6月11~13日(現地時間)にアメリカ・ロサンゼルスにて開催される世界最大規模のゲームショー「E3 2019」。今年はどんな情報が発信されるのか、多くのゲームファンが心待ちにしていることでしょう。
今回の『ゲーム19XX~20XX』は、このE3が初めて開催された1995年のゲームを紹介していきます。

E3(Electronic Entertainment Expo)の第1回は、1995年5月11~13日の3日間に渡って開催されました。このときの目玉はセガサターンとプレイステーションの価格発表で、セガがサターンの北米での小売価格を399ドルとしたのに対し、ソニーはプレイステーションを299ドルで発売すると発表。サターンより100ドルも安い驚きの価格に、会場は大歓声に包まれました。E3では驚きの新発表が行われるのが恒例となっていますが、それは第1回から始まっているわけです。YouTubeなどで当時の映像が見られるので、興味のある人は探してみるといいでしょう。

1995年は戦後日本を揺るがした年でもありました。まず、1月17日に「阪神・淡路大震災」が発生。建物の倒壊や火災の発生が相次ぎ、死者6434人、負傷者約4万人、住宅被害約64万棟(※1)に達するなど甚大な被害をもたらしました。

この震災の衝撃が冷めやらぬ3月20日、今後は東京で「地下鉄サリン事件」が発生。オウム真理教の信者が地下鉄車両内に猛毒ガスのサリンを散布し、乗客や駅員13人が死亡、6000人以上が重軽傷を負うという大惨事となりました。これらをリアルタイムで経験された方は、その衝撃の大きさを今もまざまざと記憶していることでしょう。


※1:神戸新聞社の「データで見る阪神・淡路大震災」より

このように大きな社会不安に覆われた1年でしたが、明るいニュースもありました。特に野茂英雄投手の大リーグデビューやイチロー選手の活躍によるオリックスのリーグ優勝は大きな話題となりました。パソコン用OS『Windows95』の発売もこの年で、パソコンやインターネットが一般に広く普及し始めるきっかけとなりました。

映画ではトム・ハンクス主演の『フォレスト・ガンプ 一期一会』、スタジオジブリ制作のアニメ映画『耳をすませば』などが話題に。音楽ではH Jungle With tの『WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント』、DREAMS COME TRUEの『LOVE LOVE LOVE』などが大ヒットとなりました。また、のちに社会現象を巻き起こすロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビ放映が10月よりスタートしています。

それでは、この年に発売されたゲームを振り返っていきましょう。1本目は先頃行われた『週刊ファミ通』のアンケート「平成のゲーム 最高の1本」で1位に輝いた、この大作RPGです。

クロノ・トリガー
発売日:1995年3月11日
機種:スーパーファミコン
販売元:スクウェア(現スクウェア・エニックス)

平成屈指の傑作とうたわれる本作ですが、発売前から大いに話題を集めていたタイトルでした。何しろ『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏が初期プロット、『ドラゴンボール』の鳥山明氏がキャラクターデザイン、『ファイナルファンタジー』の坂口博信氏がエグゼクティブプロデューサーを担当。いわば『ドラクエ』と『FF』が融合したようなタイトルで、『週刊少年ジャンプ』にて第一報が掲載された際、ゲームファンは騒然となりました。

このような発売前から大々的に扱われた作品は、思ったほどではなかったりすることがけっこうあるのですが、本作は違いました。
期待をはるかに上回る内容でプレイヤーたちをうならせ、ビッグヒットとなりました。

最大の見どころは奥の深いストーリーでしょう。現代からスタートして中世、未来、原始、古代と、さまざまな時代を行き来しながら、崩壊した未来世界の歴史を変えるべく、それぞれの時代で冒険を繰り広げていきます。しかも、その展開は意外性に満ちていて、巧みな伏線の数々に何度も驚かされたものです。

システム面では「強くてニューゲーム」の存在が注目を集めました。現在ではクリアデータを引き継いで初回からプレイできる作品はめずらしくありませんが、当時は非常に画期的で、多くのプレイヤーがやり込みプレイにハマりました。

個性豊かなキャラクターたちの存在も見逃せません。特に印象的なのは、やはりカエルの姿をした剣士・カエルと未来世界で仲間になるロボではないでしょうか。このカエルがとことんカッコよく、ロボがとにかくカワイイのです。もちろん幼なじみのルッカやおてんば姫のマールたちも魅力的ですが、個人的にはこのふたりが強く心に残っています。

ほかにもコンビやトリオによる連携攻撃を交えた戦略的なバトルやストーリーを盛り上げるサウンドの数々など、見どころは枚挙にいとまがありません。現在、プレイステーション版がPlayStation Storeのゲームアーカイブスにて配信されているほか、iOS、Android、Steamなど、さまざまな手段でのプレイが可能になっていますので、未体験の方はとにかくプレイしてみてください。
きっと最高の驚きと感動を得られることでしょう。

この年はRPGが百花繚乱で、ほかにも数々の名作・話題作が登場しています。その筆頭というべき存在が『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(エニックス:現スクウェア・エニックス)です。いわゆる天空シリーズの完結編で、国内累計出荷本数320万本(※2)を記録するスーパーヒットとなりました。

『テイルズ』シリーズの記念すべき第1作目『テイルズ オブ ファンタジア』(ナムコ:現バンダイナムコエンターテインメント)も、この年の発売です。発売日が『ドラクエVI』の1週間後ということもあって、当初はあまり目立たなかったのですが、じょじょに人気が拡大。現在もシリーズが続くヒット作となりました。

『FF』と並ぶ人気RPG『ロマサガ』シリーズの第3作目『ロマンシング サ・ガ3』(スクウェア)、初期プレイステーションを代表するファンタジーRPG『アークザラッド』(SCE:現SIE)もミリオンヒットとなっています。そのほか、中国の伝奇小説『水滸伝』の設定を活かした『幻想水滸伝』(コナミ)、『デジタル・デビル物語 女神転生』(ナムコ:現バンダイナムコエンターテインメント)の『I』と『II』をスーパーファミコン向けにリメイクした『旧約・女神転生』(アトラス)、グロテスクかつショッキングな展開が魅力の『リンダキューブ』(NECホームエレクトロニクス)なども話題となりました。

※2:一般社団法人コンピュータエンタテインメント協会発行の『2018CESAゲーム白書』より

スーパーマリオ ヨッシーアイランド
発売日:1995年8月5日
機種:スーパーファミコン
販売元:任天堂

おなじみのヨッシーが赤ちゃんマリオを背負って、さまざまな冒険を繰り広げる横スクロールアクションです。敵に接触したり攻撃を受けたりしても、ヨッシーにダメージにはないのですが、代わりに赤ちゃんマリオがシャボン玉に包まれて飛んでいってしまい、一定時間内に助け出さないと敵に捕まってアウトとなります。

しかも、ヨッシーから離れている間、赤ちゃんマリオは「エーン、エーン」と泣き叫ぶので、早く助けてあげなきゃと、ついつい慌ててしまうのです。
プレイヤーの父性もしくは母性本能をくすぐった初めてのゲームだったかもしれません。ギミック満載のステージや絵本のようなメルヘンタッチのグラフィックも楽しく、国内累計出荷本数177万本(※3)というビッグヒットを記録。のちに本作の内容をアレンジしたゲームボーイアドバンス向けの『スーパーマリオアドバンス3』も発売されています。

※3:一般社団法人コンピュータエンタテインメント協会発行の『2018CESAゲーム白書』より

タクティクスオウガ
発売日:1995年10月6日
機種:スーパーファミコン
販売元:クエスト

民族紛争に巻き込まれた少年を主人公に、重厚なストーリーが展開されるシミュレーションRPGの傑作です。高低差、地形、行動順、キャラクターの向きなど、さまざまな要素が反映される戦略性の高いステージ。シナリオを優先的に進めてもよいし、キャラクター育成にいそしんでもよいなど、独自の楽しみ方ができる自由度の高さ。会話や行動などによって分岐するマルチなシナリオなど、すべてにおいて完成度が高く、非常に歯応えがあります。

とはいっても、決して敷居が高いわけではありません。仲間同士で戦うトレーニングなどでキャラクターたちを自由に鍛えられるので、シミュレーションRPGが得意ではないという人でも問題なく進められます。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』などでおなじみの吉田明彦氏が手がけた、精緻なドット絵のキャラクターや背景画像も非常に魅力的です。今プレイしてもどっぷりハマれる、万人が楽しめる作品と言えるでしょう。本作をプレイステーション・ポータブル向けにリメイクした『タクティクスオウガ 運命の輪』(スクウェア・エニックス)もおすすめです。


Dの食卓
発売日:1995年4月1日
機種:3DO REAL
販売元:三栄書房

故・飯野賢治氏率いるワープが手がけた一人称視点の3Dアドベンチャーです。当時は「インタラクティヴ・シネマ」と銘打たれていて、全編フル3Dの映像や映画的な演出の数々が話題となりました。

プレイヤーは主人公の女性・ローラを操作して、謎に包まれた不気味な古城を探索していきます。ゲーム中の時間はリアルタイムで進行していき、2時間以内に城から脱出できないとゲームオーバー。途中でセーブすることもできないため、必然的に何度も挑戦することになります。こうした独自性の強いシステムも本作の特徴のひとつと言えるでしょう。

キャラクターの移動が遅かったり、一部の仕掛けが少し理不尽に感じるなど、今プレイすると、いろいろ欠点が目立つことは事実です。しかし、3Dポリゴンによるグラフィックやローラの造形が当時のゲームファンに与えた衝撃は大きく、その歴史的意義は多大なものがあります。ゲームの歴史を知る上で欠かすことのできない1本です。

そのほか、スーパーファミコンでは詰将棋的なダンジョン攻略が楽しい『不思議のダンジョン2 風来のシレン』(チュンソフト:現スパイク・チュンソフト)、シリーズ屈指の人気を誇る『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』(任天堂)、競走馬育成シミュレーションのシリーズ第3弾『ダービースタリオンIII』(アスキー)などがスマッシュヒット。往年の人気アニメロボットが一堂に会する『第4次スーパーロボット大戦』、ヴァンツァーと呼ばれるロボットを駆使して戦うミリタリーテイストのシミュレーションRPG『FRONT MISSION』(スクウェア)なども人気となりました。

セガサターンではゲームセンターで一大ブームを巻き起こしていた3D格闘ゲーム『バーチャファイター2』(セガ:現セガゲームス)の移植版が発売。
完全な移植とは言えませんでしたが、完成度はかなり高く、サターン初となるミリオンヒットとなりました。アーケードの傑作レースゲームを移植した『セガラリー・チャンピオンシップ』(セガ)、同時発売のガンコン『バーチャガン』も話題を呼んだ3Dガンシューティング『バーチャコップ』(セガ)なども、この年に発売されています。

プレイステーションからは海中の散策をひたすら楽しめるという斬新なコンセプトが話題となった『アクアノートの休日』(アートディンク)が発売。戦闘機によるドッグファイトを楽しめるフライトシューティング『エースコンバット』(ナムコ:現バンダイナムコエンターテインメント)、記念すべきシリーズ第1作目をアーケード版から移植した『鉄拳TEKKEN』(ナムコ)なども人気となりました。

ハードの方では任天堂のバーチャルボーイが、この年発売されています。ゴーグル型の本体をのぞき込んで立体映像のゲームを楽しむというもので、現在のヘッドマウントディスプレイの走りと言えるでしょう。ご存知のとおり、販売面ではほとんどふるわず、ビジネスとしては失敗に終わりましたが、非常に画期的なハードだったことは事実で、任天堂のチャレンジブルな姿勢を体現したゲーム機だったと言えるのではないでしょうか。

また、スーパーファミコン向けの衛星データ放送が4月23日より開始。本体に接続して使用する受信用端末『サテラビュー』も発売されました。電話回線を使った家庭用ゲーム向けの通信対戦サービス『XBAND』も、この年にアメリカでスタートしています。これらのサービスは一般化しませんでしたが、言うまでもなく、現在では通信を使ったソフトの配信やオンライン対戦は当たり前になっています。その意味では、1995年はゲームを取り巻く環境が変わり始めた年だったと言えるかもしれません。
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