※本稿は、HD-2D版『ドラクエI&II』の冒頭部分に関するネタバレを含みます。
1980年代後半にRPGの面白さを国内に広めた『ドラゴンクエスト』と『ドラゴンクエストII』は、後のRPG黄金期に続く偉大な先駆者となりました。
作品としての評価も高く、その人気からリメイクや移植などが幾度も行われています。

特に、初のリメイク作となったスーパーファミコンソフト『ドラゴンクエストI・II』は、オリジナル版の魅力を受け継ぎつつ、遊びやすい改善が施されたほか、『II』の冒頭に新たなシーンを追加するなど物語面の強化も行われ、好評を博しました。

そんな『ドラクエI・II』の発売から約32年後の2025年10月30日に、同じく初代と2作目をフルリメイクしたHD-2D版『ドラゴンクエストI&II』が発売され、この令和に懐かしい名作が蘇りました。

HD-2D版『ドラクエI&II』では、ゲーム性が大きく変わる新要素を備え、物語面の更なる追加もたっぷりと盛り込まれています。果たしてどれほどパワーアップしたのか、SFC版の『II』にも収録されている冒頭の展開を比較して確認しましょう。

なお、本稿にはHD-2D版『ドラクエI&II』の冒頭部分に関するネタバレを含みますので、閲覧の際はご注意ください。

■サマルトリア王子とムーンブルク王女の名前は、新たなシーンで入力
SFC版『ドラクエI・II』の『II』を開始すると、まずは『I』の後に勇者ロトが国を興し、子孫たちが更に広げていったことが語られます。

ロトの血を引く子孫たちは、ローレシア、サマルトリア、ムーンブルクといった国をそれぞれ治め、平和に暮らしていました。そして場面は、ムーンブルクの城内にいる王様と王女にスポットが当たります。

こうした流れは、HD-2D版『ドラクエI&II』における『II』も基本的に変わりません。しかし、後に仲間となる王子と王女の生誕シーンが新たに挿入されました。尺は短めですが、こうした丁寧な描写が没入感を促す一助になるので、侮れません。


なおHD-2D版では、ローレシアの王子の名前はゲーム開始直後に入力し、サマルトリアの王子とムーンブルクの王女の名前は生誕シーンで決定します。後者のふたりはデフォルトネームを持ちますが、キャンセルして任意での入力も可能です。

■SFC版で描かれた、ムーンブルク王の勇ましさと悲劇的な結末……
HD-2D版では生誕と名前入力のシーンが挟まりますが、その後はSFC版と同じく、ムーンブルクの城内に視点が切り替わります。

SFC版では、ここで画面が薄暗くなり、「大神官ハーゴン」の軍隊から急襲を受けたとの報告が王に寄せられます。王様はすぐに指示を出しますが、その命を受けた兵士が魔物に殺されるなど、急転直下の事態に。

そして王様は、地下に続く階段に王女を連れていき、逃げるように促します。そして王女を守るように侵入した魔物へ立ち向かうと、呪文を駆使して次々と撃破。1体、2体と魔物たちが倒れていきました。

しかし、その背後を突かれた王様は、あえなく炎の中に沈んでしまいます。断末魔となった「ぎょえーーっっ!!」という、生々しい叫びを残しながら……。

■あの「ぎょえーーっっ!!」は、HD-2D版でどうなった?
HD-2D版でも同様の流れが描かれましたが、こちらはより描写が細かくなっており、新たな事実や推察したくなる要素がいくつも盛り込まれています。まずは、王様と王女が中庭にいた理由として、王女が呪文を披露する場面から始まりました。


王様は娘の才覚を称えますが、王女も「攻撃、回復、変化の呪文まで、お父さまは自由自在ですもの」と、父の偉大さに敬意を表します。良好な親子関係に、見ている側も思わず和んでしまいます。

ですが、無常にも魔物の軍勢が押し寄せ、絶体絶命の事態へと追い込まれます。襲い来る魔物を呪文で薙ぎ払うと、王様はまず王女の脱出させるべく行動を開始しました。

その流れはSFC版と重なるものの、王女を地下へと連れて行くと、そこから先の行動はプレイヤー側からは見えなくなります。

唯一、何らかの呪文を使ったのか光り輝くエフェクトのみ確認できましたが、その後戻ってきたのは王様ひとり。彼がなんらかの呪文──ネタバレになるかもしれないため、予想は避けておきますが──を使って、王女の身を守る術を施したのでしょう。

そして王様は、「わしの国だ。王として、最後まで戦い抜く……!」とひとりごち、押し寄せる魔物の軍勢へと立ち向かいます。この誇り高き王様の勇姿は、しかし爆発の中に飲み込まれてしまい、「ぐぉぉぉぉー!!」という声だけが辺りに響き渡り……。

■瀕死の兵士が辿り着くと、そこには彼の弟が……!
魔物の襲撃によって、ムーンブルク城は陥落。一方的な蹂躙とも言える戦いは終わりを告げましたが、ハーゴンによる侵攻は始まったばかり。
この凶事を知らせるべく、深手も厭わずにムーンブルクの兵士がローレシアの城へと向かいます。

兵士がボロボロになりながらも目的地へたどり着くと、ハーゴンの危険性をローレシアの王に伝え、その場に倒れ伏します。この言葉を聞いたローレシアの王は、息子である王子に事態を託し、冒険の旅路へと送り出しました。

プレイヤーは、ここからローレシアの王子となり、サマルトリアの王子とムーンブルクの王女の元へ向かいながら、大神官ハーゴンとの戦いに乗り出します。こうしたSFC版独自の幕開けは、プレイヤーにハーゴン打倒を促すきっかけともなり、没入感を後押ししてくれました。

こうした一連のシーンも、HD-2D版ではよりパワーアップしています。ローレシアの王子が街を見回る様子が挿入されたり、辿り着いた兵士の弟がローレシアの城にいたりと、日常の風景からドラマチックな展開まで、丹念に盛り込まれていました。

またSFC版では、ローレシアの王は息子を手早く送り出しますが、HD-2D版では状況をより細かく伝えるほか、『ドラクエI』に登場した「おうじょのあい」を手渡すなど、これまでにない展開も差し込まれました。

おそらく王家に代々伝わったのであろう「おうじょのあい」が、HD-2D版『ドラクエII』でどのような役割を果たすのか。ファンにとっても新鮮な要素が、幕開け早々に飛び出します。

SFC版の展開もいいものですが、登場人物をきめ細かく掘り下げ、王様の断末魔も大きく変わったHD-2D版『ドラクエII』。「おうじょのあい」と共に歩むローレシア王子の冒険は、この先もまた新たな出会いや展開が待ち受けているに違いありません。


違いが気になる人は、HD-2D版『ドラクエII』の冒険に乗り出しましょう。
編集部おすすめ