ダンジョンRPGに「手書きマッピング」を取り入れ、確固たる地位と人気を築いた『世界樹の迷宮』シリーズ。当初は、「手間が増えるシステムを、多くのユーザーが支持するのか」と訝しむ声もありましたが、蓋を開けてみれば1作目から売り切れるほど好調な出足を見せ、DSと3DSを代表するRPGシリーズのひとつとなりました。


記念すべき1作目が出たのは、2007年1月。それからいくつものシリーズ作が生み出されましたが、令和に入って以降は新たな動きがなく、沈黙の時間が続きます。

ですが2023年2月9日に、シリーズ初期の3作をリマスター化する『世界樹の迷宮I・II・III HDリマスター』を発表。ニンテンドースイッチとSteamに向け、2023年6月1日に発売されます。

この電撃的な発表に喜ぶファンが続出。一時期は、Twitterのトレンドに「世界樹の迷宮」が入るほど、その名が喜びと共に駆け巡りました。

ですが、『世界樹の迷宮』ファンが喜んだのは、『世界樹の迷宮I・II・III HDリマスター』そのものが嬉しかっただけではありません。ファンが喜ぶ理由はほかにいくつもあり、また新たな期待に胸を膨らませる人も多数いました。

『世界樹の迷宮I・II・III HDリマスター』をきっかけに、果たしてどんな理由でファンが沸いたのか。今回は、その背景へと迫ります。

■新展開を諦めていた『世界樹の迷宮』ファンも
『世界樹の迷宮』シリーズは、今も語られるほど人気のある作品です。しかし、シリーズ作品自体は、2018年8月に発売された『世界樹の迷宮X』が区切りとなり、以来ずっとゲームとしての展開は途絶えたままでした。


『世界樹の迷宮X』は、“3DSで最後の世界樹作品”として登場。そのため、3DS向けの新展開がないのは当然の話です。しかし、3DS以外で新たな作品が登場する気配もなく、ファンの間でも待ち遠しさを募らせる側と、もう新作は出ないのかも……と諦める気持ちを持ち始めた側に分かれます。

諦めに至るにも理由があり、それは『世界樹の迷宮』シリーズが持つ特徴が関係します。本シリーズの大きな魅力のひとつ「手書きできるマッピング」は、ニンテンドーDSや3DSのタッチスクリーン/パネルを前提としたデザインでした。

探索の模様や敵との戦いを上画面に表示し、現在位置や周辺の環境を書き込めるマップを下画面に表示。2画面構成を活かした表現と遊び方が、『世界樹の迷宮』シリーズの面白さに直結する要素でした。

その魅力が輝かしい一方で、「その2画面構成が、移植などを阻んでいるのでは?」と捉える意見もあります。その真偽こそ不明ですが、結果的にはDSと3DS以外──つまり、単一画面のゲーム機──には、シリーズ作は一切登場していません。

手書きマッピングの存在は、シリーズファンにとっても欠かせない重要な要素。それを受け継ぐのが難しいならば、シリーズの新展開がないのもやむを得ない……そんな風に考えるのも、また無理のない話でしょう。

シリーズファンの間に、そんな諦観も一部に漂っていたこの令和に、『世界樹の迷宮I・II・III HDリマスター』の発表が訪れたため、諦めからの反動も加わり、歓喜がより一層大きくなった次第です。


■据え置き機にシリーズ作が初登場! しかも、従来の楽しさも継承
これまでの『世界樹の迷宮』シリーズは、携帯ゲーム機にのみ展開していました。場所を選ばずどこでも遊べる点は大きな魅力ですが、大画面でプレイする環境とは無縁のまま。ですが今回のリマスター版は、スイッチ版・PC版ともに大きな画面で楽しむことが可能なので、本シリーズを新たな環境で楽しめます。

これまで2画面の構成だったゲーム画面は、ダンジョン内の主観視点とマップを1画面に集約。UIの変更により、『世界樹の迷宮』の冒険が大画面にも広がりました。

ですが、従来の「持ち運べる楽しさ」は失われておらず、スイッチ版は携帯モードでプレイすれば、従来のようなスタイルでプレイできます。しかも携帯モード中は、画面にタッチする手書きマッピングに対応。スタイルだけでなく、プレイ感も再現してくれそうです。

初期3作が現行機に蘇るだけでなく、従来の手書きマッピングも可能とあれば、シリーズファンが盛り上がるのも当然至極。単なる移植ではないこだわりぶりが、ファン心をくすぐりました。

ちなみにSteam版の場合、Steam Deckに対応していれば、持ち運んで遊ぶスタイルを味わえることでしょう。この点については、正確な続報をお待ちください。


■シリーズの歴史で初となる『世界樹の迷宮III 星海の来訪者』復活!
今回リマスター化の対象となるオリジナル版3作品、『世界樹の迷宮』・『世界樹の迷宮II 諸王の聖杯』・『世界樹の迷宮III 星海の来訪者』は、いずれもニンテンドーDS向けソフトとして登場しました。

そのうち1作目と2作目は、後に『新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女』および『新・世界樹の迷宮2 ファフニールの騎士』として、3DS向けにリメイクされています。新たにストーリーモードが追加されたほか、オリジナルに準じたリメイク版も収録され、一粒で二度美味しい形で再登場を果たしました。

一方、『III』の展開はオリジナル版のみで、リメイクなどはないまま。4作目以降は全て3DS向けなので、シリーズのナンバリングで3DSに登場していないのは、唯一この『III』のみ。そのため、シリーズ作の中では不遇な位置にあったとも言えます。

ですが、今回の『世界樹の迷宮I・II・III HDリマスター』にて、オリジナル版以外の『III』が初登場。恵まれなかった作品に光が当てられ、シリーズファンならば感慨深さを感じずにはいられません。

ちなみに『III』のストーリーは分岐するので、新規の方だけでなく、別ルートを遊んでいないファンにとっても、改めてプレイするいい機会になるでしょう。

今回、『世界樹の迷宮I・II・III HDリマスター』そのものの発表が嬉しかったのも事実ですが、『III』の初復活やプレイスタイルの継承、そしてシリーズの新展開への期待など、様々な理由が重なって多くのファンが喜びの声を上げました

ですが、シリーズの未来を考えると、大事ながらまだほんの1歩に過ぎません。シリーズファンがこの先に期待するのは、やはり完全新作の登場でしょう。その未来を実現させるには、リマスター版の売り上げも大事な要素になるはず。
開発への応援を込めて本作を購入するのもひとつの手です。

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※記事内の写真は、全て『世界樹の迷宮I・II・III HDリマスター』のものです。
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