好きになった思い出の一作。思い出がありすぎて、とても書ききれないし、今でも現役のタイトル。あまりに完成度が高すぎるので、他のタイトルを遊んでも結局物足りなくなり、「マリ☆カン」…富士見町のあの家に戻ってしまう。メーカーのマイクロキャビンがゲーム制作から撤退してしまい、続編が絶望的なのがとても残念。なので、これからも語り継いで行きたい、不朽の名作だと思う。
今後の展開にも期待したいところですが、『マリオネットカンパニー』と『マリオネットカンパニー2』は、ゲームアーカイブス版が配信中です。PS3やPSP、PS Vitaなどでプレイできるので、もう一度遊びたい方や新たに興味を持った人は、ゲームアーカイブスを活用して楽しんでください!

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