プレイステーション5、Xbox Series X/Sの発売が話題ですが、30年前にもひとつの家庭用ゲーム機の登場が大きな話題となりました。ご存知、任天堂の「スーパーファミコン」です。
スーパーファミコンは国民的人気ゲーム機・ファミリーコンピュータの後継機として1990年11月21日に発売。ローンチタイトルは『スーパーマリオワールド』と『F-ZERO』(いずれも任天堂)の2本のみでしたが、どちらも大いに注目を集めました。
さらに、12月に発売された『パイロットウイングス』(任天堂)、『アクトレイザー』(エニックス:現スクウェア・エニックス)、『ファイナルファイト』(カプコン)などもプレイヤーの人気を獲得。翌年以降も名作・話題作が続々発売され、国内累積出荷台数1,717万台、全世界累計出荷台数4,910万台(※1)という記録的大ヒットとなりました。
※1:数字はいずれも一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会発行の『2020 CESAゲーム白書』より
今回の「ゲーム19XX~20XX」はスーパーファミコン発売30周年を記念して、この伝説の名機が登場した1990年のゲームを振り返っていきます。1990年とはどんな年だったのか。まずは恒例の主な出来事の紹介です。
◆東西ドイツが統一される
第二次世界大戦以降、東西に分割されていたドイツですが、1989年に分断の象徴となっていたベルリンの壁が崩壊。これをきっかけに再統一の機運が高まり、1990年10月3日、東ドイツ(ドイツ民主共和国)が西ドイツ(ドイツ連邦共和国)に加入する形でドイツ統一が達成されました。45年にも及ぶ分断の終結は、ポスト冷戦時代の幕開けを印象付ける出来事となりました。
◆天皇陛下即位の礼が行われる
11月12日、平成の天皇陛下(現上皇さま)の即位の礼が営まれました。天皇の即位を内外に宣言する「即位礼正殿の儀」には世界158カ国から約2,200人が参列。
◆オグリキャップが有馬記念で勝利
「芦毛の怪物」と称され、追っかけの女性ファンまで登場するなど空前の競馬ブームを巻き起こしたオグリキャップですが、この年の秋のレースは惨敗が続いており、限界説がささやかれていました。ところが、ラストランとなった年末の有馬記念で並いる人気馬を破って優勝。17万もの大観衆を狂喜させたこの劇的な復活劇と、場内にオグリコールが響き渡った感動のフィナーレは、今も伝説として語り継がれています。
◆1990年の主な流行
ヒット曲:『おどるポンポコリン』(B.B.クィーンズ)、『浪漫飛行』(米米CLUB)、『さよなら人類』(たま)
映画:『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』、『ダイ・ハード2』、『天と地と』
アニメ:『ちびまる子ちゃん』、『ふしぎの海のナディア』、『NG騎士ラムネ&40』
マンガ:『SLAM DUNK』(井上雄彦)、『幽☆遊☆白書』(冨樫義博)、『うしおととら』(藤田和日郎)、『クレヨンしんちゃん』(臼井儀人)
1990年はこのような年でした。これらの出来事が30年前ということに衝撃を受けている人もいるかもしれませんね。それでは、この年の名作・傑作ゲームを紹介していきましょう。
スーパーマリオワールド
発売日:1990年11月21日
機種:スーパーファミコン
発売元:任天堂
スーパーファミコン用ソフト第1弾として発売された、おなじみ『スーパーマリオ』シリーズの4作目です。
ゲームの舞台となるのは「恐竜ランド」で、全96ステージからなるゲーム世界は壮大のひとこと。ステージの内容もバラエティに富んでいて、多彩な冒険世界に多くのプレイヤーが心躍らされました。
同梱されていたマニュアルも壮大なゲーム世界の魅力を際立たせていました。1枚の大きな紙で構成されていて、開くと裏面に恐竜ランドの全体図がドーンと描かれていたのです。
本作で初めて登場したヨッシーの存在にも触れておくべきしょう。敵を食べる、吐き出す、スピンジャンプで高く飛ぶなど、ヨッシーに乗ってのプレイはそれまでの『スーパーマリオ』とは違った面白さを持っていました。とはいえ、ヨッシーに乗ったら必ず有利になるというわけではなく、活用するかどうかはプレイヤー次第。こうした自由度の高さも非常に心憎く、そこには誰でも楽しめる手軽さとマニアもハマれる奥深さがありました。
もちろん、グラフィックやサウンドなども当時のレベルでは群を抜いており、スーパーファミコンという新ハードのポテンシャルを知らしめたという意味でも、本作の存在意義は非常に大きなものがありました。これほどの傑作をハードと同時に送り出した任天堂と巨匠・宮本茂氏の手腕には驚くしかありません。もちろん、ファンに与えた衝撃も大きく、国内累計出荷本数355万本、全世界累計出荷本数2,061万本という圧倒的記録を残しています。
ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
発売日:1990年2月11日
機種:ファミリーコンピュータ
発売元:エニックス(現スクウェア・エニックス)
おなじみ国民的人気RPGのシリーズ第4作目です。フィーバーぶりは前作の『III』以上で(詳しくは第8回を参照してください)、発売当日には池袋の量販店に約1万人の行列ができたといいます。さらに、買ったばかりのソフトをひったくられたり脅し取られたりする事件が続発。
そんな『ドラクエIV』ですが、今回は全5章からなるオムニバス形式になっていて、1章ごとに主人公が変更。第5章で勇者と各章の主人公たちが出会っていくという形になっていました。おてんば姫のアリーナや武器屋のトルネコなど、各章の主人公たちはいずれも個性的で魅力たっぷり。第5章では、いきなり勇者の住む村が悲劇に見舞われるなどストーリーも起伏に富んでおり、多くのプレイヤーが引き付けられました。すぎやまこういち氏によるサウンドも聞き応えがあり、4章の戦闘BGMは個人的に今もお気に入りだったりします。
AI戦闘、馬車システム、カジノなどの以降の作品で恒例となった要素も多数登場。特に注目を集めたのがAI戦闘です。「ガンガンいこうぜ」などの指示に従って、キャラクターたちが自動的に戦うシステムは非常に画期的で、AIがどんな戦い方をするのか、いろいろ試してみたものです。もっとも敵に効かない呪文を連発するといったことも少なくなかったため、「自分で操作させてくれ!」となった人もけっこういたようです。のちに、プレイステーションやニンテンドーDSでリメイク版が発売。現在はスマートフォン版も配信中です。
ファイナルファンタジーIII
発売日:1990年4月27日
機種:ファミリーコンピュータ
発売元:スクウェア(現スクウェア・エニックス)
ご存知『FF』シリーズの第3作目です。ジョブチェンジや召喚獣といった斬新な新システム、意外性に満ちたドラマチックなストーリー、植松伸夫氏が手掛けたサウンドなど、すべてがハイレベルでシリーズ初となるミリオンヒットを記録。『ドラクエ』に続く人気RPGとして認知されるようになりました。
一番の見どころは、やはりジョブシステムでしょう。戦士、白魔道士、黒魔道士、シーフ、竜騎士、忍者といった、全22種類のジョブをさまざまに組み合わせての戦闘は非常に面白く、ほとんど役に立たないと思われていたジョブが最終的に最強の職業になるという、意表を突く仕掛けも大きな話題になりました。
歯応えのある内容も本作の特徴のひとつになっていました。出現する敵のタイプに合わせてジョブを変えるなど、ジョブチェンジシステムをしっかり使いこなさないと勝ち抜けないようになっているのですが、初心者はなかなかそこまでアタマが回らず、かくいう筆者も序盤でけっこう苦戦したのを覚えています。
さらに多くのプレイヤーを泣かせたのが、今や伝説となっているラストダンジョン・クリスタルタワーです。とんでもなく長い上、途中にセーブポイントは一切なし。さらに敗北イベントまであるなど恐ろしく凶悪で、シリーズ屈指の高難度ダンジョンとして語り継がれています。
ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣
発売日:1990年4月20日
機種:ファミリーコンピュータ
発売元:任天堂
『ファイアーエムブレム』シリーズの記念すべき第1作目にして、シリーズの基礎を築いた名作です。発売当初の評判は今ひとつでしたが、口コミでじょじょに人気が拡大。
特に画期的だったのが、倒されたキャラクターは生き返らないというルールです。本シリーズの根幹をなす要素として、今ではすっかりおなじみになっていますが、当時は非常に新鮮で、HPに余裕があっても敵の強力な一撃を食らってピンチになるんじゃないかと終始ハラハラさせられたものです。ことに高難度のステージが連続する終盤の緊張感は格別で、クリア寸前で仲間が倒されてしまい、泣く泣くステージのアタマから再挑戦したという人もいたことでしょう。戦略性も非常に高く、こうしたシビアさが本作の大きな魅力となっていました。
もちろん、主人公マルスをはじめとする個性豊かなキャラクターたち、アカネイヤ大陸を舞台にした壮大なストーリーも魅力的で、現在もその面白さは損なわれていません。今プレイするなら、本作のリメイクに新章を追加したスーパーファミコン版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』(任天堂)がおすすめですが、「ファミリーコンピュータNintendo Switch Online」で、オリジナルのファミコン版もプレイ可能になっています。さすがにUIなどシステム面で不満を覚える部分はありますが、オリジナル版ならではの味わいがあるので、この機会にこちらもプレイしてみてはいかがでしょうか。
マイケルジャクソンズ ムーンウォーカー
発売日:1990年8月25日
機種:メガドライブ
発売元:セガ
2009年に亡くなった世界的スーパースター、マイケル・ジャクソンが主人公という異色のアクションゲームです。大のセガマニアだったマイケルが自ら企画・監修を務めた作品で、1988年に公開されたマイケル主演の映画『ムーンウォーカー』がベースになっています。この映画はかなりぶっ飛んだ内容で話題になったのですが、ゲームのほうも負けてはいませんでした。
マイケルを操って敵と戦い、さらわれた子供たちを助け出していくのですが、パンチやキックを繰り出した際、なぜかキラキラと光る魔法を飛ばして攻撃。
こう言うと、ただのバカゲーに見えますが、「階段を滑り降りる」「帽子をブーメランのように飛ばす」「クルっと回転してポーズを決める」など、精緻なドット絵で描かれたアクションの数々はどれもマイケル・ジャクソンならではで、スタイリッシュのひとこと。ダンスシーンもクールでカッコ良く、これらのシーン見たさに何度もプレイしたものです。
ちなみに、同名のアーケード版も存在しますが、クォータービューの斜め見下ろし型のアクションゲームで、ゲーム性はメガドライブ版と大きく異なっています。ただ、マイケルが敵と一緒に踊りまくるなど、こちらも「マイケル・ジャクソンらしさ」が全開で、メガドライブ版ともども伝説のゲームになっています。
ここからは、そのほかの注目作・話題作などをまとめて紹介。この時期は『テトリス』のヒットを受けて、落ちものパズルゲームが注目を集めつつありました。そうした中、登場したのが『コラムス』(セガ)と『ドクターマリオ』(任天堂)です。『コラムス』は3個1組で落下してくるカラフルな宝石を並べ替え、同じ色の宝石をタテ・ヨコ・ナナメに3つ以上繋げることで消していきます。特に好評だったのが宝石をまとめて消せる連鎖システムの要素で、このゲームで連鎖の快感を知ったという人もけっこういるのではないでしょうか。
『ドクターマリオ』は落下してくるカプセルを使って、ビンの中のウィルスを退治するというもので、同じ色のウィルスとカプセルを4つ繋げることで消えていきます。こちらもルールのシンプルさと連鎖の要素などが受け、女性にも人気になるなど幅広い層の支持を獲得。ゲームボーイ版が累計出荷本数208万本、ファミコン版も累計出荷本数153万本を記録するビッグヒットとなりました。
メガドライブでは『スーパーモナコGP』(セガ)がスマッシュヒット。アーケードで人気を博したレースゲームの移植作ですが、正直言って映像面での再現度はさほど高くはありませんでした。しかし、本作には独自のモード「WORLD CHAMPIONSHIP」が収録されていました。実際のF1と同じように全16戦(※2)を戦うというもので、これがやり応えたっぷり。弱小チームのドライバーから成り上がっていくというRPG的要素もあり、多くのプレイヤーに親しまれました。
※2:当時のF1は年間16戦で争われていました。
PCエンジンでは、時限爆弾を使ってステージ内の敵を倒していく、おなじみの『ボンバーマン』(ハドソン)が話題に。ファミコン時代から人気のアクションゲームですが、今作ではマルチタップを利用した最大5人での対戦が可能になっており、協力し合ったり土壇場で裏切ったりという対戦ならではの面白さにハマる人が続出。本作のヒットにより『ボンバーマン』は対戦ゲームの定番になりました。
そのほかの家庭用ゲーム機の話題作はファミコンの『キャプテン翼II スーパーストライカー』(テクモ:現コーエーテクモゲームス)、『デジタル・デビル物語 女神転生II』(ナムコ:現バンダイナムコエンターテインメント)など。メガドライブの『重装騎兵レイノス』(メサイヤ)、PCエンジンの『ワルキューレの伝説』(ナムコ)なども人気となりました。
アーケードでは、多くのゲームファンを仰天させた『R360』(セガ)が登場。プレイヤーの操作に合わせてコックピットが全方向にグルグル回転するという、常識はずれの体感マシンは注目の的になりました。球状の近未来的な筐体も非常に先進的で、往時のセガのチャレンジスピリッツを体現したマシンだったと言えるのではないでしょうか。
縦スクロールシューティングの名作『雷電』(テクモ)、昔気質の江戸っ子・源さんが木槌を振り回して大暴れするアクションゲーム『大工の源さん』(アイレム)などもヒット。見た目は「超」が付くほどのバカゲーながら歯応え満点の横スクロールシューティング『パロディウスだ!-神話からお笑いへ-』(コナミ)も話題になりました。
また、10月6日にセガの携帯ゲーム機「ゲームギア」、12月1日にNECの携帯ゲーム機「PCエンジンGT」が相次いで発売されています。どちらもカラー液晶を採用していて、別売りのチューナーを利用してのテレビ視聴が可能。さらに、PCエンジンGTはPCエンジンと互換性があり、Huカードでプレイできるようになっていました。しかし、ともに電池の消費が激しく、連続で稼働できる時間が短いという大きな欠点があり、任天堂の「ゲームボーイ」を脅かすまでには至りませんでした。
いかがだったでしょうか。リアルタイムで経験している方は30年という時の流れを感じたことでしょう。30年後の2050年には、どんなゲームが話題になっているのでしょうね。
スーパーファミコンは国民的人気ゲーム機・ファミリーコンピュータの後継機として1990年11月21日に発売。ローンチタイトルは『スーパーマリオワールド』と『F-ZERO』(いずれも任天堂)の2本のみでしたが、どちらも大いに注目を集めました。
さらに、12月に発売された『パイロットウイングス』(任天堂)、『アクトレイザー』(エニックス:現スクウェア・エニックス)、『ファイナルファイト』(カプコン)などもプレイヤーの人気を獲得。翌年以降も名作・話題作が続々発売され、国内累積出荷台数1,717万台、全世界累計出荷台数4,910万台(※1)という記録的大ヒットとなりました。
※1:数字はいずれも一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会発行の『2020 CESAゲーム白書』より
今回の「ゲーム19XX~20XX」はスーパーファミコン発売30周年を記念して、この伝説の名機が登場した1990年のゲームを振り返っていきます。1990年とはどんな年だったのか。まずは恒例の主な出来事の紹介です。
◆東西ドイツが統一される
第二次世界大戦以降、東西に分割されていたドイツですが、1989年に分断の象徴となっていたベルリンの壁が崩壊。これをきっかけに再統一の機運が高まり、1990年10月3日、東ドイツ(ドイツ民主共和国)が西ドイツ(ドイツ連邦共和国)に加入する形でドイツ統一が達成されました。45年にも及ぶ分断の終結は、ポスト冷戦時代の幕開けを印象付ける出来事となりました。
◆天皇陛下即位の礼が行われる
11月12日、平成の天皇陛下(現上皇さま)の即位の礼が営まれました。天皇の即位を内外に宣言する「即位礼正殿の儀」には世界158カ国から約2,200人が参列。
そのあとに行われた上皇ご夫妻のパレードには約12万人がつめかけるなど日本全土が祝賀ムードに包まれました。
◆オグリキャップが有馬記念で勝利
「芦毛の怪物」と称され、追っかけの女性ファンまで登場するなど空前の競馬ブームを巻き起こしたオグリキャップですが、この年の秋のレースは惨敗が続いており、限界説がささやかれていました。ところが、ラストランとなった年末の有馬記念で並いる人気馬を破って優勝。17万もの大観衆を狂喜させたこの劇的な復活劇と、場内にオグリコールが響き渡った感動のフィナーレは、今も伝説として語り継がれています。
◆1990年の主な流行
ヒット曲:『おどるポンポコリン』(B.B.クィーンズ)、『浪漫飛行』(米米CLUB)、『さよなら人類』(たま)
映画:『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』、『ダイ・ハード2』、『天と地と』
アニメ:『ちびまる子ちゃん』、『ふしぎの海のナディア』、『NG騎士ラムネ&40』
マンガ:『SLAM DUNK』(井上雄彦)、『幽☆遊☆白書』(冨樫義博)、『うしおととら』(藤田和日郎)、『クレヨンしんちゃん』(臼井儀人)
1990年はこのような年でした。これらの出来事が30年前ということに衝撃を受けている人もいるかもしれませんね。それでは、この年の名作・傑作ゲームを紹介していきましょう。
スーパーマリオワールド
発売日:1990年11月21日
機種:スーパーファミコン
発売元:任天堂
スーパーファミコン用ソフト第1弾として発売された、おなじみ『スーパーマリオ』シリーズの4作目です。
ゲームの舞台となるのは「恐竜ランド」で、全96ステージからなるゲーム世界は壮大のひとこと。ステージの内容もバラエティに富んでいて、多彩な冒険世界に多くのプレイヤーが心躍らされました。
同梱されていたマニュアルも壮大なゲーム世界の魅力を際立たせていました。1枚の大きな紙で構成されていて、開くと裏面に恐竜ランドの全体図がドーンと描かれていたのです。
そのスケールの大きさは圧巻で、思わず見入ってしまったものです。イラストをふんだんに使った説明も読んでいて楽しく、このマニュアルは個人的にも強く印象に残っています。
本作で初めて登場したヨッシーの存在にも触れておくべきしょう。敵を食べる、吐き出す、スピンジャンプで高く飛ぶなど、ヨッシーに乗ってのプレイはそれまでの『スーパーマリオ』とは違った面白さを持っていました。とはいえ、ヨッシーに乗ったら必ず有利になるというわけではなく、活用するかどうかはプレイヤー次第。こうした自由度の高さも非常に心憎く、そこには誰でも楽しめる手軽さとマニアもハマれる奥深さがありました。
もちろん、グラフィックやサウンドなども当時のレベルでは群を抜いており、スーパーファミコンという新ハードのポテンシャルを知らしめたという意味でも、本作の存在意義は非常に大きなものがありました。これほどの傑作をハードと同時に送り出した任天堂と巨匠・宮本茂氏の手腕には驚くしかありません。もちろん、ファンに与えた衝撃も大きく、国内累計出荷本数355万本、全世界累計出荷本数2,061万本という圧倒的記録を残しています。
ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
発売日:1990年2月11日
機種:ファミリーコンピュータ
発売元:エニックス(現スクウェア・エニックス)
おなじみ国民的人気RPGのシリーズ第4作目です。フィーバーぶりは前作の『III』以上で(詳しくは第8回を参照してください)、発売当日には池袋の量販店に約1万人の行列ができたといいます。さらに、買ったばかりのソフトをひったくられたり脅し取られたりする事件が続発。
国内累計出荷本数は310万本に達するなど、またまた一大旋風を巻き起こしました。
そんな『ドラクエIV』ですが、今回は全5章からなるオムニバス形式になっていて、1章ごとに主人公が変更。第5章で勇者と各章の主人公たちが出会っていくという形になっていました。おてんば姫のアリーナや武器屋のトルネコなど、各章の主人公たちはいずれも個性的で魅力たっぷり。第5章では、いきなり勇者の住む村が悲劇に見舞われるなどストーリーも起伏に富んでおり、多くのプレイヤーが引き付けられました。すぎやまこういち氏によるサウンドも聞き応えがあり、4章の戦闘BGMは個人的に今もお気に入りだったりします。
AI戦闘、馬車システム、カジノなどの以降の作品で恒例となった要素も多数登場。特に注目を集めたのがAI戦闘です。「ガンガンいこうぜ」などの指示に従って、キャラクターたちが自動的に戦うシステムは非常に画期的で、AIがどんな戦い方をするのか、いろいろ試してみたものです。もっとも敵に効かない呪文を連発するといったことも少なくなかったため、「自分で操作させてくれ!」となった人もけっこういたようです。のちに、プレイステーションやニンテンドーDSでリメイク版が発売。現在はスマートフォン版も配信中です。
ファイナルファンタジーIII
発売日:1990年4月27日
機種:ファミリーコンピュータ
発売元:スクウェア(現スクウェア・エニックス)
ご存知『FF』シリーズの第3作目です。ジョブチェンジや召喚獣といった斬新な新システム、意外性に満ちたドラマチックなストーリー、植松伸夫氏が手掛けたサウンドなど、すべてがハイレベルでシリーズ初となるミリオンヒットを記録。『ドラクエ』に続く人気RPGとして認知されるようになりました。
一番の見どころは、やはりジョブシステムでしょう。戦士、白魔道士、黒魔道士、シーフ、竜騎士、忍者といった、全22種類のジョブをさまざまに組み合わせての戦闘は非常に面白く、ほとんど役に立たないと思われていたジョブが最終的に最強の職業になるという、意表を突く仕掛けも大きな話題になりました。
歯応えのある内容も本作の特徴のひとつになっていました。出現する敵のタイプに合わせてジョブを変えるなど、ジョブチェンジシステムをしっかり使いこなさないと勝ち抜けないようになっているのですが、初心者はなかなかそこまでアタマが回らず、かくいう筆者も序盤でけっこう苦戦したのを覚えています。
さらに多くのプレイヤーを泣かせたのが、今や伝説となっているラストダンジョン・クリスタルタワーです。とんでもなく長い上、途中にセーブポイントは一切なし。さらに敗北イベントまであるなど恐ろしく凶悪で、シリーズ屈指の高難度ダンジョンとして語り継がれています。
ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣
発売日:1990年4月20日
機種:ファミリーコンピュータ
発売元:任天堂
『ファイアーエムブレム』シリーズの記念すべき第1作目にして、シリーズの基礎を築いた名作です。発売当初の評判は今ひとつでしたが、口コミでじょじょに人気が拡大。
戦略シミュレーションとRPG的要素を融合させた、「シミュレーションRPG」というジャンルを確立しました。
特に画期的だったのが、倒されたキャラクターは生き返らないというルールです。本シリーズの根幹をなす要素として、今ではすっかりおなじみになっていますが、当時は非常に新鮮で、HPに余裕があっても敵の強力な一撃を食らってピンチになるんじゃないかと終始ハラハラさせられたものです。ことに高難度のステージが連続する終盤の緊張感は格別で、クリア寸前で仲間が倒されてしまい、泣く泣くステージのアタマから再挑戦したという人もいたことでしょう。戦略性も非常に高く、こうしたシビアさが本作の大きな魅力となっていました。
もちろん、主人公マルスをはじめとする個性豊かなキャラクターたち、アカネイヤ大陸を舞台にした壮大なストーリーも魅力的で、現在もその面白さは損なわれていません。今プレイするなら、本作のリメイクに新章を追加したスーパーファミコン版『ファイアーエムブレム 紋章の謎』(任天堂)がおすすめですが、「ファミリーコンピュータNintendo Switch Online」で、オリジナルのファミコン版もプレイ可能になっています。さすがにUIなどシステム面で不満を覚える部分はありますが、オリジナル版ならではの味わいがあるので、この機会にこちらもプレイしてみてはいかがでしょうか。
マイケルジャクソンズ ムーンウォーカー
発売日:1990年8月25日
機種:メガドライブ
発売元:セガ
2009年に亡くなった世界的スーパースター、マイケル・ジャクソンが主人公という異色のアクションゲームです。大のセガマニアだったマイケルが自ら企画・監修を務めた作品で、1988年に公開されたマイケル主演の映画『ムーンウォーカー』がベースになっています。この映画はかなりぶっ飛んだ内容で話題になったのですが、ゲームのほうも負けてはいませんでした。
マイケルを操って敵と戦い、さらわれた子供たちを助け出していくのですが、パンチやキックを繰り出した際、なぜかキラキラと光る魔法を飛ばして攻撃。
流れ星の力を得てロボットに変身なんてことも可能になっていました。さらに面白いのがダンスアタックで、この攻撃を繰り出すと周囲の敵がマイケルと一緒に踊り出し、ダンスが終わると全員倒れてしまうのです。このように普通のゲームではあり得ない要素が満載で、多くのゲームファンが呆気に取られました。
こう言うと、ただのバカゲーに見えますが、「階段を滑り降りる」「帽子をブーメランのように飛ばす」「クルっと回転してポーズを決める」など、精緻なドット絵で描かれたアクションの数々はどれもマイケル・ジャクソンならではで、スタイリッシュのひとこと。ダンスシーンもクールでカッコ良く、これらのシーン見たさに何度もプレイしたものです。
ちなみに、同名のアーケード版も存在しますが、クォータービューの斜め見下ろし型のアクションゲームで、ゲーム性はメガドライブ版と大きく異なっています。ただ、マイケルが敵と一緒に踊りまくるなど、こちらも「マイケル・ジャクソンらしさ」が全開で、メガドライブ版ともども伝説のゲームになっています。
ここからは、そのほかの注目作・話題作などをまとめて紹介。この時期は『テトリス』のヒットを受けて、落ちものパズルゲームが注目を集めつつありました。そうした中、登場したのが『コラムス』(セガ)と『ドクターマリオ』(任天堂)です。『コラムス』は3個1組で落下してくるカラフルな宝石を並べ替え、同じ色の宝石をタテ・ヨコ・ナナメに3つ以上繋げることで消していきます。特に好評だったのが宝石をまとめて消せる連鎖システムの要素で、このゲームで連鎖の快感を知ったという人もけっこういるのではないでしょうか。
『ドクターマリオ』は落下してくるカプセルを使って、ビンの中のウィルスを退治するというもので、同じ色のウィルスとカプセルを4つ繋げることで消えていきます。こちらもルールのシンプルさと連鎖の要素などが受け、女性にも人気になるなど幅広い層の支持を獲得。ゲームボーイ版が累計出荷本数208万本、ファミコン版も累計出荷本数153万本を記録するビッグヒットとなりました。
メガドライブでは『スーパーモナコGP』(セガ)がスマッシュヒット。アーケードで人気を博したレースゲームの移植作ですが、正直言って映像面での再現度はさほど高くはありませんでした。しかし、本作には独自のモード「WORLD CHAMPIONSHIP」が収録されていました。実際のF1と同じように全16戦(※2)を戦うというもので、これがやり応えたっぷり。弱小チームのドライバーから成り上がっていくというRPG的要素もあり、多くのプレイヤーに親しまれました。
※2:当時のF1は年間16戦で争われていました。
PCエンジンでは、時限爆弾を使ってステージ内の敵を倒していく、おなじみの『ボンバーマン』(ハドソン)が話題に。ファミコン時代から人気のアクションゲームですが、今作ではマルチタップを利用した最大5人での対戦が可能になっており、協力し合ったり土壇場で裏切ったりという対戦ならではの面白さにハマる人が続出。本作のヒットにより『ボンバーマン』は対戦ゲームの定番になりました。
そのほかの家庭用ゲーム機の話題作はファミコンの『キャプテン翼II スーパーストライカー』(テクモ:現コーエーテクモゲームス)、『デジタル・デビル物語 女神転生II』(ナムコ:現バンダイナムコエンターテインメント)など。メガドライブの『重装騎兵レイノス』(メサイヤ)、PCエンジンの『ワルキューレの伝説』(ナムコ)なども人気となりました。
アーケードでは、多くのゲームファンを仰天させた『R360』(セガ)が登場。プレイヤーの操作に合わせてコックピットが全方向にグルグル回転するという、常識はずれの体感マシンは注目の的になりました。球状の近未来的な筐体も非常に先進的で、往時のセガのチャレンジスピリッツを体現したマシンだったと言えるのではないでしょうか。
縦スクロールシューティングの名作『雷電』(テクモ)、昔気質の江戸っ子・源さんが木槌を振り回して大暴れするアクションゲーム『大工の源さん』(アイレム)などもヒット。見た目は「超」が付くほどのバカゲーながら歯応え満点の横スクロールシューティング『パロディウスだ!-神話からお笑いへ-』(コナミ)も話題になりました。
また、10月6日にセガの携帯ゲーム機「ゲームギア」、12月1日にNECの携帯ゲーム機「PCエンジンGT」が相次いで発売されています。どちらもカラー液晶を採用していて、別売りのチューナーを利用してのテレビ視聴が可能。さらに、PCエンジンGTはPCエンジンと互換性があり、Huカードでプレイできるようになっていました。しかし、ともに電池の消費が激しく、連続で稼働できる時間が短いという大きな欠点があり、任天堂の「ゲームボーイ」を脅かすまでには至りませんでした。
いかがだったでしょうか。リアルタイムで経験している方は30年という時の流れを感じたことでしょう。30年後の2050年には、どんなゲームが話題になっているのでしょうね。
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