コンピュータゲームの歴史もそれなりの歩みを刻んできましたが、アナログゲームと比べればその差はまだまだ歴然。数千年の歴史を持つテーブルゲームもあり、その奥深さは侮れないのがあります。


ですが、そんなアナログゲームをデジタルの世界に取り込めるのも、コンピュータゲームが持つ特徴のひとつ。先日発売されたニンテンドースイッチソフト『世界のアソビ大全51』にも、数多あるテーブルゲームなどがぎゅっと詰め込まれています。

本作に収録されている作品は、将棋にチェス、麻雀といったお馴染みの遊びもあれば、名前は知っているけど遊んだことがないものや、名前すら初耳といったゲームも勢揃い。世界に広がるアナログゲームの奥深さを改めて思い知らされます。

そこで今回は、『世界のアソビ大全51』で筆者が初めて出会った見知らぬゲーム3本を独断でチョイスし、前情報なしでプレイ! その実感を綴るプレイレポをお届けします。新たな世界との出会いを、どうぞご覧あれ。

敢えて相手の陣地に種を蒔き、一気に刈り取る快感!─「マンカラ」

最初に選んだゲームは、本作の中で“種まきのゲーム”と紹介された「マンカラ」。アフリカで生まれた、世界最古の知育ゲームとのことです。理解できないと頭が悪く思われそうで、なんだか緊張感が走ります。ちなみに、Googleで「マンカラ」を検索したところ、約206,000件がヒット。ウィキペディアにもしっかり記載されており、歴史の重みがじわじわと感じられます。

早速「マンカラ」を選択し、最初の解説をチェック。
6つの小さな穴が上下に置かれており、下段が自分の陣地とのこと。その中にあらかじめ置かれた石を、プレイヤーから見て右側にあるゴール(細長い穴)に移動させた数で勝ち負けが決まります。

移動にはもちろんルールがあり、自分の番に6つの穴からひとつを選択。その後、選んだ穴の石を全て取り、時計回りに動きながら、穴にひとつずつ石を落としていきます。穴は、ボードゲームで言うところのマスの役目も果たす模様です。ゴールにも石を落としますし、まだ石が残っていたら相手のマスにも投下。これを繰り返して、ゲームが進行します。

もちろん、これだけではただ石を置いて回るだけ。勝敗を左右する要素はここからです。石を取って蒔いている際、最後の1個が自陣の空っぽの穴に入ると、相手側の穴(向かいの穴)にある石を全部取り、自分のゴールに置くことできます。言い換えるなら、相手の石を“横取り”できるのです!

あらかじめ穴を空にしておき、ちょうどそこに最後の石を落とせるよう逆算した穴の石を取る。これが基本的な戦い方のようです。
そこまで確認し、早速プレイ開始。最初に置かれている石が4個ずつだったので、5番目の穴の石をまず拾って蒔いて空に。そして次の順番で、一番左の穴の石を掴み、落としていきます。2つめの穴から落としていくので、2、3、4・・・そして5つめの穴に最後の石を落とし、狙い通りに横取り達成!

その後、相手の石がこちらの空の穴に落とされたので、その隣りの穴を空にしてから、落とされたひとつを拾って隣りの穴へ。こちらも無事、横取り成功。取り方次第で相手の陣地にも石を置かなければならないので、それがピンチやチャンスになるようです。

どちらかの陣地が全て空になると、ゲーム終了。自分の陣地に石が残っていた場合、回収して自分のゴールに加算できます。最初の難易度は最低レベルなので、ガチ初心者でも圧勝でした。

調子に乗って、難易度をひとつあげて再プレイ。先ほどと同じように、初手で5番目の穴を空にしてみます。

すると相手は、自分の石をこちらの陣地に回し、穴にある石の数を増やしにかかりました。
その結果、5番目の穴に落とそうと思っていた穴にある石の数が5個になり、最後のひとつを落とす場所が6番目に(穴から拾った石は、右隣りの穴から落とし始めるため)!「なるほど、こうやって相手の手を潰していくのか」と、つい感心してしまいます。

しばらく互いに石を落とし合うだけの攻防が続きましたが、運良く横取りを狙える巡り合わせになり、相手の石を一気に9個もゲット。これまでの流れで自陣の石を何個か蒔いたので、その分も回収できてお得でした。

右回りのため、横取りを狙いたいので右側の穴を空にしたくなりますが、そうすると左に石が残りやすく、そこを横取りされると大ダメージ。むしろ、自陣の石をうまく相手に回した上で、しっかり回収するのが肝要です。

相手を有利にさせるように見えて、時期を見計らって刈り取る。なるほど、“種まきのゲーム”と呼ばれる意味がちょっと分かりました。ですが、その刈り取り(横取り)に失敗すると、相手の陣地に残った石がそのままゴールに加算されてしまうので、ガンガン相手に回せばいい、と短絡的に考えるのも危険でしょう。

また、蒔いている石の最後のひとつが穴ではなくゴールに落ちた場合、相手に順番が回らず、もう一回自分の番になります。これも、戦略を組み立てる上で重要な要素です。相手のこれを許すと、形勢の逆転もあり得ます。

積極的に石を蒔いて鮮やかに回収するか、最低限勝てる分だけかすめ取ってゲームを終わらせるか。
相手の横取りを防ぎつつ自陣に石を貯め、相手の陣地を空にして一気に逆転する、というのも爽快感があって楽しそうです。

ルール自体は決して複雑ではありませんが、攻撃と防御のバランスにどれだけ気を配るか。そして、どこでそのバランスを崩すか。シンプルながら実に奥深いゲームでした。

<cms-pagelink data-text="続いては、ローマ帝国時代に生まれたボードゲームにチャレンジ" data-page="2" data-class="center"></cms-pagelink>

一進一退の攻防から終盤の逆転要素まで、息をつく暇もない「ナインメンズモリス」

続いて選んだのは、世界最古のボードゲーム「ナインメンズモリス」。こちらの検索件数は約505,000件で、「マンカラ」よりもヒットしました。最古のボードゲームの名は、伊達ではありませんね。ちなみに、ローマ帝国時代に生まれたようです。

四隅とその中間にそれぞれマスがある四角形が大・中・小あり、四角形の辺にある中間のマス同士が線で繋がったボードが戦いの舞台となります。ひとつの四角形に計8つのマスが空いてるので、それが3つ分で24個のマスが存在。このマスに、駒となるピースを交互に置いていきます。置く場所に制限はなく、自由に配置可能です。


このゲームの攻撃手段は、ピースを縦か横に3つ並べること。この状態を「ミル」と呼び、相手のピースを選んで取り除くことができます。構造上斜めに並べることはできませんが、五目並べならぬ“三目並べ”といったところでしょうか。

しかし、五目並べと違うところは、マスの数に比べてピースの数が少ないこと。24個のマスに対し、自分のピースは9個。相手の分を足しても18個しかありません。ひとつずつ置き合うだけの攻防では、相手の攻めも読めやすいので、互いに決めてのないままピースが並ぶことも。──ですが、「ナインメンズモリス」の戦いはここからが本番です。

もうひとつ、五目並べと異なる点があります。それは、ピースを動かせる点です。お互いに全てのピースを置いた後は、空いているマスに自分のピースを移動させ、戦局を動かします。ちなみにこの時の移動は、配置の際とは違い、隣接するマスにひとつ動かすのみ。
ここから、相手の攻めを防ぎつつ「ミル」を狙う攻防戦が本格化します。

もちろん、配置の段階でその後の展開が大きく変わるので、本当の勝負は序盤から始まっています。それが表面化するのが後半に入ってから、というのが実態でしょう。

そして、その実態に気づかなかったド素人(=筆者)は、最も優しい難易度なのに、相手に大変有利な盤面を許してしまいました。最右辺で「ミル」を決められただけでなく、隣接する内側の縦の辺も上下が押さえられており、最右辺中央のピースを内側に移動させるだけで再び「ミル」が発生する状態に。しかも、そのピースをまた最右辺中央に戻せば、3連続の「ミル」です。

それを防ぐには、もっとも小さい四角の右辺中央にある自陣のピースを右に動かすしかありませんが、その場合でも相手は、最右辺の上下にあるピースのどちらかを左にひとつ動かし、次の順番で戻せば「ミル」の達成です。攻撃頻度を遅らせることはできても、結局止める手だてがなく、じりじりと削られるしかありません。こちらから攻撃する? それが出来れば苦労しないよ!

3つ並ばないように阻止するのは基本ですが、全体的に相手を動きにくく、そして自分は動きやすい陣形を確保しなければなりません。空いているマスは一見中立に見えますが、上手くピースで囲むことで、自由に使える“自分の陣地”として活用しやすくなるので、その確保も重要と感じました。

こうして「ミル」でお互いのピースを奪い合いながらゲームが進み、戦局の関係でピースが動かせなくなるか、ピースが2個以下になる(=ミルが出来なくなる)と決着。こちらもシンプルなゲームに見えますが、静かに状況を積み上げていく周到さが、ある瞬間に牙を剥いて襲いかかってくる──そんな緊張感にも包まれる戦略的なゲームでした。

ちなみに、まだ説明していないルールがひとつ残っており、それは逆転要素ともいえる「ホッピング」の存在です。ピースの移動は攻防一体なので、「ミル」で形勢が一度傾くと、覆すのはかなり難しい状態になります。ですが、ピースが3個になると「ホッピング」が発動。ピースが3個になった側のみ、自分のピースを好きな位置に置くことができます。つまり、“隣りに空いている1マスのみ”というルールがなくなるのです。

自由に配置できるとはいえ、ピースの数はこちらが多いし、大丈夫だろう・・・と油断していたら、相手が遠めの場所にピースを集め、「ミル」を繰り出します。遠いので必然的に邪魔をしにいけず、こちらが慌ててピースを並べ始めると、相手が「ホッピング」で飛んできて妨害。そして次の順番でまたピースを戻して、「ミル」成立。途端に形勢が不利に傾きます。こ、こんなはずじゃなかったのに・・・!

結果、こちらのピースも3個まで追い詰められてしまいましたが、それでも最後はなんとか紙一重で「ミル」を達成し、からくも勝利を収めることができました。相手のピースを4個から3個に減らす時は、その後も「ミル」が狙いやすい配置にするのがよさそうです。

静かな戦いを繰り広げる序盤、「ミル」で互いを削り合う中盤、自在に動く「ホッピング」を如何にかわして勝負を決めるかという終盤。局面ごとに戦い方が大きく変わる「ナインメンズモリス」は、一手の重さを見失わない判断力と、盤面の変化に応じる瞬発力が求められるボードゲームでした。世界最古なのに、この完成度は何事!?

<cms-pagelink data-text="最後のテーブルゲームは、ビリヤードみたいなおはじき?" data-page="3" data-class="center"></cms-pagelink>

視覚的な分かりやすさと、カーリングのような“邪魔をする位置取り”がアツい「キャロム」

マスを使ったゲームが続いたので、今回最後のゲームは「キャロム」をチョイス。本作の中では“ビリヤードの原型!? インド生まれのおはじきゲーム”と紹介されており、確かにビリヤードと似た一面があります。

ちなみに「キャロム」で検索すると、アミューズメントスポットやビリヤード競技なども引っかってしまいます。ウィキペディアでの項目名は「カロム」だったので、こちらで再度検索してみると、ヒットした件数は約71,000件。ちなみに「カロム」のページを見ると、「カロム」と「キャロム」のルールは異なっており、共通点も多いものの同一のゲームとは言えなさそうです。このあたりの事情も、検索数に影響しているのかもしれません。

「キャロム」は、盤上の中央にお互いのコインを置き、自分のコインを四隅のポケットに落とすゲーム。ビリヤードでいうところの「手球」にあたる「ストライカー」を弾いてコインに当て、自分のコインをポケットに落とす──この進行自体は、ビリヤードやおはじきをイメージしてもらえると分かりやすいでしょう。

自分のコインを落としたらもう一度プレイが出来るのも、ビリヤードと共通するポイント。ちなみに自分の「ストライカー」を落とすと、それまでに獲得したコインをひとつ、盤上に戻さなければなりません。ちなみに、相手のコインを落としてもゲームはそのまま続行するので、この場合は相手が有利になるだけです。

「キャロム」が持つ特徴のひとつは、「ストライカー」を弾く位置が決まっていること。毎回、自陣に引かれた線上に「ストライカー」を置き、ここからコインを狙います。線の上ならば置く場所は動かせますが、横一線(画面的には縦一線)なので前後には配置できません。

常にこの線上から狙わなければならないので、コインをどのように弾くかも重要な戦略になります。基本的には奥側のポケットの方が狙いやすいので、うまく狙えそうな時にしっかり落としたいところです。

──しかし、ただ自分をコインを落とせばいいだけではありません。というのも、盤上には互いのコイン以外に「クイーン」と呼ばれるコインが存在しており、自分のコインを全て落とす前に、この「クイーン」もポケットに落とす必要があるのです。

しかも、「クイーン」を落とした後、続けて自分のコインを落とさなければならず、このチャレンジに失敗した場合、落とした「クイーン」は盤上に戻されてしまいます。そのため、落としやすいコインがあっても「クイーン」攻略のために残しておく、という選択肢が生まれるのです。

無論、盤面はゲーム進行と共に変化するので、弾かれ方次第では、落としやすかったはずのコインがとんでもない位置に移動することも。戦局は常に流動するので、どのタイミングで「クイーン」の獲得に動くか、その判断力も求められます。ちなみに、「クイーン」は相手が落としてもOK。ここもひとつの駆け引きとなります。

ちなみにここまで解説した内容以外で、実際にプレイを通じて感じたことと言えば、「ストライカー」を弾く場所が決まっているため、相手の邪魔がしやすい点です。弾く方向がある程度定められているので、例えば相手のコインよりもポケットに近い位置に自分のコインを置ければ、相手の攻撃を防ぎつつコインをゲットするといった展開もあり得ます。

もちろん、上手く弾かれて逆に利用されてしまう可能性もあるので、諸刃の剣でもありますが、一般的(テクニックの度合いも含めて)なビリヤードに比べ、進路への牽制がしやすく、プレイヤーの個性が反映されやすいゲーム性になっているように思いました。

あと、これは「キャロム」のゲーム性とは直接関係ありませんが、「ストライカー」を当てたら“それぞれこの方向に飛んでいく”といった結果を示すガイドラインが表示されるので、この手のゲームが不得意な方でもかなり遊びやすい仕様になっています。これも、コンピュータゲーム化の恩恵でしょう。ビリヤードゲームにもこのシステムは多く見られますが、あるとないとでは遊びやすさが段違い。本作にもしっかりと搭載されているので、ご安心ください。

決められた線上から放つ「ストライカー」。「クイーン」を落とす駆け引きとタイミング。相手の攻撃を阻む動きも可能と、独自のルールが展開にメリハリを与えてくれる「キャロム」。『世界のアソビ大全51』に収録されたことで、細かく正確なショットが誰でも可能になったので、際どい接戦が楽しみやすいゲームになった印象も覚えました。

今回紹介したのは3本ですが、『世界のアソビ大全51』にはこの他にも多数のゲームが収録されています。マイナーなゲームもあれば、昔流行ったトイゲームを再現したものなど、その方向性も多種多彩。それをひとつずつを遊ぶだけでも、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

AAAクラスのゲームも素晴らしいものですが、シンプルなゲームをひとりでじっくり、または友達とワイワイしながら遊ぶのも一興でしょう。ローカル通信・インターネット通信にも対応しているので、幅広いプレイも楽しめます。まずは「ドミノ」「コネクトフォー」「大富豪」「スロットカー」が収録されている無料配信版『世界のアソビ大全51 ポケットエディション』から始めてみてはいかがですか?
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