1980年代から活躍を続け、数多くの代表作を生み出してきた「アトラス」。30年以上の歴史を持つ『真・女神転生』シリーズや、ここから生まれた派生作の数々は、RPGを語る上で外せないほど色濃い影響力と存在感を放っています。


また、高い難易度をパーティ編成の有効活用で攻略していく『世界樹の迷宮』シリーズや、後に出た完全版も含めて非常に高い完成度を誇る『ラジアントヒストリア』など、シリーズものから単独作品まで、RPGだけでも枚挙の暇がないほどです。

そんな「アトラス」ですが、近年の中でもこの2024年は、特に目覚ましい活躍を遂げた1年になりました。アトラスファンはもちろん、RPG好きも要必見な展開の数々、あなたは見逃していませんか? 今年が終わる前に、アトラスが辿った活躍の足跡を振り返り、見落としがないか今一度改めてチェックしましょう!

■『ペルソナ3 リロード』:2024年2月2日発売
アトラスといえば、『ペルソナ』シリーズを真っ先に思い出す人も少なくないはず。元々は『真・女神転生』の外伝的作品としてスタートしましたが、少年少女の成長や挫折、葛藤を通して描かれる異変や事件は、ユーザーから大きな関心と支持を集め、単独のシリーズとして展開するほどの人気を博しました。

そんな『ペルソナ』シリーズの転換期となった『ペルソナ3』は、ファンを中心にリメイク化の要望が寄せられていましたが、ようやく訪れた展開もPSP版をベースとしたリマスター版に留まり、オリジナル版を元とした再誕は長く訪れないままでした。

もちろん、PSP版の『ペルソナ3 ポータブル』やそのリマスター版も、見どころの多い魅力的な作品です。しかし、オリジナル版と演出が異なっていたり、追加シナリオの「Episode Aegis」が未収録だったりと、どうしても違いが気になる部分がありました。

リマスター版でユーザー層を広げつつも、「Episode Aegis」が楽しめるのはオリジナル版しかない、といった状態のまま令和も年月を重ねる中、『ペルソナ3』をフルリメイクし、グラフィックを一新した『ペルソナ3 リロード』が現行機向けに登場しました。

しかも「Episode Aegis」も、DLCという形で今年の9月に配信開始。名作がフルリメイクで蘇ってただけでなく、「Episode Aegis」が初めてオリジナル版以外でも遊べるようになり、ファン待望の展開が二重の意味で訪れます。

2024年におけるアトラスの大きな最初の1歩は『ペルソナ3 リロード』ですが、2024年は『ペルソナ3』にとって非常に意義のある年となりました。ファンが改めて遊ぶのもよし、新規ユーザーの入門用によしと、広く楽しめる『ペルソナ3 リロード』のプレイを是非ご一考ください。


■『ユニコーンオーバーロード』:2024年3月8日発売
ゲーム機の性能が上がると共に、ゲーム開発の規模は拡大し、開発費用も嵩む一方です。そのため、ヒットするか予測が立ちにくい完全新規のIPよりも、ファンの購入がある程度期待できるシリーズ作の続編に注力するケースも少なくありません。

アトラスも近年はシリーズ展開に力を注ぐ傾向にありますが、一方でヴァニラウェアとのタッグで贈る新作は、チャレンジングなものも少なくありません。

例えば、ジュブナイルな群像劇を描くADVと没入感の高いバトルシーンを組み合わせた『十三機兵防衛圏』は、人を選ぶジャンルながらミリオンヒットを記録し、新規IPとして大きな成功を遂げました。発表から発売まで時間がかかり、どんな作品になるのか期待と一抹の不安が交錯していましたが、その内容もミリオンヒットに相応しいものに仕上がっています。

そんなヴァニラウェア×アトラスのタッグによる完全新作が、2024年3月にも訪れました。そのタイトルは、『ユニコーンオーバーロード』。ジャンルはシミュレーションRPGで、しかもリアルタイムに進行するストラテジー要素もあるため、こちらも非常に人を選ぶジャンルでした。

シミュレーションRPGといえば、ステージごとに戦いがあり、1戦1戦に時間がかかるものがポピュラーです。しかし『ユニコーンオーバーロード』は、全体マップがシームレスにバトルの舞台となり、全体的なゲーム進行が非常にスムーズ。さらに、敵の規模にもよりますが、わずか1分程度でクリアできるバトルもあるなど、短時間で済む場合も珍しくありません。

ちなみに、短時間で済むからといって、本作のバトルが簡素で味気ないかと言われれば、そんなことは全くありません。
クラスごとの相性、編成による部隊の強みを伸ばす構築、特殊な効果を組み合わせて生まれるシナジーなど戦略的な要素は多く、時間を割くほどその成果は戦闘に反映されます。

戦略がハマれば、爽快かつスピーディに戦闘を制することができ、部隊の編制に取り組むほどより強くなれる。シミュレーションRPGの基本をしっかり押さえながら斬新なプレイ体験を生み出し、ついつい「あともう1戦」を繰り返してしまう魅力に溢れた『ユニコーンオーバーロード』は、こちらも見事ミリオンヒットを達成しました。

本作の開発はヴァニラウェアですが、この時代に新規IPのシミュレーションRPGを引き受けてパブリッシングしたアトラスの判断も、英断と言わざるを得ません。両社の尽力のおかげで『ユニコーンオーバーロード』と出会えたユーザーは、その恩恵を今も噛みしめていることでしょう。

■『真・女神転生V Vengeance』:2024年6月14日発売
『真・女神転生』シリーズはアトラスの中核ともいえる人気作のひとつで、その派生は多岐に及びます。

前述の『ペルソナ』はもちろん、『デビルサマナー』に『ラストバイブル』、『デビルチルドレン』や『デビルサバイバー』、『魔神転生』と、シリーズ展開したタイトルは多数。『真・女神転生if...』や『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』といった単独作品もあり、その広がりは留まるところを知りません。

その一方で、『真・女神転生』自体のナンバリング展開は慎重を期する傾向にあり、1992年に1作目が、その2年後に『真・女神転生II』がリリースされましたが、『真・女神転生III-NOCTURNE』はそこから9年後、そこからさらに10年後の2013年に『真・女神転生IV』が発売されました。

派生の広がりと比べ、メインシリーズの展開は1歩1歩踏みしめるような重厚さがあります。それだけに、新たなナンバリング作品が発表されるたびに話題となり、大きく注目されるのが常でした。

現時点のナンバリング最新作『真・女神転生V』もその例に漏れず、発表から2021年11月の発売まで、シリーズファンを中心に多くのユーザーから熱い注目を集めました。
また、そうした期待に応える完成度も見事の一言。5作目の『真・女神転生』として、その役目を十ニ分に果たしました。

そんな『真・女神転生V』の発売から約2年半が経過した2024年6月、新要素を加えた『真・女神転生V Vengeance』がリリースされ、新たな体験と物語をファンに提供しました。本作に登場する悪魔は、総勢270体。全ての悪魔に個別のユニークスキルが追加され、戦術の幅がさらに大きく広がります。

また、オリジナル版の物語「創世の女神篇」とは別に、「復讐の女神編」という全く新たな物語も追加。そのボリュームは単なるパワーアップに留まらず、もう1本の『真・女神転生V』と表現しても過言ではないほどです。

なお、『真・女神転生V』はニンテンドースイッチ版のみでしたが、『真・女神転生V Vengeance』でプラットフォームが一気に広がり、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PCでも遊べるようになりました。『真・女神転生V』を見送っていた人は、好みの環境で遊べる『真・女神転生V Vengeance』に着手してみてはいかがでしょうか。

■『メタファー:リファンタジオ』:2024年10月11日発売
近年のアトラスは、続編に注力する傾向にあると述べました。例えば2020年代を振り返ると、シリーズ初のアクションRPG『ペルソナ5 スクランブル ザ・ファントム ストライカーズ』、シリーズ続編の『ソウルハッカーズ2』、追加要素を加えた『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』など、いずれもシリーズ関連の展開がほとんどです。

しかし、大きな節目となるアトラスの35周年記念タイトルとして発表され、10月11日に発売されたばかりの『メタファー:リファンタジオ』は、完全新規のファンタジーRPGです。


ファンタジーといっても、現実世界の中世ファンタジーに近いものではなく、独自の設定を積み上げ、唯一無二の舞台を構築しており、この世界を旅して味わえる体験は『メタファー:リファンタジオ』ならではのものになっています。

幼馴染の王子にかけられた「死の呪い」を解くため、主人公とその一行は「鎧戦車」に乗り、世界中を放浪する旅へと乗り出します。「鎧戦車」の甲板からの眺めは圧巻で、流れる景色を見つめるだけで旅情感が溢れるほど。そのスケール感で国中を巡るプレイ感は、アトラスの過去作では味わえなかった新境地を切り開いています。

戦闘はターンベースのコマンドバトルですが、戦闘を有利に展開すれば行動回数が増えるといった、アトラスお馴染みのシステムは今回も健在。また、格下相手ならコマンドバトルに移行せず、アクションバトルだけで倒せるといった新たな要素も加わっています。

多彩なアーキタイプ(一般的なRPGにおける職業やクラス)を使いこなし、戦略性の高いバトルを乗り越え、広大な世界を旅するRPG『メタファー:リファンタジオ』。全てが新しく刺激に満ちた冒険は、その幕を開けたばかり。これから旅を始める多くのユーザーと共に、新たな世界に挑んでみてはいかがでしょうか。

2024年のアトラスは『ペルソナ3 リロード』に始まり、ブランドの総力を結集して生み出した『メタファー:リファンタジオ』まで、濃密なタイトルを意欲的にリリースし続けてきました。

当面明らかになっている展開は、この『メタファー:リファンタジオ』で一区切りを迎えます。ここからしばらくは、名作・大作のプレイ時間に充てるひとときとなるでしょう。
……ですが、油断は禁物です。

これまで、本編に加えアクションRPG(『ペルソナ5 スクランブル ザ・ファントム ストライカーズ』)やシミュレーション(『ペルソナ5 タクティカ【P5T】|公式サイト』)など、『ペルソナ5』に繋がる作品が数多く登場しましたが、更なる展開となる『ペルソナ5:The Phantom X』の正式サービスがまだ控えています。

開始時期などはまだ明かされていませんが、既に事前登録が始まっているため、決して油断できません。年内や年明けに始まる可能性も十分あるので、今のうちに2024年のアトラス作品に着手し、心残りのないようにしておきましょう。
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