ですが、3DSが初めて登場した2011年2月から数えると、すでに12年以上の月日が経過しています。国内向けの新作ソフトも2019年を最後に途絶え、今年の3月にはニンテンドーeショップでのダウンロードソフトや追加DLCの購入などが終了。そして先日、オンラインプレイサービスを2024年4月上旬に終了すると発表されました。
新作はなく、オンラインサービスが順次閉じていく3DS。どんなゲーム機であっても、こうした区切りを迎えるものですが、ユーザーとして寂しい気持ちになるのもまた事実です。
また3DSソフトの中には、ここから生まれた刺激的な作品や、DSから引き継いだ人気シリーズなどが多数ありました。そうした作品のいくつかは、残念ながら新たな展開などに至らず、3DSと共に時間の流れに飲み込まれようとしています。
しかし一方で、3DSから別のゲーム機に向かって羽ばたき、新たなプラットフォームで華麗に復活を果たした作品も存在します。果たしてどんな人気シリーズが、3DSから旅立っていったのか。その中でも特に注目したい、“今とこれから”の4作品に迫ります。
■あの“憎まれ口を叩くピカチュウ”が帰ってきた!
『ポケットモンスター』関連作品の中でも、特に異色なアドベンチャーゲームとして話題となったのが、3DSソフト『名探偵ピカチュウ』です。本作に登場するピカチュウは、主人公のティムと会話を交わすことができ、言葉による意思疎通が可能。
本作はまず、ダウンロード専用ソフトとして『名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~』が2016年2月に発売。壮年男性のようなピカチュウのキャラクター性も含めて人気を博し、ゲーム内容と合わせて高く評価されましたが、1,500円という価格相応のボリュームだったので、物足りなさも残る作品でした。
その後、『新コンビ誕生』の内容を含んだ、いわば完全版ともいえる『名探偵ピカチュウ』が2018年3月にリリース。泣き所だったボリュームが大きく拡張され、1本のゲームとして遜色のない出来栄えとなりました。世界観の構築や演出も素晴らしく、『ポケモン』世界を広げた新たな1歩として、ユーザーの記憶に刻まれた3DSソフトです。
しかも、“人語をしゃべるおやじっぽいピカチュウ”など本作の要素を引き継いだ同名の劇場映画まで製作され、こちらは2019年5月に公開。4億ドルを軽く超える興行収入を記録し、ゲーム原作の映画として特筆するほどの大ヒットを生み出しました。
完全版までの道のりは長かったものの、遊び甲斐のあるひとつの作品として見事に完成し、さらに映画でも成功を収めた『名探偵ピカチュウ』。シリーズから派生した作品として、これ以上ないほどの躍進ぶりと言えるでしょう。そして、映画における成功がある種の有終の美を飾った──と考え、この名作を思い出の中にしまった人も少なくありません。
そんな、自称名探偵の喋るピカチュウが、このたび完全新作の続編として帰ってきました。
しかも本作は、10月6日に発売されたばかり。3DSで活躍したシリーズの新展開としては、最も新しいタイトルといっても過言ではありません。偉そうなのにどこか憎めない、コーヒー好きのおっさんピカチュウと再会したい方は、『帰ってきた 名探偵ピカチュウ』に手を伸ばしてください!
■『レイトン“教授”』シリーズが、10年の時を超えて再始動!
DSソフトとしてデビューし、後に3DSへと活躍の場を移した謎解きアドベンチャーといえば、『レイトン』シリーズを思い出す方も多いことでしょう。本シリーズ自体は、『レイトン ミステリージャーニー カトリーエイルと大富豪の陰謀』がニンテンドースイッチやスマホ向けにリリース(2017年7月)されており、いち早く新天地へと移ったシリーズ作と言えます。
ただしタイトルにもある通り、そちらの作品は「カトリーエイル」が主人公。これまでの作品全般で主人公を務め、シリーズタイトルにもその名が刻まれている「エルシャール・レイトン」から、その娘・カトリーエイルに主役の座が渡されています。
そのため、レイトンが主人公を務める『レイトン教授』シリーズとして見た場合、2013年発売の3DSソフト『レイトン教授と超文明Aの遺産』が現時点では最後の完全新作です。
今後のシリーズ展開は、カトリーエイルが主役のままでレイトンの出番はもうないのか。もしくは、シリーズの完全新作自体が出ないのかもしれない。レイトンのファンたちは、こうした不安を約10年間も抱え続けましたが、その懸念は今年の2月に払拭されました。
「Nintendo Direct 2023.2.9」で電撃発表されたのは、『レイトン教授と蒸気の新世界』。タイトルからも分かる通り、レイトン教授が主人公を務める完全新作です。助手のルークと別れてから1年後、アメリカを舞台に再会する新たな物語が綴られます。
またレイトン教授の声は、引き続き大泉洋さんが続投。以前よりも更に多忙を極める人気ぶりですが、今回も大泉さんの演技が楽しめると早くも期待が高まっています。
ルーク役はこれまで堀北真希さんが担当していましたが、現在彼女は芸能界を引退しており、残念ながら変更となりました。ですが、新担当の今田美桜さんが演じるルークに良い印象を覚えた方も多数。やむを得ない理由という事情もあり、今田さんへの変更は好意的に受け止められています。
2013年で一度途絶えていた『レイトン教授』シリーズの最新作は、可能な限りその形を保ったまま、ニンテンドースイッチ向けに新たな1歩を踏み出します。発売時期などはまだ未定ですが、レイトン教授の更なる活躍にご期待ください。
■携帯機でしか遊べなかった『4』『5』『6』の逆転劇が、ここに蘇る!
『逆転裁判』シリーズは、DSよりも更に遡る「ゲームボーイアドバンス」(以下、GBA)で始まった個性的なADVゲームです。ナンバリングだけでも6作品を連ね、『逆転検事』シリーズや『大逆転裁判』シリーズなどの派生作や、『レイトン教授VS逆転裁判』といったコラボ作品まで生み出され、GBA、DS、3DSをメインに発展し続けました。
シリーズ全体として見ると、シリーズの1~3作目をまとめた『逆転裁判123 成歩堂セレクション』が、3DSを皮切りにスイッチやPS4、XBOX ONEなどへ展開。また『大逆転裁判』シリーズも、2作品をセットにした『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』がスイッチ/PS4/Steamに登場しました。
シリーズとしては、携帯機から据え置き機へと順調に歩みを続け、アクセスしやすい環境を整えています。ですが、メインシリーズ後期の『逆転裁判4』『5』『6』については、DSもしくは3DS向けに登場した後、据え置き機への移植などは行われず、遊べるプラットフォームは携帯機のみ。『逆転裁判4』はリメイクされたものの、そちらは3DS向け。また、いずれもスマホ版が登場したものの、他のシリーズ作のような据え置き機向けの展開はないままでした。
1~3作目や『大逆転裁判』シリーズと比べると恵まれない環境にあった『4』『5』『6』ですが、この3作品をまとめた『逆転裁判456 王泥喜セレクション』の発売が決定しました。ようやくメインシリーズの全てが、新たな舞台へと移ります。
この『逆転裁判456 王泥喜セレクション』の発売日は2024年1月25日を予定しており、スイッチ/PS4/Xbox One/Windows/Steamとプラットフォームも幅広く対応。これまで、DS(『4』のみ)か3DS、スマホでしか遊べなかったとは思えないほどの充実ぶりです。
アクセスが格段にしやすくなったのはもちろん、HD化の恩恵でグラフィックも向上。BGMやアートを楽しめるライブラリや、オリジナル版で配信されたDLCも収録するなど、単なる移植に留まらないパワーアップを遂げています。
『逆転裁判456 王泥喜セレクション』が出れば、シリーズ作のほとんどを現行機で遊べる状態に。あとは、『逆転検事』シリーズ と『レイトン教授VS逆転裁判』が、現行の据え置き機向けに移植されることを願うばかり。もちろん、完全新作にも期待したいところです。
■「2画面を活かした手書きマッピング」の名作が、現行機で復活!
DSと3DSで共通する最も大きな特徴といえば、やはり2画面によるゲーム表現でしょう。しかも下画面はタッチパネルなので、ペンによる直接的な操作も可能です。その機能を活かした代表例といえば、『世界樹の迷宮』シリーズを外すことはできません。
RPG作品の多くが遊びやすくフォローも手厚くしていく中、一瞬の隙だけで全滅もあり得る高難易度な作りと、ダンジョンマップを手書きで埋めていく一手間を敢えて用意した『世界樹の迷宮』シリーズは、潜在的なユーザー層の掘り起こしに成功。その名を高く轟かせました。
DSから始まった本シリーズは、4作目の『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』で3DSに進出。グラフィックの向上や演出のパワーアップなどを遂げつつも、“手応え満点のバトルと手書きマップ”という軸は堅持したまま、ファンからの信頼に応え続けました。
その人気は長く続き、ナンバリングだけでも6作品(『世界樹の迷宮X(クロス)』含む)を重ね、1作目と2作目がそれぞれ3DS向けにリメイクされ、さらにはスピンオフ作品もリリースされるほどでした。
しかし、2018年8月に発売された『世界樹の迷宮X(クロス)』を最後に、メインシリーズの展開は沈黙。
ですが、シリーズの初期の3作品をセットにした『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』が発表され、今年の6月1日にスイッチとSteamに向けて発売を開始(DL版は、各タイトルの個別購入も可能)。現役で遊んだファンから新規ユーザーまで幅広く、本シリーズの魅力をこの令和に楽しんでいます。
気がかりだった“手書きマップ”もしっかり継承されており、あえて一手間を楽しむプレイスタイルはリマスター版でも健在。しかも1・2作目はリメイク版もありますが、3作目のリメイクはなく、オリジナル版のみでした。このリマスターで『III』が遊びやすくなった点も、見逃せない大きなポイントです。
今回リマスターされた3作品はいずれも、元はDSのタイトル。そこだけ見ると、本記事の趣旨からは外れているかもしれません。しかし今回取り上げた最も大きな理由は、“2画面構成だから生まれた手書きマッピングの要素を、1画面のゲーム機に落とし込めた”という前例が出来たためです。
『世界樹の迷宮』シリーズを現行のゲーム機に登場させる最大級の難点とも言える「画面構成」を、見事に乗り切った『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』。この成功のおかげで、『IV』『V』『X(クロス)』のリマスター化や、完全新作の希望も見えてきたと言えるでしょう。
『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』発売前に行った配信番組では、「新たな世界樹の迷宮を作るには、まだ時間がかかりそう」との前提こそあったものの、「今回のリマスターを遊んでいただいた声は、世界樹の迷宮の新作にも活かしたいと考えております」といった嬉しいコメントも開発陣から飛び出しました。
今後に向けた展開自体はまだ未定ですが、『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』をきっかけに、新たな動きが訪れる可能性は十分あります。DSと3DSで培われた名シリーズの完全復活を期待させる『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』を遊びつつ、朗報を待ちましょう。
3DS向けのオンラインサービスが順次終了していき、ゲームハードとしての締めくくりを感じさせる今日この頃。ですが、手元の3DSが動く限り、その楽しさが失われることはありません。新作がなくとも既存のタイトルは豊富に揃っていますし、まだまだ多くの3DSソフトが中古市場に流通しています。
そして、今回紹介したタイトルに限らず、これまでいくつもの3DSソフトがスイッチなどの新舞台で引き続き活躍しています。また、『ゲームセンターCX 3丁目の有野』のリマスター版、『ファンタジーライフ』や『イナズマイレブン』のシリーズ最新作など、今後も心沸き立つタイトルの新展開から目が離せません。
遊ぶ人がいる限り、3DSはいつまでも現役です。そして、この名ハードから生まれた作品もまた、新たな輝きを放とうとしています。3DSとそのソフトたちを愛する人々に、幸あれ!