7月18日、中世のチェコ・ボヘミア王国を舞台にしたオープンワールドRPG『キングダムカム・デリバランス』の日本語版がDMM GAMESから発売されます。

チェコのゲームスタジオWarhorse Studiosが開発した本作は、徹底した時代考証で15世紀のチェコを忠実に再現し、世界各国からの観光客が倍増したことが話題になりました。
日本語版の発売にともない開催されたメディア向けプレスツアーに我々も参加。9日間に渡り触れた、本作とチェコ共和国の魅力を余すことなくレポートします。

知らないようで意外と触れている国、チェコ共和国。場所はドイツとオーストリアの隣にあり、大きさは北海道くらい。ゲームクリエイターにも影響を与えた作家のカフカや画家のミュシャもチェコ出身。教科書に載っている音楽家のスメタナやドヴォルザークもチェコ出身で、首都のプラハには『ファイナルファンタジー』や『キングダムハーツ』のレコーディングも行われた音楽スタジオもあり、多くの映画やゲーム音楽の劇伴を担当する「FILMharmonic Orchestra」もプラハの楽団です。

今回はそんなチェコのいわゆる“地方都市”、オロモウツ、ブルノ、クトナー・ホラでの様子をお届けします。

◆オロモウツ
1日目に訪れたのはオロモウツ。中央モラヴィア地方に位置していて、空港がある首都・プラハから電車で2時間ほどで移動できます。

オロモウツ駅
オロモウツは、チェコでもプラハに次ぎ2番目に文化財が多い都市で、その昔、『キングダムカム・デリバランス』の舞台でもあるボヘミア王国で最も重要な都市のひとつとして扱われていました。今は学生の街として栄えていますが、11世紀に司教座が置かれてから宗教都市として発展しただけあり、歴史のある教会やファンタジーRPGに出てくるようなお城や宮殿がいっぱい。

中でも聖ヴァーツラフ大聖堂は12世紀に建設された歴史のある建物で、チェコで2番目に背が高い建物としても知られています。
隣接する大司教博物館では、モーツァルトが「交響曲第6番へ長調」を作曲したといわれています。

聖ヴァーツラフ大聖堂(左)と、隣接する大聖堂博物館(右)
聖ヴァーツラフ大聖堂内部
11歳のモーツァルトが滞在し、「交響曲第6番」を書いたという。
唯一のチェコ発祥のチーズで、強烈な臭みが特徴の「トヴァルーシュキ」はオロモウツの特産品。600年の歴史を持つこのチーズを現代風にアレンジし提供してくれるレストランなども楽しめます。

レストラン「Long Story Short」でトヴァルーシュキのフルコース!
街のシンボルでユネスコ世界遺産にも登録されている聖三位一体柱。ちょうどイースターの時期で、ホルニー広場にもイースターの装飾が。

RPGファンにはたまらない古代神話をモチーフにしたバロック式の噴水群。
Kostel Panny Marie Snezneの美しいパイプオルガンと天井画。
なんと階段で上のフロアまで案内してくれ、パイプオルガンの生演奏を聴かせてくれる大サービスが。
兵士と司祭の町と呼ばれていたオロモウツ。かつての武器庫が外壁の装飾そのままに図書館になっていた。
街の立体像。
頑張れば1日で周りきれてしまう広さ。
◆ブルノ
2日目に訪れたのはブルノ。
ボヘミア地方のプラハが日本でいう関東地方の東京ならば、ブルノは大阪という、モラヴィア地方の中心都市です。

ペトロフの丘にある聖ペテロ・聖パウロ大聖堂は、チェコのお金、10コルナコインにも刻印されている歴史のある建物です。1107年代に建てられたカトリックの教会です。ここの鐘は、ほかの鐘が普段12時に鳴るところ、11時に鳴るそうです。言い伝えがあり、三十年戦争で攻められ立て込んでいたとき、敵国の兵士が「お昼までに入れなかったら帰ろう」と話していたのをたまたま聞き、少し早めの11時に鐘を鳴らして、その時からずっと11時に鳴らしているのだとか。

ブルノは銀が採掘され、銀貨の製造で豊かになった街だといわれていて、16世紀にはヨーロッパで45%の銀はブルノで製造されていたとのことです。硬貨鋳造セラーではそんなブルノの銀貨にまつわる歴史と、実際に行われていた当時の銀貨制作風景を見ることができます。

当時使用されていたという銀貨製造機。顔ハメパネルもあります!
13世紀に建てられたシュピルベルク城も必見です。17~18世紀にかけて軍の要塞に建て替えられ、その後牢獄になったという城内も見学可能。
丘からはブルノ市の美しい景色が一望できます。

ブルノは地下道が有名で、昔は一般家庭にも地下に保管庫があり、繋がって地下道になったそう。現在は地下道は使われず、全貌も把握できていないため地下鉄が欲しいのにできないのが悩みだとか。地下鉄はありませんが、街中に敷かれた線路を路面電車・トラムが走るようすは魅力的です。

シュピルベルク城でも見られるブルノの地下道
街を走るトラムの様子。
旧市庁舎には木製の車輪と、なぜかワニの剥製が飾られています。言い伝えによると、昔ブルノを荒らした悪しきドラゴンを勇気ある若者が退治し、祀ったのだそう……。

勇気といえば、アートの街としても栄えているブルノですが、中でもモラヴィア広場の勇気の像は若者たちを中心に大人気。なぜ人気かは……勇気のある人だけが分かる仕様のようです。

下から撮影すべく列が出来ていた勇気の像。
プラハはビールで有名ですが、ブルノを中心とした南モラヴィア地方はワインの生産地としても有名。アルコールが苦手な方にオススメしたいのはキャベツ広場のビーガンアイスクリーム!石畳が広がる歴史ある広場でいただくアイスクリームは絶品でした。


自由の広場でいただく贅沢なアイスクリーム。
ブルノではチェコの郷土料理をいただきました。生肉のユッケ的な料理・タルタルは絶品!
チェコの味噌汁的存在、チキンスープ。
期間限定のグリーンビールはイースター時期のみ楽しめます。
余談ですが、チェコのマックは注文がセルフサービスでした!
◆クトナー・ホラ
3日目に訪れたのはクトナー・ホラ。
プラハからは電車で1時間ほどで到着する、ブルノと同じく銀の採掘が行われていた都市で、14~15世紀には首都プラハと同等に栄えていました。

クトナーホラ歴史地区にある聖バルボラ教会は、『キングダムカム・デリバランス』の時代と同じゴシック様式の外観と、ステンドグラスが美しい教会です。世界遺産に登録されているチェコで2番目の規模を誇る教会で、必ず訪れたい場所のひとつです。

セドレツ地区には聖母マリア大聖堂と、内装が人骨で作られた納骨堂があります。バロック様式の外観が美しい聖母マリア大聖堂は元々13~14世紀に建てられ、15世紀に焼失。17~18世紀に再建されました。となりにあった修道院は

今回のプレスツアー1、2を争う衝撃を受けた墓地教会があるのもここクトナー・ホラ。
14世紀に作られた墓地礼拝堂なのですが、内装が人骨なのです。聖都エルサレムから持ち帰った土で作られた墓地はたちまち話題になり予約が殺到。集められた推定4万人分の人骨で作られたシャンデリアやシュヴァルツェンベルグの紋章などの内装は、一度見たら忘れることはないでしょう。

骨で作られたシャンデリア。
骨で作られたシュヴァルツェンベルグの紋章。
全ての装飾が人骨で作られています。
中には内装に使用されていない病気やけがを負った人骨の展示も。
銀の博物館では実際に銀を採掘していた洞窟に入れるのですが、寒くて暗くて狭いところが怖い人は無理して入らないように案内されます(実際にめちゃめちゃ暗くて狭くて冷たいながらに湿っていてヒヤッとしました……。)

採掘場には採掘員の衣装を来て潜入します。

めちゃめちゃ狭くて暗くて湿っている洞窟内。
『キングダムカム・デリバランス』の世界をチェコプレスツアー観光編、次回はゲーム内でもキーポイントとして登場するササウとラッタイの様子をお届けします!

取材協力:チェコ政府観光局、DMM GAMES
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