ユニットに個性を加える一方で、一度倒れたら戻ってこないシビアなゲーム性を取り入れた『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』。その絶妙なバランスが好評を博し、シリーズ展開を遂げる人気作となりました。


当初は、据え置き機向けにリリースされていましたが、ゲームボーイアドバンスなどの携帯ゲーム機にも活躍の場を広げ、近年ではニンテンドーDSや3DSに向けたリリースが続いていました。

ですが、12年ぶりとなる据え置き機向けのシリーズ最新作『ファイアーエムブレム 風花雪月』が、本日7月26日に発売されました。しかも本作は、「士官学校編」から「戦争編」へと繋がる2部構成。戦う意味が大きく変わる刺激的な展開に、期待を高めているユーザーも多いことでしょう。

ちなみに『ファイアーエムブレム』シリーズは、2部構成の作品がいくつかあります。必ず2部構成というわけではありませんが、ユニークな形になっているものも多いので、今回は2部構成作品をそれぞれ紹介させていただきます。また、『ファイアーエムブレム 風花雪月』の2部構成が、他の作品とどう違うのか、その点についても迫りたいと思います。

『ファイアーエムブレム 風花雪月』をプレイして、2部構成の形式が気に入った方は、他の2部構成作品もプレイしてみてはいかがでしょうか。バーチャルコンソールや携帯機で遊べる作品が多いので、比較的アクセスしやすいのも嬉しい点です。

◆シリーズの原点は、後から2部構成になった珍しい展開

本シリーズの原点は、ファミコン向けに登場した『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』です。この作品の成功が、後のシリーズ展開を決定づけており、非常に重要な位置を占めるタイトルと言えるでしょう。

この『暗黒竜と光の剣』は、大きな区切りのない単独作品でした。
ですが、本作のスーパーファミコン版とも言える『ファイアーエムブレム 紋章の謎』は、『暗黒竜と光の剣』のリメイクだけに留まらず、第2部「紋章の謎」をまるごと新規で追加。そのため、このスーパーファミコン版の発売を機に、「暗黒竜と光の剣」が第1部という位置づけになりました。

「暗黒竜と光の剣」と「紋章の謎」の2部構成は、その後の展開にも引き継がれており、DS向けに改めてリメイクされた際、『ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣』『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~』となり、前後作として単体の作品化を果たします。

最初は単独の物語として登場し、後に「紋章の謎」が追加されて2部構成に。更に、個々が単独でリメイクされるといった、シリーズ作の中でも他に類を見ない展開を遂げた「暗黒竜と光の剣」。これだけユニークな発展を見せたのは、原点ならではと言ったところでしょうか。

ちなみに2部構成ではありませんが、「暗黒竜と光の剣」の前日談を描いている『BSファイアーエムブレム アカネイア戦記』もあります。現時点でオリジナル版を遊ぶのは無理ですが、リメイクされたマップとシナリオが『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~』に収録されているので、興味が湧いた方はそちらをチェックしてみてください。ただし、バーチャルコンソール化はされておらず、オリジナル版しかないのでご注意を。

◆1部の終わり方が重い! 子供世代を初めて取り入れた『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』

時代と共に変化した『暗黒竜と光の剣』と比べると、『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』の2部構成は実にベーシックな作りと言えるでしょう。本作はまず、シグルドが主人公として活躍する物語から始まり、いくつもの戦いと様々な出会いを経て、その中で伴侶を見つけます(プレイによっては結ばれないキャラもいます)。

しかし、愛しい者とのひとときは、あっけなく終わりを迎えてしまいました。
汚名を着せられ、名誉を挽回する機会を得られないまま、シグルドたちは命を落とすことに。そして、シグルドの子供・セリスが主人公となり、子供世代の物語が幕を開けます。

『紋章の謎』に続き、2部構成となった『聖戦の系譜』。ですが本作は、1部と2部の間がかなり空いている上に、登場キャラクターはほぼ一新されているなど、『紋章の謎』とは異なる点が多数あります。期間が空いている理由のひとつは、子供たちが戦える年齢に成長する必要があるため。世代を超える戦いを、『聖戦の系譜』で味わうことができます。

子供世代が登場する『ファイアーエムブレム』はいくつかありますが、1本のソフトの中で、第1部が親世代、第2部が子供世代と明確に分かれているのは、シリーズ全体を通してもこの『聖戦の系譜』のみ。その分、戦争の厳しさをより実感できる作品でもあります。

ちなみに、外伝的な位置づけの『ファイアーエムブレム トラキア776』もあるので、『聖戦の系譜』に惹かれた方は、こちらのプレイも視野に入れてみて下さい。ただし、かなり歯応えのある難易度なので、覚悟しつつ挑みましょう

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◆時代を遡る展開が興味深い『封印の剣』と『烈火の剣』の関係

シリーズ初の携帯ゲーム機向けとなったのが、ロイを主人公とする『ファイアーエムブレム 封印の剣』。オートセーブ機能や通信対戦機能など、携帯して遊ぶための様々な要素が用意されました。また、ゲーム性がシンプルに寄ったのも、携帯機だからこその選択と言えるでしょう。


そして『封印の剣』の翌年に、『ファイアーエムブレム 烈火の剣』が発売。シリーズ的には『封印の剣』の続編に当たりますが、時間軸とししては『封印の剣』の20年前となり、ロイの父親・エリウッドなどが主人公に。こちらも親世代・子世代の2部構成と言えますが、子世代が先に描かれ、親世代の話が後から明らかになる形でした。

『聖戦の系譜』と近い構造ですが、親世代を後から遊ぶというのは、なかなか刺激的な体験でした。今から遊ぶなら、発売順でもOKですし、時系列順に『烈火の剣』→『封印の剣』という流れも一興かもしれません。

ちなみに上記の2作品は、ゲームボーイアドバンス向けに登場しましたが、同ハードで『ファイアーエムブレム 聖魔の光石』もリリースされています。ですが、『聖魔の光石』は完全に独立した作品で、『烈火の剣』や他のシリーズ作との世界観的な繋がりはありません。

◆ファンも多い『蒼炎の軌跡』と、単体でも4部構成の『暁の女神』による、ハードを超えた2部構成作品

ゲームボーイアドバンス向けに3作品リリースされた関係で、据え置き機向けとしては1999年に発売された『トラキア776』から6年の時を経た、ニンテンドーゲームキューブソフト『ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡』。シリーズ全体の中でも指折りの人気作でもあり、本作で初めて『ファイアーエムブレム』を遊んだという方も少なくありません。

スーパーファミコンからゲームキューブとハードの性能が一気に上がり、今ではすっかりお馴染みとなった3Dグラフィックも、この『蒼炎の軌跡』が初採用。また、シリーズで初めてキャラクターボイスがついたのも本作でした。

主人公のアイクが身を置く「グレイル傭兵団」は、徐々に国々の思惑が絡む大きな争いへと巻き込まれていき、本作の中で大きな区切りを迎えるものの、全ての決着は2年後に登場した続編の『ファイアーエムブレム 暁の女神』へと引き継がれます。
『暁の女神』では3年の時間が流れ、アイクも逞しい青年へと成長しました。

『暁の女神』はWiiソフトですが、『蒼炎の軌跡』をクリアしたデータが入ったメモリーカードがあれば、パラメータの上昇などのボーナスが加わった状態でプレイを始められます。また、『暁の女神』でもアイクの活躍は大きいものの、主人公は複数制になっており、本作の中だけで全4部の構成に。その中でアイクは、3部の主人公を務め、4部では中核の一人として立ち回ります。

『蒼炎の軌跡』と『暁の女神』は2部構成の関係になっているのと同時に、『暁の女神』内では更に細かく分かれ、主人公も複数。この構造はシリーズ内でも唯一で、多くの視点から語られる壮大な物語を体験できる2作品です。

根強いファンも多い作品ですが、こちらもオリジナル版しかなく、『蒼炎の軌跡』は中古価格も高め。Wiiがあればゲームキューブソフトも遊べるため、ハードを2種類用意する必要はありません。ゲームソフトの確保が、2作品を楽しむ上での最大の課題と言えるでしょう。

『風花雪月』の2部構成は、この点に注目! 『風花雪月』と共通点がある作品も紹介

◆2部構成ではないものの、『風花雪月』と共通点がある『ファイアーエムブレムif

2015年に発売された『ファイアーエムブレムif』は、今回取り上げてきた他の作品のような2部構成のゲームではありませんが、『風花雪月』と共通点がある作品なので、番外編として軽く取り上げたいと思います。

『ファイアーエムブレムif』はタイトルにもある通り、「if(もしも)」を描いた作品です。『白夜王国』と『暗夜王国』の2バージョンが発売され、どちらの国に属するかで、仲間になる面々や紡がれる物語が変化。
ダウンロード版を購入した場合は所属する国を任意で選べますが、一度決定した後は追加でDLCを購入しない限り、選択した国側でしか遊べません。

そして、大型DLC「インビジブルキングダム」を購入すると、両国のどちらにも属さない第3のルートを選択可能。こちらも独自の物語が展開するため、『ファイアーエムブレムif』は3つの物語に分岐する作品となっています。

『風花雪月』も、三国が相争う戦乱の中で、いずれの国に身を置くかで物語が変わります。全体で見ると、物語自体は大きな1本道の場合が多い『ファイアーエムブレム』シリーズですが、『if』と『風花雪月』はプレイヤーの選択でその後の展開が変化するので、壮大な物語を多角的に楽しめるという共通点を持っています。

ただし、3つの物語が楽しめるといっても、『if』はそれぞれ独立したパッケージもしくは大型DLCで、いずれも1本分のボリュームがある作品。『風花雪月』の各物語のボリュームはまだ分かりませんが、こちらは1本のソフトに全て収録されており、1本分の価格で3つの物語をプレイできます。もっと遊びたくなった時に選択肢がある『if』と、手軽にあれこれ味わえる『風花雪月』。どちらも3つの物語が用意されているのに、楽しみ方のスタンスが違うのは興味深いところです。

◆『ファイアーエムブレム 風花雪月』の2部構成は、厳しくて切ない・・・!

シリーズ最新作の『風花雪月』は、ユニットごとに隊を率いるなど、様々な新要素を用意。士官学校を舞台に、生徒たちを導く日々をじっくり描く1部の切り口も、これまでにないものです。

2部構成の作品は、これまで紹介したようにシリーズ内にいくつもあります。
ですが、ソフト1本の中で2部構成となっているものは、『紋章の謎』と『聖戦の系譜』のみ(『暁の女神』単体は4部構成&主人公の切り替えなので、今回は除外)。そしてその切り口は、『紋章の謎』や『聖戦の系譜』とも異なっています。

第1部「士官学校編」では、担当したクラスの生徒たちの育成を行うだけでなく、コミュニケーションを通じて絆を深めていきます。他のクラスに属する生徒との交流もあり、「5年後、同窓会を開こう」と約束を交わすほどの関係性を見せます。

ですが、5年の間に彼らが所属する国同士の関係が悪化。懐かしい思い出を語り合うはずが、互いに剣を向け、相争う戦乱に身を投じることになります。かつての学友は、倒すべき敵に。『風花雪月』では、このような過酷すぎる状況が待ち受けているのです。

『紋章の謎』は、共に戦った仲間と剣を交える場面も訪れますが、大半は引き続き2部でも仲間になりますし、主人公サイドの在り方に変化はありません。また『聖戦の系譜』は、戦争の非情な現実を突きつけられる点は『風花雪月』と似ていますが、無念のうちに倒れた親世代の仇を取る子供世代──といった構図なので、戦況の厳しさはあれども、敵と味方はそれぞれ明確です。

かつての学友と戦うという酷烈さが立ちはだかる『風花雪月』。だからこそ、どのような結末が描かれるのかが気になります。プレイ予定の方はこの週末に早速取り組むことと思いますが、興味を引かれた方もプレイを一考してみてはいかがでしょうか。また、『風花雪月』を堪能した後は、上記の様々な作品に触れてみるのもお勧めです。

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