「アトリエ」のアーランドシリーズでキャラクターデザインを担当した岸田メル氏が発案し、さらには監修も手掛けた異色作ながら、1作目の『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』で確かな人気を獲得。2021年10月に続編の『BLUE REFLECTION TIE/帝』が発売されたほか、少し遡る2021年4月にはテレビアニメ『BLUE REFLECTION RAY/澪』を放送するなど、多方面にわたる活躍を見せました。
ですが、「ブルリフ」の新たな動きはこれだけに留まりません。時間軸上で『BLUE REFLECTION RAY/澪』と『BLUE REFLECTION TIE/帝』の間に位置する『BLUE REFLECTION SUN/燦』(以下、ブルリフ燦)が、iOS/Android/PC(DMM Game Player)向けに今冬リリースされます。
そのサービス開始に先駆け、クローズドβテストが2022年12月上旬に行われました。「ブルリフ」の新展開であり、シリーズ作の空白期間を繋ぐ『ブルリフ燦』がどんなゲームになったのか、このβテストのプレイ体験を元にお届けします。また、本記事はCBT版プレイレビューのため、リリース版とは異なる可能性があります。
■「ブルリフ」に男性主人公が登場した手応えは?
これまでの「ブルリフ」作品は、世界の危機に立ち向かう少女たちの戦いと、彼女たちの青春群像を重ね合わせて綴られてきました。この『ブルリフ燦』も、“灰の滅び”に抗うべく、激戦に身を投じる少女たちの姿が描かれます。
ですが、過去作との大きな違いとして目につくのが、男性主人公の存在です。1作目の「白井日菜子」をはじめとした少女たちが主人公を務め、数々の戦いに抵抗しながら彼女らの葛藤や成長を綴ってきました。
しかし『ブルリフ燦』では、主人公を男性にバトンタッチ。
一方、「ブルリフ」は少女同士の関わりを描いてきたシリーズなので、この変更点が気になる方も少なくないはず。果たして主人公が男性になった「ブルリフ」は、どんな味わいになったのか。まずはこの点について、筆者なりの感触をお伝えします。
特別な力が発現して「イローデッド」となった彼女たちは、恐るべき敵を打倒する強大な能力を持ちますが、その内面は等身大の少女に他なりません。好きな食べ物があり、自分の意思を持ち、恋に憧れることも。もちろん内面はそれぞれで異なっていて、気持ちが合わないこともあれば、無二の絆で結ばれることもあります。
そうした少女同士の枠の中に、男性主人公という自分が(立場的には指揮官的な存在として)入っていく流れに、最初は戸惑いがありました。「ブルリフ」シリーズにおける、自分(男性主人公)という存在の違和感を、勝手に感じていたのかもしれません。
しかし少女たちの多くは、男性主人公に対してニュートラルもしくは好意的に接し、受け入れてくれます。また、「おでかけ」を重ねることで関係が少しずつ深まり、距離が縮まっていく嬉しさも実感できました。
過去作では少女同士の関係性をたっぷりと堪能できましたが、本作では“男子と女子”のやりとりが盛り込まれたことで、これまでの「ブルリフ」では描かれなかった新たな反応や意外な一面が見られる機会が生まれたように感じます。
また“男子と女子”という関係性は、=“恋愛関係”に直結するのかといえば、少なくとも今回のテストの段階では断言できないと感じました。もちろん、少女たちと主人公の関係性が良好な描写も多々ありますし、淡い好意を覗かせることもあります。ですが、露骨な恋愛描写などは(現段階では)それほどなく、いい意味で適切な距離感を保っているように思います。
これは個人的な願望も含みますが、今回のテストプレイを通して「『ブルリフ燦』は“男女の友情”を描いてくれるのでは?」という期待を抱きました。元々、本シリーズは少女たちの群像劇を取り扱っており、百合的な要素は見た目の印象ほど色濃くはありません。
愛情よりも友情や友愛といった関係性が主だった(と筆者が受け止めている)ため、この『ブルリフ燦』も同じ路線で進むなら、主人公が男性になったことで“男女の友情”を見せてくれるのかもしれません。
“男女の友情”を描くゲームは案外少ないので、そうした新境地への期待も込め、『ブルリフ燦』の物語に可能性を感じています。根拠と呼ぶほどのものではありませんが、冒頭に「顔は一緒……でも、今回は男の子なのね」といった一文も飛び出しているので、これまでの路線を“男女”で表現するのでは、と勝手にワクワクしているというのが率直な心境です。
とはいえ、主人公が男性になったことで、何の問題もないとは言い切れません。少女同士だからこその儚さや美しさ、やるせなさが宿るのもまた事実。そこに魅力を感じている「ブルリフ」ファンも多く、男性主人公に難色を示したとしても無理のない話でしょう。
本作の主人公は会話パートにビジュアルが出てきますし、一定の個性を持って振る舞うため、存在感もあります。少女同士の関係だけを楽しみたい方にとって、この主人公は悪い意味で気になるかもしれません。これはキャラクター性以前の問題なので、相容れなければどうしようもない点です。
またプレイヤーによっては、「俺は女の子になりたいんだ!」という願望を持つ方もいるかと思います。過去作では叶えられたプレイスタイルが、最新作では満たされない──そこに不満を持つことは、決しておかしな話ではありません。
男性主人公という『ブルリフ燦』の挑戦が気になる方、シリーズを通してこの世界への理解を深めたい人などは、一度触れてみても損のない作品だと思います。また、筆者のように“男女の友情”といった新たな境地に期待するのも、ひとつの道でしょう。
ですが、男性主人公に引っかかりを覚える場合、プレイするかどうかは、正式サービス後の評判を見るまで待つ、というのがベターかもしれません。主人公の性別については、一般的なゲームであっても意見が分かれるもの。女性主人公でこれまで通してきた「ブルリフ」シリーズの最新作ともなれば、重要視するのも当然です。
■『ブルリフ燦』のバトルは、推しキャラを輝かせる「フラグカード」に要注目!
『ブルリフ燦』のゲーム性は、少女たちの育成・交流・戦闘が主な要素になります。交流は主人公と少女だけでなく、少女同士の関わりもあるので、従来のファンはご安心ください。
戦闘も複雑なシステムなどはなく、RPGに慣れているゲーマーならすぐにしっくりと来るコマンドバトル。ウェーブごとに登場する敵を撃破しつつ、最終ウェーブの敵をせん滅すれば勝利です。
戦闘の進行は、敵味方に分かれたターン制ではなく、キャラクターごとに順番が回ってくるので、敵味方の動向を把握しつつ攻撃や回復などを組み立てていきます。また、敵を攻撃するたびにHPだけでなくブレイクゲージも削ることができ、ブレイクゲージが0になるとその敵の行動順が後回しに。実質的に敵の手数を減らせるので、いかに行動させずに立ち回るかが、重要な戦略になります。
ちなみに少女たちも含め、すべての敵・味方は固有の属性を持ちます。属性ごとに有利・不利の関係があり、有利な属性で固めれば与ダメージが上がり、被ダメージが下がるため、これも戦局に関わる大事な要素です。
敵が単一の属性で構成されていれば、有利な属性で固めて戦うだけで済みますが、混合編成で挑んでくる場合も。そうなれば、こちらも混合で挑むしかない──となりそうですが、本作ならではの対処法がひとつあります。
属性はキャラクターごとに属性が決まっていますが、属性が固定されているのはそのキャラと、固有しているスキルひとつのみ。スキルは、1キャラあたり最大で3つまで持てますが、残りの2つは「フラグカード」と呼ばれる装備品扱いのカードを身に着けることで使用できます。
フラグカードの装備に関して属性の制限はなく、例えば火属性のキャラに土属性のスキルを持つフラグカードを持たせることも可能。火は水に弱いので、水属性相手には不利な立場を強いられますが、土属性のスキルを装備していれば、本来火属性のキャラであっても大ダメージを与えることができます。
属性要素を取り入れたRPGの多くは、属性の影響が強く、キャラ同士で補い合うのが一般的です。もちろんその戦法は本作でも有効ですが、キャラ間でのフォローだけでなく、スキルの構成で対応するといった手段も用意されています。
強さを極めるならば、有利な属性と有利なスキルを揃えるのが最上でしょう。しかし、「好きなキャラを使いたい」と思うのも人の常。強さだけのために推しキャラが使えないのは、決して嬉しい状況ではありません。
ですが本作の場合、キャラ自身の属性は不利でも、攻撃面で有利が取れるスキルを用意できるので、工夫次第で推しキャラが輝く機会を増やすことができます。また敵が混合編成の場合は、多彩な属性のスキルを併せ持つこと自体が強みになることも。
フラグカードによるスキルの付け替えは、単なる救済だけではなく、戦略的な意味もあり、本作のバトルに深みを持たせる独自要素と言えるでしょう。
ちなみにフラグカードは、デメリットなしで付け外せるので、新たなキャラクターを取得しても使いまわせます。そのため、強力なフラグカードは後々まで使い続けられ、その意味ではお得度が高いのも嬉しい点です。
いいことづくめのように見えるフラグカードですが、若干気になった点がひとつだけあります。フラグカードを手に入れると、それぞれのカードごとに特定の物語が楽しめる仕様になっていますが、一部のフラグカードは前後編に分かれていました。
1枚目を手に入れれば前編が読めますが、後編を読むにはもう1枚入手する必要があります。カードの枚数を重ねる仕様は基本無料系ゲームの常ですが、1枚だけだと物語が完結しないスタイルは、ちょっとモヤモヤが残る仕様でした。
とはいえ、スキルの付け替えが可能で、編成の自由度が高いのは、プレイヤー視点で見ても素晴らしいところ。手ごわい敵に対していかに立ち向かうか。RPGの原点とも言える楽しさを、フラグカードが深く掘り下げてくれています。
今回のプレイレポートは、特に気になる「男性主人公」の存在や、本作の独自要素「フラグカード」に絞って迫りました。ですが、少女たちとの多彩な交流、彼女たちを育てていく手応え、過去作で活躍したキャラクターの登場など、『ブルリフ燦』の魅力や特徴はこの他にもたっぷりと用意されています。
まだクローズドβテストの段階なので、今回触れた範囲についても変更され、プレイ感に影響が出る可能性もあります。しかし、現段階で興味深い要素があり、『ブルリフ燦』としての個性が感じられるプレイ体験だったのは間違いありません。
この冬のリリースに向け、『ブルリフ燦』がどのような装いを見せてくれるのか。正式サービス開始の報を、楽しみに待つばかりです。
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