今回の「ゲーム19XX~20XX」は2010年のゲームを振り返っていきます。10年ひと昔ということで、若い方はけっこう懐かしく思えるのではないでしょうか。
30代以上の方は、逆に最近のように感じるかもしれませんね。まずは恒例の2010年のおもなニュースです。

◆尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船と衝突
9月7日、沖縄・尖閣諸島沖の日本領海内で、中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件が発生。同船の中国人船長が公務執行妨害の容疑で逮捕されますが、那覇地検は「日中関係を考慮」して処分保留で釈放しました。その後、海上保安庁が撮影した衝突時の映像がYouTubeに流出。瞬く間にネット上に広まり、世論が沸騰することとなりました。

◆小惑星探査機「はやぶさ」が7年ぶり帰還
2003年に日本の宇宙科学研究所(ISAS)が打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」が、7年にわたる宇宙の旅を終えて地球に帰還。地球と火星の間にある小惑星「イトカワ」の微粒子の回収に成功しました。数々のトラブルやピンチを乗り越えての帰還は感動を呼び、映画やアニメにもなるなど一大ブームを巻き起こしました。

◆FIFAワールドカップ南ア大会などが開催、大相撲は不祥事が相次ぐ
FIFAワールドカップ南アフリカ大会でサッカー日本代表が16強進出。バンクーバーで開かれた冬季オリンピックでの日本人選手の活躍や、高橋大輔選手と浅田真央選手の世界フィギュアスケート選手権優勝なども話題となりました。

一方、大相撲は不祥事が続発。
2月に横綱・朝青龍が知人に暴行した事件の責任を取る形で引退を表明します。さらに6月11日、現役力士や親方らの野球賭博関与が発覚。大関の琴光喜と大嶽親方が解雇されたほか、多数の力士・親方が謹慎処分となりました。事件を重く見たNHKはこの年の名古屋場所の生中継を中止。千秋楽の天皇賜杯授与も自粛となるなど異例の事態になりました。

◆2010年のおもな流行
ヒット曲:『ヘビーローテーション』(AKB48)、『Troublemaker』(嵐)、『ありがとう』(いきものがかり)、『トイレの神様』(植村花菜)
映画:『アバター』(公開は2009年12月)、『借りぐらしのアリエッティ』、『涼宮ハルヒの消失』
マンガ:『ハイスコアガール』(押切蓮介)、『ヒナまつり』(大武政夫)、『となりの関くん』(森繁拓真)
テレビアニメ:『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、『けいおん!!』(第2期)、『Angel Beats!』、『四畳半神話大系』

2010年はこのような年でした。それでは、この年を飾ったゲームを紹介していきましょう。

ポケットモンスター ブラック・ホワイト
発売日:2010年9月18日
機種:ニンテンドーDS
発売元:ポケモン

2010年最大のヒット作です。4年ぶりとなる完全新作の『ポケモン』ということで発売前から注目度は絶大。国内累計出荷本数554万本、世界では1552万本(※1)を記録する、すさまじいヒットとなりました。

156種類もの新ポケモンの登場が話題となったのはもちろんですが、3匹のポケモン同士で戦う「トリプルバトル」や、『ダイヤモンド・パール』などとの連動を可能にする「ポケシフター」、季節の変化によって出現するポケモンが変化する四季の概念の導入など、多彩な新機軸の数々も注目を集めました。

さらに、全国のプレイヤーと自由に戦える「ランダムマッチ」が搭載。
見知らぬ相手とのバトルが可能になり、多くのプレイヤーたちがオンライン対戦を楽しむようになりました。ウェブサイトと連動した新サービス「ポケモングローバルリンク」も評判となり、2年後に続編となる『ブラック2・ホワイト2』も発売されるなど長く愛される作品となりました。

ちなみに、個人的にうれしかったのがゲーム中の表示を切り替える「漢字・ひらがな」モードの存在です。「漢字」と「ひらがな」のいずれかを選択できるというもので、かつて『ポケモン』にハマった世代も楽しめるようにという開発陣の配慮でしょう。やはり大人には漢字表記のほうが読みやすく、大変ありがたかったと記憶しています。

※1:数字はいずれも一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会発行の『2020 CESAゲーム白書』より

モンスターハンターポータブル3rd
発売日:2010年12月1日
機種:プレイステーション・ポータブル
発売元:カプコン

ご存知、『モンスターハンターポータブル』シリーズの第4作目です。こちらも発売日に各量販店で行列ができるなど一大人気となり、PSPの歴代トップとなる国内累計出荷本数490万本を記録しました。

一番の見どころは、やはりパッケージにもなっているジンオウガの登場でしょうか。雷光を帯びたその姿はカッコイイのひとこと。対戦時に流れるBGMも非常に聞き応えがあり、シリーズでも屈指の人気モンスターとなりました。そのほかアマツマガツチ、ウルクススなどのモンスターが初めて登場。和風テイストの新拠点「ユクモ村」や新フィールド「渓流」も話題になりました。


シングルプレイの際に連れていけるオトモアイルーが2匹になったことも、大きな要素のひとつと言えます。アイルーの武器や防具を生産したり、装備を変更したりすることも可能となり、シングルでの遊びやすさが向上。協力プレイの面白さはもちろんですが、シングルでもさらに楽しめるようになりました。

かくして本作は国民的人気ゲームとなり、「日本ゲーム大賞2011」年間作品部門の大賞を獲得しました。のちに画像をHD化した『モンスターハンター ポータブル 3rd HD Ver.』もプレイステーション3で発売されています。

レッド・デッド・リデンプション
発売日:2010年10月7日
機種:プレイステーション3、Xbox360
発売元:テイクツー・インタラクティブ・ジャパン

20世紀初頭のアメリカを舞台に孤高のガンマン、ジョン・マーストンの活躍を描いたオープンワールド型のアクションアドベンチャーです。開発を手掛けたのは『グランド・セフト・オート』シリーズでおなじみのロックスター・ゲームス。同社ならではの自由度の高さやゲーム機のスペックをフルに活かした圧倒的グラフィック、シリアスかつハードなストーリーなどが受け、多くのゲームファンの支持を獲得。特に欧米での人気はすさまじく爆発的ヒットとなりました。

もっとも目を引いたのが、西部開拓時代のアメリカをとことんまで再現した映像です。眼前に広がる荒涼とした荒野、往来を行きかう馬や馬車、町にたむろするアウトローたち。登場人物もいかにも無法の時代を生きてきたような、ひとクセもふたクセもある者ばかりで、細部まで作り込まれた西部劇そのままの世界に誰もが引き込まれました。


ボリュームも驚異のひとこと。手配中の賞金首を捕えて報酬を得る、さまざまな人からの依頼をこなす、荒野に生息する野生動物を狩る、財宝探しに挑戦するなど、やれることが非常に多く、西部劇の世界を自由に楽しめるようになっていました。瞬間的に時間の経過をスローする「デッドアイ」というシステムを駆使してのガンアクションもスリリングのひとこと。すべてがハイクオリティで、今プレイしても十分楽しい傑作中の傑作です。

ドラゴンコレクション
発売日:2010年9月14日
機種:i-mode、EZweb、Yahoo!ケータイ他
発売元:コナミデジタルエンタテインメント

2010年はGREEやモバゲーといった、モバイルのソーシャルゲームプロバイダーがさらなる躍進を遂げた年でもありました。

その火付け役となったのが、この『ドラゴンコレクション』です。モンスターを題材にした基本無料のカードゲームで、さまざまなクエストをこなしてモンスターカードを集め、カード同士を合成したり進化させたりして能力を上げていきます。非常にシンプルでゲーム性はあまりないのですが、こうした収集・育成の要素や、ちょっとした空き時間に楽しめる手軽さなどが受けて大流行。最盛期には累計登録者数が750万人を超えるなど圧倒的な人気を誇りました。

特に大きかったのが有料ガチャの存在です。レアなカードが入手しやすくなることもあって、高レアの強力なカードや特殊なカードを入手しようと課金しまくるプレイヤーが続出しました。さらに、仲間と協力して強大な敵に挑むなどのイベントも定期的に開催。
以降のソーシャルゲームの基本となる要素がほぼ盛り込まれており、日本におけるソシャゲーの草分け的存在となりました。

本作のヒットを受けて、同じように収集・育成・課金などを柱としたゲームが続々登場。『戦国コレクション』(コナミ)、『探検ドリランド』(GREE)、『神撃のバハムート』(Cygames)といった作品が大人気となりました(※2)。かくしてソシャゲーはゲーム業界に一大旋風を巻き起こすことになります。

※2:『探検ドリランド』と『神撃のバハムート』は2011年に運営開始

HEAVY RAIN 心の軋むとき
発売日:2010年2月18日
機種:プレイステーション3
発売元:SCE(現SIE)

傑作『Detroit: Become Human』を手掛けたことで知られる、フランスのクアンティック・ドリームが開発した新機軸のアドベンチャーゲームです。4人の主人公がそれぞれの視点で連続誘拐殺人の謎に迫っていくサイコサスペンスで、独自性の強いシステムや映画的な雰囲気などが好評を博し、スマッシュヒットとなりました。

特にユニークだったのが「ゲームオーバーがない」ということです。本作はさまざまな場面でQTE的な操作を要求されるのですが、入力の成功・失敗に関わらず物語は進行。たとえ主人公が死亡したとしてもゲームオーバーにはならず、結果に応じた展開を見せることになります。実際の人間の動作に似た直感的な操作も独特で、他のゲームにはない面白さがありました。

もうひとつの大きな魅力がタイトル通りのヘヴィなストーリーです。本作は被害者を溺死させ、遺体に折り紙を残していく「折り紙殺人鬼」の存在を軸に物語が進んでいくのですが、冒頭でいきなり主人公のひとりがどん底に叩き落とされるなど非常に重い展開が続きます。
サスペンスならではの全編を貫く緊張感も極めつけで、良質の海外ドラマを見ているような気分になったものです。

キャラクターたちの動きや表情の変化、ほぼ全編で降り続ける雨の描写などグラフィックも絶品のひとこと。一部、展開に矛盾を感じる部分はありますが、すべてにおいて完成度が高く、その面白さは近年のゲームにも決してヒケを取っていません。アドベンチャーゲームの新たな地平を開いたパイオニアというべき1本です。

この年はそのほかにも名作・注目作が目白押しです。任天堂のWiiでは、さまざまなミニゲームを楽しめるパーティゲーム『Wii Party』(任天堂)がロングヒットとなり、累計出荷本数243万本を記録。おなじみのマリオが活躍する3Dアクション『スーパーマリオギャラクシー2』(任天堂)もミリオンヒットとなりました。

『ニーア』シリーズの1作目となるアクションRPG『ニーア レプリカント』と『ニーア ゲシュタルト』(いずれもスクウェア・エニックス)も、この年の発売です。ひとつのストーリーを異なる主人公の視点で描き、『レプリカント』がプレイステーション3、『ゲシュタルト』がXbox 360で発売されるなどの斬新なスタイルが話題になりました。なお、『レプリンカント』のバージョンアップ版となる『ニーア レプリカント ver.1.22474487139...』(スクウェア・エニックス)が2011年4月22日発売予定です。

海外のゲームでは東西冷戦時代を舞台にしたFPS『コール オブ デューティ ブラックオプス』(スクウェア・エニックス)がヒット。コミックや映画などでおなじみのバットマンの活躍を描いたアクションゲーム『バットマン アーカム・アサイラム』(スクウェア・エニックス)(※3)、海底都市を舞台にした異色のFPSの続編『BioShock2』(ディースリー・パブリッシャー)も非常にクオリティが高く、傑作と評されました。

※3:欧米での発売は2009年です。

ニンテンドーDSでは『ドラゴンクエストVI 幻の大地』、『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2』(いずれもスクウェア・エニックス)、『イナズマイレブン3 世界への挑戦!!スパーク/ボンバー』(レベルファイブ)が累計出荷本数100万本超えを達成しています。何らかの事件によって命を落とし、生前の記憶を失った主人公が自身の死の真相に迫っていく異色のミステリーゲーム『ゴーストトリック』(カプコン)なども人気となりました。

PSPでは大山のぶ代さん演じるモノクマをはじめとする個性的なキャラクターたちが魅力のミステリーアドベンチャー『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(スパイク:現スパイク・チュンソフト)がスマッシュヒット。最大4人での協力プレイを楽しめる『メタルギアソリッド ピースウォーカー』(コナミ)も注目を集めました。

◆そのほかの主な出来事
3月18日:プレイステーション3用の地上デジタルチューナー「torne(トルネ)」発売
3月23日:任天堂が新型携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」の発売を発表
5月28日:Appleのタブレット型コンピュータ端末「iPad」が日本で発売
10月21日:SCEのモーションコントローラー「PlayStation Move」が日本で発売
11月20日:Xbox360の専用デバイス「Kinect」が日本で発売

いかがだったでしょう。現在、プレイステーション5やXbox Series Xの発売が話題ですが、どちらも10年前に現役機だったプレイステーション3、Xbox360の次々世代機になります。また、2010年に発売が発表されたニンテンドー3DSが今年で生産終了となるなど、この10年でのゲームの変化を実感できたのではないでしょうか。10年後、ゲーム業界はどのように変化して、どんなゲームが話題になっているのでしょうね。
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