記念すべき1作目が初代PS向けにリリースされて以来、多くのユーザーを虜としてきた『アーマード・コア』シリーズ。重厚かつスピーディなロボットアクション、企業間抗争による終わりなき戦い、白熱する対人戦など、様々なシリーズ作を通して多彩な魅力を提供してきました。


ですが本シリーズは、2013年発売の『アーマード・コア ヴァーディクトデイ』以降、長い沈黙が続きます。新作を求めるファンは多いものの、新たな動きはしばらく音沙汰のないままでした。

そんな空白期が10年続き、「新作はもう出ないのかな……」とファンが不安を抱えた頃、ナンバリング最新作『アーマード・コアVI ファイアーズオブルビコン』(以下、AC6)が登場。昨年の電撃発表を経て、2023年8月25日に発売を迎えました。しかもプラットフォームは、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Steamに同時展開。対応ハードがないから遊べない、という嘆きを極力減らす形での幕開けとなりました。

本作を手がけたフロム・ソフトウェアは、俗に“死にゲー”とも呼ばれる高難易度アクションの作品が高く評価され、国内外にその名を轟かせています。特に、昨年リリースした『エルデンリング』は出荷本数2,000万本(世界累計)を突破する大ヒット作に。こうした成功を収めた中、『AC6』が満を持して発売開始。シリーズファンを中心に、多数のプレイヤーが本作のプレイに励みました。

ですが発売直後から、プレイヤーたちの阿鼻叫喚がSNSなどに飛び交っています。待望のシリーズ最新作に、一体何が起きたのでしょうか。


■「チュートリアルって、簡単に終わるものじゃないの?」──安易な思い込みを吹き飛ばした大型ヘリ
発売直後で湧き上がった阿鼻叫喚の大半は、本作のチュートリアルに原因がありました。昨今のゲームはチュートリアルを用意し、作中で操作説明やシステム解説を行うスタイルが主流です。

チュートリアルはプレイヤーがまず触れる最初の部分になることが多く、そのため難易度は低く設定される傾向にあります。この『AC6』も、基本的な移動や攻撃、ブーストダッシュなどを最序盤で丁寧に教えてくれました。全体的な敵の強さもかなり控えめで、無謀な突撃などをしなければ大きなダメージを受けずに済みます。

ただし、それは中盤までの話。『AC6』のチュートリアルを締めくくるボス「惑星封鎖機構大型武装ヘリ」が、それまでの練習気分を容赦なく叩き潰してくれました。

機関砲による連射は広範囲に及び、回避はかなり困難。両翼から発射されるミサイルは誘導性が高く、着弾時の爆風と共にかなり強敵です。建物の影に飛び込んでも、位置取りが甘いと鋭角に切り込むミサイルの餌食に。

そして地上を薙ぎ払うロケット弾は、直撃すれば大ダメージは避けられず、しかも範囲がかなり広め。全力で逃げに徹さないと、即座にスクラップと化します。


こうした強敵が登場すること自体は『アーマード・コア』シリーズの定番ですし、ファンが求めているところでもあります。ですが、まず操作に慣れるチュートリアルの範囲でこれだけ手ごわい敵が出てくるのは、ユーザーにとっても予想外の出来事でした。

■チュートリアルのボスに、11回も撃墜される
その手ごわさをうっすらとですが事前に聞いていた筆者は、しかし「まあ、チュートリアルの範囲で手ごわいだけだろう」と侮っており、その結果見事に惨敗。大型ヘリのAP(いわゆるHP)を、かろうじて3割ほど減らした程度の初戦となりました。

その後もリトライを続けるも、体感ではほぼ横殴りと言えるミサイルの餌食になったり、爆撃を避けきれずに大破したりと、速攻で黒星が積み重なっていく始末。回避を重視してなんとか長期戦に持ち込むも、右手武器の弾数を使い切り、ジリ貧に追い込まれながら嬲られることも少なくありません。

「SNSに広がる阿鼻叫喚は、このことか……!」と実感し、自らもその列に加わりつつ挑んだ12回目のチャレンジで、ようやく大型ヘリを撃破。こちらの残りAPは301まで激減しており、APを回復させるリペアキットの残りもゼロ。あと一撃食らっていたらおそらく負けていた、まさに紙一重の勝利です。

それなりにゲーム歴だけは長い筆者ですが、チュートリアルをクリアできず12回も挑んだのは、この『AC6』が初でした。これが筆者だけの体験なら“単なる下手”だけで話は終わりますが、SNSやネット上でのコミュニティでも、この大型ヘリに悩まされた声が飛び交っており、“チュートリアル超え”に手こずった人が少なくないことが分かります。

■固定機体&武装だけで戦わされる厳しさ
大型ヘリに手こずらされた理由は、もちろん敵自体の強さもありますが、『アーマード・コア』シリーズの要である「アセンブル」の可否も大きく関係します。


本シリーズの人型兵器=AC(アーマード・コア)は、パーツごとに自由な組み換えが可能。頭部、腕部、胴部、脚部はもちろん、両手と肩に装備する各兵装や、それらを動かすジェネレータなどを換装させ、自分の好みや戦う相手に合わせたセッティングで戦うことができます。

機体構成の組み換え、いわゆる「アセンブル」はシリーズを支える大きな魅力のひとつ。当然『AC6』でも存分に楽しむことができ、本編の大半でお世話になる要素です。……が、チュートリアル中はまだアセンブルが開放されておらず、あらかじめ用意された機体と装備のまま戦わなければなりません。

戦闘中に弾切れを起こすなら弾数の多い武器に持ち替え、また左肩にも武器を装備するなど、いくつもの対処法があります。しかし、組み換えの自由が得られるのはチュートリアルが終わった後。「大型ヘリを倒すために組み替えたい。そのためには、大型ヘリを倒さないといけない」というジレンマが、この大型ヘリの攻略を難しくしています。

■今回も「フロム・ソフトウェア」はガチ!
チュートリアルは、そのゲームの入り口とも言うべき存在。操作方法や、作品独自のゲームシステム、大まかなゲーム性などを伝えながら、“このゲームの面白さ”の一部を体験してもらい、本編のプレイに誘導するのが主な役割です。

そうしたチュートリアル部分に、これほど容赦のないボスを配置してきたフロム・ソフトウェア。
たとえ10年ぶりのシリーズ最新作で、他作品のヒットから『アーマード・コア』への新規ユーザーが見込める状況であっても、安易に揺らぐような姿勢は見せません。

誤解を招かないよう補足しておきますが、大型ヘリは「ただ難しい、理不尽なボス」ではなく、ひとつの戦い方に固執しないという発想に導いてくれるタイプの難敵。筆者は中距離戦に固執した結果、何度もリトライを繰り返す羽目になりましたが、発想の転換次第でその手ごわさは大きく変わります。

倒した時に得られる達成感の価値を落とさぬよう、しっかりとした「手ごわさ」を用意する。それは本作のみならず、様々な“死にゲー”でユーザーを絶望に叩き落としてきた(褒め言葉)同社ならではの手腕に他なりません。

チュートリアルすらも恐ろしい『AC6』ですが、決して難しいだけのゲームではないので、まだ未体験の方もご安心ください。かなり強いボスは本編にもたびたび登場しますが、その直前にチェックポイントが用意されている場合が多く、やられても素早くリトライできます。

またチェックポイントからやり直す場合、APや弾薬などは全回復。再開前にアセンブルの変更も可能なので、各ボスに効果的な装備や構成で挑めます。大型ヘリが手ごわかったのは、前述通りアセンブルが出来なった点も大きいので、本編のボスの強さとは全く違うベクトルとも言えるでしょう。

しかもACを構成する各パーツや武装は、購入価格と売値が同額なので、気軽に売り買いができます。売ったパーツや武装は再購入できるので、買える限りストックし、ボスごとに換装。
ちょっといい装備に買い替えた時は、使用頻度の低いパーツを売って補い、必要になったらまた買い戻す……といった形でプレイしても、何一つデメリットはありません。

敵の強さに手を抜かず、同時に発想の転換による打開策や、パーツ構成の変更で、勝利への道筋も用意してくれる『AC6』。今回もまた、“ヤバいほどガチ”なフロム・ソフトウェアの本気を存分に楽しませてもらえそうです。

決して簡単なゲームではないので、「手軽」や「気軽」とは言えませんが、本気で向き合えば勝機は見えてきます。仮に腕前が足りなくても、そこを補うアセンブルと戦略があり、この模索を楽しめる人であれば、『AC6』を存分に満喫できるはず。まだ覚醒していない傭兵よ、“燃え残った全てに火をつける”時は、今だ!
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