iOS/Androidアプリ『Fate/Grand Order』(以下、FGO)の新たな期間限定イベント「虚数大海戦イマジナリ・スクランブル ~ノーチラス浮上せよ~」が、11月4日に発表されました。

このイベントの時間軸は、第2部 第4章と第5章の間。
そのため参加条件もある程度厳しく、第2部 第1章をクリアしたユーザーが参加できます。また、第2部 第2章~第4章までの内容に関するネタバレも一部含まれているので、可能ならば今のうちに第2部 第4章までクリアしておきたいところです。

イベントの開催時期は2020年11月中旬を予定しており、11月11日に配信される特別番組「Fate/Grand Order カルデア放送局 Vol.14 虚数大海戦イマジナリ・スクランブル 配信直前SP」にて、詳細が明らかになる模様。どのような内容が飛び出すのか、当日を楽しみにお待ちください。

ですが、既に明かされている情報がいくつかあり、本イベントのシナリオを担当するライターも判明済み。この「虚数大海戦イマジナリ・スクランブル」の物語を描くのは、豊かな実績を持つシナリオライターのamphibian(あんひびあん)氏です。

amphibian氏は様々な代表作を持つライターですが、その経歴を知らない『FGO』ユーザーも少なからずいることでしょう。今回はそんな方々に向け、amphibian氏が手がけた作品や、『FGO』との接点などをお伝えします。

2010年代のADV界隈に、活気と衝撃を与えたamphibian作品

amphibian氏の活躍が一般的に広まったのは、2010年代となります。まず、2010年に携帯電話向けのアプリとして登場した『鈍色のバタフライ』のシナリオを担当し、生死を左右する「バタフライゲーム」に巻き込まれた少年少女たちの物語を描きました。

死の危険を伴うゲームに参加し(もしくは強制的に参加させられ)、知略や観察力、機転を利かせた発想などを駆使して生きのびる姿を描く創作物は、ゲームのみならず漫画や小説、映画などのモチーフになることもしばしば。一般的に“デスゲーム”と呼ばれることも多い、人気ジャンルのひとつです。


『鈍色のバタフライ』も、この“デスゲーム”の要素を取り入れ、決められたルールと役割の中で足掻く登場人物たちの心理や緊張などを克明に描写。臨場感に溢れた筆力に支えられ、高いプレイ満足度を引き出しました。ちなみに本作は、後にiOS/Android版がリリースされ、Google Playでは4.3、App Storeでは4.6の評価を獲得(2020年 11月4日時点)。これは、満足度の高さを裏付ける証左のひとつと言えるでしょう。

そして2011年には、同じく携帯電話向けに『トガビトノセンリツ』の配信が始まりました。こちらも“デスゲーム”を題材としたADVですが、amphibian氏はシナリオのみならず本作の企画も担当。その持ち味を企画面でも発揮したタイトルとなりました。

ちなみに『トガビトノセンリツ』の本編は、主人公・竹井和馬の視点で綴られていますが、エンディングを迎えると隠しモードが解禁されます。その状態だと、和馬以外の登場人物の心理描写もテキストとして表示し、「あの時に何を考えていたのか」「どうしてその行動に踏み切ったのか」が明確になります。

1周目では気づかなかった視点を与えられることで、物語の理解度は大きく深まっていきます。と同時に、死んでいった人物の想いに直接触れることで、やるせなさや後悔も倍増。新たな事実や真実を突きつけられる2周目のプレイは、知っているはずの物語なのに新鮮で興味深く、そしてより残酷でした。
その苛烈さもまた、プレイヤーを捕らえて離さない魅力の一端です。

ちなみに『トガビトノセンリツ』もスマホ版が展開したほか、Wii U版もリリースするなど、活躍の場が徐々に広まってきました。

“デスゲーム”要素を存分に活かした作風で、着実に高評価を重ねていったamphibian作品。ですが、『黒のコマンドメント』でサブライターを務めた後は、これまでとはやや切り口が異なるコメディ路線の『D.M.L.C. デスマッチラブコメ』を、iOS/Androidに向けて放ちます。

タイトルにもある通り、本作は“ラブコメ”。ですが同時に“デスマッチ”でもあり、今回も死の危険が付きまとう点は変わりません。しかも、かなり直接的に。

本作の主人公・矢木景は、なぜか「告白されると爆死する」という、奇妙かつ危険極まりない状況に立たされており、ヒロインたちの告白をかわしながら、その謎の究明に挑む日々を生き抜いていく──この設定だけでも、ADVゲームとしては前代未聞レベルです。ちなみに本作の企画も、amphibian氏によるもの。今回も、企画からシナリオまで全力投球を見せてくれました。

これまでとは少々趣が異なる切り口に、amphibian氏のファンも驚きましたが、その出来映えは流石の一言。各ストアにて、いずれも4.5の高評価を叩き出しました。
また、Wii U向けにも展開し、コンシューマのADVファンにもamphibian氏の名が広まっていきます。

ちなみに、本作をベースにフルリメイクした『デスマッチラブコメ!』が、ニンテンドースイッチとPS4向けに、今年の6月25日に発売。今も刺激的な物語を、最新ゲームハードでプレイするのも一興でしょう。ちなみに、PS4のみパッケージ版もあります。

<cms-pagelink data-text="amphibian氏の名を特に知らしめた代表作は、これだ!" data-page="2" data-class="center"></cms-pagelink>

amphibian氏の名を一躍広めた代表作『レイジングループ』

ここまで紹介した作品たちも、amphibian氏の実績として確かな評価を得ていますが、その名前を最も後押ししたのは、2015年に初登場を飾った『レイジングループ』でしょう。過去作と同様、本作も“生と死”について深く迫りますが、その題材として取り上げたのは「人狼」でした。

デスゲームのひとつとして数えられることも多い「人狼」は、村に紛れ込んだ人狼をあぶり出す村人と、毎夜村人を食い殺す人狼に分かれて競うコミュニケーションゲーム。こちらも様々な作品にモチーフとして取り上げられてきましたが、ストーリー主導のADVゲームとして正面から「人狼」に取り組んだ作品は当時まだ少なく、その意味で『レイジングループ』はエポックメイキングな側面も備えていました。

また、タイトルにもある通り、本作は「ループもの」でもあります。本作における主人公の死は、決して終わりを意味していません。他人の死を見届け、自らの死すら乗り越えた先には、繰り返す世界の惨さが横たわっており、その過酷さもまたプレイ意欲を刺激します。

もちろん、こういった特徴的な切り口だけで注目を集めたわけではありません。
過疎化した村で起こる「黄泉忌みの宴」を中心に、信頼と嘘が交錯する先が読めない展開は、多くのプレイヤーを強烈に魅了。ついつい時間を忘れ、気がつけば朝を迎えていた・・・という経験を味わったユーザーもいたほどです。

その没入感の高さや、巧みに張られた伏線や謎が終盤で解明されるカタルシスは、プレイしたユーザーだけが味わえる至福のひとときで、その興奮と喜びをSNSなどで綴る方が続出。その口コミは更なるプレイヤーを誘い、リリースから時間を経て多くの方々へと伝わっていきました。

その影響力と広がりの一面は、対応プラットフォームから窺うこともできます。iOS/Android向けにデビューした『レイジングループ』は、2017年に大きな躍進を遂げ、PS Vita、PS4、ニンテンドースイッチと、様々なコンシューマゲーム機に向けて登場。さらにWindows版もリリースされ、amphibian氏が手がけた作品の中でも活躍の場が一際広がる作品となりました。

口コミが知名度を押し上げ、支持するファンが増加し、一定の支持が作品を盛り上げ、その勢いを受けてプラットフォームが拡大。そして新たなユーザーを取り込むと、また口コミが広がっていき・・・という、正の螺旋とも言うべきうねりが、数年がかりで『レイジングループ』の人気を確固たるものとしました。

amphibian氏の作品はいずれも魅力的ですが、知名度や人気度として見た場合、『レイジングループ』が抜きん出た存在なのは間違いありません。「虚数大海戦イマジナリ・スクランブル」開始前までにamphibian氏の作品をひとつ遊んでみたいと思ったら、この『レイジングループ』は非常に力強い有力候補です。なお、『レイジングループ』はamphibian氏が直々に手がけた小説版(全7巻)もあるので、そちらを選ぶ手もあります。


人狼×和風ノベルアドベンチャー「レイジングループ」はスマートフォン、PS4、PS Vita、Nintendo Switch、PC向けに配信中です。スマホ版はメインルート1本ほぼ丸ごと無料なのでお試しに最適。コンシューマ機版はスマホ版に追加要素がたくさん加わっていますhttps://t.co/oUBxy92vZM pic.twitter.com/o2zKtUVWcg&mdash; KEMCO(ケムコ)公式アカウント (@KEMCO_OFFICIAL) November 4, 2020

<cms-pagelink data-text="amphibian氏と『FGO』の接点に迫る!" data-page="3" data-class="center"></cms-pagelink>

『Fate』シリーズの生みの親・奈須きのこ氏が『レイジングループ』を熱く語る!

こうした代表作と経歴を持つamphibian氏ですが、実は『FGO』との接点もあります。まず、『FGO』の根幹を支えるクリエイターの奈須きのこ氏が、前述の『レイジングループ』をプレイしており、その感想をwebサイト「竹箒日記」(2018/06分)に綴っています。

2018年のゴールデンウィークに『レイジングループ』を遊んだ奈須氏は、巡り巡る世界を堪能し、「相反する要素を組み込みながらも互いを否定しないシナリオ展開には、もう拍手する他ありませんでした」と絶賛。物語に引き込むテキストの力強さや、それでいて遊び心が詰まった一面なども高く評価しました。

ちなみに該当回の「竹箒日記」では、「EXTRAシナリオもクリアしている方にのみ通じるネタバレというか、心底「すげえ……」と思った事を語りたい」と前置きした後の一文で、『レイジングループ』への感想を締めくくっています。その内容が気になる方は、「竹箒日記」を直接チェックしてみてください。ただし、奈須氏も書かれているように、『レイジングループ』を全てクリアしている方向けのメッセージなので、くれぐれもご注意を。

■「竹箒日記」2018/6/6 :フッさんはさぁ……(きのこ)
http://www.typemoon.org/bbb/diary/log/201806.html
FGO新イベントのシナリオ担当であることが告知されたシナリオライター・amphibianさんによるノベライズ『レイジングループ』全7巻、星海社から発売中です。特設サイト(https://t.co/YSuNQN0iiN)では奈須きのこさんによる1巻の解説が読めるので、ぜひチェックしてください!https://t.co/P9OjwZqnPl pic.twitter.com/KfGcsqYyM8&mdash; 丸茂智晴(星海社) (@seikaisha_maru) November 4, 2020 また奈須氏は、小説版「レイジングループ」第1巻の解説を担当しており、そちらでも作品の素晴らしさを熱弁しています。まだ第1巻の段階なので、物語全体の解説には踏み込めない状況ながら、作品に込められた熱量の高さをパワフルに伝えており、その解説文もまたレイジングループ世界の一端と思えるほどです。


奈須氏による解説文は特設サイトで公開中なので、よければそちらも合わせてご覧ください。

■書籍版「レイジングループ」特設サイト
https://sai-zen-sen.jp/sa/reijinglup/
FGOミステリー小説アンソロジー カルデアの事件簿 file.2 にて「鎌切村忌譚」執筆を担当しました突然「秋」に変わった下総を調査する立香たちは「閉じた」寒村に迷い込み 鬼婆を倒し遺骸を集めて弔うおぞましき「イベント」に参戦しますいま書けるものぜんぶ詰め込んだエンタメミステリー! pic.twitter.com/qIKRmnXfLM&mdash; amphibian/あんひびあん (@frogmonger) March 13, 2020 そしてもうひとつの大きな接点として、『FGO』を題材としたミステリー小説のアンソロジー書籍「カルデアの事件簿 file.02」に、amphibian氏が参加しています。

amphibian氏による収録作品「鎌切村忌譚」は、刑部姫、胤舜、清姫を連れた藤丸立香が下総国を再訪し、寒村を舞台に“周回(=ループ)”に挑む展開を描いています。『FGO』のプレイでお馴染みの周回が、amphibian氏の手にかかるとどのような物語になるのか。「虚数大海戦イマジナリ・スクランブル」に先駆けた『FGO』×amphibian氏のコラボレーションを、イベント前に味わっておくのも一興でしょう。

■星海社「FGOミステリー小説アンソロジー カルデアの事件簿 file.02」
https://www.seikaisha.co.jp/information/2020/02/22-post-fgo-file02.html

amphibian氏の経歴や実績、そして『FGO』との接点などをピックアップしましたが、いかがだったでしょうか。『Fate』シリーズの生みの親であり、関連する物語を数多く手がけている奈須氏を唸らせた筆力が、「虚数大海戦イマジナリ・スクランブル」をいかなる物語へと導くのか。期待を高めながら、開幕する瞬間を楽しみにお待ちください。

例のクエストくそ時間かけてなんとか一発クリアクラス相性大間違い&ダメージ礼装非装備のクソ編成でのぞんでしまい令呪2画切りながらもうだめだと何度思ったか 敵方が低火力かつ二段階スキルが無限継続でなくて助かったFGOでこんなにひりついた勝負ははじめてだ 賭けごとはたまらねえぜ…… pic.twitter.com/4eqWj2MQmd&mdash; amphibian/あんひびあん (@frogmonger) August 27, 2019 ちなみに、amphibian氏は『FGO』ユーザーでもあります。自身がシナリオを担当した「虚数大海戦イマジナリ・スクランブル」を、ご本人はどのような形で楽しむのでしょうか。そこもまた、気になる点のひとつです。
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