◆健気さNo.1!『ドラクエIV』シンシア
シンシアは「ドラゴンクエスト」シリーズ全作を通してみても、屈指と言えるほどの悲劇性を持つヒロインです。
本作は魔軍の長ピサロがまだ顔すら知らぬ勇者を危険視しており、(ファミコン版の)最終章である第5章の冒頭では、そんな勇者が密かに育てられていた山奥の村がついに襲撃されてしまいます。
村の人々は全員が主人公=勇者であることを知っており、それを知らぬは本人のみ。彼らはまだ何も分からない勇者を地下室に閉じ込め、さらに勇者の幼なじみであるシンシアはモシャスの呪文で彼(彼女)そっくりの姿に変身して戦いに臨みます。
そして戦いの果てにシンシアの命を奪った魔物たちは、勇者を仕留めたと思い込んで撤退していきます。勇者を救うため、何の迷いもなく自らの命すら投げ出せるシンシアはまさに「健気さNo.1ヒロイン」でした。
廃墟となった山奥の村で、彼女がいつも気ままに寝転がっていた花畑の跡を調べることで入手できる「はねぼうし」を勇者に持たせたまま、クリアした人も多いことでしょう。
2001年には、初代PlayStationでリメイク版が発売。そこに追加された「第6章」にて、死者を蘇らせる「世界樹の葉」よりもさらに強い力を持つ幻の花「世界樹の花」を入手した勇者は、それを人間の暴漢たちにいたぶられて命を落としたピサロの恋人・ロザリーに使ってしまいます。
そうしたからこそピサロとも和解でき「人と魔物は必ずしも憎みあわなくともよいのではないか?」という可能性に期待を抱かせる結末を迎えるわけですが、それはそれとしてシンシアを助けてほしかったと思ったプレイヤーも多かったのではないでしょうか。
悲劇に決着をつけた勇者は気球で仲間たちを故郷へ送り届け、自身は廃墟となった山奥の村に帰還します。そんな彼に頭上から一条の光が射してシンシアが蘇り、物語は2人が固く抱き合う姿で幕を閉じる…のですが、最後の最後に各地で別れてきた仲間たちがその場へ駆けつけるため、ファンの間では「これは山奥の村で1人たたずむ勇者が見た幻なのでは」と解釈される向きもあります。
こんなに健気なヒロインが報われないのはツラいので「どうか本当に起きたことであってくれ」と思うばかりです。
◆攻略難度No.1!『ときめきメモリアル』藤崎詩織
1994年にPCエンジン SUPER CD-ROM2で発売され、恋愛シミュレーションゲームというジャンルを世に広めた草分けである『ときめきメモリアル』。
メインヒロインの藤崎詩織は主人公の幼なじみで、容姿端麗・才色兼備で誰にでも優しく、さらに趣味はクラシック音楽鑑賞という、非の打ちどころがないスーパーヒロインです。
その分異性に要求するハードルも高く、勉強、運動、雑学、容姿…と、彼女に告白されるにはあらゆる面で自分磨きにはげまなくてはいけません。まさに「攻略難度No.1ヒロイン」といえるでしょう。本作は主人公を育てる育成ゲームでもありますので、詩織はヒロインにしてラスボスでもありました。
彼女はステータスや好感度が低い状態の主人公には本当に「単なる幼なじみ」としての反応しかしないので、一緒に帰ろうと誘っても「一緒に帰って、友達に噂とかされると恥ずかしいし…」と断ってきます。
その轟沈をバネにして「よし、卒業までに詩織に振り向いてもらうぞ!」と一念発起するわけですが、本作は勉強や運動をがんばるほど個性豊かなヒロインたちが次々に登場します。さらに、その状態で「俺は一途なんだ!」と自分磨きや詩織のみへのアプローチを続けていると、いつしか「最近のカレ、ちょっと冷たいのよね…」的なウワサが広まり、結果的に詩織を含むヒロインたちみんなの心証を悪くすることになってしまいます。
フラストレーションがたまってきたヒロインたちには「爆弾マーク」が付くため、一緒に近場へちょっと遊びにいったりなど、本命以外の子たちの機嫌をうまく取り続ける行為は「爆弾処理」と呼ばれたりします。なんだかサスペンス映画のようですね。
詩織の攻略法はほかにもあります。
つまり、平日の学校ではひたすら寝て過ごし、日曜や休日、夏休みなどに自宅で自分磨きをしまくれば、ヒロインたちとの出会いを発生させずにステータスだけを上げられるのです。3年生に進級すると大半のヒロインとの出会いイベントが発生しなくなるので、そこからは平日も勉強し放題。詩織にグンとアプロ―チしやすくなります。
古来より「能ある鷹は爪を隠す」とは言いますが、それにしても生き方が変人すぎる……。やっぱり学生たるもの、適度に爆弾処理に精を出すのが一番ですね!
◆めんどくささNo.1!『タクティクスオウガ』カチュア
『タクティクスオウガ』のカチュアは主人公デニムの姉で、SFC版ではデニムが16歳、カチュアは18歳という設定でした。
物語の舞台であるヴァレリア島は貴族階級のバクラム人、人口の大半を占めるガルガスタン人、少数民族のウォルスタ人による民族紛争が長く続いている内乱の地。一番立場が弱いウォルスタ人であるデニムとカチュアは、父のプランシーを拉致されるなど何度も不当な目に逢いました。その結果、ゲーム開始時点で2人は「ウォルスタ解放軍」の一員としてゲリラ活動に身を投じています。
とはいえカチュアはデニムを放っておけないからつき合っているだけで、「たった一人の肉親である弟にまでいなくなってほしくない」というのが本心。神父である父から手ほどきを受けたプリーストの身でありながら、デニムの安全のために他者を利用しようとする姿すら見せます。
プレイヤーの選択次第ではありますが、デニムは「理想に燃える若者」というイメージがある少年ですので、姉弟の心は少しずつすれ違いっていきます。
戦乱に身を置いて自らの信じる道を進み続けたデニムはゲーム終盤でついにカチュアを救出しますが、囚われている間に自身の出生の秘密を知ったカチュアは、大きなショックを受けて心を閉ざしてしまいます。
そんな彼女のいてついた心を溶かし、迎え入れるには二択の選択肢で正しいものを二度続けて選ぶ必要があり、間違ったものを選ぶと一発でアウト! 姉弟に悲しい別れが待っています。
ここは本作屈指の難関ポイントで、ほどなくしてカチュアは「めんどくさいヒロインNo.1」として不動の地位を築いてしまうのでした。嫌いにはなれないけど、かといって全肯定はしづらい…カチュアにそんなイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。