今回は日本のゲーム史を振り返り、とくに秀逸と言われているキャッチコピーを5つ厳選。あらためてその言葉の魔力を振り返ってみましょう。
◆エンディングまで、泣くんじゃない。
ゲーマーの心を打つキャッチコピーとして外せないのが、ファミリーコンピュータ用ソフト『MOTHER』の「エンディングまで、泣くんじゃない。」。同作はコピーライターの糸井重里氏がプロデュースした作品で、“泣けるRPG”として知られています。
いったい何が泣けるのかはご自身の目で確認してもらうとして、当時の広告にはこんな記述が。――熱いけど、さわやかな涙が、きっと流れる。昔話や神話なんかじゃなくて、これは、キミ自身みたいなキミが生きてゆく、愛と勇気と冒険の物語なんだ。
その言葉通り、同作で紡がれる物語には、多くの人が心を震わせることに。キャッチコピーの内容は、どこまでも真実を伝えるものでした。
ちなみに糸井氏自身が有名なコピーライターなので、勘違いされやすいのですが、実は最初に発想したのは一倉宏氏。何十もの案がある中から、糸井氏が選んだのが、「エンディングまで、泣くんじゃない。」だったそうです。
◆俺より強い奴に会いに行く
1990年代初頭、革新的な対戦システムで話題を呼んだ『ストリートファイターII』。同作のキャッチコピーは、「俺より強い奴に会いに行く。」です。
この時代にはまだ、オンライン対戦というものがありません。だからこそプレイヤーはより強い対戦相手を求めて、ゲームセンターや大会へ遠征するように。まさに“強い奴に会いに行く”という言葉通りの状況でした。
それと同時に、ゲームの世界観や主人公・リュウの生きざまを表した言葉としてもお見事。30年以上経った今も燦然と輝く、名作キャッチコピーと言えるでしょう。
ちなみに2022年には「俺より強いやつらの世界展」なる名前で、『ストリートファイター』の展覧会も開催されていました。
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◆最後の一撃は、せつない。
2005年の発売以来、プレイステーション史上屈指の名作として語り継がれている『ワンダと巨像』。失われた少女の魂を取り戻すため、主人公のワンダが巨像に立ち向かっていくアクションアドベンチャーゲームです。
「世界を救うため」などではなく、「少女を救いたい」という個人的な動機のために倒されていく巨像たち。
なお、同作のクリエイター・上田文人氏は、『ICO』の生みの親としても有名。こちらでも「この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから。」という、歴史に残るフレーズが生まれています。
◆命もないのに、殺しあう
2017年にスクウェア・エニックスから発売された『NieR:Automata』は、エイリアンが作った「機械生命体」と、人類を守るために作られた「アンドロイド」の抗争を描いたアクションRPGです。
争いの当事者は、あくまでエイリアンと人類。それにもかかわらず、なぜ命や感情のない者同士が傷つけあうのか――。同作のキャッチコピーは、機械同士で殺しあうことの異常さと無情さ、そして皮肉を感じさせます。
ちなみに『NieR:Automata』といえば、その世界観を如実に表したテレビCMも有名。とくにお蔵入りになった無修正版のCMには、まさしく“命もないのに、殺しあう”シーンが描かれており、「さすがに地上波では流せない」などと話題になりました。
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◆新聞を読みながら教えてくれた親父は、昔──
最後に取り上げるのは、PSP版『FINAL FANTASY III』(ファイナルファンタジーIII)。「『そこに隠し通路あるぞ』 新聞を読みながら教えてくれた親父は、昔 光の戦士だった。」というキャッチコピーです。
そもそも『ファイナルファンタジーIII』は、1990年にファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された作品。2006年には3Dで再構築されたニンテンドーDS版が登場し、そのニンテンドーDS版をベースに作られたのがPSP版でした。
そんなFFシリーズの長い歴史と、世代を超えて愛される作品であることを見事に表したキャッチコピー。しかし実はプロが考えたものではなく、一般公募で選ばれたものだというから驚きです。
ちなみに一般公募で惜しくも第2位となったキャッチコピーは、「涙がとまらないのは、きっとタマネギのせいだ。」、第3位は、「僕らのいた世界は、もっとずっと広かった。」でした。
秀逸なキャッチコピーは、否応なしに心を震わせてくるもの。ゲームの内容と合わせてチェックしておくことで、より深いゲーム体験を味わえるかもしれませんね。