2021年も終わりが近づきつつありますが、今年も様々な話題が駆け抜けていきました。その中でも、多くの視聴者から好評を博した「PUI PUI モルカー」の大ヒットを思い出す方も多いはず。


テレビ東京系列の番組「きんだーてれび」にて、今年の1月から3月にかけて放送されたこのTVアニメは、羊毛フェルトやパペットを用いたアニメ作品で数々の賞を獲得した見里朝希氏が監督を務めており、これまでの実績と経験を存分に活かした手腕で視聴者を魅了。その名と実力を、より広く世に知らしめました。

見里氏曰く「モルモットが車になって大活躍する作品」となった本アニメは、“モルカー”たちの可愛いアクションをはじめ、純粋な健気さや勇敢な行動力、そしてユーモラスな一面などを、台詞に頼ることなく細やかなモーションと巧みな展開で表現。誰にでも伝わりやすく、それでいて力強い魅力を持ち、そしてなにより可愛さを極めたような作品でした。

この「PUI PUI モルカー」が魅力過ぎたためか、放送が終了した後に、いわゆる“モルカーロス”に陥る人が続出。SNSなどでは放送終了を惜しむ声が後を断たず、中には実際に放送されていない「13話」を想像する視聴者も出るなどでした。


あれから半年以上が経ち、「PUI PUI モルカー」は様々な新展開を迎えています。ゲーム業界も無縁ではなく、12月16日にはニンテンドースイッチソフト『PUI PUI モルカー Let's!モルカーパーティー!』(以下、Let's!モルカーパーティー!)が発売。本作には多くのモルカーたちが登場し、こちらでも可愛らしい姿をたっぷりと見せてくれます。

この『Let's! モルカーパーティー!』は、“モルカーロス”で空いた穴を果たして埋めてくれるのか。ゲーム自体の良し悪しも大事ですが、モルカーファンにとってはその点が気になるのも事実でしょう。

そこで、発売に先駆けてリリースされた体験版を通して、“モルカーロス”を癒やしてくれるのかどうか、一ユーザーとして実際に試してみました。
そのプレイレポートを、今回お届けします。

■モルカーたちの夢を実現したくなる! 導入から可愛い表情で魅了してくるぞ
この体験版は、製品版で味わえる要素の一部を楽しむことが可能です。そのため、製品版と一部異なる点もありますが、“モルカーロス”に効くかどうかの試金石としては、十分参考になるかと思います。

体験版を立ち上げると、まずは本作の大まかな目的を紹介する映像がスタート。アニメでもお馴染みのポテトやシロモたちが覗き込んでいるチラシには、「ようこそモルタウンへ!!」「生えてるにんじん食べ放題!!」といった魅惑的な一文が。彼らの目が釘付けになるのも、至極当然でしょう。


にんじん食べ放題を想像し、喜びが込み上げるポテトたち。感情表現の豊かさを、ゲームでも早速覗かせてくれます。

我先にとモルタウンへ駆けつけましたが、そこはまだ整備された道路しかなく、建物も全くありません。

設置された看板にも「空き地」と書かれており、ポテトたちは意気消沈。そのガッカリ顔も可愛いものの、出来れば笑顔にしてあげたいところ。

それがまさに、製品版におけるプレイ目的に繋がります。
製品版では、ゲームプレイを通してモルタウンに建物を増やしたり、他のモルカーたちを呼び寄せることができます。街が賑やかになれば、にんじん食べ放題も夢ではないのです。

元々「PUI PUI モルカー」は、彼らの表情やリアクションで物語が進んでいく形式でした。そのスタイルは『Let's! モルカーパーティー!』にもしっかりと継承されており、TVアニメの雰囲気を受け継いでくれているのが伝わってきます。

■モルカーを直接操作できる、この感覚……嬉しすぎる!
TVアニメ版と最も異なるのが、モルカーを自分の手で操作できる点でしょう。特に、製品版に10種類用意されているミニゲームでは、自分の腕前がモルカーたちが挑む競技の成否に影響します。
失敗した姿も愛くるしいのですが、出来れば勝利し、喜ばせてあげたい……!

体験版で遊べるミニゲームは2種類。ひとつ目は、寝ているお姉さんにバレないようにダンスを踊り、一番目立つモルカーを目指す「こっそりモルパーティ」。寝ている間にボタン連打でダンスを繰り出し、お姉さんに見つかる前に隠れるミニゲームです。

寝ている間はひたすらダンス! 自分の操作で、モルカーが踊る……なんとも言えない至福なひとときです。

お姉さん来たら、気づかれる前に隠れよう! どう見てもおしりが丸見えですが、隠れているのでヨシ。踊ってる時に見つかると、しばらく操作ができなくなります。
スコア的にもロスですが、モルカーとの接点が断たれている時間がなにより切ない……。

盛り上がり続けると、ヘッドスピンを繰り出すハシャぎっぷりも披露。キレのあるモルカーダンスに見とれたい気持ちをぐっと抑えて、ボタンを連打し勝利を目指します。

順位によって報酬が得られますが、なにより勝たせてあげられた事実で嬉しさも倍増。ルールはシンプルですが、キュートなダンスも相まって、なかなかクセになります。

体験版で遊べるもうひとつのミニゲームは、「プイプイレーシング」。こちらは名前の通りのレースゲームで、ハンドル操作やアクセルはもちろん、ジャンプやドリフト、時にはブーストも駆使する内容になっています。

ブーストは大きく加速するので、勝利「の鍵を握る大事な存在。しかしゲージを消費するため、使い所は見極めなければなりません。ちなみにゲージは、コース上にあるにんじんを取ると一定量回復。この世界におけるにんじんの大切さを、改めて実感させられます。

ゲームに慣れているユーザーなら、このレースゲームもさほど難しくはありません。ですが、競争相手もしっかりブーストを使ってくるので、油断していると思わぬピンチを招くことも。

「モルカーを動かせる!」という実感は、体験版の範囲ではこの「プイプイレーシング」が随一ですし、他のモルカーと競い合う感覚もゲームならでは。なかなか新鮮です。

本格レーシングゲームと比べると、こちらはミニゲームなのであっさり風味ですが、モルカーとの一体感という独特の魅力が満足度を高めてくれます。

ちなみに各ミニゲームは、「モルカー変更」で、操作するモルカーや一緒に遊ぶモルカーを選択可能。お気に入りを並べて遊ぶ、といった豪華な楽しみ方も味わえます。また、「むずかしさ」でミニゲームの難易度が変更できるので、より白熱した戦いを希望する方から、もっと簡単にプレイしたいと願う人まで、幅広く受け止めてくれます。

■街を「かんさつ」すると、モルカーたちの日常がそこに
前述した通り、製品版ではモルタウンはまだ影も形もなく、プレイを通して街を発展させていきます。ですがこの体験版には、すでに賑やかなモルタウンが用意されており、豊かなモルカーライフを一足先に触れることができました。

「かんさつ」を選ぶと、このモルタウンを自由に眺められます。あの世界を再現した街並みは、あらゆるところまでモルカーだらけ。

何より嬉しいのは、街中にいるモルカーたちを眺められる点です! 移動する姿を見つめるだけでも、心が和み&緩みます。

画像や言葉では伝え切れませんが、足をよいしょっと動かして進む姿も健在。あの、ポテポテッとした感じを、この「かんさつ」でずっと眺めることが……そうか、これを人は「幸せ」と呼ぶのか……。

カメラ操作で見続けることもできますが、カーソルを合わせてボタンを押すと、そのモルカーを中心に自動で追いかけてくれるので、環境映像のように楽しむのも一興かもしれません。

モルカーをロックオンしたままスイッチを手元に置き、ふとした拍子に画面を見れば、一生懸命歩いていたり、時には食事に励む姿を見ることも。なんだか、“ニンテンドースイッチの中にモルカーを飼ってる”みたいな錯覚に陥りそうです。

しかも最初のチラシにあった通り、この街ではにんじんが取り放題。取ったにんじんをモルカーたちの目の前におけば、大好物に飛びつく姿も拝めます。

モルカーが複数いる場所ににんじんを置くと、取り合いでもみくちゃになることもあります。なんですか、この幸せのかたまりは……あの中に入りたい……。

■アクセサリーで自分好みのモルカーに大変身!
そのままでも可愛いモルカーですが、アクセサリーを手に入れて、可愛く着飾ってもらうのもお勧めです。制限がある体験版の範囲だけでも、かなり個性的なアイテムが揃っていました。

「あたま」に「まぐろ」を載せるのも、なかなか味わいがあります。

侮れないのは、「おしり」にもアクセサリーを置ける点です。「ハートステッカー」や「おしりに顔ステッカー」などを確認しました。「プイプイレーシング」ではおしりを見ている時間が多いので、アクセサリーで彩りを加えるのも悪くありません。

アニメ第3話「ネコ救出大作戦」に登場した「チャッピー」を「あたま」に置くこともできます。こうした原作の細かいネタを拾ってくれる点も、ファン心をくすぐる憎い演出です。

「ふとまゆ」をつけると、かなり凛々しい印象に。ちょっと雰囲気を変えたい方には、こちらもお勧め。

今回は、さらに「ダンディヒゲブラック」も足してみました。……少々盛りすぎた気がしないでもありません。が、自分好みに彩れるのも『Let's! モルカーパーティー!』の魅力のひとつ。彩りをアレコレ楽しむだけで、時間があっという間に過ぎそうです。

ちなみにモルカーたちとの関わりは、「かんさつ」で眺めたり、ミニゲームで直接操作するだけではなく、モルカーを撫でられる「ふれあい」もあります。

モルカーを撫でるとゲーム内通貨などがもらえますが、それはある意味、副産物に過ぎません。同じ説明の繰り返しになってしまいますが、「モルカーを、撫でられる!」こと自体が、最大のご褒美と言ってもいいでしょう。(※感じ方には個人差があります)

撫でられる範囲は広く、おしりだってこの通り。満足すると「★ごきげん度マックス★」と教えてくれるので、ちょっとした達成感も沸き上がります。

■体験版を通して、『Let's! モルカーパーティー!』で埋められる“モルカーロス”について考える
ここまでの内容で、本作で味わえる魅力やモルカーたちの可愛らしさが、一端なりとも伝わったことと思います。ですが、最終的な結論として、放送終了後に味わった“モルカーロス”を、『Let's! モルカーパーティー!』で癒やすことができるのか。体験版でのプレイを経た実感から、その可能性について述べさせていただきます。

あくまで一ユーザーの視点に過ぎませんが、本作では「かんさつ」でモルカーたちの街中での様子を覗き見ることができます。動きも可愛く、ちょっとしたアクションにも心が動かされるので、この点の癒やし度は製品版でもかなり高いものと思われます。

そしてミニゲームは、“モルカーを直接操作する”という、ゲームならではの体験が楽しめます。また、アクセサリーで自分好みの恰好に変えられますし、その装いがまたミニゲームや「かんさつ」にちょっとした刺激を与えてくれるのも嬉しい点です。

こうしたポイントを踏まえると、モルカーとの関わりを様々形で実現してくれる『Let's! モルカーパーティー!』は、「彼らの日常」という癒しを与えてくれると感じました。

と、ここまでは魅力的な癒やしポイントについて触れましたが、“モルカーロス”の全てを埋めてくれるかと問われると、完全とは言い切れない部分もあります。

TVアニメ「PUI PUI モルカー」は、彼らの日常を描いただけではなく、その性格や個性を浮き彫りにするドラマがあり、短いながらも濃密なストーリーが展開しました。

この、ドラマやストーリーといった部分は──少なくとも体験版の範囲では──『Let's! モルカーパーティー!』にあまり含まれておらず、その面では物足りなさを感じたのも否定できません。

総じてまとめると、この『Let's! モルカーパーティー!』でモルカーの日常を満喫することができ、物語を求める気持ちは癒やしきれず、というのが率直な感想です。

そのため、万人の“モルカーロス”を癒やせる──とは断言できませんが、一方で完全に無力かと聞かれれば、それは明らかに「No」と言えます。物語も「PUI PUI モルカー」の魅力ですが、それだけではないのもまた事実。彼らの日常も同様に魅力的ですし、その要素はしっかりと詰め込まれています。

どの点に比重を置くかは人それぞれですが、「TVアニメが終わっても、彼らはこんな風に日々を送っていたのかもな……」と想像させてくれるきっかけを、この『Let's! モルカーパーティー!』で感じ取ることもでき、これも癒しのひとつかもしれません。

ちなみに、「どうしてもポテトたちの物語が見たい!」という方は、2022年1月4日から始まる再々放送をチェックするのはいかがでしょうか。「きんだーてれび」内で放送されるので、そちらをどうぞお楽しみに。もちろん、『Let's! モルカーパーティー!』を遊びつつ、再々放送を待つのもお勧めですよ!