現在、ナンバリングだけで5作品が登場していますが、シリーズの転機になった『ペルソナ3』以降の3作品がリマスターとなって再登場。まずは、先陣を切る『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』が10月21日に発売され、『ペルソナ3 ポータブル』と『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』が2023年1月19日にリリースされます。
いずれも異なる特徴を持つ作品ばかりで、主人公だけを比べても全く異なる魅力を備えています。果たしてどんな違いがあり、いかなる魅力を秘めているのか。そこで今回、リマスター版で再会できる3作品の主人公に迫りたいと思います。
なお、リマスター版で初めてプレイする方も多いため、ネタバレなどを避けて紹介するのでご安心ください。
■ミステリアスな魅力が光る「キタロー」
本シリーズの主人公は、『ペルソナ2 罪/罰』を除き、デフォルト名はありません。アニメやコミカライズなどで名前がつく場合もありますが、ゲーム内では基本的にプレイヤーが名前を付けます。
その関係から、ファン同士が集まるコミュニティでは、主人公を愛称や通称で呼ぶことがほとんど。『ペルソナ3 ポータブル』の主人公は、片目を隠す髪型からの連想で「キタロー」と呼ばれており、本記事でもこうした呼称を拝借させていただきます。
高校2年生の「キタロー」は転校という形で、舞台となる私立月光館学院に訪れます。幼い頃に両親を事故で失ったといった過去があり、あまり愛想がいいとは言えず、ちょっと距離を感じさせる一面を持っています。
主人公はプレイヤーの分身なので、立ち振る舞いや会話の選択肢は全てプレイヤー次第。『3』~『5』の主人公はいずれも、プレイスタイルによっては高いコミュニケーション能力を発揮し、人脈の鬼になることも可能です。
それでも、印象から受ける雰囲気や在り方の傾向などは異なっており、「キタロー」の場合は“物静かでミステリアス”な雰囲気があります。イヤホンを手放さず、手をポケットに入れる姿が多いのも、隔たりを感じさせる一因でしょう。
口数も少なめで、内向的なイメージが強い「キタロー」ですが、運動能力に優れており、料理の腕前も達者。「無口だけど、やる時はやる」という、凡人から見ればちょっとズルいと言いたくなるような格好良さを秘めています。
『ペルソナ3』におけるペルソナ発現は、拳銃型の召喚器を用い、それで自分の頭を撃ち抜くことがトリガーになります。弾は入っていないので、怪我などを負うことはありませんが、疑似的な拳銃とはいえ自分に銃口を向けるのは、精神的に抵抗があって当然。引き金を引く勇気が持てず、何度も苦しむ人物もいるほどです。
しかし「キタロー」は、状況的に迫られていたとはいえ、強い意思で引き金を引き、ペルソナを発現。一見すると線の細い青少年ですが、必要な時に迷いなく覚悟を決める、その精神性もまた彼の魅力でしょう。
言葉は少なく、しかしその本質が態度に現れるのか、彼の周りには様々な人物が集います。
ちなみに『ペルソナ3』の主人公は「キタロー」のみですが、『ペルソナ3 ポータブル』になると女性主人公が新たに加わりました。過去の生い立ちなどは同じですが、その性格は全く異なり、真逆と言ってもいいほど。こちらは「ハム子」の相性で知られており、リマスター版にも無論登場します。リマスター版でどちらを選ぶか、今のうちにじっくりと悩んでおきましょう。
次ページ:漢気と包容力に溢れた「番長」を紹介!
■人間力が振り切れてる!? 誰をも放っておかない「番長」を、誰もほっとけない!
『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』の主人公は、通称「番長」と呼ばれています。こちらも、主人公ゆえに雄弁なタイプではないものの、漢らしい選択肢や学ラン風の制服が似合う様、そして背中で語るかのような振る舞いから、「番長」の愛称が付けられました。
「番長」といっても、暴力で解決する乱暴者という意味ではなく、面倒見がよくて包容力があり、危険には先頭となって立ち向かう「頼もしさの象徴」としてのチョイスです。戦闘はもちろんのこと、日常のあらゆる場面で頼りになる「番長」に、プレイヤーはもちろん作中のキャラクターたちも惚れ込んでいきます。
「番長」も高校2年生で転校しますが、寮生活だった「キタロー」とは異なり、堂島家の居候として1年間を過ごします。堂島家は、家長の遼太郎と、小学1年生の菜々子の2人暮らし。
しかし、「番長」の人間力たるや凄まじく、遼太郎・菜々子ともに良好な人間関係を構築。遼太郎は、保護者としての責任感以上に「番長」の身を案じ、時には厳しく、時には思いやりを持って接するようになります。
また菜々子は、環境ゆえにしっかり者に育ち、年に似合わぬほど家事などをこなします。ですが、年相応に甘えたい時もあり、その気持ちに「番長」が上手く応え、彼女との距離は少しずつ近づいていきます。
その結果、菜々子にとっての「番長」は、「お兄ちゃん」と呼ぶほど親しく、代わりのない人物として懐くまでになります。また「番長」自身も、そんな菜々子を大切に想い、後の作品では「鋼のシスコン番長」といった二つ名を背負うことも。これには特殊な事情があるものの、プレイヤーからは納得の声が出てしまうのも「番長」らしい点でしょう。
そして、小学1年生すら引き付ける「番長」の魅力に、周りの女性陣が気づかないわけがありません。仲間内だけでも、体育会系少女や旅館の跡取り娘、人気アイドルといった面々が(コミュニティの進行次第で)なんと恋人に。こういった点は「キタロー」もかなりの猛者ですが、それを上回る勢いなので、まさしく「番長」といった風格を漂わせています。
シリーズ主人公の中でも特に人間味に溢れており、ノリや付き合いも良く、世話まで焼くとなれば、人気が出ないわけがありません。
次ページ:地味な装いの裏に、“反逆の意思”を持つクールな怪盗「ジョーカー」!
■地味な装いの裏に、“反逆の意思”を持つクールな怪盗「ジョーカー」!
『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』の主人公は、これまでのふたりとは異なり、作中のコードネーム「ジョーカー」が、通称としても使用されています。名前以外に主人公を称した言い回しが既に存在していたため、ファンがそのまま使う形となりました。
「ジョーカー」も転校をきっかけに私立秀尽学園に訪れますが、その理由は「キタロー」や「番長」と全く異なり、理不尽な大人の振る舞いを勇めようとした結果、暴行事件に仕立て上げられ、その逮捕歴が響いて退学。新たな受け入れ先として、私立秀尽学園に通うことになる──といった背景を持ちます。
こんな出来事が直接振りかかれば、「ジョーカー」が大人に不信を抱くのも当然の話。大人の身勝手な理不尽に立ち向かい、欲望に染まった人間が心に描く「パレス」へと忍び込み、象徴となる「オタカラ」を盗み出す物語が『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』で描かれます。
「ジョーカー」の見た目は、一見すると無害そうなメガネ男子。今時の高校生らしく、目立つほどの陰気な雰囲気こそないものの、大人しくか弱そうに見えます。正直、筆者も初PVでその姿を目にした時、「これが今回の主人公か……あんまりピンと来ないな」と見くびりました。ですが、パレスに侵入する「怪盗姿」を見るや否や、掌を返して評価が爆増。仮面をつけたクールかつピカレスクな雰囲気に、一瞬でヤラれてしまいます。
大人しそうな見た目と、内に秘めた感情の激しさ。そのギャップの大きさは、歴代主人公と比べてもトップレベルかもしれません。そのダーティな裏表を使い分ける大胆さに加え、他人の痛みを無視できない優しさ、無力に歯噛みし前に進むことを止めない強さが、プレイヤーの心を虜とします。
オタカラを盗む行為は、人の精神に大きな影響を与え、悪人を改心させるほどの効果があります。それは、強制的な人格操作でもあり、明らかに問題があります。しかし、立場や権力に守られた悪人は、法律や正義では裁かれません。
周りの大人が「悪」を見過ごすのであれば、苦しむ被害者を救うには、この道しかない──その「反逆の意思」だけが、弱者を救う唯一の手段だ。そう信じて突き進む「ジョーカー」からは、机上に過ぎない正論では太刀打ちできない逞しさが感じられます。
また、彼自身が持ち合わせている素質の高さは、怪盗という裏の顔を忍ぶ日常生活を通して大きく開花。進学校で高順位に食い込む学力、潜入を手助けするキーピックなどを製作する器用さ、アングラな方面に身を置く人物との絆すら得る信頼感など、「番長」とは違った意味の百戦錬磨な人間性を持つ人物に成長します。
平凡な日常に埋没している風に装いながら、悪人の心を手玉に取り、誰も成しえなかった改心という成果を生み出す「ジョーカー」。何者にも屈しない「反逆の意思」でペルソナを使いこなす、冷静沈着で怪盗団のリーダーを務めるその姿は、スタイリッシュの一言に尽きます。
「キタロー」「番長」「ジョーカー」といった面々の特徴や魅力に迫りましたが、これはあくまで俯瞰的な一面。その内面へと踏み込めば、さらなる魅力や、隠された背景などを知ることができます。
しかし、それは本編を遊んだプレイヤーだけの特権。以前は、アクセスが難しい作品もありましたが、リマスター版が登場すれば、スイッチやPC、Xbox Series X|Sなどで『3』~『5』をプレイできます。まずは、10月21日発売の『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』で学生と怪盗の二重生活を楽しみつつ、『ペルソナ3 ポータブル』と『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』のリリースをゆっくりと待ちましょう。