2021年3月26日、モンスターハンターシリーズ最新作となる『モンスターハンターライズ』(カプコン)がいよいよ発売となります。多くのゲームファンがNintendo Switchでの新たな狩猟体験を心待ちにしていることでしょう。


今や大ヒットシリーズとなった『モンハン』ですが、その人気を確立した作品といえば、やはり『モンスターハンターポータブル 2nd G』(カプコン)ではないでしょうか。2008年3月27日にPSP(プレイステーション・ポータブル)向けに発売され、年間実売本数約245万本(※1)という大ヒットを記録。本シリーズを国民的人気作へと押し上げました。

※1:エンターブレイン発行の『ファミ通ゲーム白書2009』より

そこで今回の「ゲーム19XX~20XX」は、この『モンハン 2nd G』が発売された2008年をピックアップ。この年のヒット作や話題作などを紹介していきます。まずは2008年がどのような年だったのか、主なニュースで振り返っておきましょう。

◆秋葉原無差別殺傷事件が起きる
6月8日、当時歩行者天国だった東京・秋葉原の交差点に男がトラックで突っ込み、通行人をはねた上にナイフで付近の買い物客らを襲撃。7人が死亡、10人が重軽傷を負うという事件が起きました。逮捕された加藤智大死刑囚は「人を殺すために秋葉原に来た、誰でもよかった」などと供述。2015年に死刑判決が確定しました。

◆リーマンショックに始まる金融危機が世界に波及
アメリカで住宅バブル崩壊をきっかけに低所得者向けのサブプライムローンの焦げ付きが多発。米証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻に追い込まれ、株価が暴落するなど世界的な金融危機に発展しました。
この危機は日本にも波及。非正規社員の雇い止めや派遣切り、正社員のリストラなどが社会問題化することとなりました。

◆北京オリンピックが開催される
8月に北京オリンピックが開催。日本勢は競泳男子で北島康介が平泳ぎの100、200メートルで2大会連続2冠の偉業を達成したのをはじめ、9個の金メダルを獲得しました。また、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が9秒69という驚異的な世界新記録(当時)を叩き出した男子100メートル決勝なども話題となりました。

◆主な流行
ヒット曲:『truth/風の向こうへ』(嵐)、『I AM YOUR SINGER』(サザンオールスターズ)、『キセキ』(GReeeeN)、『羞恥心』(羞恥心)
映画:『おくりびと』、『崖の上のポニョ』、『容疑者Xの献身』、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』、『アイ・アム・レジェンド』(公開は2007年12月)
アニメ:『コードギアス 反逆のルルーシュR2』、『とらドラ!』、『マクロスF』、『夏目友人帳』、『CLANNAD ~AFTER STORY~』
マンガ:『黒子のバスケ』(藤巻忠俊)、『バクマン。』(原作:大場つぐみ、作画:小畑健)、『弱虫ペダル』(渡辺航)、『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ)

このように2008年は少し暗いニュースが目立つ1年でした。それでは、この年に発売されたゲームを見ていきましょう!

モンスターハンターポータブル 2nd G
発売日:2008年3月27日
機種:PSP
販売元:カプコン

前年に発売された『モンスターハンターポータブル2nd』のアップグレード版です。それまでの歴代シリーズに登場したすべてのモンスターと装備を収録。さらに、より高難易のG級クエストのほか、樹海や火山などの新フィールド、ナルガクルガをはじめとする新モンスターといった数々の新要素が追加されており、やり応え抜群の内容にシリーズのファンは狂喜しました。

クエストにおなじみのアイルーを連れていける「オトモアイルー」が初めて登場した作品としても知られています。武器や爆弾で攻撃したり、モンスターの注意を引いたりと、さまざまな行動でプレイヤーをサポート。
愛らしいアイルーを連れてのクエストは楽しさ倍増で、トリコになったというプレイヤーも多いことでしょう。

発売後の盛り上がりも非常に大きなものがありました。発売当日、都内の量販店には多くのファンが詰めかけ大行列が発生。その人気は社会現象というべきもので、電車、学校、ファーストフードなどでPSPを手にハンティングを楽しむ人たちの姿が見られるようになりました。

さらに、本作の人気を受けてPSPの販売台数も大幅に増加。この年の4~6月だけで372万台を販売するなど(※2)ハードの普及にも大きく貢献しました。以降、『モンスターハンター』は『ドラクエ』や『ポケモン』などに並ぶ国民的ゲームとして君臨することとなります。

※2:ソニー2008年度 第1四半期連結業績より

マリオカートWii
発売日:2008年4月10日
機種:Wii
販売元:任天堂

マリオシリーズのキャラクターたちがレースで競い合う、おなじみの超人気レースゲームのシリーズ第6作目になります。子供や初心者でも手軽にプレイできる快適な操作感と、一発逆転の要素を秘めた対戦の面白さは本作でも健在で、世界累計出荷本数3,738万本(※3)という圧倒的な数字を叩き出しました。

もっとも話題を呼んだのがソフトと同梱されていたWiiハンドルです。自動車のハンドルを模したもので、Wiiリモコンを取りつけて使用することで、実際のハンドルのような直感的な操作を楽しめるようになっていました。このモーションセンサーを利用した操作が『マリオカート8 デラックス』のJoy-Conハンドルなどにも受け継がれているのはご存知のとおりです。


初めてバイクが登場した作品でもあります。体当たりに弱いという短所はありますが、カートよりも小回りがきき、ウィリーでスピードアップするなど非常に乗り応えがあり、カートでのレースとはひと味違う面白さがありました。

そのほか、Wi-Fiを使った最大12人でのオンライン対戦、条件をクリアすると使用できるようになる総勢25人もの多彩なキャラクターたち、バラエティに富んだユニークなコースの数々など内容も充実のひとこと。ひとりでプレイしても楽しく、大勢でプレイすればもっと楽しい、Wiiというハードを代表する1本としてゲーム史にその名を残しています。

※3:任天堂公式サイトの「主要タイトル販売実績」より

グランド・セフト・オートIV
発売日:2008年10月30日
機種:PS3、Xbox360、PC
販売元:カプコン

オープンワールドというジャンルを代表する、世界的人気シリーズのナンバリングタイトル第4作目になります。

自由度が魅力の『GTA』シリーズですが、本作はストーリーも大きな見どころになっており、従兄弟を頼って旧ユーゴからやって来たニコ・ベリックを主人公に、一癖も二癖もある人物たちが織りなすシリアスなストーリーが展開していきます。

何しろゲームをスタートして最初に目に飛び込んでくるのが、SMの女王様にムチ打たれて喜んでいる黒パンツ一丁の男なのです。このシーンは非常に強烈で、ゲームの世界に一気に引き込まれたのを覚えています。

おなじみのリバティーシティの作り込みも圧巻でした。さまざまな人が行きかう、細部まで作り込まれた街はリアル感抜群。事故ったり銃撃を受けたりすると、車がどんどん破損していくのも新鮮で、小市民な筆者はクライムアクションゲームなのに、なぜか安全運転をしてしまったものです。

オープンワールド全盛の現在のゲームと比較すると、グラフィックや操作システムなどの部分で、やや物足りなさを感じてしまうかもしれません。
しかし、当時のゲームファンに与えたインパクトは絶大で、圧倒的自由度で描いたダークなストーリーは今プレイしても十分ハマれます。のちに2本のアナザーストーリーを収録した『コンプリート・エディション』も発売されており、今プレイするならこちらがオススメです。

Fallout3
発売日:2008年12月4日(Xbox360)、2009年1月15日(PS3)
機種:PS3、Xbox360、PC
販売元:ベセスダ・ソフトワークス

核戦争後の荒廃した未来世界を舞台にしたRPGです。「1950年代の人々が想像した未来」をコンセプトにしていて、自由度の高さや独特の世界観、時間を止めて特定の部位を狙う戦闘システムなどが受け、カルト的人気を得ました。

ストーリーは父を追って地下シェルターを脱出した主人公が、核戦争によって壊滅した地上世界で冒険を繰り広げるというもので、序盤はシェルター内で物語が展開されていきます。この閉鎖空間での生活が重苦しく、鬱屈としているのです。それだけに脱出して地上へ出たときの解放感は格別で、眼前に広がる広大な世界に心躍ったという人は多いのではないでしょうか。

とはいえ、荒れ果てた世界でのサバイバルはシビアのひとことに尽きます。何しろ生きていくためには巨大なゴキブリやアリの肉を食ったり、トイレの水をすすったりしなければなりません。NPCとの関わりなど、ちょっとした選択や行動ミスが取り返しのつかない結果になることも多く、やり直したくなることの連続でした。しかし、次第に感覚がマヒしていくのか、やがてどんな悲惨な結果になっても「仕方がない」と割り切れるようになっていったことを記憶しています。こうしたプレイヤーを凄惨な世界へと引き込む要素の数々も本作の魅力と言えるでしょう。


現在でもさまざまな手段でプレイ可能ですが、海外版と日本語版でゴア表現や特定のクエストの内容に少し違いがあります。海外版はベセスダ公式サイトやSteamなどで配信中ですが(非公式の日本語化MODも利用可能)、Windows7以降のOSには最適化されておらず、パソコンの設定を一部変更しないとプレイできない恐れがあることを踏まえておいてください。

BIOSHOCK(バイオショック)
発売日:2008年2月21日(Xbox360)、12月25日(PS3)
機種:Xbox360、PS3、PC
販売元:スパイク

不気味な海底都市から脱出すべく、数々の謎を解き明かしていくFPS形式のホラーアドベンチャーです。物語は主人公のジャックが乗る飛行機が大西洋上で墜落するところから始まります。ただひとり生きのびたジャックは、何かに誘われるかのように海底都市ラプチャーに足を踏み入れることになります。

最大の見どころは狂気に満ちたカオスな世界観です。ラプチャーの住人たちは言動も行動も支離滅裂。狂気の表情で襲いかかってくるので、まったく気が抜けません。さらに恐ろしいのが、潜水服に身を包んだ異形のキャラクター「ビッグ・ダディ」です。攻撃を仕掛けなければ襲ってきませんが、いざ戦いとなるととんでもなく強く、こちらに突進してくる姿に恐れおののいたものです。

もうひとつの大きな魅力が上質のストーリーです。最初は何が何だか分からないままラプチャーを徘徊することになるのですが、プレイを進めることで、この海底都市の全貌が少しずつ見えてきます。
そして、その先に待ち受ける衝撃の展開……これにはプレイした誰もが意表を突かれたと思います。水や火の表現も当時のレベルでは群を抜いていて見応え抜群でした。

このテのゲームにしては比較的取っつきやすく、FPSが苦手という人でも安心して楽しめると思います。ホラー好きならハマること間違いなしの名作なので、未体験の人はぜひプレイしてみてください。

ここからは、その他のヒット作・話題作になります。この時期は任天堂の人気が絶大でWii向けに発売された『大乱闘スマッシュブラザーズX』(任天堂)が世界累計出荷本数1,332万本(※4)、『街へいこうよ どうぶつの森』(任天堂)が432万本(※5)とビッグヒット。渋谷を舞台にしたチュンソフトの名作サウンドノベル『428~封鎖された渋谷で~』(セガ)なども話題を集めました。

※4:任天堂公式サイトの「主要タイトル販売実績」より
※5:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会発行の『2021CESAゲーム白書』より

ニンテンドーDSの人気も健在で、『ポケットモンスタープラチナ』(ポケモン)が世界累計出荷本数760万本を記録。リズムに合わせてタッチペンを操作するリズムアクションゲーム『リズム天国ゴールド』(任天堂)、セレクトショップの店長になって、お客をコーディネートしていく『わがままファッション ガールズモード』(任天堂)、『レイトン』シリーズの第3弾となる『レイトン教授と最後の時間旅行』(レベルファイブ)といった作品もスマッシュヒットとなりました。

プレイステーション2向けに発売された『ペルソナ4』(アトラス)のヒットもトピックのひとつです。個性豊かなキャラクターたち、いくつもの伏線が張り巡らされた秀逸なストーリー、日常と非日常が地続きのユニークな世界観など、魅力的な要素の数々で多くのファンを獲得。新要素が追加されたバージョンアップ版がPS VITA向けに発売され、テレビアニメ化もされるなど人気作となりました。

プレイステーション3では『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』(コナミ)も世界的ヒットとなっています。シリーズの集大成というべき作品で日本ゲーム大賞2009の大賞を受賞。そのほか、ステージを自由にクリエイトできるのが楽しい『リトルビッグプラネット』(SCEJ:現SIE)、名作ホラーゲーム『SIREN』を海外向けにリメイクした『SIREN: New Translation』(SCEJ)などが注目を集めました。

PSPでは『FF』シリーズの人気キャラクターたちが総登場する対戦アクション『ディシジア ファイナルファンタジー』(スクウェア・エニックス)がミリオンヒットを記録。アーケードでは、おなじみの人気対戦格闘ゲーム『ストリートファイターIV』(カプコン)、対戦型トレーディングカードゲーム『LORD of VERMILION』(スクウェア・エニックス)が、この年から稼働開始となっています。

【その他の主な出来事】
3月6日:Xbox360アーケード発売
3月25日:Wiiウエアのサービスが開始
7月15日:PSPの国内累計販売台数が1,000万台突破
10月16日:PSPのニューモデル「PSP-3000」が発売
11月1日:ニンテンドーDSの新型モデル「ニンテンドーDSi」が発売

いかがだったでしょう。当時は進化したグラフィックや斬新なシステムなどに驚かされたものですが、現在の最先端のゲームと比較すると、やはり粗く感じる部分があり、それだけの年月が経ったことを実感してしまうかもしれませんね。とはいえゲームとしての面白さは損なわれていないので、機会があれば、これらの名作もぜひプレイしてみてください。

さて、約2年半にわたって続いてきた本連載ですが、今回で終了となります。これまでご愛読いただき、誠にありがとうございました。また別の形でゲームの歴史を振り返っていきたいと考えております。その際には、よろしくお願いいたします!
編集部おすすめ