「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」がはたしてどのようになるのか? ギャバンを中心に動き出すだろうユニバース展開は? その一方で元祖ギャバンにも脚光があたり、久しぶりに、そしてはじめて1982年のテレビシリーズを視聴した人も多いはず。
そんな中、筆者が思い出したのは1988年にファミリーコンピュータ版ゲームとしてリリースされた『コスモポリス ギャリバン』でした。「宇宙刑事ギャバン」の明らかなオマージュとして開発された本作は、ストーリーやしっかりとしたシステムも相まって、オマージュ作品にしておくにはもったいないほどの“宇宙刑事体験”をさせてくれました。ロムカセットに内蔵された電源でセーブデータを保存する「バッテリーバックアップ」も懐かしいですね。
しかしただ思い出に浸っていてもつまらない……。あの体験をもう一度味わいたい!
そんなわけで「My Nintendo Store」を覗いたところ、なんと「アーケードアーカイブス」シリーズに、ファミコン版の元となったオリジナルの『コスモポリス ギャリバン』があるではないですか! しかも懐かしの、あの忍者キャラクターまで!!
そこで本稿では、厳選した“特撮ヒーローゲーム”を紹介するとともに、当時の特撮事情を振り返りたいと思います。
◆コスモポリス ギャリバン
『コスモポリス ギャリバン』は日本物産が1985年に稼働をスタートさせたアーケード用ゲームです。プレイヤーは主人公のギャリバンとなり、キック&パンチを駆使しながら上下左右スクロールの2Dステージを進みます。
アイテムの「パワークリスタル」を拾うことで変身しコンバットスーツ姿に。コンバットスーツを着用するとバスター銃(光線銃)が常時使えるだけでなく、パワークリスタルを重ねて獲得することでレーザーブレード剣やコズミックフラッシュ(3発同時発射の弾丸)が使えるようになるなど、さらなるパワーアップも楽しめます。
ただしアーケードゲームということで難易度が若干高く、敵の出現率の多さ、変身前のパンチ&キックのリーチ不足など、油断しなくてもすぐにダメージを受けてしまうゲームバランスに悩まされます。特にバスター銃が使えるようになるまではなかなか思うように攻撃がヒットしてくれず、操作に若干慣れが必要でした。それでもプレイしたくなるのは、やはり変身したいから!
なお本作はシステムとグラフィックを一新し、メトロイドヴァニアとして生まれ変わったファミコン版『コスモポリス ギャリバン』を1988年にリリースしています。
それではなぜここまで「宇宙刑事シリーズ」が人気だったのか? それは「宇宙刑事シリーズ」のみならず、その後の「メタルヒーローシリーズ」の原点となった「宇宙刑事ギャバン」が当時とても画期的だったからです。
「宇宙刑事ギャバン」が放送されたのは1982年。戦隊で言えば「大戦隊ゴーグルファイブ」が放送された年であり、「仮面ライダー」も「ウルトラマン」も一旦、レギュラー放送をお休みしていた時期です。
いち視聴者としての肌感覚としては特撮ブーム自体が落ち着いたような感じでした。特に「ウルトラマン」シリーズは雑誌展開の比重が大きくなって「アンドロメロス」のような変化球が展開されるなど、定番の特撮シリーズでも新しい試みを模索していたような時期でした。
そんな中で始まった「宇宙刑事ギャバン」は、まずメタルの質感がとても美しくメカ好きのハートを刺激します。またスーツの各部がキラキラとライトアップするほか、必殺技の発動時はゴーグルタイプの眼部にツインアイが発光で現れるという、数ある特撮ヒーロースーツの中でも群を抜く派手さでした。
魔空空間という敵側が有利になる空間を作り出し、そこにギャバンを引き込んでピンチに陥らせるという設定も斬新でした。設定として組み込んでいるので、「魔空空間の発動=ギャバンのピンチ」という定番の流れができ、子供にも伝わりやすい物語作りができたというわけです。
その基本テイストはシリーズ第2弾・第3弾の「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」に継承された後、「巨獣特捜ジャスピオン」「超人機メタルダー」「特警ウインスペクター」「重甲ビーファイター」などに引き継がれ、1998年までの間に合計17作品の「メタルヒーローシリーズ」を世に送り出しました。
ここ20年以上は「スーパー戦隊シリーズ」「仮面ライダーシリーズ」「ウルトラマンシリーズ」が継続的に放送されていたため陰に隠れがちではありましたが、「メタルヒーローシリーズ」も特撮ファンにとってはいつか復活してほしい人気特撮ヒーローシリーズだったのです。
『コスモポリス ギャリバン』はまさに「宇宙刑事シャイダー」が終了し、「巨獣特捜ジャスピオン」が放送されているさなかにゲームセンターに登場したタイトルです。特撮ヒーロー自体、当時あまりゲーム化された記憶がありませんから、特撮ヒーローになれる数少ない機会としてユーザーの記憶に刻まれたのではないでしょうか。
◆未来忍者
皆さんは「雨宮慶太」というクリエイターをご存知でしょうか? そう、「牙狼〈GARO〉シリーズ」を作り上げたあの監督! もっと言えば、「仮面ライダーZO」「仮面ライダーJ」の監督でもあります。その雨宮さんが初監督したのが、ここで紹介する映像作品「未来忍者 慶雲機忍外伝」であり、その原作としてゲームセンターに遅れて登場したのがゲーム版の『未来忍者』でした。
“和”と“メカ”が入り混じった架空の戦国時代が舞台なのですが、そのヴィジュアルはさながら和風「スター・ウォーズ」。主人公である機忍(サイボーグ忍者)の白怒火(しらぬい)が黒鷺軍に立ち向かうという物語です。
特筆すべきはその独特のヴィジュアルです。ヘッドギアをつけた侍や、「スター・ウォーズ」に登場する二足歩行メカ「AT-AT」のような屋敷メカ、城壁を思わせる砲台、漢字表記されたデジタル表示など、今なお類似作品のない異質の“和風SF”に引き込まれます。
中でも主人公の機忍・白怒火のデザインは、数ある忍者キャラクターの中でもトップクラスのかっこ良さ。細長く入ったゴーグルは深紅に輝いており、全体的に暗色でまとめられたデザインを情熱的に引き立てます。
なにしろ雨宮監督といえば、もともとはキャラクターデザイナーとして活躍していた人物です。
なお1988年といえば「超獣戦隊ライブマン」「仮面ライダーBLACK RX」「電脳警察サイバーコップ」などが放送された年。特撮の世界では1988年の映画「帝都物語」や「孔雀王」、1989年の映画「ガンヘッド」など、ハリウッドの影響を受けたであろう大人向けの特撮作品も多数世に送り出されており、必ずしも「特撮=子供向け」ではなくなっていたような時代です。
「未来忍者」は、販売用ビデオ作品という商品形態から見てもまさにその大人をターゲットにしていただろう作品ということで、おもに大人の特撮ファンに響いた作品として今でも熱く語られています。
一方、ゲーム版の『未来忍者』は、忍者らしく素早く走り抜けるアクションと連射可能な手裏剣で、全体的にハイスピードなバトルに爽快感があります。物語の舞台や登場する機忍が映像作品と同様のヴィジュアルを踏襲しているばかりか、ビル群や鳥居状のエレベーターが登場するなど、さらなる“和風SF”の世界が楽しめます。
こちらもアイテムを取得することで体力回復、全体攻撃、パワーアップなどが可能に。独特のヴィジュアルだけでも楽しいのですが、ゲームとしてもストレスなく歯ごたえのあるアクションが楽しめるかと思います。
◆ワンダーモモ
アーケードアーカイブスで配信中の『ワンダーモモ』は、当時としては珍しい女の子が主役の変身ヒーロー。おもしろいのはそのシチュエーションで、「舞台劇」をコンセプトに、舞台の袖までしか移動できないステージ構成、客席に出没する「カメラ小僧」など独特の世界観が面白いアクションゲームとなっています。
『ワンダーモモ』がゲームセンターで稼動を始めた1987年の代表的な特撮番組と言えば「光戦隊マスクマン」「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」「少女コマンドーIZUMI」など。
おもしろいのは「少女コマンドーIZUMI」で、1985年から約2年放送された「スケバン刑事」シリーズに続く、少女が主役の特撮番組となっています。『ワンダーモモ』がそのような時代に稼働を始めたというのは大変興味深く、まさに時代を写した作品に思えてしかたありません。
また1980年代はアイドルの黄金期でもあります。とくにソロ活動でのスターが目立ち、松田聖子さん、中森明菜さん、小泉今日子さんなど、国民的アイドルがブラウン菅を独占していました。
「カメラ小僧」も元々はアイドル現場の用語ですし、ヒーローショーとアイドルショーをミックスした「舞台」という設定は『ワンダーモモ』ならではであり、結び付けた企画者の発想力に驚かされます。
なお『ワンダーモモ』が稼働をスタートした1987年のシングル曲売り上げトップ10は以下の通り。
1位…瀬川瑛子「命くれない」
2位…中森明菜「TANGO NOIR」
3位…吉幾三「雪國」
4位…光GENJI「STAR LIGHT」
5位…松田聖子「Strawberry Time」
6位…中森明菜「難破船」
7位…中森明菜「BLONDE」
8位…尾形大作「無錫旅情」
9位…五木ひろし「追憶」
10位…少年隊「君だけに」
さてそんな『ワンダーモモ』ですが、現在は『THE IDOLM@STER』の世界に組み込まれているようです。作中に登場する765プロの高木社長に「かつてモモをプロデュースしていた」という設定が追加され、2019年に東京ドームで開催した「バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル」のDay2では、声優の桃井はるこさんがゲストとして登場。桃井さんが『ワンダーモモ』のテーマ曲をアレンジ&カバーした楽曲「ワンダーモモーイ」を歌っていることから、「ワンダーモモ」と「ワンダーモモーイ」をステージにて披露しました。
本特集でピックアップしたゲームの中では比較的ライト向けで、世界観も面白い『ワンダーモモ』。いずれも1タイトル838円とお求めやすい価格設定となっているので、この年末年始にゲームの中で“ヒーローごっこ”をしてみてはいかがでしょうか?


](https://m.media-amazon.com/images/I/51pHWdWD1sL._SL500_.jpg)






