ガンガールRPG『勝利の女神:NIKKE』(以下、NIKKE)と、アクションRPG『Stellar Blade』の相互コラボレーションが、6月12日に幕を開けます。

『NIKKE』ではコラボイベントが行われ、「イヴ」「レイヴン」「リリー」といった『Stellar Blade』のキャラクターが実装され、彼女たちが登場するストーリーイベントも展開します。


また『Stellar Blade』では、様々な衣装やアイテムが手に入る新ショップに、『勝利の女神:NIKKE』で活躍する「紅蓮」との激突、射撃で戦う新たなミニゲームなど、こちらも多彩なコンテンツが登場します。

この2作品はいずれも、韓国のゲーム開発会社「SHIFT UP」が手がけたもの。どちらの作品も、これまで他社のタイトルとのコラボ経験を持ちますが、社内コラボは今回が初。なぜ、このようなコラボが実現したのか。そして、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

そうした開発の裏側に迫る対談動画が、6月10日19時に公開されました。株式会社YOSP代表の吉田修平氏が司会を務め、『Stellar Blade』ディレクターのキム・ヒョンテ氏と『NIKKE』ディレクターのユ・ヒョンソク氏に、コラボに関する想いや意気込みなどに迫っています。

また動画の後半では、両作品とコラボレーションした『NieR:Automata』を含む『NieR』シリーズのプロデューサー・齊藤陽介氏と、ディレクター・ヨコオタロウ氏も登壇。作品に対する姿勢や、各作品から受けた影響などを赤裸々に語りました。果たしてどんな話が飛び出したのでしょうか。

■『勝利の女神:NIKKE』×『Stellar Blade』コラボの意外なきっかけ
吉田氏からコラボのきっかけを問われると、キム氏は「とあるコメントで『Stellar Blade』と『勝利の女神:NIKKE』は世界観がとても似ていると書いてあった」と延べ、今回のコラボはユーザーのアイデアがきっかけだったと明かします。

続いて、どのようにしてファンが満足するコラボに仕上げたのかという質問には、「単に『Stellar Blade』のキャラクターを登場させるだけでは、融合しているとは言えません」とユ氏が返答。


さらに、キム氏が「誰が何と言おうと、まさに『Stellar Blade』の世界に登場したと言えるよう、その世界観と完璧に融合したニケのキャラクターをお見せするつもりです」と引継ぎ、「ユーザーが抱く『3Dのニケはどんな感じだろう?』という好奇心を満たせるよう、うまく具現化できたと思っています」と告げました。

『Stellar Blade』に登場するキャラクターとして「紅蓮」が選ばれた理由については、まずガンSTGである『勝利の女神:NIKKE』において、紅蓮は剣を使う異質なキャラだとキム氏が説明します。

そのため、紅蓮の実力を表現できる機会が必要だと考えおり、「それにぴったりな場面が、剣を武器に使うイヴとの対決だったのです」と説明。『Stellar Blade』なら、紅蓮の剣の腕を存分に表現できるとの判断だった模様です。

また『NIKKE』には、『Stellar Blade』のアクションバトルを彷彿とさせるミニゲームが登場予定です。このミニゲームについてユ氏は、プラットフォームもエンジンも異なるため、操作方法やビジュアル的な表現などの違いがあり、「『Stellar Blade』のアクション的な醍醐味をうまく再現しつつ、どうすれば独自の方法でモバイルプラットフォームに組み込めるか」が最も難しかったと明かします。

そして、「モバイルゲームという前提があるため、操作方法はいたってシンプルにし、『Stellar Blade』のアクション的な魅力を体感いただけるように工夫を凝らしました。ぜひご期待ください」と締めくくります。

■『Stellar Blade』に衝撃を受けた齊藤氏とヨコオ氏
対談が進むと、ここに齊藤氏とヨコオ氏が合流します。まずは、『NieR』シリーズに対する印象をキム氏とユ氏に伺うと、「私にとって『NieR:Automata』は、人生に大きな影響を与えたゲームのひとつでした」(キム氏)、「ゲーム開発者として言わせてもらいますと、『NieR:Automata』は人生の教科書のようなゲームです」(ユ氏)と、それぞれ熱い言葉で語ります。

さらにユ氏は、「私がゲーム開発に携わり始めて、15年が過ぎました。アマチュア時代から数えれば20年以上になりますが、今までに出会った作品の中で開発した人に会ってみたいと思ったのは、『NieR:Automata』が初めてだったと思います」とも続けます。


続いて、齊藤氏とヨコオ氏に両作品の印象を伺ったところ、齊藤氏はまず「『NieR:Automata』とのコラボは、非常に嬉しいお話としていただいたという思い出があります」と述べました。

そして『Stellar Blade』については、完成直前のゲームに触れた機会を語りつつ、「それを実際に遊ばせていただいた時に、もう私とかヨコオタロウの時代は終わったな、って」「若者がこの素晴らしいゲーム作ったなっていうのを本当に肌で感じたので、もう年寄りの出る幕はないなっていうぐらいのインパクト衝撃を受けました」と、当時受けた衝撃を赤裸々に明かしました。

ヨコオ氏は、『Stellar Blade』と『NIKKE』に関して、「キムさんのキャラクターの魅力を前面に押し出している、という製品の特徴がすごいまとまってて、SHIFT UPさんの会社としての個性がすごく整ってる」「トーンが揃っている感じがして、僕はすごく好きですね」と好印象を綴ります。

また『Stellar Blade』の出来映えを例に、韓国や最近の中国を含めたアジア圏の開発力の向上について述べ、「日本がミドルウェアのラーニングに時間がちょっとかかってる間に、すごい速度で欧米(レベル)のクオリティーを出されてて、そこは素直にすごいなと思いました」と、現状のゲーム開発についての見解を告げます。

さらに「日本でも、20代とか30代の開発者の人はすごく最近はスキルが上がってきて、クオリティの高いものを作っています。やっぱり、僕とか齊藤さんみたいな年寄りは、早く業界からいなくなった方がいいなって、まさに昨日も話し合ってたところです」といった発言が飛び出すと、キム氏からは「お酒の勢いですか?」との質問が。これについては「いえいえ、シラフでしたね」と、ヨコオ氏がマイペースに返します。

■ポストアポカリプスな世界観は、コスト抑制が理由!?
対談は作品内容について迫る流れとなり、ゲームの背景に終末的な題材を採用した理由をついて問われると、まずキム氏が「ポストアポカリプスのゲームを作るとなると、まず人間を全滅させるところから始まるため、登場人物の数を最小限に抑えられます」と回答。自分たちのような小規模スタジオにとっては、重要な選択肢だと述べます。

このアンサーに応える形で、ヨコオ氏が「コストっていう意味ではすごく似た理由で廃墟を選びました」と言及します。さらにヨコオ氏は、「ディティールを作るのが大変」と告げ、「現代社会とかをまともに作ると看板とかはいちいち全部作らないといけない」「適当にごまかせるっていうか、量産ができるという理由で、未来の背景を選びました」とも明かしました。

また余談として、「背景に読める看板とか読める文字を書くと、ローカライズのお金がかかるってプロデューサーからすごく文句を言われるので、背景に文字を全然書けないです、最近」「つまり廃墟になったのはプロデューサーである齊藤陽介氏のせいです」と指摘するものの、齊藤氏からは「違います」との即答が。


世界観については、ユ氏から「好みも大きいと思います。私自身、一番好きな漫画やゲームの世界観が全部ポストアポカリプスなんです。自分が好きなものを作る時が、一番面白いものが作れるのではと思います」と、異なる視点を述べる場面もありました。

■『NIKKE』コラボの影響で、コスプレイヤーにも変化が?
それぞれの作品から受けた影響のひとつとして、ヨコオ氏は「『NIKKE』とコラボさせていただいたら、『NieR』のコスプレイヤーさん、特にセクシー系の方々が全員『NIKKE』のコスプレをし始めて、『NieR』のコスプレしなくなって……コラボしなきゃよかったな、と反省してます」と、ユーモアを交えてその反響について語ります。

一方、キム氏からは「私のSNSのタイムラインは、常に2Bでいっぱいです。いつか、あのような素敵なキャラクターを作ることが私の夢です」と、こちらも『NieR:Automata』の影響の大きさを実感と共に明かしました。

キャラクターデザインについて話が移ると、ユ氏は「『NIKKE』はデザインに規則や統一性があるというよりは、最終的にキャラクターの個性を表現することが目標です」とし、全体のデザインよりも各キャラクターをどう表現するか、自由に想像することを重視していると述べます。

『NIKKE』のキャラクターについては、「私も、最初は一緒にディレクションを進めていました」とキム氏が告白。当時はイラストを中心に進めていたものの、シナリオの重要性が高まるにつれ、「キャラクターが設定とどれくらい合っているか」「その設定に基づくストーリーを外見でいかにうまく表現するかが重要になってきた」とのこと。

そうした過程を経て、「今は私ではなく、妻のKKUEMがディレクションを担当し、プロジェクトを進めています」と体制の変化を説明しました。

さらに、ライブサービスゲームはユーザーからのフィードバックを受け、それを反映するサイクルが非常に速く、開発陣の実力が飛躍的に向上すると述べ、「僕が絵を描いて見せてもほとんど、妻のKKUEMに却下されてしまいます。僕の絵がなかなかゲームに登場しないのは、このような理由からです」といった開発秘話をポロリ。
「何でこんな話してるんだろう…恥ずかしいですね」と、苦笑を浮かべて締めくくります。

■終末的な物語をどのように描くか、三者三様の姿勢
3作品のいずれも終末的な物語を描いており、こうした作品における物語の描き方に関する話も盛り上がりを見せました。

倫理的なジレンマについて問われたユ氏は、クライマックスで感情的なバランスを崩壊させることで、プレイヤーは悲しみや喜びの感情を抱くとした上で、「崩壊した感情のバランスは自然と回復するのですが、似たような感情を感じ続けると鈍感になる」と述べます。

そこから、「『勝利の女神:NIKKE』では、こうして崩れた感情のバランスを回復させるため、イベントやキャラクターの順序を適切に設計しています」と、緩急について明言。こうした手法を、韓国では「甘いとしょっぱいの連鎖」と表現すると説明し、そのバランス調整を意識していると語りました。

ヨコオ氏も、「甘いしょっぱいリズムみたいなことは、考えるか考えないかというと考えはします」と告げつつ、「僕はやっぱり一人の人間なんで、ワンパターンにどうしてもなってしまうため、それをいつも警戒してます」「ストーリーとか盛り上がりに一定のリズムが出てきちゃうんですけど、なるべくそれを破壊しようと頑張っています」と、創造のための破壊を意識している旨を明かします。

続いて齊藤氏は、自身がプロデューサーを務める『NieR:Automata』と『ドラゴンクエスト』シリーズを例に挙げ、「圧倒的な違いは、『ドラゴンクエスト』は完全懲悪なお話で、『NieR:Automata』って必ずしもそうではない」と説明し、『NieR:Automata』が世の中に「初めはどう受け入れられるんだろうな」と思っていたと当時の胸中を口にします。

また、「どっちが善でどっちが悪かみたいなものは重要ではない、というところが好きと言ってくれる人たちが意外と多かった」と、ちょっとした驚きがあったとも語っています。

この話題の中で、ストーリーを明確に整理することは難しいものの、そこを明確にせず考える余地を残すことの方がより難しい──と持論を述べたキム氏は、「そこを『NieR:Automata』は上手に扱えていると思います」と賞賛。

そして、個人的に印象的だった点として「『NieR:Automata』だけでなくヨコオ先生の作品では、キャラクターやストーリーがこの上なく最悪な状況に追い込まれた後、さらに追い打ちをかけるという展開が少なくなく、それがまた衝撃的だった記憶があります」と続けました。

さらにキム氏は、「私たちの作品を「甘いとしょっぱい」の連鎖だとしたら、先生の作品は苦くて苦くて、さらにもっと苦い、そんな流れで進むケースが多い」「そういった部分をどうやって実現させるのか、あの人の深淵の果てはどこなのか、そういったことを考えさせられます」とも語り、クリエイターへの敬意を示します。

一方、その経緯を向けられたヨコオ氏は「『NIKKE』の話の方がよっぽど暗いと思うんですけど」と答えますが、「種類が違う暗さとでも言いましょうか」とキム氏が述べ、ユ氏も「実際、ヨコオ先生の作品に比べたら暗いなんて言えませんよ」と明言。
最後に「私たちの作品は何と言いましょうか、ラブコメディだと言えますね。ヨコオ先生の作品に比べたらの話ですが」とキム氏が後押しし、互いにそれぞれの作品に向けた想いの一端を露わとしました。

クリエイター同士による濃密な対談がまとまった動画は、その内容も濃く、ファンならずとも引き込まれる内容がぎゅっと詰め込まれていました。

今回取り上げた範囲以外にも、興味深いやりとりがたっぷり盛り込まれているため、気になる人は動画を直接チェックしてください。

また動画の締めくくりにて、『勝利の女神:NIKKE』×『NieR:Automata』コラボの復刻が発表されました。復刻イベントの開催日は、7月3日とのこと。『Stellar Blade』との相互コラボを遊んだ後は、『勝利の女神:NIKKE』×『NieR:Automata』コラボの復刻版を楽しみましょう。
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