宝塚歌劇団は8月16日~9月28日の期間中、東京宝塚劇場にて「花組公演 『悪魔城ドラキュラ ~月下の覚醒~』『愛, Love Revue!』」を公演中です。

コナミの人気シリーズ『悪魔城ドラキュラ』を原作とした宝塚歌劇団花組のミュージカルということで大きな注目を集めていますが、今回は公演開始の前日8月15日に通し舞台稽古(ゲネプロ)を鑑賞することができました。


本記事では「悪魔城ドラキュラ ~月下の覚醒~」ゲネプロの感想や、アルカード役「永久輝せあ」さん、マリア・ラーネッド役「星空美咲」さんへの囲みインタビューを掲載します。

◆「悪魔城ドラキュラ ~月下の覚醒~」は耽美カッコいい宝塚らしい舞台
人気ゲームシリーズ『悪魔城ドラキュラ』の中でも、1997年にリリースされた『悪魔城ドラキュラX ~月下の夜想曲~(以下、月下の夜想曲)』を原作とした「悪魔城ドラキュラ ~月下の覚醒~」。原作の耽美で重厚な世界観を尊重しつつ、宝塚ならではの華やかさと繊細な感情描写で、見事に新たな命を吹き込まれていたように思います。

宝塚歌劇の観劇ははじめてでしたが、完成度の高さに驚かされました。

本公演の最大の魅力は原作のコアな部分を深く理解して、舞台という新たな形と表現方法で昇華させている点でした。主演の永久輝せあさんが演じるアルカードは、ビジュアルからしてまさにゲームから抜け出してきたかのよう。白銀の髪に知的な表情、そしてどこか憂いを帯びた佇まいは、観客を一瞬で世界観へ没入させます。

また単に外見の再現にとどまらず、探索型アクションRPGという形では語りきれなかったアルカードの心情が、より深く掘り下げられています。彼が抱える人間とヴァンパイアの血の狭間での苦悩、父であるドラキュラ伯爵への複雑な思い、マリアへの愛情が繊細な演技と歌声によって丁寧に表現されていました。

一方、聖乃あすかさんが演じる「リヒター・ベルモンド」は、伝説のヴァンパイアハンターとしての強さだけでなく、『月下の夜想曲』の彼が「なぜドラキュラ城の主になってしまったのか」が、宝塚らしい味付けで追加され見ごたえがありました。

さらにオリジナルストーリーとして暗黒神官シャフトが、史実のフランス革命を利用してドラキュラ復活をもくろむという展開を盛り込むことで、『悪魔城ドラキュラ』を知らない観客にも物語が分かりやすくなっていたように思います。

原作のゲーム音楽をアレンジした楽曲は、宝塚歌劇団のオーケストラによって一層壮大でドラマチックなサウンドへと進化。
「月下の夜想曲」「Bloody Tears」「Vampire Killer」などゲームでおなじみのBGMが、剣を交える激しい戦闘シーンや登場人物の感情が高まる場面で流れるたびに、耳と目が釘付けになりました。

正直な話、観劇する前は興味はありつつも宝塚歌劇を見たことがなかったため、いわゆる「鑑賞の文法」を理解できるのか不安でした。しかし実際に見てみるとスポットライトの当て方や豪華な舞台美術、タカラジェンヌによる表現力は圧巻で楽しめました。

そのため「悪魔城ドラキュラ ~月下の覚醒~」宝塚が好きな方、『悪魔城ドラキュラ』ファン、どちらかに興味がある方であれば面白いと思える舞台ではないでしょうか。さらに同時公演の「愛, Love Revue!」は、煌びやかな衣装と色とりどりの照明で「これぞ宝塚!」と思えるレヴューでした。

◆アルカード役「永久輝せあ」さん、マリア・ラーネッド役「星空美咲」さんインタビュー
ゲネプロ後には囲み取材で、アルカード役「永久輝せあ」さん、マリア・ラーネッド役「星空美咲」さんにインタビューすることができました。『悪魔城ドラキュラ』や本公演への想いを語っています。

――人気ゲームの宝塚歌劇版ですが、お二人は作品の世界観とそれぞれの役をどういう風に楽しんでおられますか?

永久輝:初めてこの作品に出演すると決まったとき、『悪魔城ドラキュラ』というゲームをプレイしたことはなかったのですが、作品と向き合う中で本当に魅力的で長く愛されている理由がよく分かるなと毎日実感しています。アルカードはファンの方の中でもすごく人気のあるキャラクターで、ヴァンパイアと人間の血両方流れている青年。優しさと強さを両方持った人物で私自身魅力的だなと思っています。

星空:私は原作モノを演じるのが初めての経験ですが、今も化粧前にマリアさんの写真を飾り、それを見ながらお化粧をして心強さを感じながら日々演じています。マリアはとても明るく活発で、心優しい部分もある。
アルカードさんに対してもヴァンパイアと人間のハーフだからではなく、人として接しているような彼女の優しさに私自身、たくさんの勇気と力をいただきながら、これからも公演を重ねてまいりたいなと思っています。

――ゲーム原作舞台で新たなお客さんが入ったと聞きました。

永久輝:舞台に立ちながら客席を拝見して、男性のお客さまがとても多いなとすごく実感しました。風の噂では男性用のお手洗いに行列ができたという…。

一同:(笑)

永久輝:宝塚の公演の中では、なかなか珍しいのではないかなと嬉しく思いました。そしてはじめてて宝塚をご覧になる方に、「宝塚ってこういうもの」と100%お伝えできる「愛,Love Revue!」との2本立てということが私自身とても幸せです。新しい場面も再演する場面もたくさん盛り込まれており、色んな場面もそれぞれ魅力があってどんどん引き込まれますね。男役は格好よく、娘役は可憐な宝塚らしい世界が表現されているのがこの作品の魅力かなと思います。

星空:今おっしゃってくださったように、公演中に私自身が宝塚に憧れた頃を思い出す瞬間がたくさんありました。この「愛,Love Revue!」をご覧になった方が、宝塚を見て素敵だと思っていただいたり、小さな子たちが宝塚に入りたいと思ってもらえたりしたら、それがどんどん繋がってのかなと思うので、そうあれるように頑張りたいなと思います。

――ゲーム原作の作品を宝塚ならではの味付けや、演出をされる上で意識されたことはありますか。

永久輝:ゲームから舞台に持ってくるという点でゲームでは描かれていなかった部分を、お芝居として作っていかなければいけません。
そのため稽古中はどういう思いを抱えている人物なのか、なぜ悪魔城に向かってどういう思いで父と対峙するのかなど、内面的な部分をアルカードを演じる上で大事にしました。立ち回りの振り付けを覚えて実践するのも難しい時間ではありましたが、舞台として成立させるために、内面的な部分を埋めたり表現したりすることを意識しています。またマントを持ちながら動くことも多く、剣も通常よりも長いので、お稽古場でもマントを使い同じ位の長さの剣を用意していただき、毎日振り回して練習していました。

星空:自分自身課題だと思って取り組んでいるのは、ゲーム原作の舞台は宝塚以外でもされていると思いますが、宝塚で上演する意味や娘役の私がマリアを演じる意味は、品や美しさというものがにじみ出るからという風に感じているので、マリアとしてもですが、娘役としても自分自身を磨くということを意識しています。

――今回はゲーム原作ですが、ヴァンパイアは歴史の中で何度も繰り返されてきた題材です。お二人が思う「ヴァンパイア」の魅力を教えてください。

永久輝:ヴァンパイアには怪しさ・儚さ・美しさがあり、少し謎めいている部分が宝塚の魅力にピッタリ合うのではないかと考えました。今回は強さや人間対ヴァンパイアの戦いを中心に描かれているので、今まで宝塚で扱ってきたヴァンパイア作品とは、また違った面白さがあると感じています。

星空:私は小さい頃からヴァンパイアが大好きで、ヴァンパイアが題材の小説もよく読んでいたので今回マリア役になれて嬉しかったです。やはり宝塚の男役さんが舞台上でバンパイアとしているのを見ると、本当に人間じゃないように見えますし、人ではない人外モノは宝塚と相性がいいと思います。

――ゲームファンとしてBGMがたくさん使われて良い舞台でした。ゲーム音楽で歌唱することはどのように受け止められていますか。


永久輝:「失われた彩画」という曲が、ゲームファンの方の中では人気だと鈴木圭先生も言われていて、それを二人で歌う演出にしていただきました。メロディとしては美しいのですが歌うとなると音域が広く、音の上下が激しくてなかなか苦戦しました。ただ神秘的かつ荘厳な音楽でお芝居の世界に自分も没入できる感じが素敵だなと思い、曲の力をお借りさせていただきました。

星空:たくさんの方に愛されている楽曲ということもあり、歌詞がなくても「失われた彩画」の前奏を聴くだけで、スッと物語の中に入っていけるような感覚があるので、今回歌詞がある意味を考えながら演じさせていただいています。

「花組公演 『悪魔城ドラキュラ ~月下の覚醒~』『愛, Love Revue!』」は、8月16日~9月28日の期間中、東京宝塚劇場にて公演中。チケットはすでに完売していますが、DVD/Blu-rayが9月10日発売予定で、ライブ中継・配信なども予定されています。

詳細は公式サイトをご確認ください。

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