インサイドでは、過去の名作や話題作などを、20周年などのタイミングに合わせてピックアップ。その魅力を振り返る特集記事を、随時お届けしています。


そして、本日10月7日のちょうど20年前には、数多くのプレイステーションソフトがリリースされました。光栄(当時。現在はコーエーテクモゲームス)の新たなRPG『ジルオール』や、カルトな人気を誇るADV『シルバー事件』、ホラーゲーム史に残る『夕闇通り探検隊』など、個性的な作品が一挙登場。当時はあまり意識していませんでしたが、改めて振り返るとその濃さに驚かされます。

しかも、1999年10月7日に発売されたプレステソフトはこの3作品だけに留まらず、10本を超えるタイトルが同時に登場。本数、内容共に、見応えのあるラインナップと言えるでしょう。
そこで今回は、前述したタイトルを含めた計5作品を振り返り、その魅力をお伝えすると共に、プレステ時代の濃さを一端なりとも紹介したいと思います。

◆歴史の転換を、間近で味わう醍醐味─フリーシナリオが光るRPG『ジルオール』
画像は『Zill O’ll ~infinite plus~』のものです
フリーシナリオを謳うゲームは数あれども、その影響力は作品によって様々です。サブイベントの発生や受注を任意で行う程度のものもあれば、メインシナリオの分岐に関わる場合もあり、“フリーシナリオ”という単語だけでは各作品の懐の深さまではなかなか分かりません。ですが『ジルオール』が持つ懐の深さは、フリーシナリオを採用したRPGの中でも指折りの作品と言えるでしょう。

正統派なファンタジー世界を舞台とする『ジルオール』は、各国が大きな力を持つ一方で、政争や戦乱の中で個人が付け入る隙もあり、国の重要人物たちに一目を置かれるほどの活躍を遂げることも可能。またその人脈が、更なる展開に主人公を巻き込み、波瀾万丈の人生へと立ち向かわせることになります。


画像は『Zill O’ll ~infinite plus~』のものです
それまでの積み重ねや状況によって発生するイベントが多数あり、1~2度のプレイではその全てを到底味わい尽くせないほど。プレイヤーが辿った選択の積み重ねが、歴史の流れに影響を与えていく醍醐味を、何度も新鮮な気持ちで味わうことができる『ジルオール』。人と人の関係が歴史をどのように動かしていくのか、その模様を最も間近で味わうことができるのも、本作ならではの魅力でしょう。

ちなみに『ジルオール』は、20年前の10月7日に発売された新規IPのプレステソフトの中では、最も知名度が高い作品でもあります。というのも、本作だけでもPS2とPSP向けにリメイクされたほか、シリーズ展開として『トリニティ ジルオール ゼロ』がPS3に登場。このように多彩な発展を遂げていますが、直近での動きはないため、改めてリメイクや関連作の登場を願いたいところです。


超能力バトルは、『2』で更なる境地に!

◆ドリキャス版『2012』にはない楽しさが! ユニークな新システムが熱い『サイキックフォース2』

垂直方向の全方位360度を空に見立て、超能力者同士がその力を駆使して空中戦を繰り広げる3D対戦格闘『サイキックフォース』シリーズ。その設定に基づいた魅力溢れるキャラクター陣や刺激的なゲーム性で注目を集め、続編となる『サイキックフォース2012』や移植などの派生作が登場しました。

20年前の今日発売されたプレイステーションソフト『サイキックフォース2』も、そんな派生作のひとつ。『サイキックフォース2012』をベースに、1作目に登場した「ソニア」「ブラド」「玄真」がプレイアブルキャラとして復活した作品です。

ちなみに、『サイキックフォース2』が発売される約7ヶ月前に、ドリームキャスト版『サイキックフォース2012』がリリース済み。『サイキックフォース2』はプレイステーション版なので、比較するとどうしてもハードの性能差があります・・・が、『2012』にはない独自性を『2』は備えています。


この『2』には、他のキャラクターが持つ超能力を使用できる「PSY-EXPAND(サイ・エキスパンド)モード」という新要素を用意。これは、他の格闘ゲームで例えるならば“ザンギエフが昇竜拳を繰り出す”、といった遊びが楽しめるモードです。単純に戦略の幅が広がるのはもちろんですが、「他の能力者の力を使う」という要素自体が、能力者モノを好む方にとっては魅力的なシチュエーション。この要素は、一部のプレイヤーの心を絶妙にくすぐりました。本作は、現在ゲームアーカイブス版が配信中なので、この要素に興味が湧いた方は是非そちらをどうぞ。

シリーズ展開に音沙汰が無くなって久しい『サイキックフォース』ですが、『2012』や『2』のような意欲作をまた生み出して欲しいものです。


須田節は20年前から健在!

◆物語や台詞回し、演出に表現、全てが個性に溢れている『シルバー事件』

『killer7』や『NO MORE HEROES』、『ロリポップチェーンソー』など、個性的な作品を生み出し続けているゲームクリエイター・須田剛一氏。直近では、『LET IT DIE』(2017年)や『Travis Strikes Again: No More Heroes』(2019年)などの活躍でも知られています。

そんな須田氏が取り組んだ作品のひとつが、20年前に登場した『シルバー事件』です。国家の計画で生み出された都市「カントウ24区」で起きる謎の連続猟奇殺人事件について、「凶悪犯罪課」の刑事たちが追いかける「トランスミッター」編と、ジャーナリストの視線で語られる「プラシーボ」編の両面で描きます。

作中で展開するシナリオはもちろんのこと、演出やグラフィックの方向、台詞回しなど、いずれも須田氏の持ち味がたっぷりと出ており、ADV作品でも個性的なセンスが遺憾なく発揮されています。

その一方で、説明不足と思える点や、快適とは言いにくいゲームシステムなど、誰でも楽しみやすい作品とは言い難い面があります。
そのため評価が大きく分かれやすく、万人にはお勧めできる作品とは残念ながら言えません。しかし同時に、本作を高く評価する声があるのもまた事実。相性によって、心に深く刺さる作品でもあります。

ちなみに今遊ぶならば、続編となる『シルバー事件25区』もセットになったをリメイク作『シルバー2425』がPS4向けにリリースされているので、そちらがお勧めです。

推理の閃きがゲーム性と結びつくADVの完結編が登場

◆この謎を解くには、“総当たり”よりも“閃き”! 『続・御神楽少女探偵団 完結編』

浪漫と妖しさが入り交じる大正・昭和初期の日本を舞台に、様々な難事件の解決に挑む『御神楽少女探偵団』。その完結編として、『続・御神楽少女探偵団 完結編』が、1999年10月7日に発売されました。

発生する事件は、それぞれの章で解決する1話完結型。そのスタイルは『完結編』にも受け継がれており、本作だけでも6編の物語(「猟奇同盟」「続・猟奇同盟」を1本として計算。外伝含む)を楽しむことができます。

推理ADV『御神楽少女探偵団』が持つ大きな魅力と言えば、推理に必要な証拠や証言などを集める捜査中に行う「推理トリガー」の存在です。この「推理トリガー」は、事件に関わりそうなポイントだとプレイヤーが判断した際に発動させるもので、読み通りならば新情報を獲得するなど、状況が好転します。

この「推理トリガー」のおかげで、プレイヤーが捜査に対して能動的に関わることができ、その実感や作品への没入度をより高める効果があります。ちなみに「推理トリガー」の入力回数には制限があり、使い切るとゲームオーバー。残念ながらやり直しになってしまいますが、その緊張感とのせめぎ合いが、本作ならではの味わいと言えます。

プレミア化し、一時期はプレイするのが困難だった『続・御神楽少女探偵団 完結編』ですが、2009年11月25日にアーカイブス版が登場。PS3やPS Vitaなどでプレイできるようになったので、興味がある方や当時遊べなかった人は、この秋の夜長にダウンロードしてみてはいかがでしょうか。その際は、1作目の『御神楽少女探偵団』から遊んでみてください。

プレステ時代を代表するホラーゲームの一角も、20年前に登場!

◆少年少女の感情と、様々な噂が交錯する日々を描く『夕闇通り探検隊』

プレイステーションで表現の幅が広がったことで、様々なジャンルが恩恵を享受しました。特にホラーゲームは、非日常を演出する手段が多様化したことで、大きく盛り上がります。ですが、20年前に発売された『夕闇通り探検隊』は、直接的な視覚表現に頼らず、それでいて得体の知れない恐ろしさを見事に表現した作品でした。

本作の主人公は、「ナオ」「クルミ」「サンゴ」の三人。全員、同じ学年の中学生です。この3人が、とある出来事をきっかけに、彼らが暮らす「陽見市」で囁かれている数々の噂の真相を確かめるべく、探険へと乗り出します。

本作のホラー体験は、恐ろしげなグラフィックが不意に飛び出して驚かす、といった類ではなく、日常に差し込む異質な感覚が徐々に恐ろしさへと繋がっていくというもの。また、噂の中には人間が深く関わるものもあり、人の内面が恐ろしさを醸し出すといった展開も。背景から台詞に至るまで、徹底して“身近さ”を感じさせるため、そのリアルな味わいが異質な感覚と結びつき、より大きな恐怖を育ててくれます。

そのリアルさは、主人公3人の関係にも見て取れます。「ナオ」「クルミ」「サンゴ」は、学校でも有名な仲良し3人組・・・というわけではなく、むしろ学校内では接点も控えめ。放課後になると集まって調査という名の探険に乗り出しますが、絶妙なバランスの上に成り立っているこの関係は、危なっかしくもどこか切なげで、彼らの行く末も気になってプレイを続けてしまいます。

攻略の難しさや移動の手間など、難点もいくつかありますが、『夕闇通り探検隊』がプレステ時代を代表するホラーゲームのひとつなのは間違いありません。しかし最大の問題点は、現在プレイする環境が非常に乏しいことでしょう。リメイクどころかアーカイブス化もされていないため、現物を入手する以外の方法が皆無。当時、スパイクが発売した作品なので、スパイク・チュンソフトが腰を上げてくれるのを祈るばかりです。

同日に、これだけユニークな作品が一気に発売されたプレステ時代。1本1本の紹介は駆け足気味となってしまいましたが、その濃さの一端だけでも伝わっていれば幸いです。

ハード性能の向上、プレステブームの活気、各メーカーのチャレンジスピリッツなどが合わさった結果、多くのゲームファンにとって忘れがたい作品が次々と登場しました。その勢いと熱は、形こそ変われども今のゲーム業界へと繋がっています。ゲームはいつでも──昔も今も──刺激的に満ちているので、輝くその一瞬一瞬をお見逃しなく!

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